商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#54

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ザ・SERIES」× 引用商標:「X SERIES」

1.出願番号  商願平10-38307(拒絶査定に対する審判事件)(審判平11-20988)
2.商  標  「ザ・SERIES」
3.商品区分  第9類:電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「ザ・SERIES」は「X SERIES」に類似する。

拒絶理由通知 商標登録第4754889号
本願商標・商標登録第4754889号[
引例商標・商標登録第4107681号

審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

(1)手続の経緯
 出     願 平成10年 5月 8日
 拒絶理由の通知 平成11年 8月 9日(発送日:11年9月3日)
意  見  書   平成11年10月13日
 拒 絶 査 定 平成11年11月19日
同 謄 本 送 達   平成11年12月 3日
審 判 請 求 書 平成11年12月24日
手 続 補 正 書 平成11年12月24日
(2)拒絶査定の理由の要点
原査定の拒絶理由は、『この商標登録出願は、平成11年8月9日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書を提出して述べるところがあるが、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるものである。 他方、引用登録商標は、図形と文字との結合によりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かである。してみれば、本願、引用の両商標は、それぞれより生ずる「シリーズ」の共通の称呼において、彼此互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。したがって、本願商標と引用登録商標とは、称呼において類似する商標である。』というものであり、従って、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認めるというものである。
(3)本願商標が登録されるべき理由
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成態様の違いについて触れ、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては承服できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。なお、本審判請求書と同時に手続補正書を提出し、本願の指定商品(従って本審判請求の対象となる指定商品)を第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」に限定する補正を行った。また、第37類の指定役務「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」については、本書と同時提出の商標登録願により、分割出願を行った。
① 本願商標の構成
 本願商標は、願書に表示した商標からも明らかなように、片仮名の「ザ」と中黒丸との間を通る円を描き、その円の「ザ」と反対側の円周に沿って英語「SERIES」の文字を配置した態様から成るものである。
② 引用商標の構成
 引用商標(登録第4107681号)は、英語「SERIES」の文字に英文字「X」を図案化して、一体に構成したものである。
③ 審査官の認定に対する反論
審査官の認定によれば、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるとしている。また、引用商標は、図形と文字との結合よりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かであるとしている。
 しかしながら、このような審査官の見方は妥当でない。第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」等の商品分野において、「SERIES」の言葉は、その字義通り、連続・系列の意を表すもので、「連続性を持つ一連のものの称」を意味している。それ故、本願商標及び引用商標の指定商品分野にあって、「SERIES」の文字は、例えば、そのコンピュータプログラムのパッケージソフトが連続ものであることを示すに過ぎず、何ら識別力を生じない言葉である。つまり、「SERIES」の言葉自体は、本願商標及び引用商標にあって、商標の要部を構成するものではない。したがって、その言葉をとらえて、取引に資される場合はない。それ故に、互いに「シリーズ」の称呼を同一にするから両者類似するとした審査官の認定は妥当でない。商標の要部でない言葉をとらえ、その部分のみを抽出して称呼するというのは、商標の称呼認定を誤ったものである。
本願商標は、あくまでも全体として、「ザ・SERIES」(ザシリーズ)ととらえるべきものであり、一方、引用商標は「X」の図案化された部分と文字部分とを一体として、例えば「X SERIES」(エックスシリーズ)ととらえるべきものである。そして、このことは、同じく図案化された「X」が用いられている同一権利者に係る以下の一連のシリーズものの商標を見れば、一目瞭然である。これらの一連の商標にあっては、むしろ「X」の図案化にこそ、共通の要部が存在するのである。
イ. 登録第4107679号「§Xー55」…第1号証
ロ. 登録第4107682号「§Xー55\XDATAーNETSTATION」…第2号証
ハ. 登録第4107683号「§X\DATAーNETSTATION」…第3号証
ニ. 登録第4154752号「Xーゲームプロ」…第4号証
ホ. 登録第4154765号「§X2000INN」…第5号証
 それ故に、本願指定商品分野においては、単独で要部と成り得ることのない「SERIES」の文字部分のみを抽出して、本願商標と引用商標とは「シリーズ」の称呼を共通にする類似の商標であるなどと見るべきではない。そして仮に、その様な見方がもし通用するのであれば、「SERIES」や「シリーズ」の言葉が単独で把握できるような形態で含まれている商標は、重複して登録されることはないであろうが、実際には、以下に示すように、多数登録されているのである。
1. 登録第1403011号「東芝\新世紀\シリーズ」…第6号証
2. 登録第2218625号「§GATTAY∞ガッタイ∞SERIES」…第7号証
3. 登録第2277107号「PorTable\SERIES」…第8号証
4. 登録第2277108号「DeskTop\SERIES」…第9号証
5. 登録第2277109号「Cache\SERIES」…第10号証
6. 登録第2277110号「DeskTopmini\SERIES」…第11号証
7. 登録第2641214号「自由が丘\SERIES」…第12号証
8. 登録第2679500号「ACCESSORY\SERIES」…第13号証
9. 登録第3323921号「建設COSMOS\シリーズ」…第14号証
10. 登録第4001095号「§GAKUEN\シリーズ」…第15号証
11. 登録第4011773号「山川\§らく丸くん\シリーズ」…第16号証
12. 登録第4011976号「§ばっちしV∞ぶい∞BATCHISHI∞SERIES」…第17号証
13. 登録第4028898号「5∞Series」…第18号証
14. 登録第4051522号「まるごと\シリーズ 」…第19号証
15. 登録第4107681号「§X\SERIES」…第20号証
16. 登録第4161096号「PERSONAL\series\パーソナルシリーズ」…第21号証
17. 登録第4264328号「攻略!∞HISAGO\シリーズ」…第22号証
18. 登録第4290056号「DataMuseum\SERIES」…第23号証
19. 登録第4307339号「アスキー\ツクール\シリーズ」…第24号証
 これらのことからも分かるように、「SERIES」「シリーズ」は、本願の指定商品分野において、単に「連続もの」「シリーズもの」を表示するに過ぎない言葉であり、商標の要部を構成しない。したがって、単に「シリーズ」と称呼しても自他商品を識別し得ない。本願指定商品のような商品を識別するためには、単に「シリーズ」では、何のシリーズなのか分からないのである。それ故に、本願商標及び引用商標共に「シリーズ」の称呼が生ずる(従って、その称呼に基づいて取り引きされる)とする審査官の認定は誤りである。本願商標の称呼は「ザシリーズ」であり、一方、引用商標の称呼は「エックスシリーズ」なのである。よって、両者は称呼上、類似することはない。
(4)むすび
 以上のように、本願商標と引用商標とは、称呼上重要な位置を占める語頭音ないし前段部分において、「ザ」と「エックス」の称呼上の差異があり、語感語調を全く異にする商標であるので、両者は称呼上類似することはない。

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