商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#68

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ToningBath/トーニングバス」

1.出願番号  商願2003-54276(不服2004-6712)
2.商  標  「ToningBath/トーニングバス」
3.商品区分  第3類:せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるにとどまり、自他商品識別標識としての機能を有しない。」

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4881748号
出願商標・商標登録第4881748号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

  【手続の経緯】
 出     願   平成15年 6月30日
 拒絶理由の通知   平成16年 1月14日
  同 発送日   平成16年 1月15日
意  見  書   平成16年 2月16日
拒 絶 査 定   平成16年 2月27日
 同 謄本送達   平成16年 3月 3日
 【拒絶査定の要点】
 原査定の拒絶理由は、“ この商標登録出願は、平成16年1月14日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。おって、出願人は意見書において種々述べていますが、今日では指定商品「化粧品」との関係においては「トーニング」及び「TONIG」の文字は識別力がないとされていますし、また、「バス」及び「BATH」の文字の部分は商品の用途を表す語として浴用製品である(昭和45審判4222号)ことを表しますから、これを一連に書したとしても本件については出願人の意見は採用することができません。したがって、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります。つまり、この拒絶の理由は、“ 「ToningBath」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるところ、その構成中の「Toning」の文字部分は「活力を与える」程の意味合いを、また、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴用及び浴室用の商品」等の意味を有し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように、また、「トーニング」の語も「トーニング バスオイル」「トーニング シャワー&バス ジェル 」「メーカー ポールシェリー 商品名 バスオイル(トーニング)」「バスオイル トーニング (ボディケア)」のように使用されているものであるから、全体としても「活力を与える風呂用の商品」の意味合いを容易に看取させ、この商標登録出願に係る商標を指定商品中前記文字に照応する商品、たとえば、「バスオイル、バスソルト」等に使用するときは、単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。”(拒絶理由通知書)というものであります。
 【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、「Toning/トーニング」と「Bath/バス」が結合して一体となった商標であり、言葉の意味として、「活力を与える浴室、浴槽、入浴」程の意味合いを有するが、この文字が、一般的に、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではないこと、及び、「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表示するものではないこと、等を指摘して拒絶の理由には該当しないことを述べたにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「ToningBath/トーニングバス」と二段併記した態様からなるもので、指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
審査官は、上記本願商標の構成態様に関し、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴用及び浴室用の商品」を意味し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように使用されているとしていますが、ここで言う「Bath」はあくまでも「浴槽、浴室」「入浴、(浴用の)湯」を意味し、「浴用及び浴室用の商品」を意味するものではないことは、さきの意見書でも述べたとおりであります。審査官ご指摘の「バスオイル」「バスソルト」等の使い方は、商品「オイル」や「ソルト」に対して、「バス+商品名」という使い方であって、「バス用オイル」「バス用ソルト」という意味に使っております。「Bath」「バス」の文字自体が、「浴用及び浴室用の商品」そのものを表しているのではありません。「Toning」が「活力を与える」程の意味合いを有するとしても、「ToningBath」といった場合には、言葉自体の意味として「活力を与えるバス」程の意味を有するのであって、「活力を与えるバス」が「活力を与えるバス用の商品」そのものを意味するものではありません。そして又、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」が言葉の意味として「活力を与える浴室、浴槽、入浴」等の意味合いを有するとしても、「浴槽」などを指定商品とする場合ならまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表すことにはならないと考えます。例えば、「石けん」や「化粧品」に、「活力を与えるバス(浴室、入浴)」という意味合いの商標「ToningBath/トーニングバス」を用いても、その「石けん」や「化粧品」を、「バス」(「浴室」「浴槽」「入浴」など)と間違えるわけはなく、指定商品との関係において、品質・用途等の誤認など生じるはずもありません。この意味において、審査官の判断は、言葉の意味合いを誤って認識した誤解に基づくものであります。
(b-2)
ところで、この点に関し審査官は、拒絶査定書において、昭和45審判4222号の審決を引き合いに出し、「バス」及び「BATH」の文字部分は商品の用途を表す語であり、浴用製品であることを表す、と認定しております。しかし、この審決例は、本件とは事案を異にするもので、それをもって本件の判断基準となすことは、適正を欠くものと思料します。つまり、この審決例は、商願昭43-4900号「バスダイヤ/BATHDIA」(指定商品:化粧品)が、登録第408085号「ダイヤ/DIA」(指定商品:同じく化粧品等)を引例に拒絶されたことに対する不服の審判における審決で、結論的には、請求は成り立たない旨の審決(つまり類似の判断を維持する審決)をした訳ですが、ここで問題となった出願商標は、明らかに単独で識別力を持つ「ダイヤ」「DIA」の文字と、その文字とは観念的に全く結びつきのない「バス」「BATH」の文字とから構成され、且つ2音節に称呼される「バスダイヤ/BATHDIA」の商標を対象とするものでありますので、本願商標のような一体となって一つの意味合い(「活力を与える浴室、浴槽」等)を暗示させる「ToningBath/トーニングバス」とは、事案を全く異にするものであります。構成上単に「ダイヤ」の称呼を生じてしまう上記「バスダイヤ/BATHDIA」の商標と、一体として把握されて常に「トーニングバス」と称呼される本願商標の「ToningBath/トーニングバス」とでは、同一レベルで語ることは出来ません。本願商標は、「Toning」及び「トーニング」の文字だけからなるものでも、また「Bath」及び「バス」の文字だけからなるものでもなく、あくまでも、これら2つが結合して一体となり、「活力を与える浴室、入浴」程の意味合いを暗示させる造語商標(指定商品との間で特定の具体的観念を生じさせない造語商標)であり、それ故に、この本願商標を指定商品中風呂用の商品、たとえば、「石けん、バスオイル、バスソルト」等に使用しても、単に、商品の品質、用途を表すことにはならず、自他商品識別機能を十分に発揮するものと思料します。
(b-3)
にもかかわらず、審査官は、前述のように「BATH」の文字は、石けんや化粧品などとの関係にあっても浴用製品という用途表示であって自他商品識別力はない、と認定しております。結局のところ、審査官が言わんとするところは、「ToningBath/トーニングバス」全体としても、「活力を与える風呂用の商品(「石けん」や「化粧品」)」程の意味合いを有するだけであって、識別力はないということなのだろうと思います。しかし、冷静に考えた場合、「人体に活力を与える風呂用の石けん」とか、「人体に活力を与える風呂用の化粧品」とは、一体如何なるものなのか、判然としません。「石けん」とか「化粧品」における「人体に活力を与える」効能というのは、本当に存在するものなのか、大いに疑問であります。飲み薬等の医薬品であれば、あるいは“これは人体を活性化してくれる薬だ”との認識を持つ取引者・需要者がいるのかも知れません。しかし、石けん(たとえ薬用石けんであっても)は、肌の洗浄や滅菌等の効能がせいぜいでありましょうし、また、化粧品(たとえ薬用化粧品であっても)も、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つ程の効能がせいぜいであります。人体を活性化して活力を与える効能など常識的に考えられません。ましてや他の指定商品「歯磨き」や「香料類」に、そのような効能があるとも考えられません。「人体に活力を与える効能」など考えられないとすれば、「ToningBath/トーニングバス」を、第3類の「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」に使用した場合には、その商品の用途・効能等を表すことにはならなず、十分に自他商品識別機能を発揮するものと思います。
(b-4)
過去の商標登録例をみると、例えば、(A)「TONING BED/トーニングベッド」は、「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」を指定商品として商標登録されていますが(登録2284758)、これなどは、端的に「活力を与えるベッド状のマッサージ器、同ベット状の美容機械器具」を意味しております。それ故、今般の審査官のような見方をすれば、この(A)は自他商品識別力がないということになるのでありましょうが、実際には識別力が認められて商標登録されているわけであります。これら「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」に「TONING BED/トーニングベッド」が登録できて、「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」などに「ToningBath/トーニングバス」が登録できないとされる謂われはありません。
(b-5)
また、過去の商標登録例をみると、本願と同一の指定商品分野において、「BATH」「Bath」の文字を含む商標が多数登録されておりますが、これらの指定商品をみると、必ずしも「浴用の○○○」という具合に限定されているわけではありません。審査官が指摘するように、「BATH」「Bath」の文字が、浴用製品を表す品質・用途表示であるとするならば、当然ながら、「BATH」「Bath」の文字を含む商標は、全て、浴用製品に限定されていなければならないはずでありますが、現実にはそうなっておりません。
例えば、以下のような商標登録例がありますが、ここに挙げた1~9の登録商標の指定商品は、全て、「浴用の」という限定はなされておりません。
1. 登録2675882 メイクアップバス\MAKEUPBATH
2. 登録2722003 アクアバス\AQUABATH
3. 登録3294101 ATOPIBATH\アトピバス
4. 登録4060750 AVON HOT BATH
5. 登録4108991 VITABATH\ヴァイタバス
6. 登録4237464 ビオレ Health & Bath
7. 登録4429286 カクテルバス\COCKTAIL BATH
8. 登録4693062 QUICKBATH
9. 登録4717135 ハウスオブローゼホワイトバス\HOUSE OF ROSE WHITE BATH
 審査官のように“指定商品との関係にあって「BATH」「Bath」の文字は品質・用途表示だ”という判断を行うのであれば、これら1~9の指定商品は、全て、「浴用の○○○」という具合に記載されていなければならないはずであります。しかし、現実にはそのようになっておりません。そのような限定がなくとも登録されております。これは、「BATH」「Bath」の文字が、必ずしも「浴用製品」を表すものでないことの、何よりの証左であります。これら1~9が登録できて、本願商標「ToningBath/トーニングバス」が登録できないとされる謂われはありません。
(b-6) 
 ところで、本出願人は、前述したように、本願商標「ToningBath/トーニングバス」が「Toning/トーニング」と「Bath/バス」の文字を結合したものであり、全体の言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」程の意味合いを持つこと、そして、そのことから、商標として使用された場合に、取引者・需要者をしてそのような観念を間接的に表示ないし暗示させるであろうことを、決して否定するものではありません。しかし、そのことが直ちに、本願商標が、商品の品質・用途を表すにすぎない、即ち、商品の品質・用途を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことを意味するものではないと考えます。本願商標を構成する「ToningBath/トーニングバス」は、現に第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではありません。「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」を間接的に表示ないし暗示するとしても、それでは一体、具体的にはどの様な商品を指すのか、その具体的な商品の中味(品質・用途)が何なのか特定できません。具体的に中身が特定できてこそ、商品の品質・用途表示といえるのであって、漠然と物事を暗示ないし間接的に表示したのでは、商標法第3条第1項第3号にいう「品質・用途」等の表示とは言えないと考えます。商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書・同大・同間隔で一連一体にバランス良く横書きした本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、全体としてみれば、指定商品との関係で特定の具体的観念を生じさせることのない造語商標であり、十分に自他商品識別標識として機能するものと思料します。
 【むすび】
 以上述べたように、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」は、「活力を与える」程の意味合いを有する「Toning/トーニング」と「浴室、浴槽、入浴」を意味する「Bath/バス」の文字とを組み合わせたもので、全体の言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」程の意味合いを持つものではありますが、指定商品との関係において特定の具体的観念を生じさせることはなく、単なる商品の品質、用途表示ということはできないと考えます。特に「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表示するものではないと考えます。それ故、本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。
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(参考)ケース68の「審決」
不服2004- 6712
   商願2003-54276拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
 結 論
   原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
 理 由
 1 本願商標
 本願商標は、「ToningBath」の欧文字と「トーニングバス」の片仮名文字とを二段に書してなり、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品として、平成15年6月30日に登録出願されたものである。
 2 原査定の拒絶の理由(要旨)
 原査定は、「本願商標は、『ToningBath』及び『トーニングバス』の文字を上下二段に普通に用いられる態様で表示してなるところ、その構成中の『Toning』の文字部分は『活力を与える』程の意味合いを、また、『Bath』の文字部分は、指定商品との関係においては、『浴用及び浴室用の商品』等の意味を有し、全体としても『活力を与える風呂用の商品』の意味合いを容易に看取させるから、本願商標を指定商品中前記文字に照応する商品、たとえば、『バスオイル、バスソルト』等に使用するときは、単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
 3 当審の判断
 本願商標は、前記のとおり「ToningBath」の欧文字と「トーニングバス」の片仮名文字とを二段に書してなるところ、構成中前半部の「Toning」(トーニング)の文字(語)が、たとえ、「活力を与える(こと)」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第7刷)「tone」の項参照。株式会社小学館発行)の意味を有し、後半部の「Bath」(バス)の文字(語)が、「浴室」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第7刷)株式会社小学館発行)を意味するものであるとしても、これらを結合して一連に表した本願商標は、原審説示のような意味合いを認識させるものではなく、特定の商品の品質、用途を、直接的、かつ、具体的に表したものとはいえないものである。また、当審において、職権をもって調査したが、「ToningBath」及び「トーニングバス」の文字が、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質、用途を表示するものとして、普通に使用されている事実を見出すことができなかった。してみると、本願商標は、全体として特定の観念を生じない造語を表したものと認識されるものであるから、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、また、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。その他、政令で定める期間内に本願について拒絶をすべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。

平成17年 6月28日
審判長  特許庁審判官 野本 登美男
     特許庁審判官 三澤 惠美子
     特許庁審判官 和田 恵美

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