商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#29

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト拒絶理由通知 意見書から転載しております。

本願商標「Smart CRM Solution」×引用商標「CRM」

1.出願番号  商願2000-57968
2.商  標  「Smart CRM Solution」
3.商品区分  第42類:顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計等
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「CRM…」の商標と類似する。

商標登録第4514283号 拒絶理由通知
出願商標 商標登録第4514283号
登録第4268725号
引例商標1 登録第4268725号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、
1.登録第4268725号(商願平10-007983)の商標(引用商標1)、または
2.商願平11-078390号の商標(引用商標2:出願拒絶につき現在資料なし)

と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることは出来ない、と認定されました。しかしながら、本願商標と引用商標1,2とは、外観・称呼及び観念の何れにおいても類似することのない非類似の商標であると思料しますので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べます。
なお、本出願人は、指定役務をより明確にすると共に、商標の構成文字の一部が意味する役務の概念と整合させるため、本日付けで手続補正書を提出し、指定役務を第42類「顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う顧客関係処理システムの構築・導入に関する助言,顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計・保守に関する助言」に改める補正を行いました。

(2)まず、本願商標と引用商標1、2の構成態様を見ると、本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、欧文字で「Smart CRM Solution」と横書きした態様からなるものであり、これに対し、引用商標1は欧文字で「CRMvision」と横書きしてなり、また、引用商標2は、「六角図形」の真ん中に「CRM」と大きく表し、かつその下にやや小さく「CONFERENCE &\EXPOSITION」と二段に書し、更に図形の内側外周に「eCRM」「SALES」「TECHNOLOGY」「IMPLEMENTATION」「MARKETING」「CUSTOMER\INTERACTION」の欧文字を配して成るものであります。
そこで、この商標態様を分析してみますと、本願商標と引用商標1,2に共通する文字として、「CRM」の欧文字が存在します。そのため審査官殿は、この共通する「CRM」の欧文字を商標の要部と認定して今般の拒絶理由通知を発してきたのだと思料しますが、この「CRM」はビジネスにおける顧客管理コンピュータソフトの開発などの電子計算機用プログラムの設計・作成等の役務分野においては、「Customer Relationship Management」(顧客関係管理)の略として使われております。従って、本願商標の指定する役務分野においては、「CRM」単独では商標の要部とはなり得ない言葉であり、それ故、この部分を抽出して類否判断を行うことは妥当ではないと考えます。つまり、「CRM」の文字は、電子計算機用プログラムにあって、そのプログラムがどの様な内容のものであるかを示す一種の品質表示的、内容表示的な言葉でしかないわけであります。このことは、用語事典等を繙いてみれば明かであります。例えば、
A.日経BP社発行の「日経BPデジタル大事典 2000-2001年版」第1078頁(2000年3月20日第3版発行)(第1号証)によれば、「CRM」は「Customer Relationship Management」(顧客関係管理)の略で、「顧客と接する機会のあるすべての部門で顧客情報とコンタクト履歴を共有・管理し、どのような問い合わせがあっても常に最適な対応ができるようにしようという概念。」と説明しています。また、
B.株式会社I&E神蔵研究所発行の「要点チェック式インターネット用語事典」第771頁(2000年9月15日第1版発行)(第2号証)によれば、「CRM(Customer Relationship Management)とは、企業収益の向上を目的として、顧客生涯価値(LTD:Life Time Value)の最大化を尺度とし、顧客とのリレーションシップの形成、維持を行うあらゆる企業活動(製品開発、マーケティング、営業活動、サービスなど)を統合的に管理する概念」で、ポイントは、「顧客の属性情報(性別、年齢、趣味など)に加えて、顧客が、企業との接点(店舗、コール・センターや営業担当者、さらにインターネットなど)で発信したいろいろな情報を一元的に管理し、企業全体で共有し、一貫性のある顧客への対応を通じて、顧客と企業との間に深い信頼関係を構築、維持することが可能」であると説明しています。
したがって、「CRM」の欧文字を、顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの開発等の役務に用いた場合には、単にその役務がCRMの分野に関係するソフトの開発役務であることを表すに過ぎません。何ら出所を表示することはなく、自他役務の識別力を発揮する文字ではありません。つまり、「CRM」の文字は、あくまでも、本願指定役務との関係にあって、単に顧客関係管理を行うソフトウェアの開発役務を意味する内容表示でしかなく、「CRM」単独で自他商品識別力を発揮し、出所を表示するような機能を備えてはおりません。

(3)以上の前提の下に、本願商標と引用商標1,2との外観、称呼、観念を観察しますと、まず、外観の点では、上述の如く商標の構成態様が全く異なり、類似するものでなことは明かであります。また、観念の点についても、本願商標は、上記態様より、「精密で高感度なCRM(顧客関係管理)の解決策」の如き意味合いを暗示させる商標であるのに対し、引用商標1は「CRM(顧客関係管理)の見方、理想像」の如き意味合いを暗示させ、また、引用商標2は「CRM(顧客関係管理)/協議と説明」の他に、「eCRM」や「顧客とのふれあい」、「説得の議論」、「技術」、「実行」、「マーケティング」などの意味合いの言葉をちりばめたものでありますので(結局まとまった観念は生じません)、本願商標と引用商標1及び2とは、観念上も類似するものではありません。

(4)そこで、次に称呼の点につき検討しますと、本願商標及び引用商標1,2から、識別力のない「CRM」の文字を単独で抽出すべきでないことは先に述べたとおりでありますので、本願商標は、一連に「スマートシーアールエムソリューション」と称呼すべきものと思料します。また、本願商標は、称呼的にやや冗長なところがありますので、短縮される場合には、「スマートシーアールエム」とか、「シーアールエムソリューション」程度の称呼は発生する可能性があります。
これに対し、引用商標1は、前記態様より、一連に「シーアールエムビジョン」の称呼のみ生じるものと思料します。
また、引用商標2は、上述の如く、「六角図形」の真ん中に「CRM」と大きく表し、かつその下にやや小さく「CONFERENCE &\EXPOSITION」と二段に書し、更に図形の内側外周に「eCRM」「SALES」「TECHNOLOGY」「IMPLEMENTATION」「MARKETING」「CUSTOMER\INTERACTION」の文字をちりばめていますが、これらの文字構成は全て説明文に過ぎません。
そして、中央に大書された「CRM」の文字からは単独で「シーアールエム」の称呼が生じるかも知れませんが、もしそうだとしても、これはあくまでも単独では識別力のない部分、即ち質又は内容等を表示したに過ぎない部分と理解され、類否判断の対象とすべき称呼とはならないと考えます。類否判断の対象となるのはあくまでも商標の要部であるからです。
そして又、この引用商標2は、大書された「CRM」の他にこれといって特定の文字をとらえて称呼するような文字は見つかりません。六角図形との兼ね合いで商標登録適格性を備えているとされることも考えられなくもありませんが、基本的にはありふれた図形と、役務の質、或いは記述的説明を表した文字からなるもので、本願指定役務との関係においてはありふれた文字及び図形の組み合わせにすぎないものであり、このようなものを出願人が本願指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと考えます。なお、この引用商標2は、別の理由であるようですが、平成13年4月20日付けで拒絶査定を受けており(第3号証の商願平11-78390出願情報参照)、本願商標の引例としてはふさわしくありません。
以上の次第ですので、本願商標は引用商標1,2と称呼的にも類似するものではないと考えます。
(5)このように、本願商標と引用商標1,2とは、外観および観念上類似することはないと共に、称呼上も、共通する「CRM」の文字が識別力のない文字であるためにそれが単独で称呼されることはなく(単独で称呼されても識別標識として機能しないため)、したがって、本願商標は「スマートシーアールエムソリューション」(又は「スマートシーアールエム」「シーアールエムソリューション」)と一連に称呼され、一方、引用商標1も一連に「シーアールエムビジョン」と称呼され、引用商標2は確定した称呼が生じにくいため(尤も拒絶査定を受けている)、これらは、語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。
よって、本願商標と引用商標1,2とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考えます。

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