米国商標制度 vol.2

17.トレードドレス (Trade Dress)

A.トレードドレスとは?

harbor town
“Harbour Town” photo by Dan Perry / CC BY-2.0, converted from .jpg to .png with size reduction 75%
トレードドレスは、米国商標法(15 U.S.C.)の§2の商標の定義における「象徴(symbol)」または「図形(図案)(device)」を構成します。元来、トレードドレスは製品の包装や外装のみを指していましたが、近年では製品のデザインを含むように拡張され、通常、製品の全体像および全体的外観、または要素の全体として定義され、サイズ、形状、色または色の組み合わせ、テクスチャ、グラフィックス、さらには販売技法などの特徴を含むと定義されます。John J. Harland Co. v. Clarke Checks, Inc., 711 F.2d 966, 980 (11th Cir. 1983) 米国の判例によれば、トレードドレスは、製品のデザインや製品が販売されるパッケージング(包装)に及び、子供の衣装のデザイン、Wal-Mart。、529 U.S.A. 205、54 USPQ2d、1065、レストラン内装 Two Peso、色彩のみ(color per se) Qualitex, 514 U.S. at 162, おもちゃの車に対するFERRARI 365 GTB、Ferrari SpA v. McBurnie, 11 U.S.P.Q. 2d 1843 (S.D. Cal. 1989). 建物の形状、Fotomat Corp. v. Houck, 166 U.S.P.Q. 271 (Fla. Cir. Ct. 1970)などがあり、例えばゴルフコースのコースのコピー事件としては、Pebble Beach Hole No. 14, Pinehurst Hole 3, and Harbour Town No.18, the “Lighthouse Hole”がコピーされていましたが、Harbour Town No.18だけがSignature(特徴的)として排除を命じられています。Pebble Beach Co. v. Tour 18 I, Ltd., 942 F.Supp. 1513 (S.D.Tex. 1996)

B.(Trade Dress)の米国連邦登録例

usr4277913
米国商標登録第4277913号

Apple Inc
G&S: Retail store services featuring computers, computer software, computer peripherals, mobile phones, consumer electronics and related accessories, and demonstration of products relating thereto.

usr4913732
米国商標登録第4913732号

Exxon Mobil Corporation
G&S: Fuel for motor vehicles, namely, gasoline and diesel fuels.

米国商標登録第4431252号
米国商標登録第4431252号

The Coca-Cola Company
G & S: Soft drinks.

米国商標登録第3506956号
米国商標登録第3506956号

Starbucks U.S. Brands, LLC
G & S: Coffee; Coffee beans; Ground coffee beans; Roasted coffee beans.

c.保護されるトレードドレス

トレードドレスは、本質的な識別性或いは獲得した識別性があれば、連邦登録による保護が可能ですが、登録がなくても43(a)の不正競争防止条項による保護が可能です。連邦の主登録なく43(a)の保護を受けるには、トレードドレスが機能性を有するものではないとの挙証責任が原告側にあります。§43(a)(3) また、レストランの内装については、Two Pesoの最高裁判決から、本質的な顕著性があれば、二次的意義の証明は不要と判断され、Wal-Martの最高裁判決から、製品デザインに関するトレードドレスの侵害立証には、色彩のみのトレードドレスと同様に本質的な顕著性(inherent distinctiveness)はないので、二次的意義(secondary meaning or acquired distinctiveness)が必要とされています。裁判所で43(a)の保護を受ける要件も米国特許商標庁で連邦登録を受ける要件もほぼ同様となります。実際にトレードドレスの訴因で行けるか否かは、以下の争点を検討する必要があります。

機能性(Functionality)

2002年以前では、トレードドレスの機能性として2つの機能性があり、それはde facto functional features(登録可能性あり)とde jure functional features(登録できない)でしたが、現在はこの区別は特にはつけられていません。登録の審査の際に、機能性の有無には、Morton-Norwich Factorsと呼ばれる要因が分析されることになります。Morton-Norwich Factorsは、

  1. デザインの有用性を開示する期間満了の特許が存在する。(The existence of an expired utility patent disclosing utilitarian advantages of the design.)
  2. デザインの有用性を誇張する宣伝がある。(Advertising which touts the utilitarian advantages of the design.)
  3. 代替のデザインもある。(The availability of alternative designs.)
  4. 或るデザインがその商品を製造する比較的に簡単で安価な方法によるものか否か。(Whether a particular design results from a comparatively simple or cheap method of manufacturing the article.)

とされています。この4つのMorton-Norwich Factorsは、全てを吟味しなければならないというものではなく、例えば設計の利点を効果とする特許の存在は、それだけで機能性がありとする強い証拠と判断され、他の構成(alternative design)を探ることなく、商標として登録を拒絶するものと判断された例があります。

識別性(Distinctiveness)

Trade dressが登録できる場合或いは保護できる場合には、その対象は、本質的な識別性を有しているか、獲得した識別性を有しているかのどちらかとなりますが、本質的な識別性を有しているか否かについては、裁判例では、次のSeabrook factor(TMEP 1202.02(b)(ii))を使用する例が見られます。Seabrook factorは、

  1. whether the design is a “common” basic shape or design;
  2. whether the design is unique or unusual in a particular field;
  3. whether it is a mere refinement of a commonly-adopted and well-known form of ornamentation for a particular class of goods, viewed by the public as a dress or ornamentation for the goods;
  4. whether it is capable of creating a commercial impression distinct from the accompanying words.

となっています。もし連邦登録の審査の際、対象が製品のパッケージであり、Seabrook factorで本質的な識別性がないと判断された場合には、獲得した識別性(acquired distinctiveness)を有していることを示して主登録を目指すか、補助登録をするかの選択となります。

類似(Likelihood of Confusion)

侵害事件などで当事者対立構造の場合には、原告のトレードドレスの対象物と被告の対象物が類似しているか否かが問われることになります。この類似関係があるか否かはDu pont factorを用いて分析されます。Du pont factorは一般に7~13の要素を分析するように構成されています。

  1. The similarity or dissimilarity of the marks in their entireties as to appearance, sound, connotation and commercial impression.
  2. The similarity or dissimilarity and nature of the goods or services.
  3. The similarity or dissimilarity of established, likely-to-continue trade channels.
  4. The conditions under which and buyers to whom sales are made, that is, ‘impulse’ vs. careful, sophisticated purchasing.
  5. The fame of the prior mark (sales, advertising, length of use).
  6. The number and nature of similar marks in use on similar goods.
  7. The nature and extent of any actual confusion.
  8. The length of time during and conditions under which there has been concurrent use without evidence of actual confusion.
  9. The variety of goods on which a mark is or is not used (house mark, ‘family’ mark, product mark).
  10. The market interface between applicant and the owner of a prior mark.
  11. The extent to which applicant has a right to exclude others from use of its mark on its goods.
  12. The extent of potential confusion, i.e., whether de minimis or substantial.
  13. Any other established fact probative of the effect of use.

18.商標ライセンス (Trademark Licensing)

米国の商標実務では、日本よりも多くでライセンスや契約交渉の機会が発生します。1つは米国という国自体、自由を尊重する反面、訴訟や契約ということが頻繁に生じる傾向にあり、特に商標については類似群コードのような行政が関与する走行レーンの如き仕組みがなく、商標同士で競合すれば当事者間で解決をするのが一般的という傾向です。従いまして、ビジネスを続ける上で、商標などの知的財産関連に関して頻繁に交渉や契約の知識が必須となります。通常使用権の訳も”non-exclusive license”という言い方が一般的です。

contact
Licensing

A.米国特許商標庁での登録(Recording at USPTO)
米国では商標の通常使用権や専用使用権ついては、米国特許商標庁への登録は必須ではありませんが、米国特許商標庁に登録をすることも可能で、登録することによる利益(第3者対抗要件)もあります。また、商標のライセンス契約では、一般にその内容が秘密とされるものが多いので、開示してよい部分だけの簡易版を登録したり、本契約の存在を示すだけの登録をすることもできます。また、商標権は不動産や機械装置などと同様に担保財産の対象となり、当事者間で担保設定の契約に入ることで効力を発生させます。債権者が商標登録に担保設定する数は、統計によれば、20年前の8倍、10年前の2倍とその数が増加しています。このような担保設定の契約書にも、米国特許商標庁への登録は法的には必要な効力発生要件ではなく、裁判での有用な証拠として用いるために記録されます。特許権や特許出願に対する弁護士の担保権(attorney’s liens)を記録することはできないとされており、商標権についても同様と思われます。In re Refusal of Assignment Branch to Record Attorney’s Lien 契約書の登録の費用は、標章毎に費用が加算される仕組みとなっており、1つの契約書の最初の標章の登録が40ドル、同じ契約書のそれ以降の標章の登録が登録毎に25ドルです。

B.詐欺防止法(statue of frauds)
商標権などの知的財産権の契約では、一般的に契約締結後1年以内に履行を完了することができない契約の範疇に入るため、契約当事者が署名した書面を作成しなければならないとされています。1年の期間は契約が完了したときに開始します。

C.商標ライセンス契約の条項(Typical clauses of Trademark Licensing)
簡単に商標のライセンス契約については、一般的に次のような条項が挙げられます。

  • 当事者の確定条項(Identification of parties) 契約の当事者(e.g., made between ABC and XYZ)を記載しますが、日付、出来れば住所、そして以後の契約書内での名前も、John Dow Corporation (”John”)のように示します。
  • 書き出し部分(Recitals or Whereas Clause) この書き出し部分で簡単に契約の目的や意図を予備的に記載します。例、WHEREAS, ABC , desires to use the trademark ”$%&” or or in connection with the sales of its devices; NOW, THEREFORE, in consideration of mutual promises and covenants set forth herein, ..(”consideration(約因)”は契約が無効とならないために必要とされています。)WHEREASとかNOW,THEREFOREのような表現は絶対に必要という訳ではなく、この書き出し部分は正式には契約の一部もではないので、異なる表現でも有効です。
  • 譲与条項(Grant Clause) 言葉として”ABC license to XYZ the use of trademark $%&”が記載されます。 この条項でexclusiveとnon-exclusiveの区別をつけることもでき、サブライセンスやライセンスを認める地域を記載することもできます。”royalty-free”で使用料を無料とすることもあります。
  • 定義条項(Definition) もしライセンス交渉の間で生じたキーワードなどがあれば、定義付けすることで紛争時の無駄な争いを防止することもできます。定義されていない言葉は、紛争時に裁判所の解釈が与えられるところとなります。商標自体は別紙とすることもでき、登録番号で定義することもできます。いくつかの商標を使い分けるときの言葉の定義や、使用する商品についての定義も考えられます。
  • 使用料条項(Royalties) 契約書の中で譲与条項と共に使用料条項は最も重要な条項です。一般に、支払い方法としてLump sum payments(一時払い)とRoyalties(定期的支払い)があり、これらを組み合わせたものでも可能です。例えば販売数などの或る事象の発生で、支払う或いは額が変わるいう契約も可能です。この場合には、販売数の報告と、検査などの仕組みも必要です。定期払いの場合には、支払い期日や振り込み口座を記載することもできます。
  • 品質管理(Quality Control) 米国商標法上、商標権者は使用許諾された商標を使用する製品についての品質を管理するか管理できることを実際に述べる必要があります。もし、この品質管理条項がない場合には、裁判所は商標ライセンス契約は無効と見做し、商標権は放棄されたとものとなります。従って、商標ライセンス契約には、品質管理条項が必須であり、時にはライセンサーの検査や承認作業を伴うように構成されます。最低限としては、ライセンサーは製造設備を検査する権利があり、製造される製品の最低限の基準と、ライセンシーが契約に従わない場合の結果を条項とします。
  • 使用必須(Use Requirement) 使用主義の観点から、3年間使用していない商標は、反論可能な推定(rebuttable presumption)として権利放棄されたとみなされます。商標権者が米国内で全く使用しないような形態では、使用権者が使用を停止した場合には、権利を失うリスクが発生することになります。従って、使用権者が商標の使用を停止する際には、使用権者は使用の停止について通知する必要があるように条項を記載する必要があります。
  • 契約の期間と終了(Duration and Termination) 商標は更新を続ければ、権利を永続させることができ、使用権も期間を区切ることもでき、商標権の存続に合わせることもできます。米国商標実務では、更新や5-6年目などで権利を維持するための手続がありますので、その維持手続についても言及する必要も場合によってはあることになります。また、契約不履行などで契約解除になることは明記すべきです。
  • 保証及び免責条項(Warranties and Indemnification) 一般に、商標権者としては、商標を使用している、消費者が購入した商品についての欠陥や著作権違反などの事態が生じた場合には、その保証や損害賠償などの責任を負いたくはないという立場が一般的です。このような場合には、例えば”XYZ shall indemnify, defend, and hold harmless ABC from and against any demand, claim, damage, liability, loss, cost, or expense (including reasonable attorney’s fee)” のような免責の条項を入れます。米国で商品を流通させることは、warranties as to merchantability and finess for a particular purposeを要し、また、warranty against infringement of any other intellectual propertyも必要です。
  • 不可抗力条項(Force Majeure) 天変地異などの発生時には、当事者がそれぞれの義務を逃れるようにするための条項です。例えば、日本では地震、津波、台風、高波、浸水、火山噴火などがありそうですが、戦争、暴動、外国政府の介入なども外国との契約には入れたりします。
  • 最大限の努力(Best Effort) 裁判所はbest effortをreasonable effortと解する傾向にあり、それを避けるためには、詳細な義務について記載して、従わない場合は契約解除というような条項が望ましいとされます。

D.不争条項禁反言(ライセンシーエストッペル/licensee estoppel)
ライセンシーエストッペルという概念があり、特許分野では、特許の使用権者は、特許のライセンス条項に特許権の有効性を争ってはいけないという条項は無効とされています(See Lear, Inc. v. Adkins, 395 U.S. 653 (1969))が、同じ知的財産権でも商標のライセンスには、商標権の有効性を争ってはいけないとする条項は有効です。但し、争うなとされているのは、直接のライセンシーだけで、その提携者には及ばないとする判例もあります。Fair Isaac Corp. v. Experian Information Solutions, Inc.

19.米国商標訴訟 (US Trademark litigation)

A.米国連邦裁判所制度(Federal Court System)

United States Federal Court System
United States Federal Court System (出典 url=http://www.uscourts.gov/sites/default/files/u.s._federal_courts_circuit_map_1.pdf)
米国では、法律としてはそれぞれの州で独立した側面と、連邦として全米で統一する側面があり、州の裁判所のシステムもそれぞれの州が独自に定めることができ、典型的には州の最高裁判所や控訴裁判所があり、第1審としての州裁判所も各州数多く存在しています。この州独自の裁判所制度とは、別に連邦の裁判所制度もあり、次に説明する連邦問題や州相違裁判籍の場合に、提訴先となります。米国の連邦裁判所は、第1審に米国連邦地区裁判所(US District Courts)があり、州で1つの地区しかない州と複数の地区を有する州があり、米国連邦地区裁判所の管轄地区としては全部で89の地区に分かれます。大都市を含む地区は、事件数も多くなり、例えばニューヨーク州南地区連邦地方裁判所やイリノイ州北地区連邦地方裁判所などが有名です。米国特許商標庁の決定に不服の場合には、連邦巡回区控訴裁判所(United States Court of Appeals for the Federal Circuit)に提訴することができますが、州相違裁判籍の場合や外国人の場合には、ヴァージニア州東地区連邦地方裁判所(United States District Court for the Eastern District of Virginia)に不服を申し立てることもできます(15 USC §1071 sub-sec(b), 2011年の法改正でコロンビア特別区連邦地方裁判所からヴァージニア州東地区連邦地方裁判所に変更)。また、控訴審として米国控訴裁判所(United States Court of Appeals)が存在していますが、アメリカ全土が第1巡回区から第11巡回区まで及びD.C.巡回区の全12巡回区 (circuit) に分かれていていることから、米国控訴裁判所は各巡回区にそれぞれ設けられてて、例えばカルフォルニア州やハワイ州の米国連邦地区裁判所が扱った事件は、第9巡回控訴裁判所(サンフランシスコ)に控訴することになります。米国控訴裁判所は、もう1つ特許や著作権について専属管轄を有する連邦巡回控訴裁判所(CAFA: US Court of Appeals for the Federal circuit)がありますが、商標事件について控訴審となることが稀です。連邦控訴裁判所からは合衆国最高裁判所に上訴をすることができますが、合衆国最高裁判所は裁量で事件を扱いか否かを決めるシステム(certiorari:サーシオラリ)となっており、連邦控訴裁判所の決定に不服であれば必ず最高裁で争えるという訳ではなく、表現の自由(1st Amendment)などの憲法問題があれば最高裁で争う確率は増えることにはなります。米国内で裁判官は通常JUDGEと呼ばれますが、最高裁の判事は、任期がなく終身保証されていて、JUSTICEという特別な言い方をされます。

U.S. Supreme Court, Washington D.C.
U.S. Supreme Court, Washington D.C.

B.裁判籍(Jurisdiction/Venue)
訴訟主題管轄(Subject Matter Jurisdiction)
商標権を行使する場合には、裁判所に対して提訴することが行われますが、米国の商標の場合、連邦商標について連邦問題(Federal Question)として連邦地方裁判所が管轄する場合と州商標やコモンロー商標について州の裁判所が管轄する場合があり、互いに移送などが可能であるため、様々な場所での裁判の可能性があります。特許の場合には、州の特許という構造にはなっていないため、州の裁判所は特許について管轄することはあり得ないのですが、この点で商標とは異なっています。また、商標のライセンスに関する訴訟は、契約法の問題となるますので、州裁判所での取り扱いも可能ですが、日本企業と米国企業の紛争では、州籍相違裁判籍(diversity jurisdiction)となり、訴額が75000ドルを超えれば、連邦地裁裁判所が管轄となります。米国特許商標庁の審判部TTABの審決に対しては、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)に控訴することもできますが、バージニア東地区連邦裁判所などの米国連邦地区裁判所への提訴も可能です。米国連邦地区裁判所への提訴の場合、de novo review(初めからの審理)となり、新たな証拠を提出することもできます。
対人(人的)管轄(Personal Jurisdiction)
対人管轄は、憲法上の適正手続の保障(Due Process of Law)があり、勝手に本人の知らないところで判決を出されて財産を処分されたりすることも困ることになりますから、裁判所が或る当事者に対して拘束する力があるのかどうかということになります。州裁判所は州独自の管轄権についてにルールを有し、連邦地区裁判所もその裁判所が位置する州のルールに沿って対人の管轄権を有します。裁判所が有する対人管轄権については、一般管轄権(General jurisdiction)と特別管轄権(Special jurisdiction)とがありまして、一般管轄権としては、Consent(同意)、当事者の本籍地若しくは住所地、営業所(doing business)、通知(service)の時にその州で居ることが挙げられ、特別管轄権としてはそれぞれの州が定める所謂LONG-ARM Statueがあります。また、International Shoe事件からの最小限の接触基準(minimum contacts)なども憲法上検討されるTESTとされていますが、外国親会社を米国訴訟に巻き込むような判例は、Goodyear、Daimlerの各判例でかなり限定的に解釈されるようになってきています。最近の判例として、ウエブサイトが最小限の接触基準を満たすかについては、Zippo Test(Zippo Manufacturing Co. v. Zippo Dot Com, Inc., 952 F. Supp. 1119 (W.D. Pa. 1997)が知られるようになってきており、この判例によれば、websiteは3つのカテゴリーに分けられます。これはpassive website, interactive website, commercial websiteです。Passive websiteは情報を提供するだけのサイトで、それ自体が誹謗中傷などの不法行為とならない限り、最小限の接触基準を満たさないとされます。Interactive websiteはユーザーと情報を交換するサイトで、その活動により最小限の接触基準を満たす可能性があり、Commercial websiteははっきりとビジネスをしているサイトで、これは最小限の接触基準を満たします。なお、ドメインが商標を侵害とする訴訟については、どこの裁判所でも管轄できるとの立法(In rem provisions of the Anti-Cybersquatting Protection Act)もなされています。
裁判地(Venue)
米国で裁判をする場合に、訴訟主題管轄(Subject Matter Jurisdiction)と対人管轄(Personal Jurisdiction)が満たされている場合であって、べニュー(Venue)が適切かどうかも最初に考慮される問題です。例えば、商標権侵害事件が州籍相違事件である場合には、被告の住所地や営業場所の州に適切なVenue(28 U.S.C. § 1391)があると判断できますし、訴訟内容がトレードシークレットの盗用というような場合では、その盗用が発生した州のどこかの地区での訴訟となり得ます。また、アメリカに全く住所を有していない者若しくは企業については、いかなる地区でも適切なVenueとなります(28 U.S.C. § 1391(d))。

C.訴訟の経緯
訴状・答弁書段階(pleading stage)
米国の知的財産権訴訟では、他の訴訟と同様に、原告が訴状(complaint)を提出し、これに応答する形式で答弁書(answer)を被告が提出することで、訴訟が開始されます。この最初の段階をpleading stageと呼んでいて、訴状には当事者やnotice-pleadingと呼ばれる形式で訴因(cause of action)を簡潔に記載し、裁判籍(jurisdiction)、求める救済を記載するとされています。訴状が出された場合には、裁判所の書記官は召喚状を被告に向けて、通常はFirst Class mailで送られ、被告がacknowledgeすることで召喚が完了します。被告は20日以内に答弁書を出すとされており、また、答弁書には、原告の主張(claims)を否定する記載や、Affirmative Defenseと呼ばれる抗弁を述べることとされています。商標の侵害訴訟では、商標権の無効、ラッチス、禁反言などがあり、さらにFair UseとParodyが抗弁として挙げられることがあります。また、裁判籍がないと主張する場合には、特別出頭(special appearance)と呼ばれる、裁判籍についての問題だけのために裁判所に出頭することもあります。反訴(counterclaim)があれば、答弁書に記載します。この時点で真正な争点がなく、争点がないことを申し立てる側(moving party)が明らかにした場合には、略式判決(Summary Judgment)が出される場合もあります。
証拠開示手続段階(discovery stage)
証拠開示手続は、公判前に全ての関連する事実について開示させるための手続で、米国の訴訟で固有の制度ということができますが、訴訟が極めて高額になる理由にもなっています。一般に、証言録取(Deposition)、書類提出要求(Request for Production of Document)、自認要求(Request for Admission)、質問状(Interrogatory)といった手法により、裁判で利用する証拠を取り込みます。質問の内容としては、商標の侵害事件であれば、商標の選択に関わった者、組織の全容を明らかにことや、商標にかかる商品の販売の当事者、関与者、商標調査や鑑定の有無などになります。証言録取は、証人に対して多くの尋問をしてその記録をして、最終的に証言記録書(transcript)を作成します。多くの場合、口頭で弁護士からの質問を受け、それに答える形式で記録が取られますが、証人は宣誓していて、虚偽の証言は罰金や禁固刑となります。証言録取は書面でも行うことができます。質問状は、ディスカバリーの比較的に初期段階に相手方に向けて提出され、所定の期間内(30日以内若しくはservice of summonsから45日以内)に回答をします。質問状には一般的に書類提出要求が出されることが多く、この質問状の回答と書類提出要求に応じて出された書類を基礎に証言録取を進めることが多く行われます。要求書類としては、一般的な契約書やその他の書類、電子メール、電子的なデータベース、図。表。写真、録画などあらゆる情報を記録するものが対象となります。
公判段階(trial stage)
証拠開示手続の後、通常公判のスケジュール調整や争点整理をするために公判前会議(pretrial meeting)が開催され、公判(trial)へと進みます。公判前会議は、和解に向けての話し合いの場でもあります。一般に、裁判所は原告被告にそれぞれ次のような書類等を提出するように要求します。提出が要求される例としては、証人の一覧、証拠の一覧、事実と法律の全ての争点についての主張、陪審員裁判の際には陪審員に質問してもらいたい質問のリストと陪審説示(jury instruction)のリストなどが含まれます。知的財産権訴訟では、陪審員ありの公判もありますし、差し止め請求のみを求める場合には、陪審員はない公判となります。公判では、冒頭陳述(Opening Statement), 原告の主張(Plaintiff’case in Chief), 証人陳述(Witnesses), 被告の主張(Defendant’s case), 原告の反対主張(Plaintiff’s Rebuttal Case), 最終陳述(Closing Arguments), 陪審説示(Instructions to the Jury), 陪審員審議と評決(Jury Deliberation and Verdict), 公判後申立(Post-trial Motions)のような流れとなります。証人陳述の際には、主尋問(Examination in Chief)の後に被告弁護士からの反対尋問(Cross Examination)があり、その後に原告弁護士からの再尋問(Re-direct Examination)が行われます。証人の陳述に際しては、証人は一般証人と専門家証人に大別されていて、一般証人は自分の見たものや経験したことだけを述べることができ、専門家証人は意見も述べることができます。証拠の提示や尋問に関しては、連邦法の証拠規則があり、誘導尋問(leading question)や伝聞証拠(hearsay)を排除するような規則となっています。また、陪審員に対しては、例えば商標の類似について判断する場合には、その類似の判断基準を陪審員説示で聞いてもらい、評決するという流れになります。商標についての陪審員説示の例は、第9巡回区控訴裁判所のWebsiteの陪審員説示のページに挙げられています。
判決段階(judgment stage)
陪審員の評決若しくは裁判官の決定の後、判決があり、訴訟が終了します。判決は一般に金銭的救済と差し止め命令による救済に分かれます。判決に不服の当事者は、30日内に巡回控訴裁判所に控訴します。特許事件の場合は、控訴がCAFCに集められますが、第1審を連邦地区裁判所で争った場合には、その地区の控訴裁判所に控訴することになります。控訴の原因となる錯誤が法による場合には、控訴裁判所が自分で法律を判断することができますが、錯誤が事実の場合には、合理性のある陪審員であればこのようには判断しないという高い閾値が与えられますので、陪審員の評決を控訴審で覆すのは容易ではありません。

District of Columbia Court of Appeals
District of Columbia Court of Appeals,
430 E Street, NW, Washington, DC 20001

D.商標権侵害の法的救済(Remedies for trademark infringement)
差し止め命令による救済(Injunctive Releief)
典型的には商標権者への金銭的な損害の賠償と共に差し止めの救済が求められます。差し止めに命令による救済には、3つのパターンがあります。暫定的緊急差止命令(Temporary Restraining Order (TRO)), 仮差止命令(Preliminary Injunction (PJ)), (本案的)差止命令(Permanent Injunction (PJ))になります。暫定的緊急差止命令は商標権の侵害が来週の展示会で行われる場合に出されたりします。暫定的緊急差止命令と仮差止命令に対しては、原告は直近で回復できない損害(immediate and irreparable harm)についての証拠を示す必要性があります。(本案的)差止命令は将来の商標権侵害を防ぐための救済となります。
金銭的救済(Monetary Releief)
商標権侵害訴訟に勝訴した場合には、商標権者(原告)は被告の利益(defendant’s profits)、原告が被った損害(any damages sustained by the plaintiff)、及び訴訟の費用(costs of action)を賠償してもらう権利を得ます。
確認訴訟(Declaratory Judgment Action)
確認訴訟は、警告や交渉などの訴訟前段階で、相手が未だ準備ができていないようなときでも先に訴訟を行って有利に進める場合に利用されることがあります。例えば、商標権者が侵害訴訟をちらつかせてきた場合に、その侵害の根拠がないような場合には、先に侵害不存在の確認訴訟を提起することで有利な裁判地を選ぶこともできます。
刑事事件としての商標権行使(Criminal Trademark Enforcement)
PRO-IP Act of 2008 (Prioritizing Resources and Organization for Intellectual Property Act of 2008)は、主に偽ブランド品(counterfeit products)や著作権違反の商品(pirated goods)などを取り締まるための法律です。

20.米国における地理的表示(Geographical Indication)

米国で地理的表示(Geographical Indication)について、専用の地理的表示登録制度というものはなく、既存の証明標章(certification mark)若しくは団体標章(collective mark)としてし商標登録することができ、これら既存のシステムの中で地理的表示を保護するものとしています。証明標章としてが3つのタイプがあり、それは1)地域若しくは他の産地を示す、2)商品役務の材質、製法、品質、精度、その他の特徴を示す、又は3)組合若しくはその他の組織の構成員により行われた商品役務についての仕事や労務を示すものになります。米国の証明標章が通常の商標と異なるところは、商標権者が使用しないという点と証明標章が商業的な出所や他人の商品役務と区別するものではない点です。地域を示す言葉が証明標章に使用された場合には、その地域の全ての人のその言葉を使用する自由が保たれていることと、その標章を使用する全ての者に対して不利益となる使用や不適切な使用を防ぐことができるという点が重要で、通常、単なる個人は適任ではなく、その地域の政府若しくは権限を受けた組織等が該当します。もし登録前に出願人が証明標章の使用について監督する立場にないことを米国特許商標庁が知った場合には、職権で登録しないとされています。商標ROQUEFORT(米国登録571798号)はフランス・ロックフォール地区のチーズのGIとして登録されています。COGNACはフランスのブランディーのGIであるとの審決例(Institut National Des Appellations d’Origine v. Brown-Forman Corp. 47 U.S.P.Q.2d 1875 (1998))もあります。また、地理的表示は団体標章としても登録可能とされ、具体的には、団体商標(collective trademark), 団体役務商標(collective service mark), 若しくは団体会員標章(collective membership mark)です。団体商標・役務商標は、協会、同盟、組織、グループなどがその会員だけに使用させる商標で、非会員の商品役務と会員の商品役務を区別させるためのものです。団体会員標章は協会、同盟、組織、グループなどの会員であることを示す標章で、商品役務を区別させるものでありません。また、米国のコモンローでも地理的表示は保護されるものとされています。

cognac
Cognac as geographical indication

21.並行輸入 (parallel importation)

並行輸入(parallel importation)或いはグレイマーケット(gray market)とは、市場に輸入され、その市場における商標所有者の同意なしにそこで販売される商標が付された製品を指します。並行輸入品は、商標権者によって製造され、または商標権者からの使用のライセンスを受けているため、偽造とは認定されません。しかしながら、米国での権利を有する商標権者の意図とは別に、特定の地区のために製造され、若しくは包装されている可能性があり、安い価格での販売も行われる可能性があります。商標権者として米国国内への輸入を止める規則は、2つあり商標法の§ 32, 42, and 43(a) (the Lanham Act (15 U.S.C. §§ 1114(1)(a), 1124 and 1125(a)(1))と関税法§526 (§526 of the Tariff Act (19 U.S.C. § 1526))で、商標法では、”Lever rule”が適用になり、物理的かつ実質的に異なる(physically and materially different)場合には、輸入差し止めが米国税関・国境取締局(US Customs and Border Protection “CBP”)で可能となります。米国税関・国境取締局での差し止めにには、米国特許商標庁での連邦商標登録と、米国税関・国境取締局での記録が要件となり、外国企業でも差し止め可能です。一方、関税法での差し止めは、米国企業で、共通の所有や監督がない出所からの製品に対して差し止めが可能です。このようなLever Ruleの適用下でも、次のようなラベルを加えることで、並行輸入ができるとされています。すなわち、ラベルとして”This product is not a product
authorized by the United States trademark owner for importation and is physically and materially different from the authorized product.”の記載となります。

22.連邦反希釈化法(Federal Anti-Dilution Act)

ランハム法sec.43(c)は連邦のDilution防止条項とされ(1996年施行)、従来は州法ベースの訴訟であったものが、連邦法での訴訟が可能となっています。連邦希釈化防止法は、有名な商標をその希釈化から守るための法律で、希釈化のパターンとして次の2つを挙げています。1つは”Blurring”で、商標権者の商標と商標権者の商品やサービスとの関係が弱められ、自他商品の識別力が薄れるような事象です。普通名称化(Genericide)も一例です。もう1つは”Tarnishment”で、相手の使用が不愉快であるか、不適切であるか、劣悪な製品に関連して使用されることで評判を汚すような場合に該当します。このような行為に対して商標権者は基本的に差し止めによる救済が可能ですが、悪意ある場合に金銭的な救済や弁護士費用の請求等も可能です。

23. Lanham Act 43a(不正競争防止法)

日本の商標法は、登録商標が中心となっており、登録をするための手続き、登録商標の権利行使などが条文の内容となり、未登録の商標を保護する法令として、不正競争防止法が別の法令として定めらています。米国の場合には、商標法であるランハム法の一部(Lanham Act sec.43(a))が、不正競争防止法となっており、不正なマークの使用による弊害防止や未登録の商標に対する不正競争も商標法の範囲内となっています。

§ 43 (15 U.S.C. § 1125)(a)
Venue generally (28 U.S.C. § 1391)
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米国商標制度 vol.1