商標法上の公報

商標公報とは

商標は、工業所有権(産業財産権)四法の1つのカテゴリーですが、特許庁は出願された商標についての情報と登録された商標についての情報をそれぞれ公報という形で発行しています。この公報発行は、出願と登録について広く一般の人々に知らせることを目的としており、制度変革や情報技術の発達に応じて形を変えてきています。広義には、商標公報(Trademark Gazette)は商標分野で発行される公報を包括的に指しますが、狭義には、商標公報は商標掲載公報(商標法第18条第3項:Publication of Registered Trademark)を指し、設定の登録がなされた商標権を公示するための公報を言います。また、商標分野では、大きく分けて出願情報を公開する公報(公開商標公報、公開国際商標公報)と、権利情報を公示する公報(公告・登録・商標公報、国際商標公報)と、それ以外の公報があります。特に、公開情報と権利情報の各公報を取り違えないようにしましょう。

商標法上の公報

商標法上の公報の種類と法的な効果

種類 公報の内容
1 公開商標公報 (Publication of Unexamined Trademark Application or Trademark Application Publication) 公開商標公報は、商標登録出願があったときに発行される公報で、出願の内容を速やかに公表する目的で発行されます。防護標章登録出願があったときも同様に公開商標公報が発行されます。公開商標公報は出願されたことを公表しているだけですので、公開商標公報で発行されていることを以てその公開された商標が登録されていることにはならず、言い換えればまだ商標権とはなっていません。出願日から2から3週間程度で公開商標公報は発行されます。なお、商標の公開制度は1999年(H11)に設けられた制度のため、古い商標の公開公報について、公開制度開始以前に拒絶された商標については公開公報が発行されていません。このためJ-PlatPatでは古い商標の公報を検索することができなくなっています。
2 公開国際商標公報 (Publication of International Trademark Application) 公開国際商標公報は日本を指定とする国際商標登録出願(所謂、マドプロ、マドリッドプロトコルによる国際登録出願)が出願された場合に、その内容を公表するための公報です。マドプロの国際登録出願は原則出願日が登録日という取り扱いをしていますが、日本の商標制度に合わせてみると、出願されて日本の指定があるだけの段階ではまだ審査を経ていない訳ですので、日本の出願公開(商標法第12条の2)と合わせた取り扱いをします。国際登録番号が付与されているものが公表されますが、まだ権利化はされていません。日本以外の国の基礎番号と共に商品及び役務の訳も一緒に公表されます。公開国際商標公報は出願日から5カ月程度、指定通知日から2カ月程度で発行されます。
3 公告・登録・商標公報 (Publication of Registered Trademark) 商標公報は商標権の設定登録があったときに発行される商標掲載公報(狭義)です。登録査定の後、登録料を納付し、設定の登録が行われると商標公報が発行され、商標公報は設定登録から3乃至4週間程度で発行されます。この商標公報の内容が設定登録時の権利内容となります。但し、実務的には商標登録の権利内容は登録原簿により把握されます。大正11年から平成9年3月までは商標の公告公報(付与前異議申立制度と連携)として発行され、平成9年4月から商標公報(付与後異議申立制度と連携)となっています。現行法では、商標掲載公報に公表された商標登録に対し、その公報の発行日から2カ月以内に登録異議申立てを行なうことができます。出願しても拒絶査定となったり、取り下げらられた出願には、商標登録という権利にはなっていないことから、公告公報や商標公報がありません。
4 国際商標公報 (Publication of Registered International Trademark) 国際商標公報は日本を指定する国際商標登録出願について保護の拡張(国内登録)があったときに発行されます。国内の登録があった日を登録日として公表します。登録番号は国内の登録番号を付与することはなく、出願時の国際登録番号がそのまま使用されます。国内出願の登録査定通知に該当するのが保護認容声明(SA登録)で、その後で本国側での登録料の納付により権利化されます。存続期間は、国際商標登録出願については出願日から計算されますので、国内の登録日は存続期間の期間計算の基礎にはなりません。
5 商標書換登録公報 (Publication of Reclassification on Registered Trademark) 商標書換登録公報は書換登録があったときに発行されます。書換登録は、旧商品区分のもとで登録された商標権の指定商品を、国際分類に基づく現行の商品区分及び指定商品に書き換えたものを登録する作業で、商標・役務の区分を新しいものに合わせる作業になります。平成4年3月31日までにされた商標登録出願に適用される商品区分が旧区分ですので、現在は書換が必要な商標登録はほぼ存在しない状態となっています。
6 補正公報 (Publication of Amendment) 商標登録出願は、出願後直ぐに公開商標公報の発行準備となることから、補正の内容について、一緒に公開することができません。そのため、商標法第75条第2項第3号に基づき、補正公報を発行します。正式名称を「出願公開後における補正の掲載」といい、公開・国際商標公報に収録されます。
7 訂正公報 (Publication of Correction) 訂正公報は公開・国際商標公報、商標掲載公報の掲載内容に誤りがあり、それが当庁側の原因による場合には、掲載内容の誤りを訂正して発行する公報をいいます。なお、商標には訂正審判がありませんので、訂正審判とは関係がありません。
8 審決公報 (Decision on Appeal/Trial Gazette or Appeal Board Decision Gazette) 登録異議の申立ての確定決定、審判の確定審決、再審の確定決定又は確定審決を対象としています。
9 判決公報 (Judicial Decision Gazette) 判決公報は審決等に対する訴えの確定判決を対象とします。
10 判定公報 (Advisory Opinion Gazette) 判定対象の権利侵害等について、特許庁が厳正・中立な立場で判断した判定結果を公表し、権利範囲の判断等の参考情報として発行します。
11 特許庁公報 (JPO Publication) 出願公開後に拒絶査定、出願放棄・取下・却下等がなされた場合、商標・防護標章・国際商標の更新登録があったとき、公示送達、出願公開後における商標登録出願により生じた権利の承継、商標権の消滅、登録異議の申立て、審判請求、再審請求又はこれらの取下げ、商標法第4条第1項第17号の規定による指定(ぶどう酒又は蒸留酒の産地)をしたとき、またはその指定を取り下げたときの各場合にそれぞれ発行されます。商標目録も特許庁公報の1つで、正式には、登録商標目録、更新登録商標目録、更新登録防護標章目録と言う名称であり、その名称が併記されます。

商標法上の公報の例

商標公報4829411
商標登録第4829411号
(商標公報4829411)

公報発行の時期

  • 商標公報 : 毎週火曜日、設定登録から3から4週間程度
  • 公開・国際商標公報 : 毎週木曜日、出願日から2から3週間程度、公開国際商標公報は出願日から5カ月程度、指定通知日から2カ月程度
  • 審決公報 : 毎月最終金曜日
  • 特許庁公報 : 商標拒絶査定、出願放棄・取下・却下リスト:原則3月毎に1回発行、商標目録:原則月1回発行

公報発行媒体

商標分野では平成22年(2009年)1月からCD-ROMの発行媒体であったものをインターネットを利用し、商標公報・商標書換登録公報、公開商標公報・公開国際商標公報・国際商標公報を発行(記録形式:SGML形式)しています。インターネット利用による公報発行の1週間後に商標・商標書換登録公報情報CD-ROM、公開・国際商標公報情報CD-ROMを発行しています。
商標公報の媒体としては、紙→CD-ROM→インターネットの順で進化しており、紙は4331000号が最終番号、CD-ROMは5282845号が最終番号です。また、現在の付与後異議の前の付与前異議の制度(平成9年3月までの発行形態)では、紙媒体で商標公報(公告)大正11-000001 ~ 平成09-046393と商標公報(登録)紙 1 ~ 368898があります。公開商標公報の媒体としては、CD-ROM→インターネットの順で進化しており、CD-ROMは2000-000001 ~ 2009-091270、インターネットは2009-091271 ~となっています。

公報と特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の違い

公報は、特許法第193条第1項等の規定に基づき、発明等を公開・公表するために発行するものですが、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)は、既に発行された公報と同等の情報を蓄積し、検索機能を付加したデータベースの総称です。即ち、特許情報プラットフォームにおける産業財産権情報の検索サービスの提供と公報発行は同じインターネットにより行われますが同義ではありません。と特許庁のサイトでは説明されています。特許情報プラットフォームでは、公報と同等の情報が蓄積されておりますが、特許情報プラットフォームを通じた情報の提供が法的に「公報の発行」とはならないとされています。実はインターネット利用による公報発行は専用の公報発行サイト(https://www.publication.jpo.go.jp/index.action)があり、そこからダウンロードできます。この公報発行サイトでは公開公報、特許・実用新案公報、登録実用新案公報、意匠公報、商標公報、公開・国際商標公報、審決公報及び特許庁公報を発行(ダウンロード可能)しています。発行の時点などの法的な意味にこだわりがなければ、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の情報は公報内容と全く同じですので、特に区別しなくても良いかと思います。特許情報プラットフォームも何等かの原因でダウンすることもあり、それでも法的には公報発行できるとしたかったのではないかと思われます。なお、権利譲渡又は実施許諾の用意に関する公報掲載申込みサービスは、特許、実用新案、意匠だけのサービスで、商標について権利譲渡又は実施許諾の用意の掲載申し込みはできません。

出願公開

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