商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#61

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「エステロボ」

1.出願番号  商願2004-14913
2.商  標  「エステロボ」
3.商品区分  第11類:業務用の痩身用機械器具,他  第44類:美容,理容
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由  単に商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4801761号
出願商標・商標登録第4801761号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は、仏語の「esthetique」の略語であり、「全身美容法」の意味を有する「エステ」の文字と、仏語の「robot」の表音と認識され、「ロボット」の意味を有する「ロボ」の文字とを一連に「エステロボ」と普通に用いられる方法で書してなるものであり、その指定商品(指定役務)との関係では、全体として「全身美容法を行うロボット」の意味合いを認識させるものであるから、これを本願の指定商品(指定役務)中、例えば「全身美容法を行う業務用の痩身用ロボット、全身美容法を行うロボットを用いた美容」等、前記文字に係る商品(役務)に使用するときは、単に商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎないものと認められ、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品(前記役務)以外の商品(役務)に使用するときは、商品(役務)の品質(質)の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当すると認定された。
しかしながら、本出願人は、本願商標「エステロボ」は特定の具体的観念を生じさせない造語であって、本願指定商品に付して使用しても、決して商品(役務)の品質(質)を認識させるものではないと考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、片仮名文字で一連に「エステロボ」と書した態様からなるもので、且つ、指定商品及び指定役務を第11類の「業務用の痩身用機械器具,その他の美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。)」、及び第44類の「美容,理容」とするものであります。
 然るに、本願商標の「エステロボ」は、審査官殿もご指摘のように、成る程「エステティック」の略語である「エステ」の文字と、「ロボット」を意味する「ロボ」の文字とを組み合わせたものであり、その言葉の意味合いから、指定商品(役務)との関係において、全体として「全身美容法を行う業務用の痩身用ロボット、全身美容法を行うロボットを用いた美容」等を間接的に表示ないし暗示させることになるのかも知れません。
 しかしながら、そうだからと言って、本願商標「エステロボ」が直ちに商品・役務の品質表示用語と理解されるものではないと考えます。
 本願商標「エステロボ」は、あくまでも「エステティック」の前3文字「エステ」と「ロボット」の前2文字「ロボ」とを抽出して連結した特定の具体的観念を生じさせない造語商標であり、その文字から「全身美容法を行うロボット」等を間接的にイメージすることはあるとしても、そのことが直ちに商品(役務)の品質(質)等を普通に表示する言葉ということにはならないと考えます。
 本願商標は、あくまでも、特定の具体的観念を生じさせない造語商標であって、決して品質表示用語ではありません。抽象的にそのようなものを思い浮かべさせる、あるいは印象付けるということと、具体的にその商品(役務)の品質・内容等を表示するということとは、別物であると考えます。
(3) そしてまた、本願商標を構成する「エステロボ」の言葉は、例えば、業務用の痩身用機械器具等の取引に際して、美容業界などで普通に用いられている言葉ではありません。ましてや、「エステティックを行うロボット」を意味するとしても、それが具体的には一体如何なるロボットを意味するのか、判然とはしません。つまり、一体如何なるエステティックをどのような手段・方法により執り行うロボットであるのか、判然としません。これは、具体的にそのようなロボットが実在しない或いは実在しても普及していない現状において、当然のことかも知れませんが、「エステロボ」の言葉から、取引者・需要者が具体的な品質・内容等を思い浮かべることができないとしたら、それは品質表示用語であるとは到底言えないことを意味します。
 一般的に、エステとは、所定の養成講座或いは研修等を終了したエステティシャンと呼ばれる専門技術者によって施術される全身美容と認識されており、ロボットにより施術が行われる形態のものとは理解されていませんし、現実にロボットによるエステなど聞いたことがありません。
 したがって、上記のように本願商標の「エステロボ」が「全身美容法を行うロボット」を間接的に表示するとしても、それが具体的に如何なる商品・役務を表すものなのかは定かでない現状において、取引者・需要者をして、直ちに指定商品(役務)の品質(質)を表示するなどということは到底考えられません。
 このように、「エステロボ」は具体的には特定の観念を生じさせない造語であり、しかも「エステロボ」が普通に品質表示として用いられている事実がない以上、取引者・需用者が、例えば、業務用の痩身用機械器具に商標的態様で「エステロボ」と書してある文字を見て、これを品質表示であると認識するとは思えません。むしろ、一般的には、「エステロボ」という商標名の製品等であると認識するはずであります。そうだとすれば、本願商標「エステロボ」は充分に識別標識として機能し得る商標であります。
(4)ところで、本願商標に係る指定商品(役務)と同じ類似群09E25,42C01の商品(役務)分野において、本願商標を構成する「エステ」や「ロボ」の文字を含む過去の商標登録例を見ると、例えば、以下の様な登録商標が存在しています。

 A.登録2008119「ロボサッカー」第9類 業務用遊戯ロボット他 
 B.登録2656749「ミンチロボ」第9類 挽き肉加工機械器具他 
 C.登録3187551「エステバス」第42類 入浴施設の提供,美容他
 D.登録4091148「Mud Esthete/マッド エステ」第42類 美容
 E.登録4254809「波動エステ」第42類 美容,理容
 F.登録4258109「モバイルエステ」第11類 業務用の痩身機械器具他
 G.登録4622616「ESTHELASER/エステレーザー」第11類 業務用美容機械器具他
 H.登録4727404「エアーエステ/Air Esthetic」 第44類 美容,理容他

 もし仮に、審査官殿のような考え方に従うのであれば、Aの「ロボサッカー」は「サッカーをするロボット」程度の、Bの「ミンチロボ」は「挽き肉を加工するロボット」程度の、Cの「エステバス」は「全身美容を行う風呂を用いた美容」程度の、Dの「Mud Esthete/マッド エステ」は「泥を用いて行う全身美容」程度の意味合いを生ずるということになるのでしょう。また、Eの「波動エステ」は「波動を用いて行う全身美容」程度の、Fの「モバイルエステ」は「携帯用全身美容機械器具」程度の、Gの「ESTHELASER/エステレーザー」は「全身美容法を行うレーザー器具」程度の、Fの「エアーエステ/Air Esthetic」は「空気を用いて行う全身美容」程度のそれぞれ意味合いを生ずるということなると思われます。
 そして、その意味合いからすれば、これらを、その指定商品(役務)について使用するときは、審査官殿の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、単に該商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎないと認識することになって拒絶と言うことになるのでありましょうが、現実にはその様な認定はなされず、上記A~Hの全てが登録されております。
 このように、審査官殿のような見方をすれば、一見、商品(役務)の品質(質)表示的な商標と思われるものであっても、実際には、本願商品(役務)と同一又は類似の分野において、拒絶されることなく登録されている例は多数にのぼります。
 然るに、これら「ロボサッカー」「ミンチロボ」「エステバス」「エステレーザー」等の商標が登録できて、本願商標の「エステロボ」が登録できないとされるいわれはありません。本願商標は、あくまでも「エステ」と「ロボ」が結合して一体となった造語商標であり、一般的に品質内容表示として流通し機能しているわけでは有りませんので、十分に自他商品識別力を有し、登録適格なものと思料します。
(5) 以上のように、本願商標「エステロボ」が、ある一つの商品・役務を表す言葉としてエステ・美容等の業界において確立され流通・取引されているならばまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質表示だと言うことはできないものと思料します。このことは、「エステ」及び「ロボ」の文字を含む一見商品(役務)の品質(質)表示的な商標が多数登録されている事実からも言い得ることであります。
 よって、本願商標の「エステロボ」は、十分に自他商品識別の機能を発揮する商標であり、商標法第3条第1項第3号や第4条第1項第16号に該当するものではなく十分に登録適格性を有するものと思料します。

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