商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#74

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「TOARCO TORAJA/トアルコトラジャ」

1.出願番号  商願2005-61229
2.商  標  「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」
3.商品区分  第43類 飲食物の提供
4.適用条文 商標法第4条第1項第16号
5.拒絶理由  何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4947102号
出願商標・商標登録第4947102号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、“「TORAJA」及び「トラジャ」の文字を有してなるものですが、当該文字は、「インドネシア共和国、スラウェシ島の山岳地帯に存在する地域またはその山地に住む民族」を意味する語であり、当該地域においては、コーヒー豆の生産が有名であることからすれば、これを本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用するときは役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第16号に該当します。”と認定されております。しかしながら、本願商標は、「TORAJA/トラジャ」の文字を含むものであっても、該文字はコーヒー豆の産地として知名度はあるものの、本願の指定役務である「飲食物の提供」との関係では何ら知名度はなく、従って、「レストランや喫茶店の看板、料理メニュー、店舗宣伝ちらし」等に本願商標を用いたとしても、決して「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供サービス」であるとか、「インドネシア共和国スラウェシ島トラジャ地方で生産されたコーヒー専門店」であるなどと取引者・需要者に認識されるものではなく、他の飲食物を提供しても質の誤認を生じさせることはないと考えます。それ故、指定役務を「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」に補正すれば本願は登録できるであろうことは理解できるものの、前記審査殿の認定には承服できませんので、以下、指定役務を補正することなく、意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、英文字の「TOARCO TORAJA」と片仮名文字の「トアルコトラジャ」を上下二段に書してなるもので、第43類「飲食物の提供」を指定役務とするものであります。然るに、本願商標中の「TORAJA/トラジャ」の部分は、もともとは、当社が株式会社東食と共に「インドネシア共和国スラウェシ島トラジャ地方」に自社農園を手がけたこと、そして、そこで生産したコーヒーを日本で販売したことに端を発するものであります(約30年前)。即ち、当社は当時、“最高のコーヒーを追求する”旺盛な意気込みのもと、自らコーヒーの栽培を手がけることに辿りつき、インドネシアのスラウェシ島にトアルコトラジャ直営農場を開拓し、その経営に着手したものであります。そして、今でこそ「トラジャ地方」がコーヒー豆の産地として認知されてきているようでありますが、当社が手がけたころの約30年前は「トラジャ地方のコーヒー豆」など日本で知られる由もなく、そのため、当社は株式会社東食と共に「TORAJA/トラジャ」の商標について、第29類「コーヒー、紅茶、その他本類に属する商品」を指定商品として商標登録を行い(商標登録第1311224号、昭和52年11月14日登録、昭和34年法)、その普及に努めてきたわけであります。また、当社等は、平成の時代になって、本願商標と称呼同一の商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」の商標についても、同じく第29類「トラジャ産の茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定して商標登録を行っております(商標登録第2588965号、平成5年10月29日登録、昭和34年法)。このように、「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、もともと「コーヒー」についての当社等の登録商標であり、当社等が日本国内で販売を開始したのがきっかけとなって、また、その後の当社等の努力によって、これだけの知名度を得たものでありますが、一方で、ここ何年かのうちに、インドネシア共和国「トラジャ地方産のコーヒー」が他社からも盛んに宣伝され且つ販売されるに至り、現在においては「TORAJA COFFEE」「トラジャコーヒー」といえば、インドネシアのトラジャ地方産出のコーヒー(豆)を思い浮かべるようになってきているようであります。しかし、そのような産地としての認知度は、あくまでも「コーヒー」や「コーヒー豆」について、「TORAJA COFFEE」や「トラジャコーヒー」、あるいは端的に「トラジャ産」というような表示をした場合のことであって、単に「TORAJA/トラジャ」とか「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と表示した場合にまで、直ちにトラジャ産コーヒーと結びつくものではないと考えます。「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、まさに当社の登録商標の用い方であって、産地表示としての用い方ではありません。コーヒー等商品の包装に商標的使用態様で「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と記載した場合には、自他商品識別標識として機能する当社と東食の登録商標を表すものであります。「トラジャ地方」がコーヒーの産地として知名度を上げてきているとは言え、「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は「コーヒー」等についての当社等の登録商標である事実に変わりはありません。しかも、今般の本願商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」に係る指定対象は、これらコーヒー等の商品そのものについてではなく、「飲食物の提供」という役務(サービス)についてであります。「コーヒー」とか「コーヒー豆」などの商品であればまだしも、「レストラン」や「喫茶店」、「トラジャ料理」等の飲食物の提供サービスについて、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」が有名なわけではありません。「トラジャ地方」が良質のコーヒー豆の産地として知名度を上げていることは認めるにしても、飲食物の提供という役務を表示する通常の態様であるレストランや喫茶店の「看板」に、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」との店名の表示があるのを見て、「この店はトラジャ産コーヒーを主とする飲食物を提供店だ」とか、「トラジャ産コーヒー専門店だ」などと誰が思うでしょうか?素直に「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」という店舗名だと認識するのが普通だと思います。そうだとすれば、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は店舗の名前として、トラジャ産以外の飲食物を提供しても、これがトラジャ産のものであると質の誤認を生じさせるというようなことはないと思料します。
(3) この点に関し、審査官殿は、“本願商標を構成する「TORAJA」及び「トラジャ」の文字は、「インドネシア共和国、スラウェシ島の山岳地帯に存在する地域またはその山地に住む民族」を意味する語であり、当該地域においては、コーヒー豆の生産が有名であることからすれば、これを本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用するときは役務の質について誤認を生じさせるおそれがある”としております。しかし、先にも少し触れたように、コーヒー豆の産地として有名だからといって、それが直ちに喫茶店やレストランについて有名であるとは限りません。ましてや、「コーヒーを主とする飲食物の提供」という役務について、直接結びつくものではありません。「コーヒー」という商品についての「TORAJA/トラジャ」の使い方は、転々流通するコーヒーという商品の包装に直接付し、或いはコーヒーという商品を直接宣伝するために用いるものだと思いますが、「飲食物の提供」についての「TORAJA/トラジャ」ないし「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」の使い方は、「店舗看板、料理メニュー、店舗宣伝ちらし」等への「店舗名」(店舗の固有名詞)の表示であります。そこには個別商品である「コーヒー」のイメージは出てきません。つまり、本願はあくまでも「飲食物の提供」についての商標であるが故に、本願商標の「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」を使う場面というのは、地域に根ざした店の看板とか、一定の場所にある店舗の宣伝ちらしとか、電話帳に載せた店名のようなものであり、店舗のイメージとともに認識されるべき性質のものだと思います。商品のように地域と関係なく転々流通するものではありませんので、コーヒー等の商品のように、トラジャで産出されたもの等を、すぐにイメージできるような性質のものではありません。そして、一般的にも、レストランや喫茶店等に出向いた顧客は、例えば、行き着いたレストランや喫茶店の看板に「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と表示があった場合、これを見て、「トラジャ地方のコーヒーを専門に扱うレストランや喫茶店」だとか、「トラジャ民族が営むレストランや喫茶店」だとかと、認識するものでしょうか。認識することはまずないと思います。素直に、レストランや喫茶店の固有名詞である「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」という店名を意識するものと思います。そうだとすれば、この「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は店舗名として用いても、質の誤認など生じさせることはないと思料します。
(4) 以上の次第でありますので、本願商標は決して「トラジャ地方のコーヒーを扱うレストランや喫茶店」などいう認識は持たれず、それ以外の飲食物を提供しても、また、トラジャ地方と全く関係のない飲食物のみを提供しても、質の誤認を生じさせるようなことはないと思います。よって、本願商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用しても、役務の質について誤認を生じさせことはなく、商標法第4条第1項第16号には該当しないものと考えます。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

82 / 100
Loading