商品・役務の類否 類似群コード 4条1項11号の拒絶理由と類似群コードの関連性

商品・役務の類否 類似群

2つの商標が競合関係に有るか無いかの基準としては、その標章(マーク自体)の類否と、指定する商品・役務の類否の2つの視点があり、指定商品・指定役務が類似か否かは、審査段階よりもその後の拒絶査定不服審判や商標登録無効審判などの審判段階か或いは審決取消訴訟段階で争点となり得ます。これは一般的に審査段階では個々の指定商品・指定役務について具体的な判断をするよりも類似群コードで画一的な推定を行っており、標章が類似している場合に、類似群コードが重なっているかどうかで4条1項11号の拒絶理由を挙げるか否かの判断をしています。ところが、類似群コードは絶対的な基準ではなく、特に審判や審決取消訴訟においては、同じ類似群コードに属する2つの商品であっても非類似な商品(役務)であると判断されることもあり、その逆に類似群コードは異なっているものの類似する商品(役務)であると判断されることもあります。

商品・役務の類否 類似群

審決取消訴訟

同じ類似群ながら非類似と判断

平成15年 (行ケ) 456号 審決取消請求事件(「SUMCO事件」)
【争点】商品「半導体ウエハ」は商品「電子応用機械器具(医療器械器具に属するものを除く。)」に類似するか否か。
【背景】原告シリコンウエハ会社は、標章「SUMCO」について9類「半導体ウエハ」を指定して出願したが、指定商品を商品「電子応用機械器具(医療器械器具に属するものを除く。)」とする「サームコ」と「thermco」の欧文字の各先登録商標の存在を理由に、登録できないと判断された。
【裁判所の判断】商標法4条1項11号に規定する指定商品の類否は,取引の実情に照らし,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるか否かによって判断されるべきである。橘正宗事件(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決)。半導体ウエハの製造は専業化が進んでおり、半導体ウエハと集積回路等の電子応用機械器具とについて,同一又は類似の商標が使用されたときに,半導体ウエハの需要者であるデバイスメーカー等において,それらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはないというほかはない。と判断されています。

異なる類似群ながら類似と判断

平成27年(行ケ)第10134号 審決取消請求事件(「Dual Scan事件」)
【争点】商標法4条1項11号該当性(指定商品の類似性):指定商品を第9類「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」とする「デュアルスキャン/Dual Scan」の 商標は、指定商品を第10類「体脂肪測定器,体組成計」とする「Dual Scan」の引用商標と類似するか否か。
【背景】被告(タニタ(株))は第9類「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」を指定商品として、出願をして登録査定を受けた。これに対して原告は、第10類「体脂肪測定器,体組成計」の指定商品の登録商標を所有しており、無効審判請求をしたが、無効審判請求は成り立たないとして棄却され、この審決に不服として提訴したものである。
【裁判所の判断】本件商標と引用商標の指定商品に関連する体脂肪計,体組成計,体重計等の取引の実情に関し、医療用と家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計において性能や価格、販売方法などを分析した結果、本件査定時においては,医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は,誤認混同のおそれがある類似した商品に属するというべきである。「類似商品・役務審査基準」が,一般的な商品の類否の判断に当たって、一定の基準を付与しており,画一的な判断を容易にする機能を果たしていることは否定できないが、同基準自身が,類似群コードが異なる場合に非類似とみなさずに推定しているだけであり,推定が覆滅されることを許容している。医療用と非医療用とでは,その機能や性質,価格帯,生産・販売部門が完全には一致しないこと,これらが商品の類否判断において重要な考慮要素となることは,原告の指摘するとおりである。しかしながら,これらの指摘は,医療用として高額なものと家庭用でも最も安価なものに重点を置いて対比した結果にすぎない。

平成27年(行ケ)第10096号 審決取消請求事件(「ブロマガ」事件)
【争点】「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」と「電子計算機用プログラム」の類否
【背景】原告(FC2)は第42類 ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等を指定役務とする「ブロマガ/BlogMaga」の二段の文字商標(登録第5621414号商標)の商標権者であり、被告(ドワンゴ)は第9類電子計算機用プログラムを指定商品とする「ブロマガ/BlogMag」の先登録商標権者である。被告が原告の商標権に対して無効審判を請求し、登録無効の審決は出され、それを不服とした原告が提訴したものである。
【裁判所の判断】商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通するといえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンラインによるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異なるものとは認められない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

拒絶査定不服審判

同じ類似群ながら非類似と判断

不服2019-7187(審決確定日令和1年8月23日)商標「ULTIMA」類似群コード[24C01]
本願商標「ULTIMA」 指定商品 第28類「アーチェリー用具」
引用商標「ULTIMA Ti/ウルティマ Ti」 指定商品 第28類「ウッド型ゴルフクラブ,ウッド型ゴルフクラブヘッド,カーボンファイバー製ゴルフクラブ,ゴルフアイアン,ゴルフクラブ用のグリップ,ゴルフクラブ用のヘッドカバー,ゴルフクラブ用インサート,ゴルフクラブ用グリップテープ,ゴルフクラブ用シャフト,ゴルフクラブ用ヘッド,ゴルフティー,ゴルフバッグ(車付・車のないもの),ゴルフバッグ用ストラップ,ゴルフパター,ゴルフパター用カバー,ゴルフボール,ゴルフ手袋,ゴルフ用ディボット修復具」
【審決】アーチェリー用具は、主にアーチェリー用具を専門に扱う販売店を通じて、主としてアーチェリー競技者に販売されているのに対し、ゴルフ用具は、主にゴルフ用具を専門に扱う販売店又は一般のスポーツ用品店を通じて、ゴルフ競技者のみならず一般のゴルフ愛好者に広く販売されているものであり、さらに、それらの用具を取り扱う製造メーカーも異なるものである。

不服2019-2010(審決確定日令和1年11月5日)商標「ファインクリスタル」類似群コード[01A01]
本願商標「ファインクリスタル」第1類「自動車用コーティング剤」
引用商標 「ファインクリスタル/FINE CRYSTAL」 指定商品 第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤,染料,顔料,塗料,防錆グリース,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の貴金属はく及び粉」
【審決】本願の指定商品「自動車用コーティング剤」と引用商標の指定商品中の「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」とは、その用途が明らかに相違するものであって、生産、販売及び需要者の範囲が共通するとはいい難いものであり、ほかに、これらの商品が類似するというべき取引の実情を見いだすこともできない。

不服2017-17236(審決確定日平成30年7月30日)商標「FIREFLY」類似群コード[11C01]
本件商標「FIREFLY」 指定商品 「文字認識用のコンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。),商品のバーコードを読み取り商品を特定するための携帯電話・スマートフォン・タブレットコンピュータ用のコンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。),電話機を利用した情報検索用コンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。)」
引用商標「FIREFLY」 指定商品「Luminescence diodes.」(発光ダイオード)
【審決】ソフトウェアと発光ダイオードは,共に電子応用機械器具及びその部品の範ちゅうに属する商品であるとしても,その用途,販売部門,需要者,生産部門及び品質が明らかに異なるものであるから,両者に同一又は類似の商標を使用しても,それらが同一の営業主の製造,販売に係る商品と誤認混同されるおそれはないものと判断するのが相当である。

不服2017-18020(審決確定日 平成30年9月11日)商標「NINJA」類似群コード[20C01]
本願商標「NINJA」 指定商品 第20類「フィルム間に液晶材料を狭持させた積層フィルムを備えた屋内用ブラインド」
引用商標「Ninja」 第14類「貴金属製像,貴金属製造形品,貴金属製胸像,貴金属製小立像,銀製造形品」
【審決】本願商品と引用商品とは,その需要者を共通にする場合があるとしても,その生産部門,販売部門,原材料及び用途において相違するものである。そうすると,本願商品と引用商品に同一又は類似の商標が使用されたときに,これらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。

不服2018-10633(審決確定日平成31年2月13日) 商標「チャオ」類似群コード[19A01]
本願商標「チャオ/炒」 指定商品 第21類「鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん」
引用商標「チャオ/炒」漢字部分は小さく右上 指定商品 第11類「ガス湯沸かし器」
【審決】 販売部門、用途、需要者は両社間で異なっており、両者が完成品と部品との関係にないことも明らかである。よって本願商品「鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん」と,引用商標の指定商品中,「ガス湯沸かし器」とは,両者に同一又は類似の商標を使用しても,それらの商品が同一営業主の製造,販売に係る商品と誤認混同するおそれはなく,類似する商品ということはできない。

不服2014-8941(審決確定日平成27年4月7日)商標「LOGOS」類似群コード[20C01]
本願商標「LOGOS」 指定商品 第20類「日よけ」
引用商標「LOGOS」 指定商品 第16類「紙製テーブルクロス」
【審決】 本願商品は、ブラインドやカーテンなど窓まわりのインテリアを取り扱う業者が製造し、その販売方法は、大型の一般小売店やホームセンターなどで一般家庭向けに販売されている。他方。引用商品については、当審における職権調査によると、引用商品は、主にホテル、レストランなどの外食産業で使用される紙製のテーブルクロスであって、使い捨ての商品である。そして、引用商品は、パルプ・紙製造業者が製造し、その主たる販売方法は、飲食用紙製品総合メーカーから、ホテルやレストランなど外食産業に直接販売されている。以上を総合判断すれば、本願商品と引用商品は、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び品質において相違し、また、完成品と部品との関係にないことも明らかであるから、両者に同一又は類似の商標が使用された場合において、取引上商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。

日本における「類似群コード」について
商品・役務の類否と類似群コード
備考類似の商品・役務

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