公平な方法によるくじ

特許庁長官が行なう公平な方法によるくじ

商標法第8条第5項によれば、同日に2以上の出願人が競合する商標登録出願をした場合で、両者間に協議が成立しなかった場合には、特許庁長官が行なう公平な方法によるくじで先の出願人を定めるものとしております。

協議命令

先ず、同日で競合する出願があった場合には、協議命令書なる書面が届きます。その書面には協議相手が記され、結果を記載した書面を40日以内に提出して下さいとの命令が記載されています。協議不成立や期間内に協議結果についての書面の提出がない場合には、くじに移行します。例えば、自分の同日出願2件と他人の同日出願1件が競合する場合には、出願人の数は2ですが、くじ引きの権利保持者としてはこちらが2人分で相手が1人分です。事前協議でくじでも負けても使えるように協議できれば良いのですが、相手の思惑との兼ね合いがあり、相手の出願が社名のような場合には譲歩もないことになります。

くじ通知

くじの実施通知書は、くじで先願者を決めることを知らせる書面です。くじを実施する日時、くじを実施する場所、くじを実施する者、くじの方法について記載があり、場所は特許庁の商標課のフロアの会議室で、くじ引き器によることが知らされます。また、法人の代表者及び代理人以外の場合には委任状が必要となり、欠席した場合でも特許庁の方がピンチヒッターとして出ることが記載されています。また、念のためか事前に出欠について電話連絡もあります。

公平なくじの開始

くじを実施する会議室の前で受付けをした後、その指定した時間になるを待ちます。時間になると、先ず、商標課の担当の方が、2人の立会人を交えてくじを行なう旨を説明します。記録係りの方や、くじ引き器を操作する方も来ますが、全部特許庁の職員の方で、これらの者で異議がないかどうかを聞かれます。異議なしとしたところで、くじの方法の説明があります。

くじの方法

公平を期すため、3段階の“勝負”で決定します。まず、“じゃんけん“でサイコロを振る順番を決めます。くじは2者間のこともありますが、3者間以上のこともあり、1人が2件以上競合する出願をしている場合には、それぞれの出願が先の出願となり得ることから1人でもそれぞれの出願を代表することになります。次に“じゃんけん“で決められたサイコロを振る順に従って2つのサイコロを振ります。2つのサイコロを振って出た目の合計が多い方から順に、ガラポンと呼ばれるくじ引き器(写真参照)に入れる玉の色を決定します。玉の色は、“赤”“白”“青”“緑”“黄”から選ぶことができます。入れる玉の数は各人1個ずつです。選ばれた色の玉がくじ引き器に入れられ、がらがらと回転させた後に、反対方向に戻し、商店街の福引のように出た色を選んでいた方が当選者となります

公平なくじ くじ引き器・特許庁
くじ引き器・特許庁
Good luck!

複雑な競合関係にある商標法第8条第5項に係る「くじ」の実施方法 審査基準44.02

審査基準44.02
原則—複数件まとめて1回のくじにより相対的な順位を決定した上で、競合する出願間における一の商標登録出願人を順次決定します。協議不調の場合にくじが行われることになりますが、くじの実施通知書にすくみあいの生じるケースであることが記載され、競合する相手との関係で第一順位になる確率は同じとの理由から1回のくじにより相対的な順位が決定されます。

商標法 vol.1

商標法第8条第5項に規定するくじの取扱い 44.01
商標法第8条第5項に規定するくじの取扱い
商第8条第5項に規定するくじについては、以下の要領によって事務を処理する。
1.(1)くじを行う日時及び場所を決め、くじを行う日から2週間以前にくじ実施に関する通知書を同日出願に係る商標登録出願人に送付する。
(2)前項に掲げるくじの実施に関する事項及びくじが公開して実施されることについては、くじを行う日から2週間以前に庁内に掲示する。
2.(1)くじは、商標課長が実施する。ただし、事情により商標課長が実施できない場合には、上席審査長が代わって実施することができる。
(2)くじを実施する際には、立会人2人以上の出席を要する。
(3)くじの実施に係る商標登録出願人は立会人となることができる。ただし、くじの実施に係る商標登録出願人の全部又は一部が出席しないときであっても、くじの実施者は他の者を立会人に指名してくじを実施することを妨げない。
(4)くじは公開して実施しなければならない。
3.くじは、くじ引き器によって行う。
4.くじが終了し、一の商標登録出願人を決定できたときは、その結果を記載した調書1通を作成し、決定に係る商標登録出願人の出願書類に添付する。この場合において他の出願については調書の謄本を作成し、これをその出願書類に添付する。
5.この規程に掲げるもののほか、くじに関する事務は、審査業務部商標課において処理する。
[参考]商第8条第2項及び第5項に該当する旨の拒絶理由通知と商第8条第4項に基づく協議命令を同時に行うこととした経緯
(1)これまでの手続では、同日に互いに同一又は類似関係にある他人の商標出願が競合したときは、まず、競合する出願の出願人による協議を行うため特許庁長官名によって協議をすべき旨を命じ、協議の結果、定めた一の出願人に係る出願については登録査定をし、他の出願人に係る出願に対しては、商第8条第2項の拒絶理由を通知していた。しかし、協議が成立しなかったとき又は協議命令で指定した期間内に協議結果の届出がなかったときは、特許庁長官が行うくじを開催するための通知を行い、くじを実施し、そのくじによって定めた一の出願人に係る出願については登録査定をし、他の出願人に係る出願については商第8条第5項の拒絶理由を通知していた。
平成11年改正商標法施行令第2条では、拒絶理由の通知ができる期間を原則として出願から1年6月としていることから、これまでの手続によっては、その期間内に商第8条第2項又は第5項の拒絶理由の通知を行うことは困難である。そこで、これまでの手続を改め、同日出願において、他人の出願と競合したときは、
① まず、競合した出願に係る出願人による協議によって定めた一の出願人になっていないことを理由とする商第8条第2項の拒絶理由(同時に商第8条第4項に基づく協議命令を通知)
及び
② 協議によって定めた一の出願人になっていない場合又は協議命令で指定した期間内に協議の結果を届け出なかった場合に、特許庁長官が行うくじが実施され、それによって定めた一の出願人となっていないときには、商第8条第5項に該当し登録を受けることができない旨の拒絶理由を同時に通知することとする。なお、拒絶理由通知には、拒絶理由の内容及び拒絶するときの条件を明確に記載し、誤解を生じない文章にする必要がある。この場合において、商第8条第5項の拒絶理由通知については条件付きのものとなるが、この拒絶理由通知には拒絶する場合の条件が明確に記載されていること、またこの様な拒絶理由を通知するとしても出願人に不益になるものとも考えられない。
(2)商第8条第4項の規定に基づく協議命令に対し、その協議が成立した旨の文書が提出されたときは、その協議によって定められた一の出願人に係る出願について登録査定をし、その出願が登録された後、競合する他の出願人に係る出願は先に通知した商第8条第2項の拒絶理由をもって拒絶査定を行うこととする。また、協議不成立である旨の書面が提出された場合又は指定期間内に協議が成立した旨の書面の提出がされない場合は、従来と同様、特許庁長官が行うくじを実施するための手続きを行うこととする(協議が成立又は不成立である旨の書面は様式を参照)。
(3)国際商標登録出願についても、国内の商標登録出願と適用条文、拒絶理由を通知することができる期間が同じであることから、国内の商標登録出願と同様に、商第8条第2項及び第5項に該当する旨の拒絶理由通知と商第8条第4項に基づく協議命令を同時に行うこととする(拒絶理由と協議命令を内容とする暫定的拒絶の通報を行う。)。
*協議の対象者に在外者を含む場合には、協議指示書及び拒絶理由通知書の指定期間を「3ヶ月以内」と変更する。
(令和2.12 改訂)
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