商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#6

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「エステティック道」×引用商標:「Esthetique/エステチック」

1.出願番号  平成7年商標登録願第131653号(拒絶査定に対する審判事件)(審判9-5160)
2.商  標  「エステティック道」
3.商品区分  第3類:せっけん類,香料類,化粧品
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「エステティック道」は「Esthetique/エステチック」に類似する。

出願商標 引例商標 登録第585345号
拒絶理由通知 tm6-1 tm6-2

拒絶理由通知 拒絶査定不服審判における反論(請求の理由)

(1)手続の経緯
出願  平成7年12月21日
拒絶理由の通知 平成9年 1月24日(起案:平成8年12月20日)
意見書     平成9年 2月 7日
拒絶査定   平成9年 3月21日
同謄本送達    平成9年 4月11日

(2)拒絶査定の理由の要点
原査定の拒絶理由は、「本願は、平成8年12月20日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書において種々述べているが、本願標章の「エステティック道」という用語が確立しているものでもなく、また一連に称呼した場合は長いため、前半部で親しまれた「エステティック」の部分が注目されて、該文字部分のみを捉えて取引に供される場合もあるというを相当とし、該文字部分より「エステティック」の称呼、観念(美学)をも生じるものと認められる。してみれば、両商標は、第3音における「ティッ」と「チッ」の微差にすぎず、これとても仏語の「-tique」の音節[tik](ティック/チック)の表音表記法上の微差にすぎないことから、称呼上、かつ観念(美学)上も類似な、彼此相紛らわしい類似の商標と認められる。それ故、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認める。」というものである。

(3)本願商標が登録されるべき理由
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成や指定商品に関わる取引者・需要者層の実情等についても説明し、本願商標は拒絶理由には該当しないことを主張したにも拘わらず、かかる認定をされたことに対しては承服できず、従ってここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

(3-1)本願商標の構成
 本願商標は、願書に添付した商標見本からも明らかなように、カタカナ文字と漢字で一連に「エステティック道」と書した態様からなるものである。
 そして、本願商標は、全身美容を意味する「エステティック」の文字に、教えとか、専門の学問・技芸等を意味する「道」の文字を付けることにより、全体として、「全身美容の学問・技芸、全身美容の道」等の、エステティックを単なる現象ととらえるのではなく、学問や技芸的なものにまで高めた教え、即ち、美を探求する道やその技芸を観念させる造語である。

(3-2)引用商標の構成
 引用商標(商公昭40-9759号公報(登録第585345号))は、「Esthetique」の欧文字を上段に、「エステチック」のカタカナ文字を下段にそれぞれ配置して、「Esthetique/エステチック」と二段併記してなるものであり、単に全身美容を観念させる言葉である。

(3-3)審査官の認定に対する反論
審査官の認定は、要するに、
(イ)本願商標の「エステティック道」という用語は確立されたものではない。
(ロ)一連に称呼した場合は長いため、前半部で親しまれた「エステティック」の 部分が注目されて、該文字部分のみを捉えて取引に供される場合もある。
との前提に立って、「エステティック」の文字部分より「エステティック」の称呼、観念(美学)をも生じるとしたものである。
しかしながら、上記の結論はおかしい。
 まず第1に、成る程「エステティック道」という用語はまだ確立されたものではないとしても(これは本出願人が考えた造語であるので確立されたものでないことはむしろ当然のことである)、そのことを以て、本願商標から「道」の文字を省略し、単に「エステティック」の称呼、観念(美学)をも生じさせる、と認定するのは短絡的にすぎる。通常「○○道」と付けた場合には、「その教え」とか「その道」を即座に認識させるのであるから、「エステティック道」と記した場合、「道」の部分を省略して読むことはあり得ず、むしろ「道」を省略しないで、「エステティックドウ(道)」と称呼し観念するのが自然である。
 そして、第2に、全体の称呼がやや長いことは認めるにしても、「道」の文字を有することによって初めて、全体として一つの観念を暗示させ或いは表示させる一つの造語「エステティック道」、即ち、「エステティック」とは別の一つの意味合いを持った言葉、を観念させるものであることから、この「エステティック」の文字部分のみを捉えて観念し且つ称呼することはあり得ないと考える。従って、全体が冗長であるから親しまれた「エステティック」の部分が注目され、その部分のみを称呼観念する場合もあるとする審査官の見方は短絡的にすぎると言わざるを得ない。「エステティック道」はあくまで一体として一つの教えとか道とかを認識させる言葉(造語)であって、「道」の省略はあり得ない。むしろ仮に省略して称呼(略称)されるとしたら、観念同一の範囲にある「エステ道」といった程度であろう。
そして又、以上のことは、長い称呼の商標が多く機能している本願の商品分野における、取引者・需要者層をみれば、一層顕著である。

 即ち、
(a)石けんや化粧品等の指定商品との関係においては多少長めの称呼も市場に多数存在するが、取引者・需用者は一連に称呼するのが常であって省略して称呼するような実情になく、長い称呼であってもそのまま十分に機能していること、
(b)特に、化粧品などの需用者は、商標を注意深く観察し購買するのが常であって、  商標部分は一連一体に把握するのが普通であること、
等の理由から、本願商標はあくまで「エステティックドウ(道)」とのみ称呼され、観念されるものと思料する。

よって、本願商標の称呼・観念である「エステティックドウ(道)」と引用商標の称呼・観念である「エステチック」とを対比すると、「ドウ(道)」の称呼・観念の有無によって、両者は受ける印象及び語感語調が全く異なり明確に識別できる非類似の商標であると考える。

(4)むすび
 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観上は勿論、称呼及び観念上も紛れることのない非類似の商標である。
 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定には該当せず、登録適格なものと思料しますので、請求の趣旨のとおりのご審決を賜りますようお願い申し上げます。

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