商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#11

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「拒絶理由通知 意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト拒絶理由通知 意見書から転載しております。

本願商標「果実実感」×引用商標「ジッカン」

1.出願番号  平成7年商標登録願第102034号
2.商  標  「果実実感」
3.商品区分  第32類:清涼飲料、果実飲料 *後に「果汁入り清涼飲料,果肉入り清涼飲料,果実飲料」に補正。
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「果実実感」は「ジッカン」に類似する。

出願商標 引例商標 登録第208705号
拒絶理由通知 tm11-1 拒絶理由通知 tm11-2

拒絶理由通知 意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は登録第2028705号(商公昭62-55062号)の商標(以下、「引用商標」という)と類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録できないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

(2)本願商標は、願書に添付した商標見本から明らかなように、漢字で一連に「果実実感」と書した態様からなるものである。

 これに対し、引用商標は、女性の顔図形の下に「TSUMURA」と小さく書し、その下にやや大きくカタカナ文字で「ジッカン」と書した態様である。

 したがって、本願商標と引用商標とは、外観上類似しないことは明らかである。

(3)また、本願商標の「果実実感」は、「果実」の文字と「実感」の文字とを結合して一連一体に書したものであり、従って、その商標態様より、「果実を実感する」「果実を実際に食しているかのような生き生きとした感じを受ける」等の観念を生じさせるものである。

 つまり、本願商標中の「果実」の言葉は、指定商品第32類「清涼飲料、果実飲料」との関係にあって、その原材料名を表す言葉ではあったとしても、本願商標はその「果実」の言葉のみから成るものではなく、あくまで「実感」の言葉と一体となって、「果実実感」が全体として上記した特定の観念を生じさせるものであり、「実感」の部分が単独で識別され且つ観念されるようなことはない。本願商標は、あくまで「果実実感」で1つの商標であり、分断されて認識されるものではない。

 これに対し、引用商標は、単に津村の「ジッカン」であり、何のジッカンなのか(十干?、実感?)定かではなく、ましてや本願商標の前記観念を生じさせるものではない。仮に、「ジッカン」が「実感」を表すものと認識されたとしても、それはあくまでも「実物に接して起こる感じ」を認識させたにすぎず、上記したような本願の観念は生じない。

 よって、本願商標と引用両商標とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標である。

(4)そこで、次に称呼の点につき検討するに、本願商標「果実実感」は、全体が一連に書され、かつ上述の如く全体として一つの意味合いを生じさせるものであるから、常に一連に称呼するのが自然であり、「カジツジッカン」とのみ称呼されるものと思料する。

 この点、審査官殿は、本願商標中の「果実」の部分は、指定商品との関係にあって、要部を構成せず、従って「実感」のみに識別力を生じ、単に「ジッカン」の称呼も生じるとみて今般の拒絶理由通知を発したのではないかと推察するが、その認定はおかしい。

 例えば、この商品の分野において、前段部分はいかにも商品の原材料表示と見える商標であっても、他の言葉と結びつくことによって、分断できない一つの商標と認識され、登録ないし公告になったケースは以下の如く多く存在する。

a.N29 S63-013801K 2080858T びわ美人      ㈱壮健化学
b.N29 H02-011571K 2265272T りんご美人     十和田果汁生産組合
c.N29 H03-104539K 2439770T びじん@美人    タイガー魔法瓶㈱
d.K32 H08-057389K 果実美人      ネスコベンディング㈱
e.K32 H08-095245K ビタミン美人    明治乳業
f.K32 H08-095288K カルシウム美人   明治乳業

 これらの商標の存在は、全体として観察し、分断できない商標と認識しなかったならば説明がつかない。また、以下の商標も前段部分が要部でないとの判断がされていたならば併存することのない商標であるが、一体の商標と捉え、併存している。

g.N29 S61-014708K 1905895T 野菜牧場      カゴメ㈱
h.N29 S63-089239K 2160151T 果物牧場      カゴメ㈱
i.N29 H01-026625K 2198378T 果実牧場      カゴメ㈱
j.N29 H01-026626K 2198379T フル-ツ牧場    カゴメ㈱
k.K32 H07-045412K 3130546T 果汁牧場      森永乳業㈱ 

(*但し、hijは、前段が同様の意味なので、互いに連合である)。更に、以下も同様な例と思われる。

l.N29 H05-077664K 2655623T レモンク-ル 明治乳業㈱
m.K32 H07-077835K 3152736T ウメク-ル 大塚 正士
n.K32 H08-146324K   ★クール サッポロビール㈱

 このように、「原材料を表す言葉」+「美人」や「牧場」や「クール」などは、互いに併存しており、本願商標「果実実感」と引用商標「ジッカン」との関係も同様のケースと思われる。

 以上述べたように、本願商標は、i)前段と後段を分けることなくあくまで一連に書した態様であること、②全体としてまとまった特定の意味合いを観念させるものであり、分断して発音すべき理由がないこと、ii)「果実」(カジツ)の部分も「実感」(ジッカン)の部分も軽重の差なく称呼できること、iii)「果実」の部分は前段部分にあり、称呼上重要な位置を占め、この部分を省略して発音することはあり得ないと考えられること、⑤全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいこと、それ故、一連に称呼するのが自然であると考えられること、iv)果実飲料等の分野において、原材料を表す言葉と他の言葉との結合商標である場合には、あくまで全体として一つの商標と捉えて登録されている例は多く存在していること、等の理由から、本願商標はあくまで「カジツジッカン」とのみ称呼されるものと思料する。

 そこで、本願商標の称呼である「カジツジッカン」と引用商標の称呼である「ジッカン」とを対比すると、「カジツ」の称呼の有無によって、両者は音数及び語感語調が全く異なり明確に識別できると考えるので、両者は称呼上も相紛れることのない非類似の商標であると考える。

(5)以上のように、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、紛れることのない非類似の商標である。
 よって、本願商標は引用商標の存在如何にかかわらず、充分登録性を有するものと思料します。

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