商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#17

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイト拒絶理由通知 意見書から転載しております。

本願商標「おいしい健康」×引用商標「健康」ほか

1.出願番号  平成9年商標登録願第127987号
2.商  標  「おいしい健康」
3.商品区分  第29類:乳製品,食用油脂 第32類:清涼飲料,果実飲料,乳清飲料 *指定商品の補正付き。
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「おいしい健康」は「ケンコウ」「KENCO」「健康」に類似する。

出願商標
拒絶理由通知 tm17-1
引例商標 登録第0639252号 引例商標 登録第1573237号
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引例商標 登録第1847025号 引例商標 登録第2664906号
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拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、下記の商標と同一又は類似であって、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定された。
・第29類 引用NO.1,3,4,5
・第32類 引用NO.1,2,4,5

(引用商標一覧)
1 登録第0639252号(商公昭38-024934)旧31類 ケンコウ
2 登録第1573237号(商公昭57-032535)旧29類 KENCO
3 登録第1847025号(商公昭60-046912)旧32類 健康
4 登録第2664906号(商公平05-090232)旧33類 おいしい/健康
5 商願平09-028365号 健康

 しかしながら、本出願人は、本日付けで手続補正書を提出し、引用商標4に係る指定商品と同一又は類似する本願の指定商品を削除する補正、即ち、「第29類 乳製品,食用油脂/第32類 清涼飲料,果実飲料,乳清飲料」に改める補正を行ったので、この引用商標4との関係においては、拒絶の理由は解消したものと思料する。

そこで、以下、第29類の指定に係る本願商標については、引用商標1,3,5との関係で、また、第32類の指定に係る本願商標については、引用商標1,2,5との関係で、意見を申し述べるが、両商品区分ともほぼ同様の主張となるので、まとめて意見を申し述べる。

(2) まず、本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、平仮名と漢字で一連に「おいしい健康」と書した態様からなるものである。

 これに対し、引用商標1は、カタカナ文字で「ケンコウ」と書してなり、また、引用商標2は、欧文字で「KENCO」と書してなり、更に引用商標3及び5は、漢字で「健康」と書した態様からなるものである。

 したがって、本願商標と引用商標1,2,3,5とは、外観上類似しないことは明らかである。

(3) また、本願商標の「おいしい健康」は、平仮名の「おいしい」と漢字の「健康」とを結合して一連一体に書したものであり、その商標態様より、「美味しいということは健康なことだ」とか、「健康であれば美味しく戴ける」といったような観念をイメージさせるものである。

 つまり、本願商標中の「おいしい」の言葉は、商品の品質の優秀さをある意味で示唆する言葉ではあっても、本願商標はその「おいしい」の言葉のみから成るものではなく、あくまでも「健康」の言葉と一体となって、「おいしい健康」全体として上記した特定の観念を生じさせるものであり、「健康」の部分が単独で識別され且つ観念されるようなことはない。本願商標は、あくまで「おいしい健康」で1つの商標であり、分断されて認識されるものではない。

 これに対し、引用商標は、単に「ケンコウ」であったり、「KENCO」であったり、「健康」であったりするもので、前二者の「ケンコウ」「KENCO」を善意に解釈して「健康」を意味する言葉であると理解したとしても、これらは、あくまでも「身体に悪いところがなく健やかなさま」を認識させるだけの言葉であり、どのような健康なのか、健康であることがどうなのかは定かではない。ましてや、上記したような本願商標の観念は生じない。

 よって、本願商標と引用商標1,2,3,5とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標である。

(4) そこで、次に称呼の点につき検討するに、本願商標「おいしい健康」は、全体が一連に書され、かつ上述の如く全体として一つの意味合いを生じさせるものであるから、常に一連に称呼するのが自然であり、「オイシイケンコウ」とのみ称呼されるものと思料する。

 この点、審査官殿は、本願商標中の「おいしい」の部分は、指定商品との関係にあって、要部を構成せず、従って「健康」のみに識別力を認め、単に「ケンコウ」の称呼も生じるとみて今般の拒絶理由通知を発したのではないかと推察するが、そのような認定はおかしい。

過去の審査例をみても、例えば、

 (イ)旧29類「仲間」(登録第2262846号:日清製油株式会社:第1号証)が有りながら、「おいしい仲間」(登録第2547603号:株式会社ダイエー:第2号証)が登録されているし、

 (ロ)旧29類「ステーション」(登録第2684672号:株式会社ニチレイ:第3号証)が有りながら、「おいしいステーション」(登録第3321969号:和光堂株式会社:第4号証)が登録されている。

 これらは指定商品も抵触しているのであるから、「おいしい」の部分も一体となった商標、即ち「おいしい仲間」及び「おいしいステーション」ともに、分断することのできない一体の商標として理解しなければ説明が付かない。

このように、本願商標は、①前段と後段を分けることなくあくまで一連に書した態様であること、②全体としてまとまった特定の意味合いを観念させるものであり、分断して発音すべき理由がないこと、③「おいしい」(オイシイ)の部分も「健康」(ケンコウ)の部分も軽重の差なく称呼できること、④「おいしい」の部分は前段部分にあり、称呼上重要な位置を占め、この部分を省略して発音することはあり得ないと考えられること、⑤全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいこと、それ故、一連に称呼するのが自然であると考えられること、⑥果実飲料等の分野において、「おいしい」の言葉と他の「仲間」とか「ステーション」とかの言葉との結合商標である場合には、あくまで全体として一つの商標と捉えて登録されている例があること、等の理由から、本願商標はあくまで「オイシイケンコウ」とのみ称呼されるものと思料する。

 そこで、本願商標の称呼である「オイシイケンコウ」と引用商標の称呼である「ケンコウ」とを対比すると、「オイシイ」の称呼の有無によって、両者は音数及び語感語調が全く異なり明確に識別できるものと考えるので、両者は称呼上も相紛れることのない非類似の商標であると考える。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、紛れることのない非類似の商標である。

 よって、本願商標は補正によって限定した第29類であろうと第32類であろうと、各引用商標の存在如何にかかわらず、充分登録性を有するものと思料します。

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