gTLDと商標

gTLDと商標

gTLDとは

インターネットで使用されるトップレベルドメイン[TLD]、即ちインターネットドメイン名を構成する要素のうち、「.」(ピリオド、ドット)で区切られた最も右にある要素のうち、汎用のものはgTLD (generic top level domain)と呼ばれていまして、このgTLDはそれぞれICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)の下部組織であるIANA(Internet Assigned Numbers Authority)で管理されています。

かつては、.com、.net、 .orgなどがgTLDの代表でしたが、2001年には、.biz、 .name、 .infoなどが加わり、2000年と2005年にスポンサー付きトップレベルドメイン (sTLD:sponsored TLD)が稼働となり、国別コードトップレベルドメイン(ccTLD: country code top-level domain)も供用されています。またedu、.gov、.int、.milなども初期からのgTLDに分類されています。

新gTLDの稼働

このようにインターネットの歴史とともTLDも追加されてきていましたが、2012年では、新gTLDと呼ばれるドメイン名の申請が可能となり、大きく自由化されてきています。新gTLDでは、あらかじめ募集要項と要件が詳細に文書化されており、 それに沿った申請であれば登録を認めるというように、募集の方法が変更されています。そのため、TLDと商標が同じということも発生します。

新gLTDの状況(2016年3月28日時点)

企業名のTLDもDelegated Stringsとして順次ドメイン名として登録されてきています。ICANNのサイトでは、期間中に1,930件の応募があり、1300以上の新しいstringsが利用されるとあります。日本の企業名や自治体名では、インターブランドのランク上位20社はほぼありましたが、mufg, uniqlo, nintendo, subaru, mazda, daikin, shimanoなどは申請していないようです。mitsubishiはMITSUBISHI CORPとなっていますので、三菱商事が抜け駆け?もしくは幹事のようです。地方の名称もいくつか存在しており、OKINAWA, YOKOHAMA, KYOTO, NAGOYA, TOKYOなどは取っています。 申請費用は、185,000 USドルでしたので高額です。

gTLDと商標

商標権との関係

新gLTDは商標がドメインとして所有されてしまう可能性があるため、従来からあった統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP:Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)に加えて、新たに「Trademark Clearinghouse(TMCH)」、「Uniform Rapid Suspension System(URS)」、「Trademark Post-Delegation Dispute Resolution Procedure(PDDRP)」という仕組みで商標権の保護をすることにしています。

i) UDRP (Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy) UDRPの対象となるのは「ドメイン名の不正の目的による登録・使用」のみであり、正当な権利者間の紛争は従来の裁判等によります。申立人は、i)申立の対象となっているドメイン名が、申立人の有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること, ii)登録者が、そのドメイン名登録について権利または正当な理由がないこと, iii)登録者のドメイン名が悪意で登録かつ使用されていることの3項目を立証します。UDRPに基づく審理・裁定は、紛争処理機関によって指名されたパネリストで構成されるパネルにより行われます。UDRPにおける救済は、ドメイン名登録の移転および取消に限定されています。損害賠償請求は認められていません。

ii) TMCH (Trademark Clearinghouse)  事前に自らが持つ商標を、新gTLDのレジストリや新gTLDを取り扱うレジストラが共通して参照するデータベースに登録しておくことで、 他者による意図しないドメイン名登録から商標の保護を図ります。順次追加される新gTLDにおいて、 一般登録に先駆けて優先登録期間(Sunrise Registration Period)中に、商標に関連したドメイン名を登録する機会が与えられます。また 商標と一致する文字列が第2レベル以降のドメイン名として登録された場合の通知(Trademark Claims; TM Claims)を受け取ります。

iii) URS (Uniform Rapid Suspension) UDRPと同様、ドメイン名登録後の事後的対処をするための制度です。URSでは、申請受領後の事務的なチェックが済み次第、24時間以内にドメイン名の登録内容がロックされ、ドメイン名の移転やレジストラ変更等ができない状態になります。その後、裁定で申請者の主張が認められれば、当該ドメイン名の利用が差し止められ、そのドメイン名を持つWebサイトなどにアクセスしても、利用差し止め中である旨を表示する紛争処理機関のWebサイトにリダイレクトされるようになります。簡易な差し止めは可能ですが、ドメイン名の「移転」や「取り消し」はできないので、その場合はUDRPを使用します。、

iv) PDDRP (Trademark Post-Delegation Dispute Resolution Procedure) レジストリが組織的に悪意を持って商標権を侵害する行為を繰り返したような場合に、レジストリをいわば「訴える」ための裁判外紛争解決手続き(ADR)です。商標権者の権利を侵害するドメイン名を組織的に登録して、もしくは組織的なサイバースクワッティングを行い不正の意図を持って利益を得ようとしたり、不適切な目的でgTLDを利用しようとしたりするレジストリ運用者を、商標権者が訴えることができます。ICANNが当該レジストリへのドメイン名登録を一時停止するなどの措置を取ることが想定されています。

名前衝突問題

新gTLDで追加されたドメイン名と、これまでは「既存のgTLDに存在しないから問題無い」として組織内ネットワークなどで利用されていた名前が衝突してしまうという、「名前衝突(Name Collision)」という問題の発生が、差し迫った課題として注目されています。gTLDと商標の関係として、名前衝突の問題への根本的な対策は、TLDの重複を避けることです。

不正競争防止法との関係

不正競争防止法の平成13年改正によって、不正目的でのドメイン名の登録は、排除したり、損害賠償請求できるように改正されています。不正競争防止法2条1項12号は
”不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為”を違法な不正競争行為としており、差止請求や損害賠償請求が可能です。なお、弁理士は、不正競争防止法2条1項12号に定めるドメイン名紛争に関し、業として仲裁手続代理ができ、補佐人となることができます。

新GTLD(JPNIC)
紛争処理方針(UDRP / JP-DRP)と商標権

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