商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#78

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「AssamSales&DistributionModule」 ……3条1項3号、4条1項16号

1.出願番号  商願2004-25060(不服2005-1503)
2.商  標 「AssamSales&DistributionModule」
3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラムほか
4.適用条文商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「例えば『アッサム州で販売・流通しているモジュール』等の意味合いを理解させるにとどまる。」

拒絶理由通知
出願商標・商標登録第4955723号

拒絶査定不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

  【手続の経緯】
出     願 平成16年 3月17日
拒絶理由の通知 平成16年 9月 8日
同 発送日 平成16年 9月 9日
意  見  書 平成16年10月 5日
拒 絶 査 定 平成17年 1月 6日
 同 謄本送達 平成17年 1月12日
  【拒絶査定の要点】
 原査定は、“この商標登録出願は、平成16年9月8日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。追って、出願人は意見書において種々述べていますが、先の認定を覆すことはできません。なお、出願人は登録例を挙げて種々主張していますが、その事例は商標の具体的構成において本願商標とは事案を異にしますから、本願商標については前記認定を相当とするもので、その主張は採用することができません。”というものであり、具体的には、平成16年9月8日付(発送日:平成16年9月9日)の拒絶理由通知書に示すとおり、
“この商標登録出願に係る商標は、インド東部の州である「Assam」の文字と、「販売」等の意味を有する欧文字の複数形「Sales」の文字、「and」を意味する「&」の記号と、「流通」等の意味を有する「Distribution」の文字と、「独立して扱えるソフトウェアやハードウェアのまとまり」の意味を有する「Module」の文字を「Assam Sales & Distribution Module」と普通に用いられる方法で書してなるところ、「imidas 2004(発行所 株式会社集英社)」の「インドのソフトウエア産業」という項目や、2004.5.4付 共同通信の「(略)インドのソフトウエア輸出は六年前に比べ約六倍の百億ドル規模に急増。世界のソフト市場の一大中心地となった。(略)」の記事より、インドはコンピュータソフトウエアの一大中心地であることが窺えます。そうしますと、本願商標はこれらより、例えば「アッサム州で販売・流通しているモジュール」等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”というものであります。
  【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標は、単に商品の産地、販売地、品質を表示するものではなく、十分に自他商品識別力を発揮する商標であり、登録適格性を有する旨主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理頂きたく、審判を請求する次第であります。
(a)本願商標の構成
本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、英文字で一連に「Assam Sales & Distribution Module」と書した態様からなり、指定商品を第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
 審査官によれば、本願商標は、その態様より、例えば「アッサム州で販売・流通しているモジュール」等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表示するにすぎないとしております。しかしながら、商標が単に商品の産地、販売地、品質を表示すると言えるためには、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般的に認識されることを要すると思われるところ、本願商標の「Assam Sales&Distribution Module」は、需要者又は取引者によって、「アッサム州で販売・流通しているモジュール」と一般に認識されることはないため、商品の産地、販売地、品質を表示するものではないと考えます。
 即ち、本願商標中の「Assam」部分は、審査官の認定の如く、インド東部の地名であり、また、インドはコンピュータソフトウエア産業において近年成長を遂げている国であることは事実でありましょう。しかし一方で、インドのアッサム地方といえば、世界的に著名な紅茶葉の産地であり、このことこそが一般に広く知られた事実ではないかと思います。この「Assam/アッサム」はインド北東部の州ですが、ここは中国、ブータン、ミャンマー、バングラディシュに周りを囲まれた山岳地帯が大半であるようです。そして、工業はといえば、せいぜい農産物加工、精油であって、最近では原油の産出で知られる地域という程度の認識であります。したがって、インドが近年コンピュータソフトウエア産業で成長を遂げている国であったとしても、そのことが直ちに「アッサム州」と結びつくものではありません。「アッサム州」はあくまでも、紅茶葉の産地として世界的に著名な地域名であって、決してソフトウェアで有名というのではありません。そうだとすれば、一般に、「アッサム」州といえば、需要者又は取引者は、「広大な紅茶葉の農園が数々広がる農園地帯(或いは山岳地帯)」を連想するものと思われます。
 これに対して、「コンピュータソフトウエア等のIT産業が盛んな地帯」を思い浮かべるとき、一般に需要者又は取引者が連想するのは、IT産業が時代の最先端を行く産業である点に鑑みても、むしろ農園地帯や山岳地帯とは正反対の、ハイテク企業の集結するいわゆる「都市部」、或いは米国シリコンバレーに代表されるような「IT関連企業集積地域」であります。然るに、一般的に、需要者又は取引者が、紅茶の著名な産地である「アッサム」或いは「Assam」の文字から、「コンピュータソフトウエアを販売・流通している地域の名称」と認識することはないと考えます。インドがソフトウエア産業において、一定の地位を占めている事実がある程度広く知られているとしても、アッサム州は紅茶葉の産地としてあまりにも有名であり、両者の周知度の差たるや著しく、「Assam」の文字から需要者・取引者が連想するものは、「有名な紅茶葉の産地」ではあっても、「ソフトウエア(IT)産業が盛んな地域」ではないと考えます。
(b-2)
 そして、このことは、例えば、本出願人が、同じく第9類を指定商品として、以下に示す「Assam」の文字を含む商標を多数登録している事実からも伺い知ることが出来ます(以下のA~K参照)。
(A)登録4173443 AssamWhois
(B)登録4209005 AssamInternetApplets
(C)登録4393720 AssamWebBench
(D)登録4573808 AssamWebGuard
(E)登録4609731 AssamHelpDesk/アッサムヘルプデスク
(F)登録4655383 AssamanyWarp
(G)登録4749066 AssamPortalTemplate
(H)登録4750800 AssamReliability
(I)登録4756351 AssamCatalogServer
(J)登録4806601 AssamMesssagingToolkit
(K)登録4806484 AssamWarehouseModule
 即ち、審査官の見解のように、「Assam」の文字が本願指定商品の属する分野において産地・販売地と認識されるのであれば、直接に「販売」や「流通」を意味する「Sales」や「Disutribution」等の文字の有無に関わらず、「Assam」の文字を有するだけで、直ちに商品の産地表示と認識されることになるでしょう。例えば(B)の「Assam InternetApplets」であれば「アッサム州で生産・販売されているインターネットアプレット(ブラウザ上で動作する特殊なプログラム)」程度の、(D)の「Assam WebGuard」は「アッサム州で生産・販売されているインターネットの監視ソフト」程度の、(G)の「Assam PortalTemplate」は「アッサム州で生産・販売されているインターネットの入り口サイトのテンプレート」程度の意味合いを生じることになります。また、(I)の「Assam CatalogServer」は「アッサム州で生産・販売されているカタログを管理するサーバー」程度の、(J)の「AssamMessagingToolkit」は「アッサム州で生産・販売されている伝達道具一式ソフト」程度の、(K)の「AssamWarehouseModule」は「アッサム州で生産・販売されている登録情報検索プログラム」程度の意味合いを生じるということになるのでしょう。
そして、そのような意味合いからすれば、審査官のような考え方をとれば、例えば、これら(B)、(D)、(G)、(I)、(J)、(K)などは単に指定商品の産地・販売地・品質表示ということになり、或いは拒絶と言うことになるのでありましょうが、現実にはその様な認定はなされず、これらの商標全てが登録されております。これは、これらの商標中の「Assam」の部分が、第9類の指定商品との関係にあって、その産地・販売地等と認識されていないからに他なりません。本願商標も同様でありましょう。
(b-3)
 商標が単に商品の産地、販売地、品質を表示すると言えるためには、上述のように、商標中に単に地名が含まれていることのみでは足りず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることを要すると考えます。たとえ商標中に地名が含まれている場合であっても、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され、販売されていると認識されない場合には、当該商標は単にその商品の産地・販売地等を表示するものとは言えないと考えます。このことは、御庁の電子図書館において、指定商品の区分を問わず、地名を含む登録商標(他に要部となるような構成要素がない場合も含む)が多数存在することによっても裏付けられます。然るに、本願商標についても、上記(A)~(K)の登録商標ないし登録査定商標と同様に、商標中の紅茶で有名な地名表示部分である「Assam」部分をもって、ソフトウエア等の商品の産地等表示と理解されるようなことはないと考えます。つまり、世界的に著名な紅茶の産地であるアッサム州においてコンピュータソフトウエアが生産・販売・流通していると一般に認識されるようなことはないと考えます。
(b-4)
 本願商標は、本出願人が過去に取得した、上記(A)~(K)の登録商標である「Assam」シリーズの一貫として出願した商標であり、同じ商品を指定し、使用するものである以上、取引者・需要者を同じくするはずであります。その様な取引状況の中にあって、本願商標だけが格別に「アッサム州で販売・流通しているモジュール」と認識され、今までの「Assamシリーズ」とは別のものであるなどと、取引者・需要者が認識するはずはありません。同じ出願人が、同じ「Assam○○○」の商標を用いていて、何か今までの「Assamシリーズ」とは別の意味を持つ商標だなどと、誰が認識するでありましょうか。今までの上記(A)~(K)の「Assam」シリーズと同一のコンセプトに基づく仲間の商標と認識するのが自然でありましょう。本願商標は、上記(A)~(K)の登録商標と同様、指定商品との関係にあって、あくまでも全体として具体的な特定の観念を生じさることのない一つの造語商標であると考えます。これら(A)~(K)の商標が登録できて、本願商標が登録できないとされる謂われは全くありません。同様に登録されて然るべきであります。
  【むすび】
 以上の通りでありますので、本願商標は、商品の産地、販売地、品質を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号にも、同第4条第1項第16号にも該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである、との審決を求める次第であります。
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(参考)ケース78の「審決」
不服2005- 1503
  商願2004- 25060拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。
 理 由
  1.本願商標
   本願商標は、「Assam Sales & Distribution Module」の文字を普通に用いられる方法で書してなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成16年3月17日に登録出願されたものである。
  2.原査定の拒絶の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、インド東部の州である『Assam』の文字と、『販売』等の意味を有する欧文字の複数形『Sales』の文字、『and』を意味する『&』の記号と、『流通』等の意味を有する『Distribution』の文字と、『独立して扱えるソフトウェアやハードウェアのまとまり』の意味を有する『Module』の文字を『Assam Sales & Distribution Module』と普通に用いられる方法で書してなるところ、『imidas 2004(発行所 株式会社集英社)』の『インドのソフトウエア産業』という項目や、2004.5.4付 共同通信の『(略)インドのソフトウエア輸出は六年前に比べ約六倍の百億ドル規模に急増。世界のソフト市場の一大中心地となった。(略)』の記事より、インドはコンピュータソフトウエアの一大中心地であることが窺える。そうすると、本願商標はこれらより、例えば『アッサム州で販売・流通しているモジュール』等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
  3.当審の判断
 本願商標は、前記のとおり、「Assam Sales & Distribution Module」の文字よりなるところ、その構成中「Assam」の文字(語)は、紅茶の産地として知られていると認められる。そして、本願商標を構成する文字が、原審で示したそれぞれの意味を有するものとしても、本願商標の全体の文字から原審説示の意味合いが直ちに理解されるとは認め難いところである。
   そして、本願の指定商品において、「Assam Sales & Distribution Module」の文字が、その商品の販売地、品質を具体的に表示するものとして一般に理解され、或いは、取引者・需要者間において、取引上普通に使用されている事実も認められないところである。そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、取引者・需要者は、全体として特定の品質等の意味合いを看取し得ないものと認識し把握するとみるのが相当であって、自他商品の識別力を有しないものということはできない。
  また、本願商標は、これをその指定商品中のいずれの商品に使用したとしても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるということもできない。したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものとはいえず取消しを免れない。
   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
   よって、結論のとおり審決する。
        平成18年 5月 8日
                 審判長  特許庁審判官 小林薫
                      特許庁審判官 寺光幸子
                      特許庁審判官 長柄豊
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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#76

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「NNAKANO」×引用商標「nNakano」

1.出願番号  商願2005-81773
2.商  標 「NNAKANO」×「nNakano」
3.商品区分  第20類ショーケース及びその他の陳列棚…ほか
4.適用条文商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する(「NAKANO」「Nakano」の文字を共通にする)

拒絶理由通知 商標登録第4951412号
出願商標・商標登録第4951412号
 
商標登録第1371846号
引用商標1・商標登録第1371846号及び引例商標2・商標登録第1558535号
商標登録第2032637号
引用商標3・商標登録第2032637号
商標登録第4757967号
引用商標4・商標登録第4757967号
 

拒絶理由通知 意見書における反論

【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は
 1.登録第1371846号(商公昭53-003014)の商標(引用商標1)、
 2.登録第1558535号(商公昭57-015291)の商標(引用商標2)、
 3.登録第2032637号(商公昭62-064815)の商標(引用商標3)及び
 4.登録第4757967号(商願2003-041814)の商標(引用商標4)と
同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することはできないと認定された。
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると思料しますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、「Nを図案化した中に機械部品と覚しき図柄を組み込んだ図形部分」とその右側に配した「Nakanoの欧文字部分」とからなるものでありますが、引用商標1~4はいずれも「手書き風に大書したnらしき欧文字」とその下に配した「NAKANOの白抜き欧文字」とからなる商標を含んでなるものであります。然るに、審査官殿は、本願商標と引用各商標とは、「Nakano」「NAKANO」の文字及び「ナカノ」の称呼を共通にする商標であるから、互いに類似すると認定し、今般の拒絶理由通知を発したのだと推察いたしますが、この「Nakano/NAKANO」の部分は、日本国内に数多く存在する「ありふれた氏」である「中野」を単に欧文字表記したものであり、それ自体、自他商品識別力を発揮する言葉ではないと考えます。つまり、「NAKANO」「Nakano」の部分からたとえ「ナカノ」の称呼が生じたとしても(称呼自体は識別力のない部分からも生じ得る)、この部分は商標の要部ではなく、自他商品識別機能を発揮しない部分でありますので、この部分の称呼を商取引に際して識別のために用いることはありません。したがって、識別力を生じないこの部分を捉えて、類否判断の基礎とした今般の判断は、妥当性を欠くものと思料いたします。類否判断の対象とならない部分「Nakano/NAKANO」を、類否判断の目安とすることはできません。審査官殿の認定は、誤った商標の要部認定に基づくものであり、到底受け入れることはできません。繰り返しますが、商標の要部でない言葉をとらえ、その部分を抽出して称呼するという手法は、商標の要部認定を誤ったもので到底受け入れることはできません。そして、本願商標と引用商標1~4とは、この要部となり得ない「Nakano/NAKANO」の文字部分を除いては、互いに特異な外観を有しますし、看者の受ける印象も大きく異なるものと思いますので、両者は決して類似するものではありません。
(3) そして、このことは、以下の事実からも明らかであります。即ち、例えば、中野製薬株式会社所有の今般の引用商標2(登録第1558535号)は、昭和52年10月6日に出願、昭和57年12月24日に商標登録されたものでありますが、実は本出願人は、この引用商標2の出願よりも10年近くも前の昭和43年12月26日に、既に現在の本願商標とほぼ同一の商標を出願し(商願昭43-92857)、商標登録第933999号(昭和46年10月26日登録:第1号証)としてに商標登録を受けております。つまり、本願商標とほぼ同じ商標について、本出願人は既に37年も前に商標登録を受けておりますが、その存在があるにも拘わらず、その後願に係り且つ指定商品もほぼ同一の引用商標2が登録を受けているわけであります。これは本出願人の前記37年前の登録商標と今般の引用商標2とは、互いに類似しないと判断されているからこそ併存されたものであり、これがもし今般の審査官殿のような判断をし、互いに類似の関係にあるとされた場合には、引用商標2の存在そのものが怪しいということになります。しかし、現実には本願商標とほぼ同一の商標(第933999号)と引用商標2(登録第1558535号)とは、23年以上も併存しているわけであり、これは両者が類似しないことの何よりの証左であります。
(4) 以上の次第でありますので、本願商標は、引用商標1~4と紛れることのない非類似の商標であり、十分登録適格性を有するものと確信いたします。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#77

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「初摘みコーヒー/TOARCO TORAJA/FIRST CROP × 引用商標「植物の図形+FIRST CROP」30類

1.出願番号  商願2003-107347(拒絶査定に対する審判事件)(不服2005-3975)
2.商  標 「初摘みコーヒー/TOARCO TORAJA/FIRSTCROP」
3.商品区分  第30類:トラジャ産のコーヒー
4.適用条文商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  ファーストクロップの称呼を共通にする類似の商標である。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4955984号
出願商標・商標登録第4955984号
引例商標1・商標登録第4199999号
引例商標1・商標登録第4199999号
引用商標2・商標登録第4207716号
引用商標2・商標登録第4207716号

審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

【手続の経緯】
出     願 平成15年12月 3日
拒絶理由の通知 平成16年 6月18日
同 発送日 平成16年 6月21日
出願人名義変更届平成16年 7月27日
(東食と共願)
意  見  書 平成16年 7月29日
拒 絶 査 定 平成17年 2月 2日
同 謄本送達 平成17年 2月 7日

【拒絶査定の要点】
 原査定は、“この商標登録出願は、平成16年6月18日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書を提出して種々述べていますが、本願商標は「初摘みコーヒー」、図形を挟んでなる「TOARCO TORAJA」及び「FIRSTCROP」の文字よりなるものですが、これよりはその商標全体より判断して、その構成中にある「FIRSTCROP」の文字より「ファーストクロップ」の称呼をも生じるものと判断するのが相当と認められます。他方、引用に係る商標登録第4199999号商標及び同第4207716号商標からは「ファーストクロップ」の称呼が生ずるものと認められます。そうとすると、本願商標と各引用商標は称呼上類似の商標と判断するのが相当であり、本願商標の指定商品中には各引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が含まれているものですから、先の認定を覆すことはできません。”というものであります。
【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標構成中の「FIRSTCROP」は「その年の最初に収穫したトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」を表すためのもので、いわば「初摘み」(即ち、その年の最初に収穫したコーヒー豆)を意味する文字であり、この「FIRSTCROP」に識別標識としての機能はない旨述べたにも拘わらず、かかる認定をされたことに対しては、納得できないところがあり、ここに再度ご審理頂きたく、審判を請求する次第であります。
(a)本願商標の構成
本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、大きく横書きした「初摘みコーヒー」の文字を最上段に配置し、その下に「TOARCOTORAJA(+家の図形)」を横書きし、更にその下に「FIRSTCROP」と横書きして、全体を三段に構成したもので、第30類「トラジャ産のコーヒー」を指定商品とするものであります。
(b)引用商標の構成
これに対し、今般の拒絶査定における引用商標は、以下の2件であります。
 1)商標登録第4199999号商標(第1引用例)
この第1引用例の商標は、「植物の図形」と「FIRSTCROP」の欧文字から構成され、第30類「コーヒー及びココア,茶」を指定商品とするものであります。
 2)商標登録第4207716号商標(第2引用商標)
この第2引用例の商標は、「FIRSTCROP」の欧文字から構成され、同じく第30類「コーヒー及びココア,茶」を指定商品とするものであります。
(c)審査官の認定に対する反論
(c-1) 審査官の認定によれば、まず、本願商標は「初摘みコーヒー」、図形を挟んでなる「TOARCO TORAJA」及び「FIRSTCROP」の文字よりなるものであるが、これよりはその商標全体より判断して、その構成中にある「FIRSTCROP」の文字より「ファーストクロップ」の称呼をも生じるとしております。しかしながら、本願商標から、「ファーストクロップ」の称呼が生じることはないと思料します。本願商標の「FIRSTCROP」の文字は、「その年の最初に収穫したトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」を表すためのもので、いわば「初摘み」(即ち、その年の最初に収穫したコーヒー豆)を表す品質表示的な英文字表記だからです。つまり、本願商標は「初摘みのトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」であることをイメージし、それを強調した商標であって、「FIRSTCROP」はまさにこの「初摘み」という品質・原材料を普通に英語表記したものであります。それ故、ここに識別標識としての機能はありません(何ら識別力は生じません)。この「FIRSTCROP」は、単に「今年最初の収穫に係るコーヒー豆を用いたコーヒー」という品質を認識させるだけのものであります。そして、自他商品識別機能を有する本願商標の要部は、大書した「初摘みコーヒー」と言う奇抜な表記の仕方と共に「TOARCOTORAJA+家の図形」の部分(特に、この「TOARCO」と「家の図形」部分)にこそ存在するものと思料します。つまり、本願商標「初摘みコーヒー/TOARCOTORAJA(+家の図形)/FIRSTCROP」中の、少なくとも「FIRSTCROP」の文字部分は「今年最初の収穫に係るコーヒー豆」を表すにすぎない品質・原材料表示であって識別力は生じませんので、本願商標構成中の「FIRSTCROP」の文字部分より、「ファーストクロップ」の称呼が生じることはありません。識別力のない部分のみを捉えて称呼し取引することはあり得ないからです。この意味で、本願商標より「ファーストクロップ」の称呼が生じるとした審査官の判断は誤りであります。
(c-2) 次に、審査官は、2つの引用商標に関して、「FIRSTCROP」の文字部分より「ファーストクロップ」の称呼が生ずるとしております。しかしながら、前述したように、「FIRSTCROP」の文字は、単なる商品の品質・原材料表示にすぎないと考えますので、この部分から単独の「ファーストクロップ」の称呼は生じないものと思料します。然るに、第2引用例の欧文字のみからなる「FIRSTCROP」は、誤って登録されたものと思料しますし、また、第1引用例は、植物の図形部分があるからこそ識別力が認められ登録されたものと思料します。
 このように、両引用例に共通する「FIRSTCROP」の文字は、コーヒーなどの指定商品との関係にあって単に品質を表示するに過ぎない用語でありますので、商品識別のために、その「FIRSTCROP」の部分のみを捉えて称呼し取引することは無いものと思料します。識別力のない部分を称呼して取引しても、何の商品か把握できず、互いに識別できないからであります。それ故、「FIRSTCROP」の部分が共通するといっても本願商標と両引用商標とは商標的に類似するものではありません。両商標は互いに紛れることのない非類似の商標であります。
(c-3) そして、この「ファーストクロップ」「FIRSTCROP」の文字が品質をあらわす文字であることは、多数の使用例からも理解できます。即ち、たとえば、Yahoo!JAPANなどのインターネット検索エンジンで検索してみると、例えば、以下のような、品質・原材料表示としての使用が多くなされています。このことは、この「ファーストクロップ」を商標として用いても、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することが出来ない、即ち、自他商品識別標識として機能しない(識別力がない)ことを意味します。
 そして、この使用例としては、以下のようなものがあります。
(a)「…クリーミーな中ほのかな苦味も健在の本格カフェオレ風。飲んだ瞬間から口の中に広がるコーヒーの香りが良く飲みごたえがある。牛乳60%使用。ブラジルで収穫期最初に摘まれたファースト・クロップを厳選使用…」(飲物情報缶>飲み物データベース>ハ行)。…第1号証
(b)「プルカル購入に当たっては細心の注意を払い、ファーストクロップはシアトルズベストに渡し、2回目の良さそうな1ロットをおさえ、ガテマラの雨期前に出航手配した。…ガテマラは、古くからの優良農園……。長い取り引きの信頼関係がガテマラのコーヒー取り引きの歴史であり、…」(生豆の販売)…第2号証とか、
(c)「ファーストクロップ:初摘みの紅茶、清々しいこの季節に頂きたい紅茶です。」(ちょっとブレイク)。…第3号証
(d)「ブラジル手摘み完熟豆 WIND DRY …ブラジル手摘み完熟豆 WIND DRY(棚干し)フルシティロースト(やや深煎り)今回ご紹介するこの豆は、ブラジルのファーストクロップです。この農園の2003年一番摘みです。ワインで言えばボジョレーヌーボー…」(豆珈房)。
(e)「ブラジル2003年一番摘みのコーヒーが入荷しました。……ほんとに採れたてで、かなり青いので、今回深めに仕上げました。それでも、ファースト・クロップのフレッシュさがよく出ていますので、是非一度お試し下さいね。……」(豆珈房通信)。…第4号証
(f)「(コーンに関し)…02/03クロップでは同CONABの予想では37百万トンとなって増産体制ではあるが新穀(ファーストクロップ)が出回り始めるのは来年2月以降となる。…」「週明けまではセカンドクロップ・コーンの収穫、ファーストクロップ・コーン、大豆の作付けとも改善していく。」(トーメン穀物相場情報)。…第5号証
(g)「…をお楽しみください。4月初旬入荷予定です。ブルーマウンテンファーストクロップ(初摘みコーヒー)100g \1,680 …」 Copyright (C) 2004tsukashin. All right reserved.(グルメSHOPガイド)。
(h)「来ました、来ました。遂に今日!
待ち侘びてた『ファースト・クロップ』が届きましたよ!イェー!
・・・さっそく飲んでみようっ。・・・・・・・・・・・・苦い。
あれれ?香りも酸味も、フルーティなのに・・・何故に?
煎りの浅い豆と同じ甘酸っぱい味と、炭焼きみたいな微かな苦味がいっしょにあるって・・・なんか面白いなぁ(笑)。
ブレンドじゃあないよな、最初に甘味がきて、その後、後味がほろ苦い。やっぱり豆が新鮮だと違うもんなんだねぇ~。
『ファースト・クロップ』ってのは、その年最初にとれた完熟の豆を現地で精製して空輸でお届け、ってシロモンなんだけどね。
普通の豆とどう違う?と聞かれると困るくらいの微妙な違いだな、強いて云うなら値段が違うくらい(笑)。
…コーヒー大好きなんだ、私(笑)。」(雑貨のページ)…第6号証などであります。
 このように、コーヒー関係で「ファーストクロップ」と言えば、「収穫期に最初に摘まれたコーヒー豆」を意味し、商品の品質・原材料を表すものでありますので、この「ファーストクロップ」「FIRSTCROP」が、識別標識として機能するとは思えないと共に、そのような品質等を表示するにすぎない用語に独占権を認めるべきではないと考えます。
(c-4) そして、本出願人のキーコーヒー株式会社は、この「初摘みのトラジャ産コーヒー豆」を「トアルコトラジャ・ファーストクロップ(初摘み)」として、今から14年前の1991年頃より販売を開始して現在に至っており、その販売状況は、以下の通りであります。
「トアルコトラジャ・ファーストクロップ販売状況」
発売年  限定数    価 格  内容量   備 考
1991年豆 2,000セット 10,000円 500g×2  サダン織テーブルクロス付
1992年豆 2,000セット 10,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1993年豆 2,000セット 10,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1994年豆 2,000セット 8,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1995年豆 2,500セット 10,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1996年豆 2,500セット 10,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1997年豆 2,500セット 10,000円 200g×2  オリジナルカップ付
1998年豆 3,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
1999年豆 4,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
2000年豆 5,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
2001年豆 5,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
2002年豆 4,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
DO 5,000セット 6,000円 8g×10P×4
2003年豆 5,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
DO 3,500セット 5,000円 8g×8P×4
2004年豆 5,000セット 8,000円 200g×2  ビロード袋入り
DO 3,500セット 5,000円 8g×8P×4
 然るに、本出願人は、「トアルコトラジャ・ファーストクロップ(初摘み)」の使用によって、需要者が引用商標の商品と間違えて購入してしまったとか、品質の誤認が生じたとか言うようなクレームは、今日に至るまでも全く受けておりませんし、引用商標の権利者からも、上記14年間の「ファーストクロップ」「FIRSTCROP」の使用に関して、何らのクレームも受けておりません。これは、「ファーストクロップ」「FIRSTCROP」が商品の品質・原材料表示にすぎず、自他商品識別標識としては機能していないことの、何よりの証左であります。
  【むすび】
以上のように、本願商標と引用商標とで共通する「FIRSTCROP」の部分は、「初摘み」ないし「初摘みのコーヒー豆」というような意味合いの言葉であって、指定商品との関係で識別力のない言葉であると思料しますし、本願商標と引用商標とは他の部分である商標の要部に共通するところはなく、むしろ全く異なったものでありますので、両者は十分に識別できるものと思料します。それ故、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。よって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである、との審決を求める次第であります。

------------------------------------(参考)ケース77の「審決」
不服2005- 3975
   商願2003-107347拒絶査定不服審判事件について、次のとおり
  審決する。
 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。
 理 由
  1 本願商標
   本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第30類「トラジャ産のコーヒー」を指定商品として、平成15年12月3日に登録出願されたものである。
  2 引用商標
   原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶理由に引用した登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
  (1)登録第4199999号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成8年12月19日登録出願、第30類に属する「コーヒー及びココア,茶」を指定商品として、同10年10月16日設定登録されたものである。
  (2)登録第4207716号商標は、「FIRST CROP」の欧文字よりなり、平成8年12月19日登録出願、第30類に属する「コーヒー及びココア,茶」を指定商品として、同10年11月6日設定登録されたものである。
  (以下、(1)及び(2)を一括して、「引用商標」という。)
  3 当審の判断
   本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、本願商標中の「FIRST CROP」(the first crop)の文字(語)は、「初物」の意味を有する英語である(「研究社 新和英大辞典」2120頁、株式会社研究社2003年7月発行)。そして、本願商標に係る指定商品を取り扱う業界において、「FIRSTCROP」の文字(語)及びその表音表記である「ファーストクロップ」の語が上記の意味を有する語として使用されている、以下の(1)ないし(3)の事実が認められる。
(1)「缶缶辞典」のウエブサイトの「パラダイスマウンテン100%コーヒー」の項(http://www.cancanziten.com/?can=1845)において、「FIRST CROP(ファーストクロップとは?) 収穫期の最初の一週間に摘まれた豆で、・・・(後略)・・・。」の記載がある。
(2)「飲物情報缶」のウエブサイトの「飲み物データーベース>ハ行」の項(http://drink.vis.ne.jp/nomimono_flame.htm)において「PASSOPRESSO 初摘みコーヒーカフェラッテ 甘みは標準・・・(中略)・・・「ブラジルで収穫期最初に摘まれたファースト・クロップを厳選使用・・・(後略)・・・」」の記載がある。
(3)「サンエバー株式会社」のウエブサイトの「RSW農園ブルーマウンテン・ファーストクロップ(初摘み)を毎年入荷」の項(http://www.sunever.co.jp/sunever/coffee.php)において「毎年、一番に収穫された初摘みのコーヒーは世界でもごくわずかなファンしか味わえない逸品です。」の記載がある。
   これらの事実よりすれば、本願商標中の「FIRST CROP」の文字の部分は、本願の指定商品との関係においては、その商品が「初物」であることを表示するにすぎないものというべきであるから、自他商品識別標識としての機能を有していないか、自他商品識別標識としての機能を有しているとしても、極めて弱いものであるというのが相当である。してみれば、本願商標からは、「ファーストクロップ」の称呼を生じないというべきである。したがって、本願商標から「ファーストクロップ」の称呼をも生ずるとし、そのうえで、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものであるとして、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
   よって、結論のとおり審決する
        平成18年 5月 8日
                 審判長  特許庁審判官 高野義三
                      特許庁審判官 井岡賢一
                      特許庁審判官 岡田美加
-----------------------------------

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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地域の活力創造プラン 農林水産省 vol.6 商標_動画(embedded)

1.地域の活力創造プラン

2.「知る」って、おいしい。、2:40

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#75

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「夢馬/yumeuma」

1.出願番号  商願2005-79455
2.商  標  「夢馬/yumeuma」
3.商品区分  第30類 
4.適用条文 商標法第4条第1項第6号
5.拒絶理由  飯能商工会議所(埼玉県)が特産の西川材を使って制作し、ギネスブックで世界最大と認定された巨大木馬「夢馬」を表すものとして広く知られている標章と類似する標章を含む。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4963856号
出願商標・商標登録第4963856号

拒絶理由通知 意見書における反論

【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、“本願商標は、飯能商工会議所(埼玉県)が特産の西川材を使って制作し、ギネスブックで世界最大と認定された巨大木馬「夢馬」を表すものとして広く知られている標章と類似する標章を含むものと認められるので、商標法第4条第1項第6号に該当する。”と認定されました。しかしながら、巨大木馬「むーま(夢馬)」はそれほど広く知られているもの(著名なもの)とは思えず、また、本出願人は飯能市の事業とは全くかけ離れた役務に「夢馬/yumeuma」を用いるものでありますので、埼玉県飯能市の権威を傷つけることも、公益を害することもないと考えます。それ故、前記商標法第4条第1項第6号に該当するとの審査官殿の認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。なお、本出願人は、本日付け提出の手続補正書において、本願の指定役務中、「教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」とあるのを、「競馬に関するビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」と改める補正を行いました。これにより、本出願人の指定役務は全て競馬に関するものであることを明確にし、飯能市などの公的機関が行う事業とは全く関係のないことを鮮明にしました。
(2) まず、審査官殿が拒絶の根拠として挙げられた商標法第4条第1項第6号は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」については、商標登録を受けることができないとする規定でありますが、飯能市の「むーま(夢馬)」は果たしてそれほど広く知られている(著名な)ものなのでしょうか?成る程、飯能市は、平成17年4月1日付けで「森林文化都市宣言」を発表し、そのイメージキャラクターとして、揺れ動く木馬「むーま夢馬」を飯能駅南口に設置しました。そして、この設置した木馬は、平成17年4月28日に、世界最大の木馬としてギネス記録に認定されたようであります。しかし、世界最大の木馬と認定されギネスブックに載せられたことが、そのまま著名性に結びつくものではないと考えます。そのことが果たして日本国内において著名だといえるのでしょうか?はなはだ疑問であります。ギネスブック(ギネス・ワールド・レコーズ、ギネス世界記録、Guinness World Records)は、さまざまな分野の世界一を収集した本でありますが、収録されるのは、発行元であるギネス・ワールド・レコード社が定める「認定されたカテゴリー」の元で「認定されたルール」に従って作られた記録であります。ギネスブックの名称は2002年度版からギネス・ワールド・レコーズ(ギネス世界記録)に改称され、日本語版は1978年に初めて講談社が本格的な邦訳を刊行(1980年代半ばまで)、そのあとは長らく「きこ書房」が手がけてきましたが、2002年版を最後に取り扱いをやめたため、2004年版からは「ポプラ社」が発行しているようであります(但し、2003年版は発売されていません)。このギネスブックなどは普段我々が目にする機会はまずありませんし、たとえ目にしたとしてもそのようなものが載っているなど、ほとんど分かりません。また、ギネスブックに載っていても我々が知らないものはいくらでもあります。ギネス認定自体世間で騒がれているわけではなく、飯能市が「森林文化都市宣言」を行ったことも、そしてそのイメージキャラクターに「むーま夢馬」を採用し、それをイメージした木馬を飯能駅南口に設置したことも、世間の人は果たしてどれほど知っているのか。おそらく飯能市及びその近隣の地域において知られているのが、せいぜいではないかと思います。それ故に、日本国内において「著名」(商標法4条1項6号)であるなど、はなはだ疑問であります。審査官殿は何を根拠に著名だというのかよく分かりません。大々的に宣伝されれば兎も角、(a)飯能市が森林文化都市宣言をした事実、(b)キャラクターを木馬とした事実、(c)そのキャラクターの名前をムーマ(夢馬)とした事実、(d)飯能駅南口に設置したムーマの木馬が木馬としては世界一の大きさであったとの事実、そして、(e)そのことがギネスブックに載せられた事実、等々は認めるにしても、「むーま(夢馬)」が飯能市が宣言した森林文化都市のイメージキャラクターとして日本国内において著名であるとは、到底思えません。
(3) また、今回の場合、本願商標は、地方公共団体の営む「まち作り事業」のキャラクターのネーミングと漢字表記「夢馬」が一致してしまったということのようでありますが、呼び名は飯能市の巨大木馬が「ムーマ」であるに対し、本願商標はあくまでも「ユメウマ」であって、互いの称呼は全く異なります。しかも、「夢馬」の漢字から生じる自然の称呼は、常に「ユメウマ」であって、飯能市のような「ムーマ」ではないはずです。自然に「夢馬」をムーマと読むことはないでしょう。だとすれば、本願商標を見て称呼しても、常に「ユメウマ」の称呼が生ずるのであって、その称呼から、飯能市の木馬を思い浮かべることはまずありません。まして、本願商標には「yumeuma」の英文字表記も含まれておりますので尚更です。本願商標「夢馬/yumeuma」を使用しても、誰も飯能市の「ムーマ」を想起するとは思えません。
(4) また、商標法第4条第1項第6号の立法趣旨は、このような標章を一私人に独占させるのは、その団体や事業の権威を害することになり好ましくないとともに、これらの団体により行われる事業を含めて公益事業における著名標章の出所表示機能を保護しようとすることにあると思いますが、両者は呼び名も全く違いますし、とり行う役務においても、飯能市は「森林と人とのより豊かな関係を築きつつ、自然と都市機能とが調和するまちづくり事業」であるのに対し、本願は、「インターネットを利用した競馬に関する知識の教授や競馬の予想や競馬に関する情報の提供」等、競馬に関するものでありますので、互いに全く異質のものであり、出所の混同を来すこともないと考えます。それ故、例えば、本願商標「夢馬/yumeuma」を使用して、本出願人が自社の「インターネットのホームページを通じて競馬情報」を流したとしても、飯能市の権威や公益を害することはないでしょうし、飯能市の事業と出所の混同を来すこともないと思います。飯能市が「自然と都市機能とが調和したまちづくり事業」の一環として、例えば「競馬情報のインターネットサイト」を開設しているなどと、誰も思うはずはありません。それ故、本願商標「夢馬/yumeuma」が商標法第4条第1項第6号に該当することはないと考えます。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#74

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「TOARCO TORAJA/トアルコトラジャ」

1.出願番号  商願2005-61229
2.商  標  「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」
3.商品区分  第43類 飲食物の提供
4.適用条文 商標法第4条第1項第16号
5.拒絶理由  何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4947102号
出願商標・商標登録第4947102号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、“「TORAJA」及び「トラジャ」の文字を有してなるものですが、当該文字は、「インドネシア共和国、スラウェシ島の山岳地帯に存在する地域またはその山地に住む民族」を意味する語であり、当該地域においては、コーヒー豆の生産が有名であることからすれば、これを本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用するときは役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第16号に該当します。”と認定されております。しかしながら、本願商標は、「TORAJA/トラジャ」の文字を含むものであっても、該文字はコーヒー豆の産地として知名度はあるものの、本願の指定役務である「飲食物の提供」との関係では何ら知名度はなく、従って、「レストランや喫茶店の看板、料理メニュー、店舗宣伝ちらし」等に本願商標を用いたとしても、決して「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供サービス」であるとか、「インドネシア共和国スラウェシ島トラジャ地方で生産されたコーヒー専門店」であるなどと取引者・需要者に認識されるものではなく、他の飲食物を提供しても質の誤認を生じさせることはないと考えます。それ故、指定役務を「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」に補正すれば本願は登録できるであろうことは理解できるものの、前記審査殿の認定には承服できませんので、以下、指定役務を補正することなく、意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、英文字の「TOARCO TORAJA」と片仮名文字の「トアルコトラジャ」を上下二段に書してなるもので、第43類「飲食物の提供」を指定役務とするものであります。然るに、本願商標中の「TORAJA/トラジャ」の部分は、もともとは、当社が株式会社東食と共に「インドネシア共和国スラウェシ島トラジャ地方」に自社農園を手がけたこと、そして、そこで生産したコーヒーを日本で販売したことに端を発するものであります(約30年前)。即ち、当社は当時、“最高のコーヒーを追求する”旺盛な意気込みのもと、自らコーヒーの栽培を手がけることに辿りつき、インドネシアのスラウェシ島にトアルコトラジャ直営農場を開拓し、その経営に着手したものであります。そして、今でこそ「トラジャ地方」がコーヒー豆の産地として認知されてきているようでありますが、当社が手がけたころの約30年前は「トラジャ地方のコーヒー豆」など日本で知られる由もなく、そのため、当社は株式会社東食と共に「TORAJA/トラジャ」の商標について、第29類「コーヒー、紅茶、その他本類に属する商品」を指定商品として商標登録を行い(商標登録第1311224号、昭和52年11月14日登録、昭和34年法)、その普及に努めてきたわけであります。また、当社等は、平成の時代になって、本願商標と称呼同一の商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」の商標についても、同じく第29類「トラジャ産の茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定して商標登録を行っております(商標登録第2588965号、平成5年10月29日登録、昭和34年法)。このように、「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、もともと「コーヒー」についての当社等の登録商標であり、当社等が日本国内で販売を開始したのがきっかけとなって、また、その後の当社等の努力によって、これだけの知名度を得たものでありますが、一方で、ここ何年かのうちに、インドネシア共和国「トラジャ地方産のコーヒー」が他社からも盛んに宣伝され且つ販売されるに至り、現在においては「TORAJA COFFEE」「トラジャコーヒー」といえば、インドネシアのトラジャ地方産出のコーヒー(豆)を思い浮かべるようになってきているようであります。しかし、そのような産地としての認知度は、あくまでも「コーヒー」や「コーヒー豆」について、「TORAJA COFFEE」や「トラジャコーヒー」、あるいは端的に「トラジャ産」というような表示をした場合のことであって、単に「TORAJA/トラジャ」とか「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と表示した場合にまで、直ちにトラジャ産コーヒーと結びつくものではないと考えます。「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、まさに当社の登録商標の用い方であって、産地表示としての用い方ではありません。コーヒー等商品の包装に商標的使用態様で「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と記載した場合には、自他商品識別標識として機能する当社と東食の登録商標を表すものであります。「トラジャ地方」がコーヒーの産地として知名度を上げてきているとは言え、「TORAJA/トラジャ」や「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は「コーヒー」等についての当社等の登録商標である事実に変わりはありません。しかも、今般の本願商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」に係る指定対象は、これらコーヒー等の商品そのものについてではなく、「飲食物の提供」という役務(サービス)についてであります。「コーヒー」とか「コーヒー豆」などの商品であればまだしも、「レストラン」や「喫茶店」、「トラジャ料理」等の飲食物の提供サービスについて、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」が有名なわけではありません。「トラジャ地方」が良質のコーヒー豆の産地として知名度を上げていることは認めるにしても、飲食物の提供という役務を表示する通常の態様であるレストランや喫茶店の「看板」に、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」との店名の表示があるのを見て、「この店はトラジャ産コーヒーを主とする飲食物を提供店だ」とか、「トラジャ産コーヒー専門店だ」などと誰が思うでしょうか?素直に「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」という店舗名だと認識するのが普通だと思います。そうだとすれば、「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は店舗の名前として、トラジャ産以外の飲食物を提供しても、これがトラジャ産のものであると質の誤認を生じさせるというようなことはないと思料します。
(3) この点に関し、審査官殿は、“本願商標を構成する「TORAJA」及び「トラジャ」の文字は、「インドネシア共和国、スラウェシ島の山岳地帯に存在する地域またはその山地に住む民族」を意味する語であり、当該地域においては、コーヒー豆の生産が有名であることからすれば、これを本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用するときは役務の質について誤認を生じさせるおそれがある”としております。しかし、先にも少し触れたように、コーヒー豆の産地として有名だからといって、それが直ちに喫茶店やレストランについて有名であるとは限りません。ましてや、「コーヒーを主とする飲食物の提供」という役務について、直接結びつくものではありません。「コーヒー」という商品についての「TORAJA/トラジャ」の使い方は、転々流通するコーヒーという商品の包装に直接付し、或いはコーヒーという商品を直接宣伝するために用いるものだと思いますが、「飲食物の提供」についての「TORAJA/トラジャ」ないし「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」の使い方は、「店舗看板、料理メニュー、店舗宣伝ちらし」等への「店舗名」(店舗の固有名詞)の表示であります。そこには個別商品である「コーヒー」のイメージは出てきません。つまり、本願はあくまでも「飲食物の提供」についての商標であるが故に、本願商標の「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」を使う場面というのは、地域に根ざした店の看板とか、一定の場所にある店舗の宣伝ちらしとか、電話帳に載せた店名のようなものであり、店舗のイメージとともに認識されるべき性質のものだと思います。商品のように地域と関係なく転々流通するものではありませんので、コーヒー等の商品のように、トラジャで産出されたもの等を、すぐにイメージできるような性質のものではありません。そして、一般的にも、レストランや喫茶店等に出向いた顧客は、例えば、行き着いたレストランや喫茶店の看板に「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」と表示があった場合、これを見て、「トラジャ地方のコーヒーを専門に扱うレストランや喫茶店」だとか、「トラジャ民族が営むレストランや喫茶店」だとかと、認識するものでしょうか。認識することはまずないと思います。素直に、レストランや喫茶店の固有名詞である「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」という店名を意識するものと思います。そうだとすれば、この「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は店舗名として用いても、質の誤認など生じさせることはないと思料します。
(4) 以上の次第でありますので、本願商標は決して「トラジャ地方のコーヒーを扱うレストランや喫茶店」などいう認識は持たれず、それ以外の飲食物を提供しても、また、トラジャ地方と全く関係のない飲食物のみを提供しても、質の誤認を生じさせるようなことはないと思います。よって、本願商標「TOARCO TORAJA/トアルコ トラジャ」は、本願指定役務中「トラジャ産コーヒーを主とする飲食物の提供」以外の役務について使用しても、役務の質について誤認を生じさせことはなく、商標法第4条第1項第16号には該当しないものと考えます。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#73

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「カフェしましょ。」

1.出願番号  商願2005-51696
2.商  標  「カフェしましょ。」
3.商品区分  第30類 
4.適用条文 商標法第3条第1項第6号
5.拒絶理由  何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4941743号
出願商標・商標登録第4941743号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、“本願商標は、「カフェしましょ。」の文字よりなるところ、近年、お茶、コーヒー等を楽しむための誘いを表現する意味合いで「お茶します」「カフェしませんか」「お茶する」「カフェる」「カフェしましょ」の如く一般使用されていることよりすると、その一つの文字(語)をその指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。”と認定しております。しかしながら、本出願人は、本願商標の「カフェしましょ。」は充分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標の「カフェしましょ。」は、審査官殿のご指摘によれば、お茶、コーヒー等を楽しむための誘いを表現する意味合いで一般に使用されている言葉であるから、これを茶やコーヒーに使用しても、識別標識として機能しないということであります。しかし、お茶に誘う時の言葉であるから、これを指定商品に使用しても識別機能を発揮しないというのは如何にも短絡的に過ぎると考えます。同じ言葉であっても、お茶の誘いに使うときと、指定商品に使うときとでは意味合いが全く違います。成る程、例えば、会議途中に、「お茶しましょ。」とか、「カフェしましょ。」と言うと、それはまさしく単に「お茶の時間にしましょう。」とか、「ちょっと休憩でもしましょう。」という意味合いの言葉であると理解できます。その場合には、その言葉に商品の識別機能などないでしょう。しかし、それは正しく商品というものを想定していないからであって(ここでは「お茶の時間にしましょう」ということだけを想定しているだけ)、指定商品について「カフェしましょ。」と使うときには、また別の話であります。その場合には、自他商品識別標識として機能するはずであります。 例えば、駅売店「キヨスク」などで、「カフェしましょ。」とネーミングした缶コーヒーを、他の商品と共にショーケースに並べて売るなどの場面は商標の典型的な使用場面でありますが、この場合、顧客が“「カフェしましょ。」下さい。”と言えば、あるいは単に「カフェしましょ。」とだけ言えば、販売員は所望の缶コーヒーを差し出すはずです。また、例えば、売店で、「おーい、お茶」と言えば、伊藤園のお茶が差し出されるでしょう。そうだとすれば、本願商標「カフェしましょ。」や「おーい、お茶」は、自他商品識別標識として機能しているということになります。
(3) ところで、過去の商標登録例を見ても、例えば、以下のような商標が登録になっております。
A. 登録2150845 お茶にしましょ 30類 菓子,パン
B. 登録2447658 お茶しましょ 30類 緑茶
C. 登録3153817 プリンにしましょ 30類 プリン
D. 登録4254895 お茶にしましょう 30類 コーヒー等/32類 清涼飲料等
E. 登録4267099 お茶と花しましょ 30類 茶
F. 登録4540807 お抹茶しましょ 30類 抹茶
G. 登録4719422 おべんとしましょ 29類 乳製品,豆腐等/30類 コーヒー等
 然るに、このような商標が登録できて、本願商標「カフェしましょ。」が登録できないとされる謂われは全くありません。特に、Bの登録2447658「お茶しましょ」や、Dの登録4254895「お茶にしましょう」や、Fの登録4540807「お抹茶しましょ」などは、指定商品も茶やコーヒー等の飲物ですし、その商標の作り方も本願商標「カフェしましょ。」と変わるところはありません。したがって、本願商標「カフェしましょ。」も登録されて然るべきであります。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#72

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「UCM」×引用商標「UCL」

1.出願番号  商願2005-40192
2.商  標   「UCM」
3.商品区分  第42類 電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守ほか
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  登録第4411761号商標「UCL」と類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4914338号
出願商標・商標登録第4914338号
引用商標・商標登録第4411761号
引用商標・商標登録第4411761号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は登録第4411761号(商願平11-043469号)の商標(以下、「引用商標」という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録できないと認定された。しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、「UCM」の欧文字を横書きしてなるものでありますが、引用商標は「UCL」の欧文字(標準文字)からなるものであります。したがって、本願商標と引用商標とは、欧文字三文字からなる商標において、その第3文字目に「M」と「L」の違いがあり、外観上十分に識別でき、類似しないこと明らかであります。また、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、共に格別の意味を持たない造語商標であり、したがって、両者は観念上比較すべくもなく、観念上も同一又は類似しないこと明かであります。
(3) そこで、次に称呼の点につき検討します。まず、本願商標は、上記態様より、「ユウシイエム」ないし「ユーシーエム」の称呼を生じるものでありますが、引用商標は、その態様より「ユウシイエル」ないし「ユーシーエル」の称呼を生じるものであります。然るに、両者は、語尾の第3文字目に「M」(エム)と「L」(エル)の違いしかなく、そのために審査官殿は、両商標は称呼上紛らわしいと判断したのだと思います。しかしながら、本出願人は、以下の理由により、本願商標と引用商標とは、称呼上紛れることのない非類似の商標であると思料します。すなわち、まず、第一に、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、上述の如く一文字の相違でありますが、全体が僅か3文字という短い構成からなる商標同士における「M」と「L」一文字の違い(全体の3分の1を占める)であり、したがって、この「M」(エム)と「L」(エル)の違いが全体の称呼に及ぼす影響は極めて大きいと思われること。第二に、両者は、全体が欧文字3文字から成り且つ一文字ずつ発声する以外に読み方がないため、これら全体を称呼した場合には、「ユウ・シイ・エム」や「ユー・シー・エム」とか、「ユウ・シイ・エル」や「ユー・シー・エル」の如く、一文字一文字音節を区切って明瞭に称呼されるのが自然だと思います。それ故、この「M」と「L」の文字も最後尾にあるとはいえ明瞭に称呼され、この「M」と「L」の称呼上の差異により、両者は十分に聴別できると思われること。第三に、この「M」(エム)と「L」(エル)は、第2音目の弱音(イ)ないし長音(ー)を伴う「C」(シイ)(シー)に続いて発声されるため、比較的強いアクセントをもって明瞭に称呼される文字であり、このアクセントによって称呼上の違いがより強調されると思われること。第四に、本願商標と引用商標の対象役務は、第42類の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」でありますが、この役務の業界、即ち、コンピュータプログラムの設計等コンピュータ業界やIT業界においては、欧文字で構成される商標が数多く存在し、そのネーミングも欧文字の頭文字を採って並べたような造語や略称が多く、それ故に、その需要者・取引者層も欧文字ネーミングには極く親しんでいて、注意深い観察力を持って商取引にあたると思われること。以上のような理由により、上記「M」(エム)と「L」(エル)の差異は、両商標を称呼上識別するに十分な差異であり、両商標は称呼上明確に識別できるものと思料します。

(4) そして、このことは、第42類のコンピュータプログラムの設計等の役務分野において、以下のような商標が互いに登録され、かつ存続している事実からも伺い知ることが出来ます。例えば、
(A)
・登録第3159681号「PCL」(H8.5.31登録、ソニーピーシーエル株式会社)(第1号証の1)と、
 ・登録第4613129号「PCM」(H14.10.18登録、アートグレミオ株式会社)(第1号証の2)。
(B)
 ・登録第3128936号「YCL」(H8.3.29登録、山梨中銀リース株式会社)(第2号証の1)と、
 ・登録第4540132号「YCM」(H14.2.1登録、株式会社マタハリー)(第2号証の2)。
(C)
 ・登録第4520754号「JCM」(H13.11.9登録、株式会社ジェイ・シー・エム)(第3号証の1)と、
 ・登録第4563887号「JCL」(H14.4.26登録、日本医学臨床検査研究所)(第3号証の2)。
(D)
 ・登録第3119891号「ICM」(H8.1.31登録、株式会社アイシーエム)(第4号証の1)と、
 ・登録第3187324号「ICL」(H8.8.30登録、インターナショナルコンピューターズリミテッド:イギリス国法人)(第4号証の2)。
 これらは、互いに欧文字三文字からなる商標で、第2文字目に「C」を有し、且つその第3文字目に「L」と「M」の違いがあるだけの商標ですが、互いに類似しないものとして併存登録されております。然るに、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とて、第2文字目に「C」を有し、且つその第3文字目に「L」と「M」の違いがあるだけの商標である点で、これら(A)~(D)で対比した商標同士と同様の関係であり、これらが併存できて、本願商標と引用商標とが併存出来ないとされる謂われは全くありません。
(5) このように、本願商標「UCM」と引用商標「UCL」とは、一文字相違とは言っても、僅か三文字という短い文字構成の中における一文字の相違であり、そして、この「M」と「L」の部分は2音目の弱音(イ)ないし長音(ー)の後に位置して比較的強く発声される文字でありますので、両者は、この「M」と「L」の違いにより、別異の印象を与え、明瞭に識別できるものと思います。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#71

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「Quick Security Server」

1.出願番号  商願平11-88167(不服2000-16544)
2.商  標  「Quick Security Server」
3.商品区分  第9類:電子応用機械器具ほか
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由 「単に、商品の品質、機能を表示したもの」

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第4907387号
出願商標・商標登録第4907387号

不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

【手続の経緯】
 出     願   平成11年 9月29日
 拒絶理由の通知   平成12年 7月25日
  同 発送日   平成12年 7月28日
意  見  書   平成12年 8月17日
拒 絶 査 定   平成12年 9月27日
 同 謄本送達   平成12年10月 6日
【拒絶査定の要点】
原査定は、「平成12年7月25日付けで通知した理由によって、商標法第15条の規定に基づき拒絶する」というものであり、その具体的理由は、拒絶理由通知書に示されたとおり、『本願商標は、「迅速な、素早い」等の語義を有する「Quick」、「安全、保証」等の意味を有する「Security」及び「電子応用機械装置」をいう際に使われる「Server」の語を連結して「Quick Security Server」と一連に書してなるところ、これよりは「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」なる意味合いを想起するものであるが、本願指定商品中の「電子応用機械器具」等との関係においては、前記の如く商品が流通し販売されていることは一般に周知の事であるから、前記本願商標を指定商品中、例えば「電子応用機械器具」に使用するときは、単にその商品の品質・機能を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。』というものである。そして、拒絶査定書においては、以下のように付言している。『本願指定商品を取り扱う業界においては、とりわけ安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情があることが認められるものであるところ、本願商標は迅速さの意味を有する「Quick」の文字に連結されたに過ぎないものであるから、さきの認定を覆すことはできない』。
【本願商標が登録されるべき理由】
 しかしながら、本出願人は、本願商標の「Quick Security Server」は全体として一種の造語商標を形成するものであり、これを本願の指定商品に付して使用しても、単に商品の品質・機能を表示するものではないと考えるので、前記認定には承服できず、ここに審判を請求し、再度の御審理をお願いする次第である。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字で「Quick Security Server」と一連に横書きした態様からなり、かつ指定商品を第9類の「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」とするものである。
(b)本願商標が登録されるべき理由
(b-1) しかるに本願商標の「Quick Security Server」は、「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」を間接的に表示する文字であることを否定するものではないが、本願商標は、あくまでも「Quick」と「Security」と「Server」の単語を横一列に並べて作った造語商標であり、「Quick Security Server」が品質・機能表示として普通に用いられている事実はない以上、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとした審査官の認定に納得することはできない。この点に関し、審査官は、『安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情がある』と言うようなことを述べているが(拒絶査定書)、情報処理の辞書類やインターネットの検索エンジン等で調べてみても、そのような事実は見あたらない。
 過去の商標審査例などを見ると、この指定商品分野において、本願商標を構成する「QUICK」や「SECURITY」や「SERVER」個々の単語は、それぞれ品質等を表わす言葉と理解され、自他商品の識別力はないと扱われているようである(例えば、商願平1-80704「QUICK」、商願平4-1439「SECURITY」など)。しかしながら、そのことが、全体としての識別性を否定する根拠にはなり得ない。本願商標の「Quick Security Server」は、一つ一つの単語を採ってみれば品質表示的な意味合いを持つことは認めるにしても、本願商標はこれら3つの単語が一体となって初めて一つの商標を構成するものであり、全体を一連一体にとらえてみれば十分に自他商品識別力を生じるものである。つまり、本願商標は、それぞれの単語を分断して把握すべき性格のものではない。わざわざ分断して把握しなければならない理由はない。むしろ、この商品分野においては、欧文字の比較的長い称呼を有する商標が多数存在していて、取引者・需用者は長い商標の識別には慣れている。しかも、本願商標の「Quick Security Server」は、一つ一つを分断して把握し称呼したのでは識別力を有しないことから、慣れ親しんだ取引者・需用者は一つ一つを取り出して称呼したり、一つを省略して称呼するようなことはするはずもない(*そのようなやり方をしたのでは識別できにくくなってしまう。比較的長い称呼に慣れたこの商品分野の賢明な取引者・需用者であれば、あえて識別しにくいような省略の仕方をして、本願商標を称呼するようなことはないはずである)。
したがって、本願商標を取り扱う取引者・需用者は、あくまでも本願商標を一体のものとしてとらえ、全体を一連に「クイックセキュリティサーバ」とのみ称呼して、取引に当たるものと思料する。「Quick Security Server」を構成する単語は、個々的に見たら品質表示的なものかもしれないが、本願商標は、これら品質表示的な単語を結びつけることによって全体として自他商品識別力を有する商標としたものであり、その意味で、十分に商標としての機能を発揮するものと思料する。なお、判決例を見てみると、例えば、昭和34年7月14日/東京高等裁判所/判決/昭和32年(行ナ)第34号:商標「Mode Robe」などは、普通名称の組合せと識別力の点につき、“流行をあらわすModeと衣服をあらわすRobeの語とは、それぞれ「流行している」「被服」であることを示すもので、商品衣服一般については自他商品識別の機能を有していないかも知れないが、Mode Robeと2語組み合せて使用されている事実はなく、また組み合わせて使用することは稀であろうから、この文字を商標として用いるときは、自他商品識別の機能を有する。”というような判断を下している(行政事件裁判例集10巻7号1361頁)。これは、自他商品識別機能を有しない単語でも、それらの単語を組み合わせることによって自他商品識別機能を有するとされた例である。本願商標も同様であろう。
(b-2)
ところで、過去の御庁商標審査例をみると、本願と同一の指定商品分野において、品質表示的な言葉と「SERVER」の文字が結びついた商標は、以下のように数多く登録されている。例えば、
1)登録第2529830号「COMMUNICATIONSERVER\コミュニケーションサーバー」…(第1号証)、
2)登録第3056166号「MEMORY SERVER」…(第2号証)、
3)登録第3297799号「SOLUTIONSERVER」…(第3号証)、
4)登録第4045860号「オフィスメディアサーバ\OFFICEMEDIASERVER」…(第4号証)、
5)登録第4277731号「POWERSERVER」…(第5号証)、
6)登録第4297299号「Super Technical Server」…(第6号証)、
7)登録第4305707号「FAMILYSERVER」…(第7号証)、
などである。これらの商標の構成単語を一つ一つみると、1)は「伝達、通信、交信」等の意味の「COMMUNICATION」と「電子応用機械装置」を言う際に使われる「SERVER」とが結合したものであり、2)は「記憶、メモリー」等を意味する「MEMORY」と「SERVER」が結合したものである。また、3)は最近よく使われる「問題解決」を意味する「SOLUTION」と「SERVER」が結合したものであり、4)は、「事務所、会社、オフィス」等使用場所を表す「OFFICE」と、「伝達・通信媒体」を表す「MEDIA」及び「SERVER」が結びついたものである。また、5)は「パワーのあること」を意味する「POWER」と「SERVER」を結合したものであり、6)は優れた意味の「Super」と技術的なことを意味する「Technical」と「Server」の結合であって、「優れた技術力を有するサーバー」ほどの意味合いを想起させ、また、7)は、「ファミリ向けのサーバー」の如き意味合いを想起させるものである。したがって、これらの商標から想起される意味合いを考えれば、上記商標は全て、「電子応用機械器具」のような商品分野においては、審査官のような見方をした場合には、品質・機能表示であるとして拒絶されてもおかしくない商標である。ところがその様な商標でも、上記の如くすべて登録されているのである。これは、商標を把握するに当たって、一つ一つの言葉を分断して把握するようなことはせず、あくまでも全体として一つの商標であると把握したからに他ならない。つまり、これらは個々的にみたら品質表示的な言葉であるが、それらを組み合わせることによって自他商品識別力が生じた造語商標の例であると思料する。そして、本願商標もこれらの登録商標と同一の性格を有する商標であり、十分識別力を有するものと思料する。審査官は、先の拒絶査定書で、『安全性などを重視する商品を「Security Server」と称しインターネットなどを使って普通に使用している実情がある』と言う。しかし、前述したように、そのような実情など見あたらない。まして、「Quick Security Server」が普通に品質・機能表示として用いられている事実などない。それ故、取引者・需用者が、例えば、「電子応用機械器具」に商標的使用態様で「Quick Security Server」と書してある文字を見て、これを品質・機能表示であると認識するとは到底思われない。むしろ、一般的には、「Quick Security Server」という商標名の製品であると理解するのが自然である。そうだとすれば、本願商標「Quick Security Server」は充分に識別標識として機能し得る商標である。
(b-3) そして、このことは更に、「QUICK」の付く商標をみても明らかである。即ち、第9類の「電子応用機械器具」等の商品分野においては、「QUICK」の単語と、他の品質・機能表示的な意味合いを想起させる単語とが結びついて一体となった商標として、以下のような商標が存在する。即ち、
8)登録第2116122号「QUICKMAIL」…(第8号証) 
9)登録第2704085号「QuickLettering」…(第9号証)
10)登録第2704213号「QuickSave/クイックセーブ」…(第10号証)
11)登録第3116035号「QUICK SURF」…(第11号証)
12)登録第3138854号「QuickLink」…(第12号証)
13)登録第3217395号「QuickReverse」…(第13号証)
14)登録第3261270号「QUICKVISION」…(第14号証)
15)登録第4074713号「QUICKWORK」…(第15号証)
16)登録第4115051号「Quick System」…(第16号証)
17)登録第4201916号「QUICKMENU」 …(第17号証)
18)登録第4218048号「QUICKMAP」…(第18号証)
19)登録第4254701号「QUICKSTOP/クイックストップ」…(第19号証)
20)登録第4388234号「Quick View」…(第20号証)  etc.
などが登録商標として存在している。そして、8)からは、その商品(メールソフトなど)が「迅速なメール機能を有すること」、9)からは、その商品が「迅速なレタリング機能を有すること」、10)からは、その商品が「迅速な保全機能・節約機能を有するものであること」等を表している。また、11)からは、その商品が「迅速な(ネット)サーフィン機能を有するものであること」、12)からは、その商品が「迅速なリンク機能を有するものであること」、13)からは、その商品が「迅速な巻き戻し機能を有するものであること」、14)からは、その商品が「迅速に映像を映し出す機能を持っていること」、15)からは、その商品が「迅速な作業能力を有するものであること」等を表している。更に、16)からは、その商品が「迅速な機械装置(システム)であること」、17)からは、「コンピュータのメニューが迅速に表示されるものであること(迅速なメニュー表示機能を有するものであること)」、18)からは、その商品が「迅速な地図表示機能を有すること」、19)からは、その商品が「迅速な停止機能を有するものであること」、20)からは、その商品が「迅速な映し出し機能を有するものであること」、といったような意味合いを想起させるものである。しかるに、そのような意味合いを想起させるからといっても、これらの商標が品質・機能表示であると扱われている事実はない。自他商品識別機能を有する商標として、登録されているのである。このように、その言葉の意味合いだけを考えてみた場合には品質・機能表示的な商標であっても、品質・機能表示として普通に用いられている事実がない場合には、全体として自他商品識別力を有する商標であるとして、登録されているのである。したがって、本願商標の「Quick Security Server」も、個々の単語の意味合いからすれば品質・機能表示的なものかもしれないが、そして、全体から受ける意味合いも「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」というようなイメージかも知れないが、それはあくまでも間接的な印象やイメージであって、直接的に「Quick Security Server」が品質・機能表示用語として使われているものではない。それ故に、例えば「電子応用機械器具」に商標的使用態様で本願商標を使用した場合でも、その取引者・需用者は、「Quick Security Server」という商標名の製品であると理解するのが自然であろう。そうだとすれば、本願商標「Quick Security Server」は充分に識別標識としての機能を備えた商標であると言い得る。
(b-4) 繰り返し述べるが、本出願人は、「Quick Security Server」が「迅速な応答可能かつ安全機能を備えたコンピューター」を暗示させあるいは間接的に想起させる文字であることを否定するものではない。また、個々の単語「Quick」、「Security」、「Server」が品質・機能を表示するような単語であることを否定するものでもない。しかし、そのことが直ちに、本願商標全体が、品質・機能表示にすぎない、即ち、品質・機能を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことにはならない。商標法第3条第1項第3号の商標審査基準には、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする”と明確にうたっている。この審査基準に照らし合わせてみても、今般の審査官殿の認定に承服することはできない。
【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標は商品の品質や機能を普通に用いられる方法で表示する商標ではなく、自他商品識別力を有し、充分登録適格性を備えたものと思料します。よって、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものであるとの審決を求める次第であります。
【証拠方法】
(1)第1号証…登録第2529830号公報「COMMUNICATIONSERVER\コミュニケーションサーバー」、(2)第2号証…登録第3056166号公報「MEMORY SERVER」、(3)第3号証…登録第3297799号公報「SOLUTIONSERVER」、(4)第4号証…登録第4045860号公報「オフィスメヂアサーバ\OFFICEMEDIASERER」、(5)第5号証…登録第4277731号公報「POWERSERVER」、(6)第6号証…登録第4297299号公報「Super Technical Server」、(7)第7号証…登録第4305707号公報「FAMILYSERVER」、(8)第8号証…登録第2116122号公報「QUICKMAIL」、(9)第9号証…登録第2704085号公報「QuickLettering」、(10)第10号証…登録第2704213号公報「QuickSave\クイックセーブ」、(11)第11号証…登録第3116035号公報「QUICK SURF」、(12)第12号証…登録第3138854号公報「QuickLink」、(13)第13号証…登録第3217395号公報「QuickReverse」、(14)第14号証…登録第3261270号公報「QUICKVISION」、(15)第15号証…登録第4074713号公報「QUICKWORK」、(16)第16号証…登録第4115051号公報「Quick System」、(17)第17号証…登録第4201916号公報「QUICKMENU」、(18)第18号証…登録第4218048号公報「QUICKMAP」、(19)第19号証…登録第4254701号公報「QUICKSTOP\クイックストップ」、(20)第20号証…登録第4388234号公報「Quick View」
【その他】
文書中に示した証拠方法(第1号証乃至第20号証)は、御庁備え付けのもの(データベース)があるので、それを援用し、その提出は省略する。
委任状は、包括委任状番号9812144を援用する。
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(参考)ケース71の「審決」
不服2000-16544
平成11年商標登録願第88167号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
 原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
理 由
1 本願商標
本願商標は、「Quick Security Server」の欧文字を横書きしてなり、第9類「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」を指定商品として、平成11年9月29日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『迅速な、早い』等の語義を有する『Quick』、『安全、保証』等の意味を有する『Security』及び『電子応用機械装置』をいう際に使われる『Server』の語を連結して『Quick Security Server』と一連に書してなるところ、これよりは、『迅速な応答が可能かつ安全機能を備えたコンピュータ』なる意味合いを想起させるものであるから、これを指定商品中『電子応用機械器具』に使用するときは、単にその商品の品質、機能を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
 本願商標は、上記のとおり「Quick Security Server」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中「Quick」の文字は、「迅速な、すばやい」等の意味を有する英語として親しまれている語ということができる。また、「Security Server」の文字は、その構成中「Security」の文字がその指定商品との関係においては、「コンピュータシステムの防災、安全保護」などの意を、また、「Server」の文字が「ネットワーク上で(ファイル、プリント、アプリケーション等の)サービスを提供するコンピュータ又は同コンピュータソフトウエア」等を意味する語であるから、「Security Server」の文字からは、「システムの防災、安全保護等を提供するコンピュータ又は同コンピュータソフトウエア」の如き意味合いを看取させるものということができる。しかしながら、本願商標は、前記のとおり、「Quick Security Server」の文字からなるものであって、原査定説示のように、該文字が、本願指定商品の品質、機能等を具体的に表したものということもできないとみるのが相当である。また、当審において調査するも、該文字が、本願指定商品の品質、機能等  を表す語として、一般に使用されている事実も見い出せない。してみれば、本願商標をその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当であり、また、商品の品質について誤認を生じるおそれもないものといわなければならない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。その他、本願について拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する
平成17年10月20日
審判長  特許庁審判官 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
特許庁審判官 寺光 幸子

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#70

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ADSYS」×引用商標:「ハドシス」「HADSYS」ほか

1.出願番号  商願2003-29119(拒絶査定に対する審判事件)(不服2004-1233)
2.商  標  「ADSYS」
3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム ほか
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  「ADSYS」は「ハドシス」や「HADSYS」に類似する。

拒絶理由通知 出願商標1・商標登録第4896629号
出願商標1・商標登録第4896629号
引用商標1・商標登録第2604543号
引用商標1・商標登録第2604543号
 引用商標2・商標登録第2614396号
引用商標2、4・商標登録第2614396号
引用商標3,5・商標登録第2614397号
引用商標3,5・商標登録第2614397号
引用商標6・商標登録第2657787号
引用商標6、8・商標登録第2657787号
引用商標7・商標登録第2657789号
引用商標7・商標登録第2657789号

審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

  【手続の経緯】
 出     願   平成15年 4月10日
 拒絶理由の通知   平成15年 9月 2日
  同 発送日   平成15年 9月 4日
意  見  書 平成15年 9月19日
拒 絶 査 定 平成15年12月17日
 同 謄本送達   平成15年12月19日
  【拒絶査定の要点】
原査定は、『この商標登録出願は、平成15年 9月 2日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、本願商標から「アドシス」、引用各商標から「ハドシス」の称呼が生じるものです。そこで、両称呼を比較すると、両者は、4音中3音を共通にし、異なるところは、語頭における「ア」と「ハ」の音にありますが、「ハ(ha)」の子音「h」は、無声摩擦音で比較的弱く発音され、母音「a」に吸収されて「ア」音に近似したものとなり、両称呼を一連に称呼するときには、語調語感が近似し、互いに聴別しがたいものと認めます。したがって、本願商標は、引用各商標と称呼上類似の商標であり、かつ本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含有するものですから、さきの認定を覆すことはできません。また、出願人の添付の既登録例は、本件とは事案を異にしますから、それをもって本件の判断基準となすことは必ずしも適切ではありませんから、その主張は採用できません。』というものであります。
  【本願商標が登録されるべき理由】
然るに、本出願人は、先の意見書において、本願商標は、引用各商標と外観・称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標である旨、過去の既登録例を交えて主張したにもかかわらず、今般このような認定をされたことに関しては納得できないところがあり、ここに審判を請求し再度の御審理を願う次第であります。
 (a)本願商標の構成
本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、欧文字で「ADSYS」と書した態様からなり、指定商品を第9類「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。
 (b)引用商標の構成
 先の意見書で引用された引用商標(8件)は、以下の通りであります。
1 登録第2604543号(商公平 5-018055)「ハドシス」 24類
 2 登録第2614396号(商公平 5-027317)「株式会社ハドシス」 10類
 3 登録第2614397号(商公平 5-027318)「HADSYS Inc.」 10類
 4 登録第2641007号(商公平 5-058748)「株式会社ハドシス」 11類
 5 登録第2641008号(商公平 5-058749)「HADSYS Inc.」 11類
 6 登録第2657787号(商公平 5-078049)「図形+HADSYS」 10類
 7 登録第2657789号(商公平 5-078051)「図形+HADSYS」 10類
 8 登録第2701273号(商公平 6-015813)「図形+HADSYS」 11類
 (c)審査官の認定に対する反論
審査官は、これら1~8を引用し、本願商標「ADSYS」は、引用各商標と称呼上類似の商標であり、かつ本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含有するものであるから、登録できないと認定しております。しかしながら、本出願人は、本願商標とこれら各引用商標とは、外観・観念上は勿論、称呼上も紛れることのない非類似の商標であると考えます。
 (c-1) まず、本願商標は、上述のように、同書・同大・同間隔の欧文字で「ADSYS」と一連に書した態様から成るものでありますので、これより「アドシス」の称呼を生じるものと思います。これに対し、引用各商標は、審査官の指摘するように、上記態様の「ハドシス」ないし「HADSYS」の部分より、いずれも「ハドシス」の称呼を生じるものと思います。審査官は、本願商標の称呼「アドシス」と引用各商標の称呼「ハドシス」とは、「ア」と「ハ」の1音相違しかないため、両者は称呼上紛らわしいと判断しておりますが、全体が長い称呼であればまだしも、4音という短い音構成からなる商標同士の比較において、1音の違いは決して小さな差異ではないと考えます。しかも、その相違する音の位置が、取引者・需要者をしてもっとも注意を引きやすい語頭音における差異であり、さらには、この語頭音はこれら両商標を自然に称呼して分かるとおり、アクセントのある位置、即ち強く発音される音となっております。したがって、これら両商標は、称呼上彼此混同を起こすようなことはなく、互いに非類似の商標であると考えます。
 (c-2) 審査官は、拒絶理由通知書の中で“4音中3音を共通にし”として、如何にも差異はわずかであるかの如き言い回しをしておりますが、わずか4音という短い音構成にあって、語頭のしかも強く発音される1音の相違は決して小さな相違ではないと考えます。また、審査官は、“異なるところは、語頭における「ア」と「ハ」の音にありますが、「ハ(ha)」の子音「h」は、無声摩擦音で比較的弱く発音され、母音「a」に吸収されて「ア」音に近似したものとなり、両称呼を一連に称呼するときには、語調語感が近似し、互いに聴別しがたい”としておりますが、そうともいえないと思います。意見書でも述べたように、両者は、母音(a)を共通にするものの、本願商標語頭音の「ア」は共鳴の形の開放音ではっきり澄んだ音であるのに対し、引用商標語頭音の「ハ」は声帯を半開きにして出す摩擦音で官能的感覚の丸い音であり、音感音質を異にするものと考えます。なお、引例の「ハドシス」、「HADSYS」は、権利者の社名(株式会社ハドシス)の略称であり、いわばハウスマーク的なものでありますので、この指定商品を扱う取引者・需用者が、「ハ」と「ア」を発声し間違えたり、聞き間違えたりするとは到底思えません。以上のような状況を総合的に考察すると、取引者・需用者間において、本願商標「アドシス」と引用商標「ハドシス」とは、称呼上彼此混同を起こすことのない非類似の商標であると考えます。
 (c-3) そして、このことは、過去の商標登録例をみても言えることであります。即ち、過去の商標登録例をみると、例えば、以下(A)、(B)の登録商標が併存しております。
(A)登録第2252706号の1「AdSis」 S34年法第9類 …第1号証 株式会社アライヘルメット
(B)登録第2711395号 「HADSYS」 S34年法第9類 …第2号証 株式会社ハドシス
これらの商標は、共に昭和34年法第9類の商品を指定するもので互いに同一又は類似の商品を含んでおりますが、前者(A)の称呼が「アドシス」であるのに対し、後者(B)の称呼が「ハドシス」であるにもかかわらず、互いに類似と判断されることなく、それぞれ別法人により登録されております。然るに、同じ称呼の関係にある本願商標「アドシス」と引用各商標「ハドシス」が併存できないとされる謂われはありません。先願にかかる(A)登録第2252706号の1「AdSis」(第1号証)の存在にも拘わらず、後願に係る(B)登録第2711395号「HADSYS」(第2号証)が登録されたのと同様に、先願にかかる引用商標「ハドシス」、「株式会社ハドシス」、「HADSYS Inc.」、「図形+HADSYS」が存在したとしても、本願商標「ADSYS」は当然に登録されて然るべきであります。
この点に関して、審査官は、拒絶査定の中で“出願人の添付の既登録例は、本件とは事案を異にしますから、それをもって本件の判断基準となすことは必ずしも適切ではありません”としておりますが、全く別の称呼を生ずる商標同士を引き合いに出したわけではありません。これら併存登録商標の称呼は、「アドシス」と「ハドシス」であることは誰の目にも明らかであり、本願商標の称呼「アドシス」と審査官が引用した商標の称呼「ハドシス」と全く同じ関係であります。これを登録した審査官は、1音相違であっても、本出願人が主張したような点、即ち「全体が短い音構成であること」,「相違音は語頭音でしかも強音であること」,「相違音は澄んだ音と摩擦音の違があること」等々を十分に配慮して類否判断を行い、非類似の結論を出したものと思います。それ故、この既登録例の存在が本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がないと考えます。その様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分かりません。今までの審査実務に束縛されることはないにしても、それなりの理由があって、これらの既登録例が存在しているわけですから、この事実を全く参考にならないとして無視するのはどうかと思います。全く考慮することがないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するようなものであると考えます。
  【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標と引用各商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も、短い音構成の語頭音における共鳴の形の開放音ではっきり澄んだ強音の「ア」と、声帯を半開きにして出す摩擦音の丸い音の強音である「ハ」の違いによって、語感語調を異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。それ故、本願商標と引用商標1~8とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考えます。
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(参考)ケース70の「審決」
不服2004- 1233
   商願2003-29119拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
   原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。
理 由
  1 本願商標
 本願商標は、「ADSYS」の欧文字を書してなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成15年4月10日に登録出願されたものである。
  2 引用商標
 原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第2604543号商標(第24類)は、「ハドシス」の文字を書してなるものである。同じく、登録第2614396号商標(第10類)及び登録第2641007号商標(第11類)は、「株式会社ハドシス」の文字を書してなるものである。同じく、登録第2614397号商標(第10類)、登録第2641008号商標(第11類)、登録第2657787号商標(第10類)、登録第2657789号商標(第10類)及び登録第2701273号商標(第11類)は、別掲のとおりの構成よりなるものである。
 3 当審の判断
 原査定で引用の登録第2604543号商標、登録第2614396号商標、登録第2614397号商標、登録第2641007号商標、登録第2641008号商標、登録第2657787号商標及び登録第2657789号商標の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、存続期間満了により、いずれも商標権の抹消の登録がなされているものである。したがって、これらの引用商標を根拠とする拒絶の理由は解消した。つぎに、原査定で引用の登録第2701273号商標(以下「引用商標」という。)は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成中「HADSYS」の文字は、他の文字に比してひときわ顕著に表されており、図形部分とも構成上独立して看取されるものであるから、該文字部分のみも独立して自他商品の識別機能を有するものといわなければならない。してみると、引用商標からは、その構成中の「HADSYS」の文字部分に相応して「ハドシス」の称呼をも生ずるものである。一方、本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して「アドシス」の称呼を生ずるものと認められる。そこで、本願商標より生ずる「アドシス」の称呼と引用商標より生ずる「ハドシス」の称呼を比較すると、両称呼は、称呼における識別上重要な要素をしめる語頭にあって、「ア」と「ハ」の音質を異にして明瞭に聴取し得る音の差異を有するものであるから、この差異が両称呼全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合には、語調語感が異なるものとなって十分に聴別し得るものといわなければならない。また、本願商標と引用商標とは、外観においては、前記のとおりの構成よりなるものであるから、明らかに区別し得るものであり、観念についても、特定の観念を生じない造語であるから、比較すべくもないものである。してみれば、本願商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても非類似の商標といわざるを得ない。したがって、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。
平成17年 9月 1日
 審判長  特許庁審判官 小林 薫
      特許庁審判官 寺光 幸子
      特許庁審判官 井出 英一郎

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