商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#84

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「ケータイ OTP」 (審判)

1.出願番号  商願2006-29206(不服2006-28569)
2.商  標  「ケータイ OTP」
3.商品区分  第9類 電子計算機用プログラム ほか
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号
5.拒絶理由  本願商標は全体として「携帯電話機用使い捨てパスポート」程度の意味合いを認識させるから、単に商品の品質を表示するに過ぎない。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5078625号
出願商標・商標登録第5078625号

6.不服審判における反論(請求の理由)拒絶理由通知

 【手続の経緯】
 出     願   平成18年 3月31日
 拒絶理由の通知   平成18年10月25日
  同 発送日   平成18年10月26日
意  見  書   平成18年11月20日
拒 絶 査 定   平成18年12月13日
 同 謄本送達   平成18年12月14日
  【拒絶査定の要点】
拒絶査定の理由は、“この商標登録出願は、平成18年10月25日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、前の拒絶の理由で開示したように、本願商標は、「ケータイ」の文字部分は、「携帯電話機」に通じる語を、「OTP」の文字部分は、「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワードともいう。)」(秀和システム編集部著者「通信・ネットワーク用語事典 2003~2004」株式会社秀和システム、2003年5月5日初版第1版発行、405頁)の意味合いのある英語「Onetime Password」の略語を連綴したものと認められ、指定商品との関係において、これよりは、「携帯電話機用使い捨てパスワード」程度の意味合いを理解、認識させるものでありますから、これを本願の指定商品中、「前記に照応する商品」に使用されたときは、単に、商品の品質を表示するにすぎないものと認めます。出願人は、登録例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨主張していますが、本願商標とは同一の事案とは認められず、これを本願商標に採用することは適切ではなく、本願商標については、前示のとおり判断するのを相当とします。したがって、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります(商標法第3条第1項第3号、同第4条第1項第16号)。
  【本願商標が登録されるべき理由】
 しかしながら、本出願人は、本願商標の「ケータイOTP」は、商品の品質を表示する言葉ではなく、十分に自他商品識別標識として機能する商標であると考えますので、上記認定には承服できず、ここに審判を請求し、再度の御審理を願う次第であります。
(a)本願商標の構成
 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、片仮名文字と英文字で「ケータイOTP」と一連に横書きした態様から成るもので、第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品とするものであります。
(b)審査官の認定に対する反論
(b-1)
審査官は、本願商標の「ケータイ」の文字部分は「携帯電話機」に通じる語を、「OTP」の文字部分は「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワード)」の意味合いのある英語「Onetime Password」の略語を連綴したものと認められ、指定商品との関係において、これよりは「携帯電話機用使い捨てパスワード」程度の意味合いを理解、認識させるものであり、単に商品の品質を表示するにすぎないと指摘しております。
 しかしながら、本願商標は、先の意見書でも述べたように、前段の「ケータイ」の文字からは「携帯電話機」に通じる語を連想させるかも知れないものの、後段の「OTP」の文字部分からは、本願の指定商品との関係において「Onetime Password」の略語を、取引者・需要者に直ちに認識させるものではないと思料します。
 成る程、「One Time Password」を略すときには、これらの頭文字を並べて「OTP」と表記するのかも知れません。しかし、そうだからと言って、その逆もまた真なりとは限りません。「OTP」の三文字から「Onetime Password」の言葉を直ちに連想させるものではないと思います。なぜなら、「OTP」の文字は、「Onetime Password」の略語であると、この指定商品の分野における取引者・需要者間に浸透している訳ではないからです。審査官は、「通信・ネットワーク用語事典 2003~2004」に、「OTP」について「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワードともいう。)」と説明があることから、本願商標後段の「OTP」は「Onetime Password」の略語であると主張しています。しかし、例えば、「OTP ROM」の「OTP」は「One Time Programable」を表すものであり、また、Linuxとオープンソースを中核としたオープンなシステム、アーキテクチャ、テクノロジーを表す「OTP」は「Open Teck Press」の略語であり、決して「Onetime Password」の略語ではありません。つまり、本願指定商品の分野において、「OTP」が全ての場合において「Onetime Password」の略語であるとは限りません。
 そして、仮に「OTP」が「Onetime Password」の略語だとしても、取引者・需要者間においては、「OTP」を表現するのに、普通一般に「Onetime Password」(ワンタイムパスワード)なる表現を用いてはおりません。それ故、取引者・需要者は、「OTP」の文字から「Onetime Password」を連想することはありません。「OTP」の文字から連想し称呼するのは、単なるアルファベットの「OTP」と「オーティーピー」の称呼だけであります。この文字をみて「ワンタイムパスワード」と称呼したり、全体を一連に「ケータイワンタイムパスワード」と称呼するとは到底思えません。「携帯電話機用使い捨てパスワード」を観念するとも思えません。
本願商標は、カタカナの「ケータイ」とアルファベットの「OTP」を横書きしてなる商標であり、両書体は異なるものの、左右軽重差なくバランス良く配置され、全体を「ケータイオーティーピー」と称呼して決して冗長にならず、語呂もよく、また、観念的にも全体として格別の具体的意味を持たない造語商標であります。それ故、本願商標は、単に商品の品質内容を表示する言葉ではなく、全体として十分に自他商品識別力を有する商標であると考えます。
(b-2)
 ところで、先の意見書でも触れましたが、過去の商標登録例をみますと、第9類の電子計算機(11C01)等を指定し、「OTP」の文字を含む商標として、例えば「スーパーOTPマイコン」なる登録商標の存在が確認できます(第3145361号 、平成8年4月30日登録、ローム株式会社)(第1号証)。これなどは、指定商品との関係において、「スーパー」も「マイコン」も品質内容表示に過ぎないと思われますので、この商標の要部は「OTP」の文字にあるか、或いは全体の組み合わせにあるということで登録されたものであるとみざるを得ません。
 そして、この場合、仮に「OTP」が審査官殿の言われるように品質内容表示であるとすれば、この商標は、個々の単語「スーパー」「OTP」「マイコン」自体には識別力がない商標だが、それらを組み合わせることによって、つまり「スーパーOTPマイコン」と一連一体に把握することによって、全体として識別力を認め登録されたものと考えざるを得ません。本出願人は、「OTP」は品質内容表示ではないと考えますが、一歩譲って、たとえ品質内容表示であったとしても、本願商標「ケータイOTP」は、全体として識別力を有する商標と見るべきであり、この点は上記「スーパーOTPマイコン」と同様であります。この「スーパーOTPマイコン」が登録できて、本願商標の「ケータイOTP」が登録できないとされる謂われは全くありません。
 この点に関して、審査官は拒絶査定書において、“この登録例は、本願商標と同一の事案とは認められず、これを本願商標に採用することは適切ではない”と指摘しております。しかしながら、指定商品との関係において、凡そ、識別力がないと思われる「スーパー」と「マイコン」の文字との間に「OTP」の文字が配置されて登録になった事実がある以上、「OTP」が品質表示であるとするならば、この商標は、全体として識別力を有する商標と判断されて登録されたと見ざるを得ません。そうであるとすれば、本願商標とて、全体として識別力を有する商標であるとして登録することに何ら違和感はないはずです。
 この既登録例の存在が本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がありません。同一事案とは認められないといっても似たような事案であり、全く無視する様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分かりません。今までの審査実務に束縛されることはないにしても、それなりの理由があって、これらの既登録例が存在しているわけですから、この事実を全く参考にならないとして無視するのはどうかと思います。過去の登録例を全く考慮することがないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するようなものであります。
(b-3)
 繰り返しますが、本出願人は、「ケータイ」が「携帯電話機」に通じる語を、また「OTP」が「発行してもらってから1回だけしか利用できないパスワードのこと(使い捨てパスワード)」の意味合いのある英語「One Time Password」の略語を、それぞれ暗示させあるいは間接的に想起させることのある文字であることを否定するものではありません。しかし、「OTP」は「One Time Programable」や「Open Teck Press」など、他の略語を想起することもまた事実であります。
 然るに、「OTP」が「使い捨てパスワード」を暗示することがあったとしても、そのことが直ちに、本願商標全体が「携帯電話機用使い捨てパスワード」という特定の意味を具体的に表す品質表示にすぎない、即ち、品質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、ということを意味するものではありません。他の観念を暗示または間接的に想起することもあります。
 なお、商標法第3条第1項第3号の商標審査基準には、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする”と明確にうたっています。この審査基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には承服しかねます。
  【むすび】
 以上の次第でありますので、本願商標は商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標ではなく、自他商品識別力を有し、充分登録適格性を備えたものと思料します。
 よって、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものであるとの審決を求める次第であります。

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(参考)ケース84の「審決」
   商願2006- 29206拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論
   原査定を取り消す。
   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由
1 本願商標
 本願商標は、「ケータイ OTP」の文字を書してなり、第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成18年3月31日に登録出願されたものである。
   
2 原査定の理由の要点
 原査定は、「本願商標は、『携帯電話機』に通じる『ケータイ』の文字と、『発行してもらってから1回だけしか利用できないパスポートのこと(使い捨てパスポートともいう。)』の意味合いのある『One Time Password』の略語を連綴した『OTP』の文字とを、『ケータイ OTP』と書してなるところ、全体として『携帯電話機用使い捨てパスポート』程度の意味合いを理解、認識させるから、これを本願指定商品中、『前記に照応する商品』に使用するときは、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
   
3 当審の判断
 本願商標は、前記1のとおり、「ケータイ OTP」の文字を書してなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ及び同じ間隔で、外観上もまとまりよく一体的に表された構成よりなるものである。そして、当審において調査するも、本願商標を構成する「ケータイ OTP」の文字が、直ちに原審説示の如くの意味合いを表示するものとして一般に理解され、特定の商品の品質等を直接、かつ、具体的に表示したものとはいい難く、取引者、需要者間において、取引上普通に使用されている事実も見出せない。してみれば、本願商標は、構成文字全体で一種の造語を表したものとみるのが相当であるから、これをその指定商品に使用しても、その商品の品質を表示したものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮し得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものとみるのが相当である。
 したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものでなく、取消しを免れない。その他、政令で定める期間内に拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する。

 平成19年 8月30日

                 審判長  特許庁審判官 小林 和男
                      特許庁審判官 津金 純子
                      特許庁審判官 日向野 浩志

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#83

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「Jバンク」× 引用商標「BANK、P・BANK、M・BANKほか」

1.出願番号  商願2006-10718
2.商  標   「Jバンク」×「BANK、P.BANKほか」
3.商品区分  第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5044077号
出願商標・商標登録第5044077号
引用商標・商標登録第3370486号
引用商標1・商標登録第3370486号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標2・商標登録第4005462号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標3・商標登録第4374905号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標4・商標登録第4555615号
引用商標5・商標登録第4757121号
引用商標5・商標登録第4757121号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の引用商標1~5と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。
 引用商標1:登録第3370486号(商公平 9-003045)「BANK」
 引用商標2:登録第4005462号(商願平 6-003700)「P・BANK」
 引用商標3:登録第4374905号(商願平11-003588)「M・BANK」
 引用商標4:登録第4555615号(商願2001-019655)「AV BANK」
 引用商標5:登録第4757121号(商願2003-077523)「FX-BANK」
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字と片仮名文字で一連に「Jバンク」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標1は欧文字で「BANK」と、引用商標2は欧文字で「P・BANK」と、引用商標3は欧文字で「M・BANK」と、引用商標4は欧文字で「AV BANK」と、また引用商標5は欧文字で「FX-BANK」と、それぞれ横書きしたものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、外観上類似しないこと明らかであります。
(3) また、本願商標の「Jバンク」は、欧文字の「J」と「bank」の表音であるカタカナの「バンク」から成るもので、全体として「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如き固有名詞的な観念を生じさせる商標であります。
 これに対し、引用商標1は「BANK」の文字より単に「バンク」とか、「銀行」の観念を、また、引用商標2~5はそれぞれの態様より「ピー・バンク」「ピー銀行」、「エムバンク」「エム銀行」、「エーブイバンク」「エーブイ銀行」、「エフエックスバンク」「エフエックス銀行」の如き観念を生じさせるものであります。
 したがって、本願商標と引用商標1~5は、観念上も紛れることのない非類似の商標であります。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討します。
 本願商標の「Jバンク」は、前述したように、欧文字の「J」とカタカナの「バンク」とからなるものでありますが、全体が同書・同大・同間隔で一連一体に書されており、しかも、全体として、例えば「ジェイバンク」「ジェイ銀行」の如きまとまった一つの意味合いを生じさせるものでありますので、本願商標は全体を一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は常に「ジェイバンク」と称呼するものと思料します。
 この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は「バンク」の部分にあり、単に「バンク」と称呼される場合もあると判断して、上記の「BANK」の文字を含む引用商標1~5を引いてきたのだと思料しますが、これは誤った見方であると考えます。
成る程、本願商標は、a)アルファベット「J」とカタカナの「バンク」からなり、且つ、b)前半の「J」は、通常は単独で商標の要部とはなり得ない欧文字一文字(記号・符号の類)であることは事実であります。しかし、だからといって、本願商標の要部が後半部の「バンク」のみにあるとみるのは、短絡的にすぎます。
本願商標は、あくまでも、「J」と「バンク」とが組合わさって外観上まとまりよく一体となった商標「Jバンク」であって、単なる「J(ジェイ)」でもなければ、単なる「バンク」でもありません。本願商標において文字の種類を変えたのは、これら「J」と「バンク」を分断するためのものではありません。両者を分断して、一方のみに商標の要部があるかのような把握、例えば、要部は「バンク」のみと把握したのでは、「一体どんなバンク、銀行」なのかを理解することは出来ません。本願商標は、全体を一体に把握してこそ「Jバンク」「ジェイバンク」「ジェイ銀行」というような一つの固有名詞的な意味合いを生じさせるのであって、全体として一つの固有名詞的な意味合いを観念させるところに特徴があります。全体として一つの意味合いを把握できる場合に、わざわざ前後分断してその商標を2つに分けて把握するような仕方は、取引者・需要者が通常行うことはないと考えます。
 本願商標は、全体としてさほど冗長な商標ではありませんので、一気に「ジェイバンク」とよどみなく称呼できますし、全体として語呂がよく、称呼しやすい商標であります。それ故、前後を分断して例えば、後半の「バンク」のみを称呼すると言うことはあり得ないと考えます。本願商標は、一連に称呼してこそ一つのまとまった意味合いを生じさせる商標でありますので、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「バンク」とのみ称呼したり、単に「ジェイ」と称呼するようなことはあり得ないことであります。だいいち分断して称呼するのは不自然であります。それでは本願商標独特の固有名詞的な意味合いは把握できませんし、本願商標としての自他商品識別力を正確に発揮することもできません。
一つの固有名詞的な意味合いを生じさせる本願商標は、全体として一つの自他商品識別機能を発揮するものであり、全体が冗長であり一気に称呼し難いとか、一気に称呼したのでは語呂が悪く称呼し難いとか、一部の文字が特に目を引く態様となっているとかの格別な事情がない限り、前後分断することなく一連に称呼するのが自然であります。
 然るに、本願商標は、全体を一連に称呼して決して冗長な印象を与える商標ではなく、格別に「バンク」の文字が目立つような特殊な態様からなる商標でもありません。むしろ全体として語呂もよく一連に「ジェイバンク」と称呼し易いもので、その様に称呼してこそ、一つの意味合いを持つ識別力ある商標となると考えます。
 よって、本願商標は全体をよどみなく一連に「ジェイバンク」とのみ称呼されるものであり、これに対して引用商標1~5は、それぞれ「バンク」「ピーバンク」「エムバンク」「エーブイバンク」「エフエックスバンク」と称呼されるものでありますので、両者は、「ジェイ」の称呼の有無が大きく異なり、称呼上決して紛れるものではありません。
(5) ところで、引用商標1と引用商標2~5の関係をみて分かるように、これらは「BANK」の文字を共通にする商標同士でありますが、引用商標1の「BANK」の存在にも拘わらず、他の2~5の引用商標「P・BANK」「M・BANK」「AV BANK」「FX-BANK」が登録されております。
 そして、このことから言えることは、これら2~5の引用商標は、「BANK」の部分を商標の要部と把握されたのではなく、全体として分離できない一体の商標と把握されたということであります。なぜなら、引用商標2~5より、「BANK」の部分が要部と把握されていたならば、これら引用商標2~5は、引用商標1「BANK」の存在によって、登録されることはなかったはずだからであります。それが登録されたと言うことは、これら2~5の引用商標は全体として分離することのできない一つの商標と把握されたと考えざるを得ません。
 本願商標とて同様であります。本願商標は「Jバンク」(ジェイバンク)」と一連一体に把握されるべき商標で、「J」と「バンク」を分離すべき商標ではありません。常に「Jバンク」(ジェイバンク)であり、引用商標1の「BANK」(バンク)とは類似することはありません。ましてや、本願商標「Jバンク」(ジェイバンク)は一連に把握される引用商標2以下、即ち、「P・BANK」(ピーバンク)、「M・BANK」(エムバンク)、「AV BANK」(エーブイバンク)、「FX-BANK」(エフエックスバンク)の各商標と称呼上類似することはありません。
(6) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1~5と、外観、観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#82

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「トラッドブルー/TRAD BLUE」× 引用商標「TRAD」

1.出願番号  商願2006-52083
2.商  標   「トラッドブルー/TRAD BLUE」×「TRAD」
3.商品区分  第30類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5043894号
出願商標・商標登録第5043894号
引例商標1・商標登録第2412689号
引例商標1・商標登録第2412689号
引例商標2・商標登録第2435059号
引例商標2・商標登録第2435059号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号011510)において、審査官殿は、
 1.登録第2412689号の商標「TRAD」(茶)…(引用商標1)および、
 2.登録第2435059号の商標「TRAD」(コーヒー)…(引用商標2)を引用し、本願商標は、これらの登録商標と類似するため商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。
 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1,2とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2) まず、本願商標は、上段の 片仮名と下段の欧文字で「トラッドブルー/TRAD BLUE」と二段併記して成るものであるのに対し、引用商標は、上述のとおり、何れも、単に欧文字の「TRAD」から成るものである。したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似することはない。
(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標「トラッドブルー/TRAD BLUE」のうち、前段の「トラッド/TRAD」の部分は、国語辞典などを紐解くと、“[名・形動]《traditionalの略》1 伝統的であるさま。また、そのもの。特に、流行にとらわれないデザインの服装。「―なアイビールック」 2 ディキシーランドジャズのこと。”等と説明されており、また、「ブルー/BLUE」の部分は「青(ブルー)」を意味していることから、一般的な取引者・需要者であれば、この本願商標全体から「伝統的な青(ブルー)」を観念すると思われる。これに対して、引用商標1,2は単に「伝統的であるさま。」等を意味するに過ぎず、「青(ブルー)」の観念はないから、両者は観念上も類似することはない。
(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。
 (4-a) 本願商標は、上述のように、下段の欧文字部分「TRAD BLUE」が、「TRAD」と「BLUE」の間にやや間隔をあけた態様ではあるが、その上段の片仮名部分は読みを表すべく、一連に「トラッドブルー」と書されているので、これを見た取引者・需要者は、一連に「トラッドブルー」とのみ称呼するものと思われる。この点に関し、審査官殿は、本願商標の後段である「ブルー/BLUE」の文字部分を品質表示的にとらえ、前段である「トラッド/TRAD」の部分に商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「トラッド」と称呼される場合もあると判断し、「TRAD」を引用してきたものと思料する。しかし、このように、本願商標の「トラッドブルー/TRAD BLUE」から、その「トラッド/TRAD」の部分のみを抽出し称呼するのは、如何にも不自然である。本願商標「TRAD BLUE」は、「TRAD」と「BLUE」の間にやや間隔をあけた態様ではあるが、左右軽重差なく同書・同大・同間隔にバランスよく配されている。また、全体として「伝統的な青(ブルー)」という一つのまとまった意味合いを生じさせており、その読みを表すべく上段の片仮名部分も「トラッドブルー」と一連に書している。したがって、本願商標の前段部分「TRAD」と後段部分「BLUE」とに軽重差を設けて、前段部分「TRAD」のみを抽出して称呼するようなことはすべきでない。本願商標は、その様なことのないように左右バランスよく配したもので、一連の読みを表すべく片仮名部分で一連に表記している。しかも、本願商標は全体が6音構成という短い音構成からなるもので、全体を一連に称呼して語呂がよく、一連に称呼し易い商標である。しかも、前述したように全体として「伝統的な青(ブルー)」という一つのまとまった意味合いを有している。まとまった意味合いを生ずるのに、あえて「TRAD」と「BLUE」とを分断し、一方の「TRAD」のみを抽出して「トラッド」と単独で称呼すべき場合があるなどと考えるべきではない。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「トラッドブルー」のみである。
 これに対し、引用商標1,2は、いずれもその態様より「トラッド」とのみ称呼されるものであるから、両者は「ブルー」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して類似することはないと思料する。
(4-b) ところで、過去の商標登録例を見ると、同一又は類似の指定商品群において、本願商標の「BLUE」のように「色」を表す文字を含む商標と含まない商標は、色以外の文字を共通にしながらも、別法人において、以下のように多数並存登録されている。例えば、
(a)第4463673号「ラブラブ/LOVE LOVE」(株)ハセガワ(第1号証)と、
(b)第4866458号「ラブラブグリーン」(株)市川製茶工場(第2号証)。
(c)第 536655号「ファミリー/FAMILY」(株)アートコーヒー(第3号証)と、
(d)第2552154号「ファミリーグリーン」エンチーム(株)(第4号証)。
(e)第2011780号「モーション」(株)エルビー(第5号証)と、
(f)第4598044号「Motion Blue」伊藤忠商事(株)(第6号証)。
 この場合、仮に「グリーン」や「Blue」が、商標の要部ではないと判断されていたならば、要部は共通文字部分ということになり、後願に係る商標上記(b)(d)(f)は拒絶されていたはずであるが、現実には登録されている。これは「グリーン」や「Blue」などの色を表す言葉も品質表示などではなく、他の文字と共に商標の要部を構成すると判断されたからに他ならない。つまり、これらの商標が存在しているのは、「グリーン」や「Blue」の文字にも商標の識別性の要素を十分に認め、あくまでもこの「グリーン」「Blue」の文字を含めた全体として1つの不可分一体の商標を構成すると判断し、審査したからに他ならない。本願商標と引用商標の関係も、これら(a)と(b)、(c)と(d)、(e)と(f)の各商標の関係と軌を一にするものであって、本願商標の「TRAD」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはない。本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「トラッドブルー」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に引用商標の称呼である単なる「トラッド」とは、類似することはない。
(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「ブルー」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例目次

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商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#81

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標「クイックEx-Flu「生研」」×引用商標「クイック/QUICK」

1.出願番号  商願2006-32596
2.商  標   「クイックEx-Flu「生研」」×「クイック/QUICK」
3.商品区分  第5類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由  類似する。

拒絶理由通知 出願商標・商標登録第5025790号
出願商標・商標登録第5025790号
引用商標・商標登録第2031991号
引用商標・商標登録第2031991号

拒絶理由通知 意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、“本願商標は、登録第2031991号(商公平61-093063)の商標(以下、引用商標という)と類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する”と認定されました。
しかしながら、本出願人は、本願商標「クイックEx-Flu「生研」」は、引用商標「クイック/QUICK」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) まず、本願商標は、カタカナと欧文字と漢字とで「クイックEx-Flu「生研」」と横書きした態様からなるものでありますが、引用商標は、カタカナと欧文字で二段に「クイック/QUICK」と書した態様から成るものであります。したがって、両者は外観上類似しないこと、明らかであります。
(3) また、観念の点についてみると、本願商標の「クイックEx-Flu「生研」」は、速いさまを表す「クイック」(「quick-」に通じる)が、そのあとに続く「Ex-Flu「生研」」を形容して、指定商品第5類「薬剤」等との関係にあって、全体として「効き目の速いEx-Flu「生研」(薬剤)」とか、「分析が速くできるEx-Flu「生研」(試薬)」とかの意味を表すものであります。
 したがって、この本願商標の「クイック」は、薬剤などの「効き目の速い」こと、あるいは、試薬などの「分析の速い」ことを意味する形容詞の「クイック」であって、指定商品との関係では、「Ex-Flu「生研」」を形容する品質内容表示でしかありません。したがって、この部分は自他商品識別力を持たない部分であります。それ故、本願商標の要部(自他商品識別力を生じる部分)は、あくまでも「Ex-Flu「生研」」にあります。
 これに対し、引用商標の「クイック/QUICK」は、「動作や時間などが速いさま」の意味の他に、「理解が早いさま」、「資産などが直ぐに現金化できること」、「カーブが急なさま」等々、様々な観念を生じさせる言葉であります。したがって、引用商標は、その指定商品「薬剤」との関係で、その特定の品質内容を表示する言葉ではないと言う理解の下に、商標登録されたものと考えられます。したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することはありません。
(4) そこで、次に、称呼の点について検討します。
 称呼の点に関して審査官殿は、本願商標のカタカナ部分から単に「クイック」の称呼も生じるとして、引用商標「クイック/QUICK」を引用して、その対比を行ったのだと思います。
 しかしながら、上述のように本願商標の「クイック」の部分は、そのあとに続く「Ex-Flu「生研」」を形容する品質内容表示であって、商標の要部を構成する言葉ではありません。
 そのため、「クイック」の部分のみを抽出して、引用商標と比較する今般の手法は妥当なものではないと考えます。識別力のない部分からも称呼が生じることを否定するものではありませんが、識別力のない部分はあくまでも識別の対象とならない部分であって、そこの部分を単独で比較の対象とすべきではありません。本願商標は、「クイックEx-Flu「生研」」と書した態様より「クイックイーエックスフルセイケン」、あるいは「クイックイーエックスフル」、あるいは「イーエックスフルセイケン」、「イーエックスフル」などの称呼を生じるものでありましょうが、単独で「クイック」の称呼を生じることはありません。識別力のない品質表示部分からは単独で識別を図るための称呼は生じません(それ故、単独で比較の対象とはなりません)。
 これに対し、引用商標は、単に「クイック/QUICK」と書された態様より(これが品質表示でなく識別力を有するとするならば)、「クイック」の称呼が生じます。
 それ故、本願商標と引用商標とは、「クイックイーエックスフルセイケン」と「クイック」、「クイックイーエックス」と「クイック」、「イーエックスフル」と「クイック」などの称呼上の違いがあり、少なくとも「イーエックスフルセイケン」や「イーエックスフル」を有する本願商標と、単なる「クイック」以外には他に何の音も存在しない引用商標とでは、称呼上明瞭に識別できるものであります。それ故、両者は称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。
(5) 以上のように、本願商標と引用各商標とは、外観・観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標であります。
 よって、本願商標は商標法第4条1項第11号の規定に該当するものではなく、十分に登録適格性を有するものと思料します。

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インド知的財産権振興管理支局(CIPAM) vol.7 商標_動画(embedded)

インド知的財産権振興管理支局 動画

1. Manoj Bajpayee asking us to say a STRICT NO TO PIRACY!、0:32 インド知的財産権振興管理支局 動画

Manoj Bajpayee asking us to say a STRICT NO TO PIRACY!

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商標登録insideNews: Trademark registration doubles in Cayman – CNS Local Life

(CNS Local Life): There has been a surge in local registrations for company brands following the passing of a new Trade Marks Law, which is part of the modernised legal framework for intellectual property (IP) in the Cayman Islands. According to the Cayman Islands Intellectual Property Office (CIIPO), applications have doubled over the past year.

情報源: Trademark registration doubles in Cayman – CNS Local Life : CNS Local Life

ケイマン諸島知的財産庁(CIIPO: Cayman Islands Intellectual Property Office)
ケイマン諸島の商標登録は倍にという記事です。

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商標登録insideNews: Peatos CEO: Cheetos Trademark Claim Won’t Stop Brand Success | Project NOSH

In May, PepsiCo’s Frito-Lay division, which makes Cheetos, accused World Peas Brand’s Peatos, which uses peas and lentils in its version of the traditional crunchy cheese flavored snack, of trademark infringement. In a letter sent to the smaller company that was recently obtained by the Wall Street Journal, PepsiCo alleges that Peatos’ name and paw-print logo are “confusingly similar” to Cheetos and that Peato’s slogan, “tigers live longer than cheetahs,” unfairly denigrates the Cheetos brand.

情報源: Peatos CEO: Cheetos Trademark Claim Won’t Stop Brand Success | Project NOSH

Peatos: Always Tasty. Never Corny.、0:30

A Darle/Let’s Go、0:26

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商標登録insideNews: 天童市、「人間将棋」の商標出願 同名イベントに危機感、本家ブランド守る|山形新聞

天童市は春の風物詩「人間将棋」の名称について、本年度内に商標登録しようと出願を済ませた。同名のイベントが全国各地で開催される中、「本家」として長年培ったブランドを守るためだ。イベント名の商標出願は市として初めてという。

情報源: 天童市、「人間将棋」の商標出願 同名イベントに危機感、本家ブランド守る|山形新聞

JG 4K 山形 天童桜まつり人間将棋 Tendo Sakuramatsuri Ningenshogi,Yamagata、33:05

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商標登録insideNews: Bob Dylan’s whiskey company hit with trademark suit – CBS News

LOUISVILLE, Ky. – Heaven Hill Distillery of Kentucky is taking Bob Dylan’s whiskey company to court, claiming trademark infringement involving its logo. Heaven’s Door Spirits is co-owned by the musician and debuted this year. WDRB-TV reports a Heaven Hill lawyer sent a cease-and-desist letter to Chicago-based Heaven’s Door in April, saying its “stacked” logo is similar to Heaven Hill’s. The lawsuit says Heaven’s Door attorneys replied that they didn’t expect confusion over the logos and didn’t plan to cha

情報源: Bob Dylan’s whiskey company hit with trademark suit – CBS News

情報源: KY Distiller to Bob Dylan whiskey co.: Hands off the trademark | 2018-08-21 | The Indiana Lawyer

Bob Dylan Announces Whiskey Label, 0:32

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