商標登録って何? 初めての商標登録出願 初心者向け 🔰 vol.1

初めての商標登録出願 商標登録って何?🔰

今まで真剣には考えたこともないという方、これから初めての商標登録出願をしてみようという方への解説ページ🔰です。

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1. 商標って何なの?

こんにちは。私、最近自分でデザインしたアクセサリーをネットで売ろうと思ってるの。 自分のブランドを作るにはどうしたらいいのかしら?

僕はメキシコ料理店を始めながら、実はユーチューバーになりたいと思ってるんだ。飲み仲間のおっちゃんが商標に詳しいらしいので聞きに行こう。

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初めまして。早速ですが、商標って何なんですか?

こんにちは。商標って、簡単には、商品やサービスの出所を示す目印かな。商標となる目印は文字や図形の場合もあるし、最近では音や立体的な標識もある。良く見かけるのは、取引する商品に直接表示したり、その包装に印刷したりしているよね。一度買って良かった商品をまた買ったり、他人に勧めたりするときは、商標で商品を区別するように機能していると思うよ

あれー酔っ払ってないと、結構まともだなあ

ところで、メキシコ料理屋も商標いるのかなあ?

そうだねえ。レストランや食堂もサービスを提供しているので、商標を使うことができると思うよ。勿論、登録も可能だね。

へぇーそうなんだ。看板を作ればいいだけじゃないんだね。

最近はスローガンも商標になるので、ちらしや広告の文字も気をつけた方がいいかな。例えば、メキシコ料理のレストランで、”太陽が育んだ食材でグルメ三昧”のようなスローガンを使用していたとすると、そのスローガンと似たような商標を取られていないかにも気を使うことになるね。

商標って見た目ではマークや目印そのものだけど、使う商品やサービスって決まってるのかな?

いい質問だね。商標って登録しないで自分で使うときはその商品や役務を勝手に選ぶことができると思うけど、商標登録する際には、どの商品に使うとかどの役務に使うとかを決めて登録するんだよ。正式にはどの商品に使うとかどの役務に使うとかの記載は指定商品・指定役務と呼ばれているんだ。商標と言って単に文字や図形のことを指しているときもあれば、登録に絡んで指定商品・指定役務についても合わせて考えているときもあるんだ。登録した商標や登録を前提とした商標についてはマークだけじゃなくて使おうとする指定商品・指定役務と一体に権利を考えることが重要だよ。

分かった。商標登録や商標権は商品や役務と一体なんだね。

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役務(えきむ)はサービスのことを言います。後で説明する国際分類では第35類から第45類までの11区分になります。平成27年より新しいタイプの商標として、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標が登録可能となっています。
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2. 商標登録は必要ですか?

商標について何となく分かった気がするけど、商標って登録しないといけないんですよね?

そんなことはないんだよ。商品を取引する際に商標を使用したとして、別にその商標を登録していないこと自体が法に触れるということはない。でも登録していないと、誰か他の人に取られてしまうリスクは続くことになるね。

商標の登録ってどういうことなの?

特許庁に自分が登録したい商標についての商標登録願という書類を提出して、それを審査してもらい、審査の結果、問題ないと判断されれば商標登録をすることができるんだよ。この手続は特許や意匠登録と同じように権利にする内容を記載した書類を提出することになるかなあ。何もしなければ、商標は登録されないことは確かだよ。

商標を登録すると何がいいの?

商標を登録すると、その商標について指定商品・指定役務の範囲で独占的な権利が得られたことになり、後から他人が同じような内容の権利を取れなくなるんだよ。言い換えれば、他人がその商標を指定商品・指定役務の範囲で使うことができないことになり、独り占めできることになる。

商標登録を特許庁でした場合に、独占できるのは日本だけですよね?

そうなんだよ。商標権は国ごとに発生するから、特許庁で発生させる商標権は日本の領土だけの話になる。もし外国でも権利が必要なら、その国への出願や国際登録出願(マドプロ)が必要だね。

もし登録した商標と同じ商標やよく似ている商標を他人が使ってたらどうするの?

その場合は権利行使ということになるかな。やり方もいろいろあるけど、警告状を送ったり、裁判で使用の差止めを請求したりすることもできる。特許のように進歩性の問題で無効となったりすることはないので、商標権は行使する場合も強い権利なんだよ。話し合いで解決できることもあるけどね。

特許庁って東京だよね。だから東京特許許可局許可局長という早口言葉が生まれたんだね。

今は出願書類をパソコンを使って電子的に提出することが行われて、わざわざ東京の窓口に行く必要はないんだよ。また、後で手数料を払う必要があるけど、印刷した書類を郵送しても良いんだよ。

私、アクセサリーのデザイナーをしようと思ってるんだけど、商標を登録した方が良いんですよね?

誰か他の人に取られるのが困るのような状況であれば商標を登録した方が良いなあ。特に、日本は先願主義といって先に特許庁に出願した人に権利を与えるルールになっているので。プロフェショナルなデザイナーであれば、商標登録の確保は最初にすべき仕事の1つと言っても言い過ぎではないね。

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3.自分でも商標登録出願できますか?

商標が大事なのは理解したような気がするけど、その特許庁への手続って自分でもできるのかしら?

商標登録願という書類を提出すればいいんだけれど、簡単でもあり、なかなか難しいところもあるんだよ。全く商標登録願を作成したことがない人が自分で出願するために越えないといけないハードルは大きくは2つあると思う。

えー2つも?

1つの目ハードルは、パソコンを使った電子出願が主流なんだけど、現在の特許庁の仕組みでは、稀にしか出願しない人が電子出願をするには、その準備に時間とコストがかかり過ぎるんだよ。電子証明書を取得してからパソコン出願ができるけど、電子証明書を取得するのに通常2万円前後と3週間程度の期間がかかるから、手っ取り早いのは紙出願で後で電子化手数料を払う方式となる。どうしても商標の登録出願を自分で進めたいという人は、各県の発明協会(一般社団法人発明推進協会)でも電子出願を手助けしてくれると思うよ。

簡単には出願書類を郵送か窓口に出せば良いのね。

そして、もう1つのハードルは、指定商品と指定役務を選択するところだね。指定商品と指定役務をどのように記載するかは、簡単なようで、初めての人には手強いし、実は特許事務所でもクライアントさんと十分にコミュニケーションができていない場合には難しさがある。でも、そこを丁寧に選択できれば自分でも十分出願可能だよ。

その指定商品と指定役務って具体的にはどんな記載なの?さっき登録のために記載するって言ってたけど。

普段、お店で商標や商品は見慣れていると思うけど、登録商標の指定商品と指定役務が何かについてはお店では殆ど見かけないよね。指定商品・指定役務は商標登録毎に商標公報を見てみないと分からないものなんだ。特許庁のJplatpatというサイトで調べればわかるようにはなっている。

僕はメキシコ料理のレストランをやろうと思っているので、メキシコ料理屋って書いて出せばいいんでしょ?

使用する商品やサービスを具体的記載することもできない訳ではないけど、商標の法令で決まっている用語があって、それらを使って出願する例がほとんどなんだよ。例えば、レストランや料理屋は”飲食物の提供”という指定役務の記載になるかな

飲食物の提供? 聞き慣れない言葉だなあ。

ねえ。アクセサリーのデザイナーは指定商品と指定役務の記載をどうすればいいの?

デザイナーの人が商標を登録するのは、商標の出所を表示する目的に加えてブランディングが重要だからだよね。ブランド化すれば高く売れるからね。基本的には、そのアクセサリーのそれぞれの区分での出願から始めることになりそうだね。自分で出願する人は、その指定商品・指定役務の記載を自分本位にならず、出きれば登録例を利用して記載することが大事だと思う。

指定商品と指定役務の区分ってなんなの?

指定商品と指定役務の区分って、ニース分類という国際分類があって、全部の商品やサービスを45のグループに分けたものなんだよ。それぞれの区分には第〇類という背番号見たいな番号が付けられている。指定商品が第1類から第34類まで、指定役務が第35類から第45類までになるんだ。

全部で45区分も。ずいぶん数あるわね。

それじゃあ、第〇類の”商品名”のような指定の仕方をすることになるのね。

そうだね、例えばジュエリーのデザイナーだど第14類で「貴金属,キーホルダー,記念カップ,記念たて,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計]を指定商品とすれば良いかな。指定商品の記載は、出願した後では追加できないので、初めに良く考える必要があるんだよ。ここが自分で出願するときに難しいところかな。でも指定商品や指定役務の追加はできないけれど、不明確な記載を明確にする補正はできることがあり、指定商品や指定役務の一部を削除する補正は可能だよ。また、権利をとりたい範囲が複数の区分にわたる場合に、一度で登録すれば管理も楽だけど、予算や重要度で複数回に分けて登録する方法もあるんだよ。


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商標登録願の書式は、特許庁のサイトの商標登録出願の手続(PDF)に参考となる書式が記載されています。また、商標登録出願の書類の書き方ガイドも自分で出願をする方の役に立ちます。独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)のWebsiteの産業財産権に関する情報の中に商標登録願の書式があります。(ホーム>産業財産権に関する情報>よくある質問と回答(FAQ)>権利の種類>商標>各種申請書一覧)”商標に関する申請書類について教えてください。”の+(スポイラー)を開きます。自分で出願する場合は、代理人の項目は不要です。自分の名前のところに自分の印鑑を押して出願します。文字だけの出願の場合、フォント形式にしばられない標準文字を選択することもできます。指定商品や指定役務の記載については、類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2020版対応〕を参照することが良いかなと思います(PDFの一括ダウンロードは、全部で803ページあります(2020版)のでいきなり全部印刷しない方が良いですよ。)。紙で出願する場合には、消印をせずに出願料分の特許印紙を貼ります。特許印紙は比較的に大きな郵便局で購入できます。収入印紙ではありませんので間違えないように。前述の発明協会は、こちら(地域の発明協会)
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4. 商標調査はした方が良いですか?

商標登録出願をする際に、商標調査をした方が良いのかしら?

調査については、私に説明させて。結論から言うと、商標調査をした方が良いになるなあ。時間やお金を有効に活用するのがビジネスだから、出願前の商標調査はほぼ必須とも言える。出願した後に、約6か月後の審査段階で競合する商標が発見され、また出願するのはお金と時間の無駄となってしまうからね。また、実際に商標を業務に使用している場合には、それが他人の権利に抵触していないかの確認も重要だね。

商標調査って簡単にできるの?

権利を取ろうとしている指定商品や指定役務の類似群コードが分かっているのなら、比較的に簡単に検索はできると思うよ。検索して似たような商標が全く出てこなければ、多分出願しても他人の商標と類似するという拒絶理由はこないと思う。似ているか似ていないか微妙な場合には、我々のような弁理士に聞いてもいいし、本当に微妙な場合は審査官でも判断がばらつくので、白黒ははっきりしないと思うよ。

えー類似群コード? 初めて聞いたわ。類似群コードって何なの?

指定商品と指定役務も見かけないけど、類似群コードももっと見かけないよね。商標を扱う人たちの専門用語だよ。さっきアリアケ先生が言っていた区分の中には、商品や役務が並べて記載されているんだけど、その中で商品や役務として類似する範囲をまとめてコードを付与しているんだよ。このコードを類似群コードと呼んでいるんだけど、同じ類似群コードであれば、特許庁は同一若しくは類似の商品(役務)と見做していると判断できるんだよ。例えば、和食屋さんとメキシコ料理屋さんは同じ類似群コード42B01が付与されている。なので、メキシコ料理屋で例えば”タコス堂”の権利を確保しようとして出願しても和食・蛸料理専門の”蛸須藤”とかの先登録があれば同じ類似群コードなので拒絶されてしまうかもね。

”蛸須藤”なんで、全国の須藤さんに失礼だとおもうんだけど。例示だからまあいいか。

何だって。和食屋とメキシコ料理屋が役務として類似だって!信じられない。世の流れに反してませんか?審査官の方々の舌はおかしいです。こうなったら無理かもしれないけど特許庁のある溜池交差点の近くでお店出すぞ。

類似群コードも絶対的なものではなく、世の中で常に商品の流行りや廃れがある中、実際の市場とはズレていることもあるんだよ。また、類似群コードが区分を跨ぐときもあり、ある区分から他の区分に引っ越してしまうこともあるんだ。ニース分類は国際分類だから特許庁の方が勝手に決めた訳でもないんだよ。

へぇーっそうなんだ。ところで話を検索に戻すと、実際はどうやって検索を進めるの?

一番簡単なのはJplatpatを使う方法だね。文字商標だったら特に称呼検索かな。

称呼検索だと入力画面で称呼1,2と区分と類似群の各項目が入力できるよね。称呼1,2にカタカナで読み方を入力し、区分と類似群も入れれば良いのかなあ?

そうだね。さっき説明した区分と類似群はフィルターとして件数を絞り込むのに使うことになりそうだね。検索結果で類似していると判断されるものがなければ登録される確率が高い。逆にほぼ同一の先登録があれば登録される確率はかなり低くなる。重なっているところが一部の場合は、最終的には重なっている部分の指定商品や指定役務を類似群の範囲で削除すれば登録にはもっていけるかな。

自分の商標と先に登録されている商標との間の類似・非類似が微妙なときはどうするの?

その場合に判断が難しいところでだね。1つの対策はもっと登録しやすい形式に商標を変更したり、商品役務を削除することかな。また、出願を進めて取れそうなところと、リスクを以て出願するところとを混在させたりする方法もある。

出願の大まかな方針は決められそうね。良かった。

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類似群コードは商品や役務を選択した場合についてまわる数字2桁+英文字1桁+数字2桁の符号です。例えばネットワーキングアプリケーション用のコンピュータソフトウェア(アプリ)は、電子応用機械器具の部品と見做されていますので、類似群コードは11C01です。類似群コードは前述の類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2017版対応〕の中にも記載されていますし、Jplatpatで商標を検索した場合にも指定商品・指定役務の下部に記載されています。また、類似群コードは、Jplatpatの中のトップページ > 商標 > 商品・役務名検索のところ(商標のプルダウンメニューの6番目)でも検索できます。
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5.商標登録出願すれば登録できますか?

それじゃ調査をして似たような商標がないようだったら、出願すれば登録になるのかしら?

調査結果で似た商標がない場合は、登録の可能性が高いけれど、まだ登録の要件を満たしているとは言い切れないところがあるなあ。例えば商標法の3条の関係の要件が満たされていないと登録できない。簡単に説明すると、誰かが商標登録して独占するのは適切でない文字とかは、登録が拒絶されてしまうんだよ。

それって大事なことじゃない。先に行ってくださいよ。

そうだったね。最初に商標を選ぶときに考えることだった。独占するには不適切な例としては、指定商品そのものの名前とかはダメだね。例えば、指輪に単に”リング”という商標はダメだったりする。また、単に商品の性能や効能、材質などを表すに過ぎない商標もNGとされている。例えば、携帯電話機に”高画質スマホ”も性能や機能を言っているだけなのでダメだろうね。業界では画期的な機能の場合、その機能そのものを商標に盛り込んで独占することを考える人が多いけど、かなりロゴ化するとか、一部に社名を入れるとか、文字の一部を図形と融合させるとかの一工夫が必要になるかもしれない。

へぇーっ。何だか難しいわね。

あと同じ3条の拒絶理由で、3条1項柱書の規定で自分で使用するには広い範囲すぎるというルールがあり、区分ごとに22個の類似群以内であれば登録(平成30年4月からの運用)とし、23以上の類似群の数であればその計画書などの書類を提出しなければ登録を認めないという運用もされているんだよ。

商標を出願するのは、22個の類似群以内だったっけ?

この類似群の単位で多すぎるという拒絶理由は、商品や役務を部分的に削除すれば良く、出願後でも対処できる。でもマーク自体は出願後に変更できないので、後からもっと図形を加えたものに変えるなんてことはできないんだよ。この場合には、新たな出願になるかなあ。

商標のマーク自体は出願後には変えることができないのね。分かったわ。出願の際に良く考えることが大切だということね。

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6.商標登録出願から商標登録までの費用と時間は?

商標登録出願から商標登録までの時間はどのくらいなの?

だいたい商標登録出願から審査まで6か月から9か月ぐらいが平均だね。審査の結果は、登録査定か拒絶理由通知というかたちで連絡される。登録査定の場合には、登録料を納付すれば良く、納付した後に登録作業が特許庁で行われる。登録査定から早くても一ヶ月ぐらいで平均すると2か月ぐらいだから、早ければ出願から7か月から8か月で登録になりそうだよ。拒絶理由通知の場合には、適切な応答すればプラス1~2か月ぐらいかな。この部分は区分数にもよるし、複雑なケースは時間がもっとかかると思う。

それじゃあ出願から商標登録までの費用はどのくらいかかるの?

費用は特許庁に払うオフィシャルフィーと、代理人を使った場合の手数料があるかな。自分で出願して代理人を使わない場合には、特許庁に払うオフィシャルフィーだけだね。特許庁に払うオフィシャルフィーは、出願料と登録料がある。先ず出願料は3,400円+8,600円x区分数となっていて、例えば1区分の出願なら12,000円となる。登録料は、区分毎に28,200円(10年登録)となり、これは5年毎の前期と後期の分納の場合の16,400円よりも1年あたりでは割安となるかな。

それじゃあ自分で出願するのをやめて、先生みたいな代理人に頼んだ場合の出願から商標登録までの代理人の費用はどのくらいかかるの?

弁理士などの代理人を頼んだ場合には、事務所手数料(代理人費用)もかかることになる。事務所手数料は、典型的には、出願時にいくら、補正書や意見書の提出でいくら、登録時にいくらというように段階ごとに費用がかかる場合が多いと思う。出願時の費用を安くして、登録時に高くするパターンもあるだろうし、区分毎で割り増しになる場合が多いと思うけど、区分ごとには手数料を変えていないパターンもある。弁理士などの代理人費用は、一概には言い切れないところだけど、1区分の出願で出願時に20,000~60,000円、中間処理時に30,000~60,000円、登録時に30,000~60,000円ぐらいが多いんじゃないかな。

代理人ごとにばらばらなんだね。

handwriting 商標登録

7.商標登録した後は、それをどうやって活用するの?

もし出願して首尾よく登録できたら、ひとまず成功ということだよね。10年で登録したら、10年は安泰ということだよね。

確かに、10年間分の登録料を払えば商標権は10年続く予定だね。

えっ予定ってどういうこと。10年たたずに権利がなくなくこともあるの?

そうなんだよ。商標は過去3年間の使用していない期間があれば取消の対象となってしまうんだよ。取消審判で取り消されると、取消審判の請求の時から権利がなくなることになるんだ。

そうかあ。でも使用していればいいんだよね?

他に登録料を払った後でも、異議申し立てによって権利がつぶされてしまうこともあるんだよ。登録の異議申立の期間は、公報の発行日から2か月だけど、第3者が登録に問題ありと思えば異議申立をすることもある。

権利を取る方にとっては嫌な制度だね。

また、商標権は更新することで半永久的に存続させることができる。更新期限は登録日の10年後の半年前からだよ。忘れないようにしないと。大体商標権の存続期間の平均値は、12~14年ぐらいとされているんだよ。つまり10年目で更新される率は全体の2割から4割程度かな。時代の流れもあるからね。

商標権が存続していて、似たような商標を使用している者がいたときはどうすればいいの?

そんなときのために商標権はあるといっても過言ではないね。商標権をとっても権利行使しないのであれば、初めから必要のない権利かも知れない。通常は、警告状を送り、侵害行使を辞めるように警告することが行われるだろね。警告しないで提訴することもできるけど、侵害訴訟はそれなりに費用もかかるので初めは警告状からの場合が多いと思うよ。

黙っていても解決しないんだね。でも相手に警告しても辞めない場合や応答もない場合もあるでしょ。

商標権侵害の場合、抗弁の手段も限られるので、相手としても商標権の存在を知れば侵害行為を辞めるか、ライセンスするかの選択しかない場合が多いかな。特許と違って無効理由は限られているので。また、使用の態様、商標の類否、先使用などが争点になることもあるけど、それは事件ごとに判断すべき事項だね

ねえ。メキシコ料理屋をのれん分けしたり、フランチャイズ展開する場合にも商標登録は重要でしょう?

そうだね。各店舗が独立している場合には、商標登録などの知的財産権を本部が管理し、各店舗は知的財産権のライセンスという形式になるね。この場合、品質を管理する義務が商標権者にはあることになるね。

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8.良い特許事務所の選び方は?

もし、特許事務所に出願やそのあとの管理なんかをお願いする場合、どんな事務所を選んだらいいのかしら?

それは簡単だね。弊所だよ、といいたいところだけどそれでは、ここまで読んだ人がみんなブラウザーのバックボタンをクリックしてしまうから、本当のことを言うと、お客様本位で考えられるかどうかだね

お客様本位が重要なのね。

士業の人は、お客様を依頼者(クライアント)と呼ぶんだけれど、クランアントの立場で商標をどうするかを考えられることが大切だね。

じゃあ逆に選ばない方がいい事務所は?

お客様本位のようで自分中心の事務所かな。他の事務所のウエブサイトでよく、お客様の声を見ることがあるけど、基本的に士業は取引があること自体はクライアントとの秘密事項なので、お客様の声を載せること自体そのお客様からの書面による同意が必要なんだよ。でも声として載せられたお客様は元々そんな事務所の宣伝材料にされるとは思ってなかった筈で、その部分は自己中心的だね。

そうねえ。特許事務所は怪しげな商品を売る通販サイトじゃないですものね。もしクライアントさんが感謝していても、それを事務所ウエブサイトに載せるように感謝しているのかを考えた方がいいかもしれないってことね。

同じように、依頼数や代理件数などを標榜するサイトもどうかなあ。多分、数多くの経験ありますの意味で標榜していると思うけど、そういう数の押し出しが多い事務所は往々にしてクライアントの依頼を単なる依頼数の1カウントとして扱うことになり易い。クライアントさんがそんな事務所の統計数になりたくて依頼したのかを考えるべきだね。それぞれの案件を時間をかけて1つ1つ処理するというお客様本位の仕方よりもなるべく数多く処理して収益を上げる事務所の立場を優先させることなりがちだと思う。実績はもちろん重要だけど、士業の品位もあるからね。

数にこだわっているは事務所の都合ということね。お客さんの1件ごとの丁寧な対応が求められているはずだわ。そう言えば、よく返金保証もあるみたいだけど、それはどうなの?

クライアントの立場からすれば、失敗したときの金銭的なリスクがなくて良いような感じだけど、元々良く調査して出願すればリスクは通常90%以上は回避できると思う。問題なのは、類似・非類似が微妙な場合や3条の拒絶の可能性が微妙にある場合で、返金保証を標榜する事務所はそこはリスクを見ながらトライしましょうとは言わない筈だね。印紙代も返すならそれは全くの損だからね。

返金保証は実際は少ないということ?

つまりクライアントの意図に反して微妙なケースは挑戦せず、返金の可能性のある危ない出願はやらないか返金なしに事前合意させるか、或いは無難な形に変えるようアドバイスのように見せて誘導するのどれかとなりがちだね。そもそも返金制度を標榜することは面談を行ってクライアント側で十分な理解をしてもらう以外は、弁理士会で概ね禁止されている事項なので、今は以前よりは少なくなって来ているかなあ。返金制度があって且つネットで完結というのは禁止されているとも言えるね。万一全額返金保証の事務所に頼む場合には、面談の前に全額返金を標榜したページを保存しておき、もめ事が生じた場合の証拠にしておいたほうが良いかもしれないね。最近、債務整理を専門とする事務所で広告の違反行為から業務停止になった法律事務所もあるけど、業務停止はお客様には迷惑なことだと思うよ。

“高品質”っていう広告も見たんだけど、これはどうなの?

これは私見だけど素人を欺いているように思うな。通常、どこの特許事務所でも弁理士が指定商品・指定役務の記載をする場合、特許明細書なんかと違って、その記載に余り品質の差が出る余地はないんだよ。勿論、出願人の住所や名前の書き方に品質はないし、願書に読み込まれる画像もクライアントさんからの提供が多いからね。誰かの書き損じに対して高品質といっているだけだろうと思う。何がどうして高品質なのか聞いてみて、納得できる回答がなければ、クライアントさんを欺いていると思うよ。

もう一度聞くけど良い事務所ってどんなところなの?

]やっぱりお客様本位で考えられる事務所だね。今年(2017年)の表現だとクライアントファーストだよ。電話やメールだけでなく、ミーティングをお願いして、将来的にも二人三脚で動いてくれそうか考えるのが良いように思うよ。商標登録は出願だけではないからね。アフターサービスも重要だね。


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