EC出品者、EC利用者のためのよくある質問です。
1.よくある質問-商標一般
1-1 商標とは簡単には何でしょうか?
商標とは、簡単に言えば、自分と他人の商品や役務(サービス)を区別するマーク(専門的には“標章”と言います。)です。商標は、文字・図形・記号やそれらの組み合わせで構成することができ、日本では平成26年の商標法改正により、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標、動き商標など、これまで商標として登録し保護することができなかった商標についても登録可能となっています。詳しくは、商標とは 商標の登録は国ごとに行われ、原則として、日本での登録を得るには 特許庁に、アメリカ合衆国での登録を得るには USPTO (米国特許商標庁)に、商標登録出願をします。
1-2 日本で商標登録してますが、米国でも登録の効果はありますか?
商標登録は国の法律で登録の有無が定められていますので、日本での商標登録は日本の領土内だけで効果があります。米国でも商標登録の効果を得るためには、米国での登録が必要です。
1-3 国際商標登録とは何でしょうか?
商標権は国ごとに取得できる仕組みになっておりますが、国際商標登録は、スイスのジュネーブにある WIPO (世界所有権機関)での国際登録により、その商標について指定したマドリッド加盟国での商標登録の効果をもたらす様になっており、この制度をマドリッド制度と呼んでいます。登録に際して国際登録は、先ず、本国(日本企業であれば日本国)での登録を前提としており、指定した加盟国でも登録要件の有無が審査され、要件を満たさない場合には、暫定拒絶通報が出されます。暫定拒絶通報は、実質各国のでの審査ですので、反論したり、指定商品を補正・削除することで登録に導くことも可能です。マドリッド制度を利用することで、1つの出願を中心に各国の権利を管理・維持することができ、利用数は年々増加しています。
1-4 商標権の範囲はどうなるのでしょうか?
商標権は、登録された標章と同一若しくは類似の商標を、指定商品・指定役務若しくは類似の指定商品・指定役務について、他人が使用することを禁止できます。ここで重要なところは、商標権は、マークだけで範囲が決まるものではなく、指定した商品・役務(えきむ)の範囲があることと、マークと指定した商品・役務のそれぞれに類似の範囲があることです。指定した商品・役務(えきむ)の範囲は、商標の出願書類に記載される事項であり、公報にどの範囲が指定商品・指定役務が明記されています。この指定商品・指定役務は区分毎に分類されており、出願人が選択して記載するものとされています。類似は混同するほど近似しているという意味です。標章(マーク)が類似するとは、例えばアスパラとアスペラのように同音数で一字違いが50音表の同行にある場合などがあり、詳しくは、商標の類否を参照して下さい。商品及び役務にも類似の範囲があります。審査段階では、類似の範囲は、類似群コードで考えることができますが、侵害の範囲となるとそれぞれ実体を考えらながら判断されます。
1-5 商標権はいつから発生しますか?
商標権は設定の登録により発生します。設定の登録は特許庁で行う事務作業で、出願した商標に対して登録査定が出され、通常30日以内で登録料を収めた場合に、その事務作業が行われます。商標権は出願した事実だけでは発生しません。出願によって発生する権利は通称、先願権という権利で類似する他の商標登録出願を排除する効果で、この先願権は、実際の商品や役務に影響を及ぼすものではありません。ただし、出願された商標に対して良く事前の調査がなされている場合には、登録される確率も高いですので、先願権は直ぐに商標権に変わることも念頭に置く必要があります。
1-6 商標を登録する際の流れについて教えてください。
商標と登録する際の典型的なプロセスを説明します。1)最初に、商標を選ぶことから始めますが、重要なことは、選択の際に、商標の調査や検索をすることです。何故重要かというと、調査が不十分な場合、出願が拒絶されてしまう確率が高くなり、貴重な時間が失われることになるからです。登録し易いか否かや、どの範囲で登録できそうかも調査である程度調べることができます。2)次に、商標登録出願を所定の国の政府機関に、日本の場合は特許庁に出願します。出願に際し、選択した標章(マーク)と、選択した指定商品・指定役務を願書に記載し、所定の出願料を納付する必要があります。3)出願した後、通常、5か月~7か月ぐらいで、登録の可否を通知することが行われており、登録できる場合には、登録査定が出されますが、そのままでは登録できない場合には拒絶理由通知が出されます。もし早期審査を請求した場合には、1~3か月ぐらいで登録の可否が通知されます。拒絶理由通知にが、大別して直ぐに補正などで対応して拒絶理由を解消できるものと、審査官の認定を覆す必要があるものとがあります。補正書や意見書の提出で拒絶理由が解消したものは、登録査定が出され、登録料を納付することで商標登録がなされます。4)登録後では、第3者の無断使用に対して警告状を送付するなどの措置を図ることもあり、侵害訴訟を提起することもあります。また、登録後に、第3者より不使用取消審判を請求されることもあります。また、商標を使用したいと思う者には、ラインセンスなども可能です。登録から10年で商標登録を更新することができます。
1-7 並行輸入とはどういうことなのでしょうか?
輸入販売に関する正式契約を結んでいない輸入者や個人業者による商品の輸入を一般に並行輸入と呼んでいます。原則として、輸入は商標侵害となる可能性がありますが、外国で正当な権利者から正当に購入したような商品を輸入する行為は、適法とされることがあり、このような輸入は真正商品の並行輸入と呼ばれ、商標権侵害ではないとされています。判例から真正商品の並行輸入であると認められるための要件は、次の3つです。1)商標が外国における商標権者などにより適法に付されたものであること。2)外国における商標権者と我が国の商標権者とが関連あると認定できる関係があり、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示すること。3)輸入さえた商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが品質において実質的に差異がないこと。が挙げられます。品質が実質的に異なる商品を輸入した場合とか、輸入業者が包装の取り換えや詰め替えをした場合には、真正商品の並行輸入の要件が成り立たず、商標権侵害となる可能性があります。
1-8 ノーブランド商品とはどういうことなのでしょうか?
ノーブランド商品とは、商標などの出所表示機能を果たすマークが全くない商品ということになります。商品を売る際には、商標を付けることが望ましいとは思いますが、商標がなくても売り手と買い手の間の売買契約は成立します。商標は登録していることが望ましいとは思いますが、登録されていなくとも商標としての出所表示機能は果たします。アマゾンが出品者に対して、商標の登録の有無にかかわらず、ブランド登録(Amazonブランド登録)しているのはアマゾンというサイバー店舗内のルールで、それらを商標として尊重するとの立場からと思われます。商標は、製品自体に付与されることは勿論ですが、取扱者、販売者の役務に対しても付与されるもので、例えば中国の会社ABC製のコンピュータがあり、それが大手家電量販店DEFにより、アマゾンに出品されたとすると、ABCが9類の商標で、DEFが35類の小売の商標で、アマゾンが35類の通信販売に関する情報の提供というように商標自体が多重に機能することになります。Amazonブランド登録には、商品もしくはパッケージへの印字や刻印が必須でシールやラベルなどの恒久的でない手段は良くないなどの規定がありますが、これは商標法上の商標の使用とは異なるルールで、商標法のルールとアマゾンでのルールを区別する必要がありそうです。
1-9 Passing Offとは何でしょうか
パッシングオフ[passing off] とは、自分の商品や役務を他人の名前やマークを付与しながら販売或いは提供することで、パーミングオフ(palming off)とも称されます。例えば、ノーブランド製品に有名ブランドの商標を印刷したり刻印して販売する行為をいい、もしその他人のマークに商標登録がなされていればその他人の商標権の侵害となります。パッシングオフはもともとコモンローの概念であり、商標登録がなくても、その行為を不法行為とするものであって、例えば、実際はその事実がないお菓子に宮内庁御用達や〇〇金賞受賞と表記する場合もパッシングオフとなります。
1-10 Reverse Passing Offとは何でしょう?
Reverse Passing Offとは権限なく元の商標を剥がし他の異なる商標を付加した後で再販する行為を言います。Reverse Passing OffはInverse Passing Offとも称されます。例えば、高品質のバックに、元の商標を剥がして自分の商標を付与する行為が該当します。この行為はバックの形状自体に立体商標の登録が認められていれば別ですが、元のマークを剥がす行為については日本の商標法では侵害となりません。
1-11 UCC(Uniform Commercial Code)とは何でしょうか?
アメリカ合衆国で商品を販売する場合には、implied warranty of merchantability, implied warranty of fitness for a particular purpose, implied warranty against infringementという暗黙の保証をするというルール(UCC Section 2)があり、最後のimplied warranty against infringementは、”この商品はあらゆる知的財産権を侵害しないことを保証します。”という内容になります。すなわち、米国で商品を販売するということは、知的財産権の侵害はないことを保証しながら売ることになりますので、もし買い手が訴えられたら、売り主が損害賠償をする責任が生じます。特にアメリカの知的財産訴訟では、通販で購入した者が個人でも訴訟の対象になりますので、知的財産権侵害には特に注意を要します。
2.よくある質問-調査・検索
2-1 日本の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
2-2 米国の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
2-3 中国の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
中国の商標の調査・検索するには、中国国家知識産権局商標局の中国商標網・商标查询を利用します。詳しくは中国の商標登録を検索 (最新版)🔍
2-4 韓国の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
2-5 台湾の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
台湾の商標の調査・検索には、台湾経済部智慧財産局(TIPO)の商標検索系統を利用します。
2-6 欧州の商標の調査・検索の方法について教えて下さい。
欧州の商標の調査・検索には、欧州連合知的財産庁(EUIPO)のTMViewを利用することができます。このTMViewのデータベースには、欧州連合商標(EUTM)が収録されているだけではなく、欧州各国の商標データや、世界中の数多くの国の商標データが含まれており、それらを検索することができます。また、欧州各国のデータベースも利用することができ、ドイツ特許商標庁(DPMA)のDPMAregister、フランス知的財産庁(INPI)のDisponibilité marque et société en France、英国知的財産庁(UKIPO)のtrademark search page、スペイン特許商標庁(OEPM)のsearch page、イタリア特許商標庁(UIBM)のデータベースを利用して、その国の商標を調べることもできます。
2-7 ASEAN諸国での商標の調査・検索の方法について教えて下さい
2-8 国際登録・外国の商標の調査・検索の方法について教えて下さい
国際登録商標(マドリッドプロトコル)の検索には、WIPOのサイトのGlobal Brand Database或いはMadrid Monitorを利用することができます。Global Brand Databaseは35の国から収録記録数29,260,000があります(2017年7月)。 また、欧州連合知的財産庁のTMViewも利用できます。TMviewは収録記録数41,611,399とのことで(2017年7月)、米国、日本、韓国の商標もデータベースに収録されています。
2-9 JANコードの調査・検索の方法について教えて下さい。
JANコードは、どの事業者のどの商品かを示す識別コードです。13桁のタイプと8桁の短縮タイプがあり、そのバーコードはJANシンボルと呼ばれで商品の包装などに印刷されています。JANコードはGS1登録事業者情報検索サービスによって検索することができ、英語版もあります。Amazon.co.jpでは、商品カタログデータの登録には原則として製品コード(JAN、EAN、UPC)が必要で、これらの製品コードがAMAZONサイトの1商品1ページのルールの基礎となっています。メーカーで取得し流通に使用されるJANコード(以下メーカーJAN)がある商品に対し、メーカーJANとは異なるJANコード(自社で取得したJANコード等)を使用して出品することはAMAZONでは禁止されています。また、AMAZONでは商品の識別にASIN (Amazon Standard Identification Numbers)と呼ばれる独自の番号も使用しています。該当するASINを簡単に見つけるには、ブラウザー上で商品詳細のページのURLに表示されている「dp/」の後をコピーします。
2-10 ドメインの調査・検索の方法について教えて下さい。
ドメインとは、ネットワークに接続しているコンピュータやサーバーの場所を示すインターネット上の”住所”に該当します。ドメイン名の検索は、所有者については、ICANNのWHOISで調べることができ、.jpドメインについては、例えばJPRSが提供するWHOISサービスによって調べることもできます。インターネット上においてはICANNによる一元管理となっており、同じ住所は存在しないことになります。特にドメイン名の最後の項目はトップレベルドメイン(TLD)と呼ばれており、いくつかの類型があります。gTLD(general TLD: 例えば、.com, .net, .org, .info, .biz, .name, .pro) , sTLD(sponsored TLD: .coop, .travel, .mobi, .mail, etc.), ccTLD(country code TLD: .jp, .uk, .de, etc.)などがある。ccTLDの取得に際して、商標登録が必要な国もあり、例えば、アンドラ、モナコ、オマーン、サウジアラビア、ウクライナは商標登録が必要若しくは登録があればドメイン登録もできるというルールを有しています。
2-11 アマゾンブランド登録について教えて下さい。
アマゾンブランド登録(Amazon Brand Registry)への登録が完了すれば、相乗りの排除、商品ページの編集権限の強化、ストアページを作成などの利点があります。このような優先的な地位をアマゾン内で確立するためには、手続が必要で、原則的には販売をする国での商標登録が必要です。商標を特許庁や他の国の知的財産庁に出願しただけでは、未だ登録になっていない状態ですが、最近アマゾンブランド登録のルールが変更となり、国毎に事情は異なると思いますが、出願中の状態(application pending)であってもアマゾンブランド登録を得ることは可能となっています。現在(2021.6.21)時点では、United States, Brazil, Canada, Mexico, Australia, India, Japan, France, Germany, Italy, Turkey, Singapore, Spain, Netherlands, Saudi Arabia, the United Kingdom, Sweden, Poland, the European Union, and the United Arab Emiratesの政府機関の登録(若しくは出願)が有効です。米国には州の商標登録もありますが、州商標はブランド登録できないようです。また、補助登録でもブランド登録できないようです。アマゾンには、この登録番号(若しくは出願中の出願番号)を伝えます。米国の場合には、Serial Number 90740067のように8桁のシリアル番号であるものが出願番号に該当し、登録番号はRegistation Number 5216935のように7桁の番号となります。米国の場合は、ハイフンの区別とかがないため分かり難いところでもありますが、やはりこれらは明確に区別されています。アマゾンのブランド登録の際には、出願の代理をした代理人に確認の問合せが電子メールで来ます。米国の場合には、[Action Required]のようなタイトルのメールになります。これにはクリックするだけで確認の返信するようになっており、代理人側ではアマゾンブランド登録については簡単に確認が可能です。また、確認コード(Verification Code)が送られる場合もあり、このコードを代理人から商標登録出願人のアマゾン出品者にお知らせして確認作業をする場合もあります。
2-12 米国CBPのe-Recordation Program について教えて下さい。
米国CBPはU.S. Customs & Border Protectionと呼ばる政府機関で、米国の国境を通過するような薬物、不法移民を取り締まる組織ですが、知的財産の侵害品の輸入に対しても取り締まりを行います。e-Recordation Program(電子登録プログラム)は、米国の正式な連邦商標登録や著作権登録があれば、侵害品の輸入差し止めを電子的に申請できるシステムで、費用も比較的に安価で手続も簡単です。商標に関しては登録証のスキャンデータがあれば申請可能です。費用は1商標1区分(期間10年間)あたり190ドルです。連邦の主登録の商標だけが申請可能で、補助登録では電子登録プログラムには申請できません。また、電子申請は米国意匠特許の登録について保護対象としていません。
3. よくある質問-商標権の行使
3-1 商標権者から警告を受けています。対処方法はどうなりますか?
まず、1)警告の内容を確認する作業を行い、2)警告に正当性があれば対処方法を考え、3)連絡することを行います。1)最初に、確認ですが、商標権者となるためには、登録した商標権があり、警告状の場合、通常、商標登録番号が記載されていますので、その番号について、簡単にはJPLATPATで、更に正確を期すためには商標原簿を取り寄せて、権利の状態を調べます。最近では、金銭的請求権も規定されていますので、出願中の出願人からも警告を受けることがありますが、この場合には、警告の際に出願の内容が開示されるものとされています。調査内容としては、権利者、住所、登録年月日などですが、権利侵害について訴追するには、商標の同一又は類似と、指定商品・指定役務の同一又は類似の範囲が必要ですので、それらも確認します。一方、侵害として警告を受ける場合には、こちらの使用の態様が権利に抵触すると警告者は考えた訳ですので、紛争の対象となるこちらの使用の態様も特定します。2)調査の結果、権利自体に問題がない場合、異議、無効審判、取消審判なども視野に入れて検討しますが、商標権の場合、特許権のような新規性、進歩性などの公知技術のような議論はできないため、無効に持っていくことのできる理由は限られています。対処方法の一例は、ライセンス交渉をすることになります。もし使用している商品自体が競合する場合には、簡単にはライセンス交渉を進めることはできないのが通例ですが、ビジネス的な視野で、棲み分けや提携できそうな場合は可能性があります。また、商標の使用については、一定の条件下で先用権というものもありますので、これも検討できます。商標を使用せずに、警告状を送ってきている相手に対しては不使用取消審判の請求も可能性があります。また、使用している商標が警告をしている商標権者の商標とは類似の範囲にあるとは思えない場合や、使用している商品や役務が商標権者の商品・役務とは類似の範囲にあるとは思えない場合には、特許庁に判定を請求することができ、類似の範囲についての行政上の線引きを明確化することも可能です。3)以上を踏まえて警告状に対する連絡をすることが有効と思われます。警告状に対して相手が無視してくることもあり、書面以外の回答もあり得ますが、ECビジネスを継続するには何らかの応答が好ましく、応答がない場合は訴追などの事態に追い込まれる可能性があります。
3-2 他の出品者から相乗りしないように警告されています。対処方法はどうなりますか?
まず、警告状の内容として、相乗りを排除しようとしている者の理由を分析します。理由は実際は種々のパターンがあるとは思いますが、1)知的財産権の侵害がある場合、2)AMAZONの設定したルールに違反する場合の2つが大きく分けられるところとなります。AMAZONの設定したルールに違反する場合は、当事者間協議が推奨されるところですが、1)の知的財産権の侵害がある場合は、アマゾンなどECサイトだけではなく、どこでも違法性があることには変わりなく、締め出しを食らうことは明らかとなります。商標の場合は、先の3-1の説明の通りの分析・対応となりますが、知的財産権の侵害として、意匠登録も商標登録と同様の効果あるものとして扱われていますので、意匠登録による排除も十分に可能性があります。最終的には、分析した後の応答となりますが、ECビジネスを継続するには何らかの応答をすることが好ましく、応答がない場合は訴追などの事態に追い込まれる可能性があります。
3-3 出品後、第3者に商標権を取られてしまいました。対処方法はどうなりますか?
日本では、商標登録は先願主義というルール(先に出願した者に権利を与えるという原則)があるため、先に使用していても他人に商標を横取りされてしまうということがあり得る制度となっています。一旦登録された商標登録は、なかなか簡単には無効にできないものですので、先に出願して権利を確保しておくことが賢明です。先に使用していたにも拘わらず、第3者に商標登録されてしまった場合には、過去3年間の不使用を理由とする不使用取消審判を請求する方法や無効審判を請求することも方策として挙げられます。例えば、こちらが並行輸入業者で、相手が商標権取得に正当な権限を持たない輸入代理店であった場合には、53条の2の取消審判を請求することも可能です。先に商標を使用している場合には、次の3-4に説明する先用権(商標法32条)の適用も可能性がありますが、適用できる事例は限られたものとなっています。
3-4 先用権とは何でしょうか?
先用権(商標法32条1項)とは、他人の商標登録出願前から不正競争目的ではなくその出願にかかる商標と競合する商標を使用し、その商標が周知商標となっている場合には、継続してその商標を使用できる権利を言います。先用権は未登録商標を保護しようとする制度です。すなわち周知商標については、他人の登録を排除するように商標法第4条1項10号で規定されていますが、この規定にも拘わらずに誤登録され、且つ除斥期間も経過してしまった場合に、登録されていない商標の既得権を保護するように機能します。商標権の侵害訴訟において、先用権は抗弁権として機能することが期待されてますが、現実には登録商標の出願時の周知性はそのハードルがかなり高いものと思いますし、特許などの先使用権(特79条)とは異なる性質となっています。先用権が認められるためには、1)不正競争目的ではなく、2)競合する商標を使用し、3)周知となっており、4)継続的に使用することが要件となります。周知性については、「需要者の間に広く認識されている」こととされ、一地域で又は特定の取引者・需要者の間で知られていれば、「周知」に該当します。なお、全国販売されるような商品の名称である場合には、1県だけでなく数県にわたって広く認識されている必要があります。また、周知性が必要な時点は、原則として競合する登録商標の出願時となります。また、継続して使用することとは、他人の商標登録出願の際から中断なく続けてと解釈されています。
3-5 間接侵害とは何でしょうか?
無断で登録商標若しくはこれに類似する商標を指定商品・指定役務若しくはこれらに類似する商品・役務に使用して商標権を侵害する行為を直接侵害というのに対し、商標権の侵害に至るおそれが高い侵害の予備的行為として、商標権の侵害とみなされる一定の行為を間接侵害と言います。具体的には、商標法第37条第2号~8号に規定されている行為が間接侵害に該当し、例えば、商標が型押しなどで作成される場合の型枠を業として製造したり、販売したりすること(8号)は間接侵害を構成します。
3-6 勝手に自分の登録商標を使用して、販売している者がいます。対処方法はどうなりますか?
その販売者が登録商標があることを知っていて侵害しているのか否か、すなわち刑事事件として扱うのか否か、或いは民事で扱う場合に、類似の範囲か否かの争点があるのかどうかで対応が変わります。民事として扱う場合には、通常、警告状を送付して侵害行為を辞めさせることを促します。差し止め請求に加えて損害賠償請求も可能ですが、損害賠償の損害額の挙証責任が請求人側にあります。刑事の場合、商標権を侵害した者は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処するとされており、法人に対して両罰規定もありますので、刑事訴追することは相手に相当な打撃を与えることができます。
3-7 自社ブランドで商品を販売していますが商標権の取得は必要でしょうか?
自社ブランドを使って商品を販売する際に、商標を使うことで反復して購入する方への安心を届けるように機能させることができます。商標を取得しない場合には、ECサイトでの相乗りを防止できないなどの問題も生じますが、それよりも競合相手がそのブランドの商標権を取得してしまう可能性もあり、そうなった場合には単に商標を取得していないではなく、競争相手からするとあなたが侵害者になり、ECサイトの運営者から見てもあなたが違法なことをしていることになります。自社ブランドの使用を競争相手より早く始めたというのは商標法上理由になりません。早く始めてかつ周知になっている場合は先使用の抗弁が可能です。
3-8 商標登録での小売の指定役務と商標の指定商品は区別した方が良いのでしょうか?
ECサイトで商標登録が影響を及ぼすのは、主に指定商品の区分(1〜34類)と指定役務の小売(35類)ところになります。商標登録が指定商品の区分(1〜34類)の場合には、商標権者はその指定された商品に登録商標を使用することについて独占できます。言い換えると他人はその登録商標を指定商品に使うことができず、さらには類似の商品に類似の商標を使用することができないことになります。小売の区分でも、その中身は商品の販売に関する情報の提供や〇〇の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供という形式で登録されていることが多く、一見商品についても独占しているように見えたりします。小売の商品と指定商品は、登録に際してクロスサーチ(特許庁での商標の登録審査上は類似関係があると見做している。)しますので、尚更です。この小売での登録は、サイト名や店舗名としては登録されていることから同じサイト名を使用したり、ECサイトで同一又は類似の店舗名で商品を販売することはできないと思いますが、その取扱商品までは独占していませんので異なる店舗名であれば同じ商品を取り扱って売ることも可能です。商標登録のない商品をECサイトで販売する場合、競合する相手がJ-Platpatなど調べてた結果、単に35類の小売の区分だけの権利の場合には、その商品についての商標の使用を独占している訳ではないので、違う店舗名を使っていれば相乗り等も可能と思われます。
3-9 商標登録出願はしていますが、ECサイトで販売している者がいます。まだ登録されてはいないのですが、何かできることはありますか?
未だ登録に至っていない場合でも、警告を行って、その後で商標登録がなされた場合には、金銭を請求できる制度(商標法13条の2)があります。この金銭的請求権の発生の要件は、a)商標登録出願されていること、b)当該出願に係る内容を記載した書面にて警告済であること、c)警告後にその商標を使用したこと、d)使用によって業務上の損失があったこととなっています。
4. よくある質問-商標権の取得
4-1 日本での商標登録にはどのぐらいの時間と費用がかかりますか?
4-2 日本での商標登録出願に対する早期審査は可能ですか?
商標登録出願については、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標などの新しいタイプの商標登録出願を除いて、 次の要件が満たされれば、請求により早期審査をすることになります。要件1)出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めている出願」であること。要件2)「権利化について緊急性を要する出願」であること。緊急性については、第3者が許諾なく競合する商標を使用している場合、第3者から警告を受けている場合、外国出願や国際出願をする場合などが挙げられます。また、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願であることも必要とされます。未だ商標を使用していないが、単に早く権利化したいという場合は、早期審査が認められる可能性は低くなります。早期審査の費用は事務手数料だけです。早期審査を促す場合、必要な証拠等の資料を添付した早期審査に関する事情説明書を提出します。必要な証拠も何でも良いわけではなく、一般的には真正な証拠として成立する書証などが要求されます。Websiteは閲覧可能であったりもしますので、証拠としては有力です。早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、2019年実績で早期審査の申請から平均1.7か月とされ、通常の出願と比べて大幅に短縮されます。また、添付する資料を電子化してオンラインで提出する方が特許庁側での電子化作業がないためさらに1〜2週間早く判断されます。
4-3 商標登録出願のファストトラック審査とは何ですか?
現状(令和3年)平均して1年程度の審査期間となっていますが、ファストトラック審査とすることで約半年の期間で審査する仕組みです。次の2つの条件を満たす必要があり、特に請求や説明書の提出は不要です。(1)出願時に、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務(以下、「基準等表示」)のみを指定している商標登録出願(2)審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない商標登録出願。従って、出願時の指定商品・指定役務の記載が基準等表示の範囲内であれば、自動的にファストトラック審査となります。
4-4 米国での商標登録にはどのぐらいの時間と費用がかかりますか?
米国での商標登録には、許可通知までで通常3か月から6か月程度の期間がかかり、審査官の意見に反論する場合にはさらに数ヶ月乃至1年の期間がかかります。許可通知が出されても1か月の異議申立期間があり、登録まででは約3ケ月程度かかります。従いまして、連邦の商標登録は最短で6か月程度、拒絶理由が出てもそれが補正できる範囲であれば平均的には8~10か月程度ではないかと思います。また費用は、1区分の商標登録の場合に、出願料は250 USD(Plus)または350 USD (standard)、使用宣誓書の提出には100 USDがかかります。有明国際特許事務所では、米国弁護士の資格がありますので、米国内の法律事務所を介さずに米国特許商標庁への直接出願が可能です。弊所の手続費用は、米国商標登録出願(直接)† 手続概要と費用或いは料金表(要パスワード)になります。例えば、1区分の米国商標登録出願は、概ね10万円程度で、区分が増えるごとに約5万円増加になると思います。日本人・日本企業などの外国人や外国企業は米国特許商標庁への手続は米国弁護士の有資格による代理が必要です。
4-5 中国での商標登録にはどのぐらいの時間と費用がかかりますか?
中国の商標登録の場合、多区分での出願も可能ですが、費用上のメリットもないため、殆どの出願は単区分で提出されています。典型的には、出願から4~6か月前後で公告(初审公告)となり、その約3か月後に登録(注册公告)となります。現地代理人の費用は、1区分の1出願で平均6万円前後になります。
4-6 国際商標登録にはどのぐらいの時間と費用がかかりますか?
マドリッド制度を利用した国際商標登録の場合、出願日が登録日となりますのが、米国や韓国、その他の国の暫定的拒絶通報が通知されるのが、半年から1年半の間になり、そこから現地代理人に依頼して、各国の拒絶理由を回避する作業に少なくとも2、3か月はかかります。多くの国での登録を図る場合には、1年半から2年半ぐらいはかかる場合が多いと思われます。費用の内、オフィシャルフィー(政府機関費用)は、全てWIPOに対して支払うことになり、WIPO Fee Calculatorで計算することも可能です。代理人による場合には、代理人費用がかかります。
5. 弊所への依頼
5-1 知的財産権所有者から米国での出品商品に対し違反報告があり、対応可能でしょうか?
また、Amazon輸出の中でアメリカという国に限定しても、日本の3~4倍の売上規模の市場で商品を販売することができると言われております。米国では、商品を販売するということは商標権、意匠(デザインパテント)権、特許権、著作権などの知的財産を侵害しないことを保証すること意味しています。もし、知的財産権所有者からの何らかの警告を受けた場合には、迅速且つ適切に対処しない場合には、当事者間の話合いでは収まらないことが多く、警告もその多くは弁護士からの警告であると思われます。販売数量の情報は、損害賠償額としてのLOST PROFITS(遺失利益)の計算の基礎となりますので、開示を要求してくることもあります。もし、仕入れ先が海外の正規代理店やメーカー自体であれば、並行輸入になりますので、知的財産の侵害とのクレームは誤解に過ぎないので、請求書等のコピーを資料として提出したります。有明国際特許事務所では、そのような知的財産権に関する問題についての相談や助言を受け付けており、トラブルが大きくなる前にご相談いただければと存じます。
5-2 日本、米国、中国、その他の国での商標を確保したい。対応可能でしょうか?
有明国際特許事務所では、日本、米国、国際登録(マドプロ)については、代理人として特許庁や米国特許商標庁に直接出願をすることができます。中国、韓国、台湾、欧州、その他の外国へは、国際登録(マドプロ)の指定国とすることもでき、それぞれの国での出願として商標登録を図ることも可能です。 また、米国の手続きでは、マドプロで米国を指定した場合に、意見書や補正書などの中間処理が必要な場合もあり、ITU(使用の意志ベース)の使用宣誓、5-6年目の使用宣誓、更新時の使用宣誓など出願や登録の段階での手続も不可欠ですので、ご相談いただければと存じます。
5-3 Web会議による相談は可能でしょうか?
有明国際特許事務所では、クライアントおよび潜在的なクライアントとのコミュニケーションツールとして、Skype、Zoom、MS teamsを使うことができます。
5-4 日本の出願で、意見書や補正書の提出が必要になりました。対応できますでしょう?
商標登録出願を行った場合に、そのままでは登録にならないときがありますが、補正書や意見書を提出することで、拒絶理由を回避することができます。先登録の商標と類似すると認定されている場合でも、非類似であるとの主張や、先登録商標に取消をかけていくなどの手法を使うことができることもあります。有明国際特許事務所では、拒絶理由を受けた時点からの中途受任も取り扱いが可能です。
5-5 海外の商標権者と同意書の交渉やライセンス交渉をしたい。対応可能でしょうか?
アメリカや欧州などの商標制度は、日本のように行政が各自の商標が競合しないようにコントロールするのではなく、商標同士が競合した場合には当事者同士で話し合いで解決することを念頭において制度設計がされています。即ち、商標同士がある程度はぶつかり合いそれを許容した上で当事者間での問題解決が必要で、同意書の交渉やライセンス交渉は、日常的な商標の管理業務の1つです。有明国際特許事務所では、相手が外国企業であっても必要な交渉を行うことができますので、充分なコミュニケーションから満足ある結果を導きます。
5-6 諸費用の支払いはどのようになりますか?
有明国際特許事務所では、銀行振り込みでの決済は勿論ですが、VISAとMasterCardによるクレジットカード決済も可能です。時間の無いときに急ぎの出願や、直接面識のない場合でも直ぐに対応できますので、ご利用ください。
6. 知的財産基本用語 英語対照表
日本語 | 英語(米国) |
---|---|
商標 | trademark |
登録商標 | registered trademark |
役務商標 | service mark |
著作権 | copyright |
意匠 | design patent |
特許 | utility patent |
世界知的所有権機関 | World Intellectual Property Organization (WIPO) |
特許庁 | Japan Patent Office (JPO) |
米国特許商標庁 | United States Patent and Trademark Office (USPTO) |
中国国家知識産権局 | China National Intellectual Property Administration (CNIPA) |
欧州連合知的財産庁 | European Union Intellectual Property Office (EUIPO) |
韓国知的財産庁 | Korean Intellectual Property Office (KIPO) |
台湾智慧財産局 | Taiwan Intellectual Property Office (TIPO) |
出願日 | filing date |
願書 | application |
拒絶理由通知 | office action |
意見書 | response |
料金表 | fee schedule |
弁護士費用 | attorney fee |
政府機関費用 | official fee |
異議申立 | opposition |
代理人 | attorney of record |
標準文字 | standard character |
出願人 | applicant |
商標権者 | trademark owner |
通常使用権 | non-exclusive license |
独占的使用権 | exclusive license |
不使用取消審判 | cancellation based on non-use |
許可通知 | notice of allowance |
文字商標 | word mark |
図形商標 | figurative mark |
更新 | renewal |
見積り | estimate |
指定商品 | designated goods |
指定役務 | designated services |
第35類 | class 35 |
商標見本 | mark drawing |
委任状 | power of attorney |
優先権書類 | priority document |
侵害 | infringement |
権利行使 | enforcement |
権利放棄 | abandonment |
移転 | transfer |
主登録 | principal register |
補助登録 | supplemental register |
権利不要求 | disclaimer |
類似 | confusingly similar |
識別性 | distinctiveness |
関連性 | relatedness |
使用証拠 | specimen of use |
商品役務特定用手引き(米国) | trademark ID manual |
登録証 | certificate of registration |
審査官(米国商標) | examining attorney |
使用による識別性 | secondary meaning |
審査基準 | trademark manual of examining procedure (TEMP) |
方式審査 | formality check |
実体審査 | substantive examination |
トレードドレス | trade dress |
外観、称呼、観念 | appearance, sound, meaning, |
基礎 | base |
使用見本 | specimen |
期限 | due date |
商標電子調査システム | Trademark Electronic Search System(TESS) |
法人 | legal entity |
Rマーク, ® | registration symbol |
TMマーク,™ | trademark symbol |
SMマーク, ℠ | service mark symbol |
州際通商 | in commerce |
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