国際登録出願(マドプロ)と米国商標出願の比較

国際登録出願(マドプロ)と米国商標出願(直接)

日本の企業や個人の方がアメリカで商標を取得する方法は、大きく分けて2つの方法があります。1つは従来からのアメリカの特許商標庁(USPTO)に商標登録出願の書類を提出する方法で、その際に日本の出願を基礎としながら優先権を主張して出願することも可能です。もう1つは、国際登録出願(マドプロ)をする方法で、例えば日本の商標登録出願や日本の商標登録を基礎として特許庁に書類を提出する際に米国を指定国に選択することで可能です。前者をここでは米国商標出願ルートとし、後者を国際登録出願ルートとします。これらの各ルートで米国での登録を行った場合について、手続きの煩雑さ、管理、費用の各点について検討してみます。

Jefferson Memorial, Washington D.C.
Jefferson Memorial, Washington D.C.

手続きの煩雑さ

まず出願段階では、米国商標出願ルートも国際登録出願ルートも作成する出願書類の数は、それぞれですので、結局は内容の差になると思います。国際登録出願の場合には、MM18の書類に出願人自体が署名する必要がありますが、米国以外の国についても同時に指定することができ、米国だけでなく複数の国で権利を取る場合には有利な出願方法になります。米国商標出願では出願後に、登録査定(Allowance)が出された場合、ITU出願ではStatement Of Useを提出する必要があり、庁費用も1区分あたり、100ドルかかります。一方、マドプロ出願では、Statement Of Useを提出する必要は原則ありませんので、その部分で手続きが簡素化されます。5年目と6年目の間のsec8(71)/15の宣誓書の提出や更新手続きの際の使用証明と使用宣誓書の提出(sec.8(71))は、米国商標出願ルートも国際登録出願ルートもほぼ同様です。但し、国際登録出願ベースの方が、5年目と6年目の間のsec71の宣誓書の提出には、延長期間(grace period)がなかったり、10年目のsec71の宣誓書の提出には6か月の期間プラス3か月の延長期間しかない点が異なっております(下の図参照)。また、国際登録出願ルートでは、米国特許商標庁へのsec9の宣誓書は不要で、IB(国際事務局)に対して更新手続きを行います。

Affidavid
Affidavid filing period

出願や登録の管理

米国商標出願ルートの場合には、出願、中間処理、Statement of Useの提出、5-6年目間のsec8の使用証明、更新手続きなど必要な手続きは全て米国特許商標庁に対して行います。一方、国際登録出願ルートの場合には、出願を日本国特許庁(JPO)に対して行い、米国の補正などの中間処理は、米国特許商標庁(USPTO)に対して行い、さらに更新手続きについては宣誓書(Sec71)は米国特許商標庁(USPTO)に対して提出しますが、更新手続き自体はWIPOの国際事務局(IB)に対して行うようになります。従いまして、米国商標出願ルートのように米国特許商標庁(USPTO)に対する手続きだけ管理すれば良いという訳にはいかず、国際登録出願ルートの場合にはJPO、USPTO、IBなど各手続きを総合的に管理する必要があります。また、特に重要なのは、上の図にもありますように、WIPOの国際事務局(IB)に対する更新は国際登録の日が10年の起算日となりますが、Sec71の宣誓書は米国特許商標庁の登録証の発行日を起算日としていますので、国際登録自体の更新の時間軸とはずれていることになります。

比較表
比較表

出願や登録の費用

国際登録出願ルートの場合には、マドプロシステムが複数の指定締約国での保護を1つの出願でカバーできるように設計されているため、基本手数料の支払が必要であり、それに各指定国単位で追加される個別手数料が必要となっています。このため費用の面で米国商標出願ルートと比較してみると、概ね米国の個別手数料自体が米国の商標出願ルートの各段階での庁費用に対応しており、国際登録出願の方が基本手数料の分(5~6万円程度)だけ費用は高くなります。

米国でのプロセスだけに着目すると、概ね米国の個別手数料自体が米国の商標出願ルートの各段階での庁費用に対応していることから(例えば、通常の米国商標出願の庁費用が300ドル前後で、マドプロの個別手数料でで337スイスフランで300ドル前後)、米国特許商標庁側から見ればほぼ同様のチャージであり、国際登録出願ルートではStatement of Useの提出が不要なため、その分(100ドル)の庁費用の低減がありますが、その他の手続きはどちらで行っても大差ないものと思います。

特許商標庁からの拒絶通報(マドプロ)

アメリカ合衆国(米国)を指定国としてマドリッド協定議定書に基づく国際商標出願を行った場合、米国特許商標庁(USPTO)から拒絶通報(notification of provisional refusal of protection)を受けることがあります。この拒絶通報には、6ヶ月以内に応答することが求められ、応答しない場合には放棄したものとみなされます。拒絶通報を受ける理由はケースバイケースと思われますが、典型的には商品役務の表示(identification and/or Classification of Goods/Services)、翻訳(translation)、標章の説明(Description of Mark Statement Required)、不登録事由(Refusal on Basis of Name or Surname, Basis of likelihood of confusion, Basis of Descriptiveness,etc.)、一部放棄(Disclaimer)などになります。この拒絶通報に対しては、比較的に簡単に補正で済む場合から、意見書を以て反論する場合まで様々な応答が必要となります。これら米国特許商標庁からの拒絶通報に対して代理人が応答する場合、国際商標出願自体の代理人(日本の弁理士)であっても、アメリカ合衆国の各州の弁護士かカナダの弁護士に仕事を依頼する必要があります。また、マドプロ出願については、権利を維持するためには、登録から5~6年の間、および10年ごとの更新時(10年目前の半年間)に必要なSection 71の宣誓書(§71 affidavits)を提出する必要があり(TMEP SEC1613)、section15の宣誓書(incontestability)を提出することもできます。

米国商標制度 vol.1
米国商標制度 vol.2

マドプロ米国指定の使用宣誓書の提出