商標法上の異議申立の解説

商標登録異議制度概要

商標登録異議申立制度は、商標公報の発行後2か月という期間内に、第3者がその商標登録の取消を求めることができる制度であり、特許庁での審査の瑕疵を速やかに是正するための制度です。商標の審査は、特許庁の審査官により、世界的にも的確に進められてはおりますが、人間が判断するものであるために、誤登録なるものが稀に発生します。また、日本の審査制度では、類似群コードと称呼類似に重点が置かれているために、市場や需要者、取引者の実情とは乖離した判断が入ることもあります。そこで、或る商標の登録についての異議理由がある方は、何人でも、異議申し立て制度を利用できるようにしています。平成8年の商標法改正により、従来の商標登録前の異議申立制度が廃止され、商標登録後に異議申立をする制度(付与後異議)になっています。

異議申立人

“何人も”と規定されていますので、自然人、法人を問わず、法人でない社団又は財団であつて代表者又は管理人の定めがあるものも異議申し立てが可能です。商標権者が取引先というような場合はダミーの申立人を立てることも実務では行われています。

異議申立理由

異議申立となる理由は、商標登録の要件違反(第3条)、不登録事由違反(第4条第1項)、地域団体商標要件違反(第7条の2第1項)、先願違反(第8条第1項、第2項、第5項)、登録取消の場合の再登録禁止(第51条第2項〔第52条の2第2項において準用する場合を含む〕及び第53条2項)、防護標章登録の要件違反(第64条)、外国人の権利の享有違反(第77条第3項において準用する特許法第25条)、条約違反、第5条第5項に規定する要件違反(改正法で追加)とされています。拒絶理由と比較すると、一商標一出願についての拒絶理由(6条)は異議申立理由とはなっていません。また、無効理由と比較すると、冒認出願と権利後に権利享有違反になったものは含まれない形になっています。また、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができますので、区分に拘わらずに指定商品又は指定役務の一部に異議申立ても可能です。

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異議申立期間

インターネット利用による商標掲載公報の発行の日から2月以内に限ります。また、異議申立から約4週間後に登録原簿には異議申立の予告登録がなされます。また、出願時に出願人の代理人であった者には、異議申し立てについて代理をするかどうかも確認する意味で電話やFAXで連絡を受けます。

異議申立発生の典型例

異議申立が発生する典型的な場合としては、1)審査での誤登録の場合、2)類似と非類似の区別が微妙な例の場合、3)知名度が高まりつつあるが、非類似の商品について使用するものまで排他的な効力を持っていない商標の場合が挙げられます。1)の誤登録は起こることがあります。2)は類似と非類似の線引きが微妙なところで、商標権が発生した場合が該当します。一般的に商標登録のウオッチングしている場合には、類似とするにはやや遠い例でもウオッチャーが商標の権利者に連絡しますので、防御の意味で異議申し立てをすることがあります。3)は既に非常に良く知られた商標であれば、非類似の商品区分でも類似した商標の出願は拒絶されてしまうはずなので問題は起こらないところですが、その手前の知名度の場合、拒絶されるとも限らない訳です。今は防護標章登録されるような著名な商標でも、市場に出たばかりのタイミングでは、非類似商品については排除できないはずですし、審査官が著名レベルより下と判断した知名度では、異議申し立てに頼ることになります。

異議申立手続

異議申立書を副本と共に特許庁長官に商標掲載公報の発行の日から2月以内に提出します。異議申立書には、申立ての理由及び証拠が記載されますが、申立ての理由及び証拠についての補正可能な期間は申立て期間経過後30日(在外者、遠隔地の者への延長あり)以内です。商標登録番号の変更、指定商品又は指定役務の変更、追加、商標登録異議申立人の変更などは要旨変更になりますので、補正できず、再提出になります。公報発行日から2か月で仮異議、30日若しくは在外者の60日で理由補充するが良くある実務のパターンです。

異議申立書が出されてから、方式審査が行われ、問題がなければ申立期間が経過してから約2ヶ月後に異議申立書副本が権利者に送付されます。また異議申立て後約3~4週間で申立人及び権利者に葉書で「異議番号通知」が送付され、予告登録は登録原簿に掲載されます。原簿への予告登録から約1月後に特許情報プラットフォーム(JPlatPat)にもその予告登録について掲載されます。

審理は、通常3名の合議体の審判官により原則書面審理、職権主義(申し立てない理由についても。ただし申し立てていない指定商品又は指定役務については判断できない。)で行われます。審理は商標権者、登録異議申立人若しくは参加人の申立てにより、又は職権で、口頭審理とすることも可能です。参加人とは、商標権についての権利を有する者その他商標権に関し利害関係を有する者で、補助するために審理に加わる者をいいます。審理は、概ね特許庁主導で進められますが、権利者は「上申書」によって意見を述べることもできます。また、審理が進み、取消理由通知が発せられたときには、それに応答する「意見書」を提出する機会が与えられます。なお期限内の異議取下げに対して職権で審理を継続させることはできないとされています。

異議申立ては登録維持決定か取消決定のいずれかで決着します。取消決定の前には、取消理由通知を発することになっていまして、その通知の後では異議の取下げはできないことになっています。取消決定が確定した場合には、商標権は消滅し最初からなかったこととなります。維持決定については、不服申し立てをすることはできませんが、無効審判で争うことは可能です。維持決定があった場合には商標権はそのまま維持されます。取消決定に対しては、決定の謄本の送達があつた日から30日(在外者、遠隔地の者へは付加期間あり)に知的財産高等裁判所(専属管轄)の出訴が可能です。また、取消決定に際しては、登録期間から8か月前後の日数で短いのですが、例え誤登録が原因であったとしても登録料の返還はありません。

商標登録異議申立の統計データ

商標登録に対する異議申立は、平成27年の1月から12月の1年で466件ありました。

商標登録異議申立の統計データ

年度申立数権利単位申立総数取消決定維持決定取下・放棄
2005年67669117261553
2006年67770016065441
2007年60761511855434
2008年4975137240932
2009年47348011340843
2010年4234317332247
2011年4584656642134
2012年3944016331740
2013年4604784229646
2014年3913967430243

特許庁年次統計より

取消決定率は、2005年から2014年で、953/5056=18.85%になっています。

情報源: 新型コロナウイルス感染症により影響を受けた審判事件における手続の指定期間の延長等について | 経済産業省 特許庁

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