商標登録insideNews:「マツモトキヨシ」も不可 登録認められない氏名商標| 日本経済新聞

氏名が含まれる商標の登録をめぐり国内の裁判所や特許庁の厳しい判断が相次ぎ、新規登録がほぼ絶望的な状況になっている。ローマ字やカタカナで表記した氏名を含むブランドはファッション業界を中心に珍しくない。専門家からはブランドの海外展開などへの足かせになりかねないとの懸念の声が出ている。

情報源: 「マツモトキヨシ」も不可 登録認められない氏名商標: 日本経済新聞

出願番号:商願2017-7811
出願日:平成29(2017)年 1月 30日
拒絶査定発送日:平成30(2018)年 3月 20日
商標(検索用):マツモトキヨシ
出願人:株式会社マツモトキヨシホールディングス
音商標

マツモトキヨシ
商願2017-7811

審判番号:2018-8451
審判種別:査定不服審判
審判請求日:平成30(2018)年 6月 20日
出訴・上告番号:令02-10126
出訴・上告日:令和2(2020)年 10月 28日

江崎グリコ/LIBERA cacao50、0:22

商願2017-7811拒絶査定不服審判事件 審決
商願2017-7811拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理 由
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類及び第44類に属
する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成29年1月30日に音

2/
商標として登録出願され、その後、本願の指定役務については、原審におけ
る同年12月1日付け手続補正書により、別掲2のとおりの役務に補正され
たものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、音楽的要素及び『マツモトキヨシ』という言語
的要素からなる商標記載欄の記載、音商標である旨の記載、『マツモトキヨ
シ』という言語的要素を音楽的要素に乗せて発している人の声が録音されて
いる音声ファイルから把握されるものである。そして、『マツモトキヨシ』
を氏名とする者が現存することが認められるから、本願商標は、他人の氏名
を含む商標といわなければならず、かつ、その他人の承諾を得ているものと
も認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第
8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨
商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な
略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受
けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ
。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、
自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益
を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同
16年6月8日第三小法廷判決、最高裁平成16年(行ヒ)第343号同1
7年7月22日第二小法廷判決)。そうすると、ある氏名を有する他人にと
って、その氏名を同人の承諾なく商標登録されることは、同人の人格的利益
を害されることとなると考えられる(知財高裁平成28年(行ケ)第100
65号同28年8月10日判決)。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、音楽的要素及び「マツモトキヨシ」という
言語的要素からなる音商標であって、別掲2のとおりの役務を指定役務とす
るものである。
ところで、別掲3及び別掲4の原審で示されたウェブサイトやNTT東日
本及び西日本「ハローページ」には、「マツモト」を読みとする姓氏及び「
キヨシ」を読みとする名前の氏名の者が、多数掲載されている実情がある。
してみれば、本願商標である音商標を構成する「マツモトキヨシ」という
言語的要素は、「マツモトキヨシ」を読みとする人の氏名として客観的に把
握されるものであるから、本願商標は、人の「氏名」を含む商標であるとい
える。
また、別掲3及び別掲4の証拠からは、「マツモトキヨシ」を読みとする
氏名の者が、本願商標の登録出願時から現在まで現存している者であると推
認できるものであり、請求人である「株式会社マツモトキヨシホールディン
グス」と別掲3及び別掲4に示した氏名の者は他人であると認められ、請求
人は、当該他人の承諾を得ているものとは認められない。
以上のことからすると、本願商標は、他人の氏名を含む商標であって、か
つ、その他人の承諾を得ているものではない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、戸籍簿で確認できるのが氏名であり、商標記載欄には漢字
や片仮名の記載の制約が課されているものではないから、「松本清」、「松
本清司」、「松本清志」、「松本潔」のように、その文字が商標記載欄に表
されている場合に、その氏名を有する者との間で商標法第4条第1項第8号
に該当するものであって、さらに、本願商標の言語的要素は、「マツモト」
と「キヨシ」に分離して捉えなければならないとする特段の理由はない旨主
張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号は、「他人の氏名・・・を含む
商標」と規定するものであり、当該「氏名」の表記方法に特段限定を付すも
のではない(知財高裁平成31年(行ケ)第10037号、令和元年8月7
日判決)ことからすれば、戸籍簿で確認できる氏名の表記のみが、同号の「
他人の氏名」に該当するとはいえない。
そして、上記(2)のとおり、本願商標を構成する「マツモトキヨシ」と
いう言語的要素は、「マツモトキヨシ」を読みとする人の「氏名」として客
観的に把握されるというのが相当であり、また、別掲3及び別掲4に示した
「マツモトキヨシ」を読みとする氏名の者は他人であると認められる。
そうすると、本願商標は、他人の氏名を含む商標であるといわざるを得な
いものであり、上記(1)のとおり、それが自己の氏名であれば、本人を指
し示すものとして受け入れられている以上、その氏名を承諾なしに商標登録
されることは、同人の人格的利益を害されることとなると考えるのが相当で
ある。
イ 請求人は、本願商標を構成する言語的要素に係る「マツモトキヨシ」
が、請求人又はその子会社の商号の略称及び同子会社が経営するドラッグス
トア、スーパーマーケット及びホームセンターの店舗名を表すものとして本
願指定役務の需要者、取引者の間で広く知られ、著名な表示になっており、
当該店舗名を想起させる状況にあることから、特定の者の氏名を認識し得る
状況にはない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号は、出願人と他人との間での商
品又は役務の出所の混同のおそれの有無、いずれかが周知著名であるという
ことなどは考慮せず、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商
標をもって商標登録を受けることは、そのこと自体によって、その氏名、名
称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし、
その他人の承諾を得ている場合を除き、商標登録を受けることができないと
する趣旨に解されるべきもの(知財高裁平成21年(行ケ)第10005号
、平成21年5月26日判決)と判示されているところである。
そして、上記(2)のとおり、本願商標である音商標を構成する「マツモ
トキヨシ」という言語的要素は、「マツモトキヨシ」を読みとする人の氏名
として客観的に把握されるものであり、別掲3及び別掲4に示した「マツモ
トキヨシ」を読みとする氏名の者は他人であると認められる。
そうすると、仮に、本願商標が、請求人又はその子会社の商号の略称及び
同子会社が経営するドラッグストア、スーパーマーケット及びホームセンタ
ーの店舗名を表すものとして一定の著名性があったとしても、かかる事実は
商標法第4条第1項第8号該当性の判断を左右するものではない。
ウ 請求人は、請求人又はその子会社である株式会社マツモトキヨシは、
「マツモトキヨシ」の片仮名又は「MatsumotoKiyoshi」の
欧文字を構成要素に含む商標について多くの商標登録を取得している旨主張
する。
しかしながら、商標が登録要件を具備しているか否かの判断は、案件ごと
に個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の取得している登
録例があるとしても、上記(1)のとおり、商標法第4条第1項第8号の趣
旨に照らせば、本願商標については、上記(2)のとおり判断すべきである
から、当該登録例をもって本願商標の商標法第4条第1項第8号該当性の判
断が左右されるものではない。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、他人の氏名を含む商標であり、かつ、その承
諾を得ているとは認められないものであるのから、商標法第4条第1項第8
号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

令和 2年 9月 9日

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