統一GCC(湾岸諸国協力会議) 商標法

制度概要

GCC(湾岸諸国協力会議:Gulf Cooperation Council)は、バーレーン(Bahrain), クエート(Kuwait), オマーン(Oman), カタール(Qatar), サウジアラビア(Saudi Arabia), アラブ首長国連邦(the United Arab Emirates)の6か国を域内とし、経済をはじめとするあらゆる分野における域内の調整,統合,連携を目的としています。知的財産分野の特許では、湾岸協力会議特許庁(GCCPO)によってGCC特許(域内特許)を付与することが行われていますが、商標では制定済みの統一商標法(unified GCC trademark law)の発効待ちという状態です。統一GCC商標法の主たる目的は、6つのGCC加盟国のそれぞれの各商標法を置き換えることであり、それによって全ての加盟国で商標の保護のための統一した規則を公布するところにあります。統一GCC商標法は、GCC特許法のような統一の出願制度をもたらすものではなく、商標の保護のための出願は各国でそれぞれ行われることになります。統一GCC 商標法は、全てのGCC 加盟国が批准しなければ成立しないため、平成28年5月現在でGCC 加盟国においてまだ効力を生じていません。

統一GCC商標法
シェイクザイードグランドモスク

統一GCC 商標法の規則内容

商標の定義

統一GCC商標法での商標は、色彩、色彩の組み合わせ、音、匂いなどの新しいタイプの商標を含むように商標を定義しています。現状では、UAEでは音などの新しいタイプの商標を登録することができますが、他の形態と結びついた場合に限られており、統一法となれば実務が変わることにもなるところです。

不登録事由

統一GCC 商標法が発効した場合、次の商標については登録できないとされています。
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  • a) 記述的商標、製品の実施又は見慣れた図面又は普通の写真などによる製品及びサービスに関する情報で構成される商標
  • b) 公序良俗に反する商標
  • c) 公のスローガン、旗、軍隊の及び名誉記章、国内及び外国のメダル、硬貨、紙幣、及び王国又は任意の他の国又はアラブ諸国の機関又は国際機関又はその下部機構のその他の記号又は以上の模倣
  • d) 赤新月社又は赤十字社の記号及び他の類似する一切の記号及びこれを模倣する一切の商標
  • e) 宗教的な記号と同一又はこれに類似する商標
  • f) 地理的な名称及びデータの使用が製品又は役務の出所又は原産地をめぐる混同を引き起こす場合の当該名称及びデータ
  • g) 本人の承諾を得ない第三者の名前、あだ名、写真又はロゴ
  • h) 無効な名誉学位又は科学的学位の記載
  • i) 誤解させる、虚偽の、模倣され、もしくは偽造された商号を含む商標
  • j) 取引の相手とすることが法律により禁じられている自然人又は法人の保有する商標
  • k) 既に第三者の名において出願又は登録されている商標と同一又は類似の商標であって、同一の製品又はサービスを指定するもの、または、類似する製品又はサービスを指定し、登録を出願した商標の使用により、当該商標が、登録商標の所有者の製品又はサービスに関連するという印象を与え、もしくは、当該所有者の利益を損なうもの
  • l) 何らかの製品又は役務を指定して登録された場合に、先の商標により識別される製品又はサービスの価値を減少させるおそれのある商標
  • m) 既知の商標又は既に登録されている商標の翻訳でしかなく、登録された場合に類似の商標又は製品により識別される製品又はサービスとの関連において消費者の混同を引き起こすおそれのある商標
  • n) フランチャイズ又は「フランチャイズ加盟店」、登録済又は「登録中」、「著作権」などの用語や表現、その他の任意の類似の用語や表現を含む商標
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多区分出願

現在では、単区分の商標登録出願だけが各GCC 加盟国で出願可能とされており、2013の統一法案では、単区分とする条項が削除されているため、多区分制への移行が検討されるものと期待されています。

団体商標

統一GCC 商標法での団体商標は、法人格を有する団体名義で登録することができ、次の登録要件が必要となります。
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  • 重要な要素が同一であること
  • 商標の重要ではない要素相互の違いが商標に悪影響を及ぼさないこと
  • 商標の指定製品又はサービスが同一分類に属すること
[/list] また、統一GCC 商標法では、任意の製品又は役務の出所、成分、製法、品質、同一性又はその他の特性の管理又はその検査を行う法人が、当該管理又は検査の事実を示す証明商標についても規定されています。また、公益事業体又は専門職能団体が、自らの通信を識別するため、もしくは構成員の記章として使用するために、商標を非営利目的で登録できると規定しています。

審査と異議申立

関係当事者は、公告の日から60日以内に、所管官庁に対し商標登録に対する異議申立書を提出することができると規定されています。現在の法制度では、各国の商標局では、審査時もしくは異議申立時に、他の区分の商品や役務について考える必要はないことになっています。発効が予定されている統一GCC 商標法では、区分は類似の範囲を定めるものではないとの規定が設けられています。

著名商標

統一GCC 商標法は、同一若しくは類似の商品・役務の範囲で著名商標の複製、模倣、翻訳となる標章の登録ができないように規定されています。また、非類似の商品・役務についても、このような著名商標を使用した場合に、その関連性を示し、所有者の利益に損害をもたらす商標の登録もできないようにしています。規則第4条では商標が著名か否かの基準を設定していまして、商標の登録や使用の期間、著名商標として知られている国の数、商標に関連した価値と使用されている商品・役務での販売等を促す部分までを考慮するとしています。

商標権の効力

商標が登録された場合、かかる登録の効果は、出願日まで遡るとされています。統一GCC 商標法では、登録商標の所有者はその商標について使用し、第三者の同一又は類似の商標の同一又は類似の商品・役務についての使用、或いは公衆を誤認させるような使用を妨げる排他権利を有するとされています。公衆を誤認させるような使用を妨げるとした条項から、商標権者は同一商品、同一標章についての混乱の立証は不要とされます。

登録商標の登録取消

統一GCC 商標法の下では、別の請求人や権利の被侵害者による先使用権が立証された場合、又は、商標権者が当該商標を5年間継続して使用しなかったことが立証された場合には登録商標を取り消すことができる。

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ライセンス登録

商標を使用することについての契約による使用権許諾は、書面によらない限り有効ではなく、かかる契約は、登録簿に登録されていない場合でも有効であると規定されています。

権利侵害

統一GCC 商標法では、登録された商標と未登録の商標の密輸について規定があり、同一又は類似の商標の同一又は類似の商品・役務についての使用についても規定(Articles 42, 3.11 and 3.12)されています。侵害については、逸失利益の損害規定もあり、差止規定もあります。また、統一GCC 商標法では、商標を侵害者に対し厳しい罰則規定があり、特に、商標の模倣又は偽造、あるいは偽造又は模倣商標の悪意による使用に対する罰則は、1か月以上3年以下の禁固刑及び/又は5000以上1,000,000サウジ・リヤル(約2732万円)の罰金に処される。同様に、模倣又は偽造された商標の添付された製品を販売又は頒布するなどの二次的行為も、1か月以上1年以下の禁固刑及び/又は1000以上100,000サウジ・リヤル(約273万円)の罰金に処される。

並行輸入

統一GCC 商標法では、輸出国で市場におかれた商品については税関の差し押さえができないとされ、税関では並行輸入が認められます。但し、税関以外については規定されていませんので、商標権者の権利行使も輸入され商品については可能との見方がされています。

更新登録

統一GCC 商標法では、GCC 商標登録は、出願日から起算して10 年ごとに更新可能とされます。

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