金銭的請求権

1.制度要旨

金銭的請求権とは、商標法第13条の2第1項に規定される請求権であって、商標登録出願人が商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる権利とされています。

2.請求できる者

請求権は商標登録の出願人が有しています。

3.警告が前提

出願後の警告が前提条件とされていまして、特許の補償金請求権のように出願公開を条件とする規定ではありません。他の要件を満たせば出願公開前の警告でも金銭的請求権を求めることができます。

4.請求の対象となる使用

請求の対象となる使用は、警告後であって商標権の設定の登録前の指定商品又は指定役務についての出願に係る商標の使用になります。類似の商標や指定商品や指定役務の類似の範囲については直接規定されていませんが、商標法第13条の2第5項で37条が準用されていますので、類似商標の指定商品・指定役務の使用や同一又は類似商標の指定商品の類似商品や指定役務の類似役務についての使用についても金銭的請求権の対象となります。

5.請求額

請求額は当該使用により生じた業務上の損失に相当する額とされています。特許の補償金請求権のように実施料相当額ではありません。損失相当額を求める必要があることから、出願人よる使用が前提となります。商標では、補てんすべき対象が業務上の信用にかかるところですので、実施料相当額では不十分なためと思われます。現実に損失が生じていることが要件になりますので、使用行為があっても損失を証拠立てることができなければ請求できないことになります。特許法105条(書類の提出等)、特許法105条の2(損害計算のための鑑定)、特許法105条の4(秘密保持命令)、特許法105条の5(秘密保持命令の取消し)、特許法105条の6(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)、特許法106条(信用回復の措置)は第5項で金銭的請求権を行使する場合に準用されています。

6.請求権の行使

金銭的請求権は、商標権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができないとされ、また金銭的請求権の行使は、その商標登録出願にかかる商標権の行使を妨げないとされています。

7.請求権の消滅

商標登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、登録異議申立により取消決定が確定したとき、商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、金銭的請求権は、初めから生じなかつたものとみなされます。また、金銭的請求権は、登録時から三年間行使しないときは、時効によって消滅します。

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商標法第13条の2
(設定の登録前の金銭的請求権等)
第十三条の二  商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。
2  前項の規定による請求権は、商標権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。
3  第一項の規定による請求権の行使は、商標権の行使を妨げない。
4  商標登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第四十三条の三第二項の取消決定が確定したとき、又は第四十六条の二第一項ただし書の場合を除き商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。
5  第二十七条、第三十七条、第三十九条において準用する特許法第百四条の三第一項 及び第二項 、第百五条、第百五条の二、第百五条の四から第百五条の六まで及び第百六条、第五十六条第一項において準用する同法第百六十八条第三項 から第六項 まで並びに民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条 及び第七百二十四条 (不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が商標権の設定の登録前に当該商標登録出願に係る商標の使用の事実及びその使用をした者を知つたときは、同条 中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「商標権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。