仲裁法 vol.2

仲裁法 vol.1から続く

   第六章 仲裁判断及び仲裁手続の終了

(仲裁判断において準拠すべき法)
第三十六条  仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによる。この場合において、一の国の法令が定められたときは、反対の意思が明示された場合を除き、当該定めは、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなす。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令であって事案に直接適用されるべきものを適用しなければならない。
3  仲裁廷は、当事者双方の明示された求めがあるときは、前二項の規定にかかわらず、衡平と善により判断するものとする。
4  仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に係る契約があるときはこれに定められたところに従って判断し、当該民事上の紛争に適用することができる慣習があるときはこれを考慮しなければならない。
(合議体である仲裁廷の議事)
第三十七条  合議体である仲裁廷は、仲裁人の互選により、仲裁廷の長である仲裁人を選任しなければならない。
2  合議体である仲裁廷の議事は、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数で決する。
3  前項の規定にかかわらず、仲裁手続における手続上の事項は、当事者双方の合意又は他のすべての仲裁人の委任があるときは、仲裁廷の長である仲裁人が決することができる。
4  前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
(和解)
第三十八条  仲裁廷は、仲裁手続の進行中において、仲裁手続に付された民事上の紛争について当事者間に和解が成立し、かつ、当事者双方の申立てがあるときは、当該和解における合意を内容とする決定をすることができる。
2  前項の決定は、仲裁判断としての効力を有する。
3  第一項の決定をするには、次条第一項及び第三項の規定に従って決定書を作成し、かつ、これに仲裁判断であることの表示をしなければならない。
4  当事者双方の承諾がある場合には、仲裁廷又はその選任した一人若しくは二人以上の仲裁人は、仲裁手続に付された民事上の紛争について、和解を試みることができる。
5  前項の承諾又はその撤回は、当事者間に別段の合意がない限り、書面でしなければならない。
(仲裁判断書)
第三十九条  仲裁判断をするには、仲裁判断書を作成し、これに仲裁判断をした仲裁人が署名しなければならない。ただし、仲裁廷が合議体である場合には、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数が署名し、かつ、他の仲裁人の署名がないことの理由を記載すれば足りる。
2  仲裁判断書には、理由を記載しなければならない。ただし、当事者間に別段の合意がある場合は、この限りでない。
3  仲裁判断書には、作成の年月日及び仲裁地を記載しなければならない。
4  仲裁判断は、仲裁地においてされたものとみなす。
5  仲裁廷は、仲裁判断がされたときは、仲裁人の署名のある仲裁判断書の写しを送付する方法により、仲裁判断を各当事者に通知しなければならない。
6  第一項ただし書の規定は、前項の仲裁判断書の写しについて準用する。
(仲裁手続の終了)
第四十条  仲裁手続は、仲裁判断又は仲裁手続の終了決定があったときに、終了する。
2  仲裁廷は、第二十三条第四項第二号又は第三十三条第一項の規定による場合のほか、次に掲げる事由のいずれかがあるときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
一  仲裁申立人がその申立てを取り下げたとき。ただし、仲裁被申立人が取下げに異議を述べ、かつ、仲裁手続に付された民事上の紛争の解決について仲裁被申立人が正当な利益を有すると仲裁廷が認めるときは、この限りでない。
二  当事者双方が仲裁手続を終了させる旨の合意をしたとき。
三  仲裁手続に付された民事上の紛争について、当事者間に和解が成立したとき(第三十八条第一項の決定があったときを除く。)。
四  前三号に掲げる場合のほか、仲裁廷が、仲裁手続を続行する必要がなく、又は仲裁手続を続行することが不可能であると認めたとき。
3  仲裁手続が終了したときは、仲裁廷の任務は、終了する。ただし、次条から第四十三条までの規定による行為をすることができる。
(仲裁判断の訂正)
第四十一条  仲裁廷は、当事者の申立てにより又は職権で、仲裁判断における計算違い、誤記その他これらに類する誤りを訂正することができる。
2  前項の申立ては、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁判断の通知を受けた日から三十日以内にしなければならない。
3  当事者は、第一項の申立てをするときは、あらかじめ、又は同時に、他の当事者に対して、当該申立ての内容を記載した通知を発しなければならない。
4  仲裁廷は、第一項の申立ての日から三十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。
5  仲裁廷は、必要があると認めるときは、前項の期間を延長することができる。
6  第三十九条の規定は、仲裁判断の訂正の決定及び第一項の申立てを却下する決定について準用する。
(仲裁廷による仲裁判断の解釈)
第四十二条  当事者は、仲裁廷に対し、仲裁判断の特定の部分の解釈を求める申立てをすることができる。
2  前項の申立ては、当事者間にかかる申立てをすることができる旨の合意がある場合に限り、することができる。
3  前条第二項及び第三項の規定は第一項の申立てについて、第三十九条並びに前条第四項及び第五項の規定は第一項の申立てについての決定について、それぞれ準用する。
(追加仲裁判断)
第四十三条  当事者は、仲裁手続における申立てのうちに仲裁判断において判断が示されなかったものがあるときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁廷に対し、当該申立てについての仲裁判断を求める申立てをすることができる。この場合においては、第四十一条第二項及び第三項の規定を準用する。
2  仲裁廷は、前項の申立ての日から六十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。この場合においては、第四十一条第五項の規定を準用する。
3  第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。

   第七章 仲裁判断の取消し

第四十四条  当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁判断の取消しの申立てをすることができる。
一  仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二  仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、日本の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三  申立人が、仲裁人の選任手続又は仲裁手続において、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
四  申立人が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
五  仲裁判断が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
六  仲裁廷の構成又は仲裁手続が、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
七  仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
八  仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
2  前項の申立ては、仲裁判断書(第四十一条から前条までの規定による仲裁廷の決定の決定書を含む。)の写しの送付による通知がされた日から三箇月を経過したとき、又は第四十六条の規定による執行決定が確定したときは、することができない。
3  裁判所は、第一項の申立てに係る事件がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
4  第一項の申立てに係る事件についての第五条第三項又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5  裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第一項の申立てについての決定をすることができない。
6  裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、同項各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(同項第一号から第六号までに掲げる事由にあっては、申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)は、仲裁判断を取り消すことができる。
7  第一項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、裁判所は、仲裁判断のうち当該部分のみを取り消すことができる。
8  第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

   第八章 仲裁判断の承認及び執行決定

(仲裁判断の承認)
第四十五条  仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する。ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。
2  前項の規定は、次に掲げる事由のいずれかがある場合(第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、当事者のいずれかが当該事由の存在を証明した場合に限る。)には、適用しない。
一  仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二  仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、仲裁地が属する国の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三  当事者が、仲裁人の選任手続又は仲裁手続において、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
四  当事者が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
五  仲裁判断が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
六  仲裁廷の構成又は仲裁手続が、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
七  仲裁地が属する国(仲裁手続に適用された法令が仲裁地が属する国以外の国の法令である場合にあっては、当該国)の法令によれば、仲裁判断が確定していないこと、又は仲裁判断がその国の裁判機関により取り消され、若しくは効力を停止されたこと。
八  仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
九  仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
3  前項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、当該部分及び当該仲裁判断のその他の部分をそれぞれ独立した仲裁判断とみなして、同項の規定を適用する。
(仲裁判断の執行決定)
第四十六条  仲裁判断に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(仲裁判断に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをすることができる。
2  前項の申立てをするときは、仲裁判断書の写し、当該写しの内容が仲裁判断書と同一であることを証明する文書及び仲裁判断書(日本語で作成されたものを除く。)の日本語による翻訳文を提出しなければならない。
3  第一項の申立てを受けた裁判所は、前条第二項第七号に規定する裁判機関に対して仲裁判断の取消し又はその効力の停止を求める申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第一項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、同項の申立てをした者の申立てにより、他の当事者に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
4  第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる裁判所及び請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
5  裁判所は、第一項の申立てに係る事件がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
6  第一項の申立てに係る事件についての第五条第三項又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7  裁判所は、次項又は第九項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。
8  裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、前条第二項各号に掲げる事由のいずれかがあると認める場合(同項第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
9  前条第三項の規定は、同条第二項第五号に掲げる事由がある場合における前項の規定の適用について準用する。
10  第四十四条第五項及び第八項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。

   第九章 雑則

(仲裁人の報酬)
第四十七条  仲裁人は、当事者が合意により定めるところにより、報酬を受けることができる。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁人の報酬を決定する。この場合において、当該報酬は、相当な額でなければならない。
(仲裁費用の予納)
第四十八条  仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続の費用の概算額として仲裁廷の定める金額について、相当の期間を定めて、当事者に予納を命ずることができる。
2  仲裁廷は、前項の規定により予納を命じた場合において、その予納がないときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続を中止し、又は終了することができる。
(仲裁費用の分担)
第四十九条  当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担は、当事者が合意により定めるところによる。
2  前項の合意がないときは、当事者が仲裁手続に関して支出した費用は、各自が負担する。
3  仲裁廷は、当事者間に合意があるときは、当該合意により定めるところにより、仲裁判断又は独立の決定において、当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担及びこれに基づき一方の当事者が他方の当事者に対して償還すべき額を定めることができる。
4  独立の決定において前項に規定する事項を定めた場合においては、当該決定は、仲裁判断としての効力を有する。
5  第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。

   第十章 罰則

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第五十条  仲裁人が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2  仲裁人になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、仲裁人となった場合において、五年以下の懲役に処する。
(第三者供賄)
第五十一条  仲裁人が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(加重収賄及び事後収賄)
第五十二条  仲裁人が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2  仲裁人が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3  仲裁人であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第五十三条  犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄)
第五十四条  第五十条から第五十二条までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(国外犯)
第五十五条  第五十条から第五十三条までの規定は、日本国外において第五十条から第五十二条までの罪を犯した者にも適用する。
2  前条の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二条 の例に従う。

仲裁法 vol.1