キャラクターと商品化権🧸

1.商品化権とは?

商品化権は商品の販売や役務の提供の促進のためにキャラクター(character)やエンドーサー(endorser)を媒体として利用する権利です。商品化権は法令として定められた用語ではなく、英語の”Merchandising Right”の訳とされています。商品化権は、契約によって発生しますが、その内容は著作権、肖像権、商標権、意匠権のライセンスや、不正競争防止法や民法の不法行為からの制約などに依存します。TV番組、アニメやゲームなどのキャラクターについての商品化権を構成する権利として中心的なものは著作権です。著作権は無方式主義ですので、政府機関などに登録しなくとも発生し、そのライセンスも可能です。商標権と意匠権は、日本の場合特許庁への登録作業が前提として必要です。エンドーサーは、スポーツ選手、アーティスト、タレント、俳優などの著名人がなることができ、知名度が低い人や一般の人は顧客吸収力が低いため、原則的にはエンドーサーにはなれません。エンドーサーの名前、嗜好、評判、コマーシャルフィルム、SNSなどを商品の宣伝広告や販売促進等に使用する契約をエンドースメント契約(endorsement contract)ともいいます。キャラクターを用いたビジネスで稼ぐためには、優れた著作物を生み出すセンスと、それをライセンスビジネスとして活用するための法的な知識が必要です。

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2.キャラクター

キャラクターといえば、小説、漫画、映画、アニメ、コンピュータゲームなどの作品(コンテンツ)に登場する人物や動物を指しますが、そのイラストや着ぐるみなども含めて考えることができます。キャラクターは大別すれば、コンテンツに基づくコンテンツキャラクター(例えば、ポケモンやどらえもんなどの漫画のキャラクター)と、コンテンツに由来しない広報や販売促進を託された非コンテンツキャラクターとに分けられます。非コンテンツキャラクターは、例えば町おこしなどの地方自治体や地域の組合などが採用する所謂ゆるキャラや、商品の販売促進に専ら使用されるキャラクター(例えば、ガリガリ君やカールおじさんなど)もあります。また、例えばアーティスト、タレント、スポーツアスリートなどの実在する有名人由来の似顔絵等(例えば、志村けんのバカ殿様、加藤茶の加トチャンの各キャラクター)のような著作物もキャラクターの定義に含まれると思われます。最高裁判決(平成4(オ)1443)では、「キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念」であり、「連載漫画においては、登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。」と判示し、「複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りる」と判断しています。言い換えれば、漫画などの基になるコンテンツを離れて抽象的なキャラクターまでは著作物とはならないが、その特徴から登場人物を描いたものであれば細部の一致は必要ではないということだと思います。

3.キャラクターの契約の重要性

キャラクターを利用する、譲渡する、第三者に権利行使するなどの取り決めは、著作者、著作権者、利用者の間の契約に主に依存します。著作活動により生ずる権利は、一身専属の著作人格権と、財産権として譲渡可能な著作権があり、特に契約やそれ以前の応募の時点で、権利の帰属関係や不行使などを明確にしていないと問題が発生することもあります。コンテンツキャラクターは、既にコンテンツビジネスが存在しているとの前提では、出版権の契約や放映権の契約に商品化権契約が内包される場合や、追加される場合もあるかと思います。非コンテンツキャラクターでは、著作者と著作権者の間の著作権譲渡契約と、著作権者と利用者の間の商品化権契約(ライセンス契約)は、別の契約となり、下流側に当たる商品化権契約も重要ですが、特に上流側の著作権譲渡契約も重要です。著作権法には「使用権」や「利用権」という名前の権利は存在しないことから、契約書においては、著作権法に規定されている権利の名称を使うなどして、譲渡対象を明確にする必要もあります。また、キャラクターの使用は無償とされる場合もありますが、有料の場合もあり、詳しくはキャラクターの使用料率のページをご参照下さい。

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3-1. 著作権譲渡契約

著作権人格権について スターボ事件(東京地裁 平成18年(ワ)10704号、H20.4.18判決)や、ひこにゃん事件(大阪高裁平成23年(ラ)第56号、H23.3.31判決)からの教訓としては、著作人格権についての契約が甘い場合には、揉め事も大きくなることがあり、商品化により利益を拡大する場合の障害になり得る点が挙げられます。著作権人格権は一身専属であるために譲渡することができず、著作権人格権のうちの特に同一性保持権が販促や広報のために商品展開する上で大きな妨げとなり、著作物の少し色やバランスや姿勢、向きを変えてといった変更もできなくなる可能性もあります。商品化でビジネスを展開することが予定されている場合、著作者が外部デザイナーや公募などで応募した者である場合には、契約により著作権人格権の不行使特約を著作権者との使用権者に対して確実に締結することが重要になります。特に仲介として間に入るような広告代理店は、著作権人格権の権利処理に失敗すると損害賠償も憂慮することにもなり兼ねないと言えます。”採用作品の一部修正・翻案を主催者に認める”という契約条項も著作権人格権の不行使特約として機能します。

著作権の譲渡について 一般に、制作費用を支払ってデザインしてもらう場合には、著作権の譲渡が前提となる場合が多いと思いますが、譲渡契約に、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていない場合には、譲渡人にそれらの権利が留保されると推定される(著作権法第61条第2項)ため、”著作権等一切の権利を譲渡する”というような包括的な記載では、翻訳権、翻案権は著作者が享有したままということにもなります。前出のひこにゃん事件では、契約書の他の部分が参照されて翻訳権、翻案権は譲渡されている(著作権法第61条第2項の推定の覆滅)と判断されましたが、包括的記載が必ず救済される訳ではなく、著作権法第61条第2項の趣旨からして、著作権の譲渡には第27条又は第28条に規定する権利も特に記載するのが問題を起こさないためにも必要です。著作権の譲渡に付随して、商標権、意匠権その他の知的財産権を譲渡させる条項も有効です。応募と並行して商標登録出願を秘密裏に外国で行い、半年後に優先権を主張しながら日本に出願して権利者の出願に対する先願の地位を確保しながら商標権を取得するという背任行為もないとは言い切れないからです。

権原保証 権原保証は、著作権者が確実に著作権を有していることを保証するもので、言い換えれば、他人の著作権やその他の知的財産権を侵害していないことを保証することでもあります。著作権を有していないのに契約している場合には損害賠償の求めに応じることを誓うことを意味します。例えばデザイナーが制作した場合でも、裁判で似ているキャラクターが先に存在しているとの訴追を受けることもありますので、デザインの公募では、そのデザインの過程で発生するデッサン、下絵、スケッチなど制作過程で生ずる関連資料を保存することを義務づけ、確認することがあるとの事項を応募要項に盛り込むことがあります。また、同じ著作者が過去に発表若しくは応募した作品及びそれに類似する作品を排除することもトラブルを回避するためには必要です。

著作権登録 著作権登録については、ほとんど登録が利用されていないという実態もあり、全く記載していない契約書も存在しますが、著作権の譲渡については、文化庁での登録が第三者対抗要件となっていて(著作権法第77条)、譲渡人である著作者が2重譲渡して後に譲渡を受けた者(譲受人)が先に登録した場合には、先に登録した者が真の譲受人となり、先に譲渡を受けながらも登録していない者若しくは登録が後になってしまった者は先に譲渡契約を結んでいても権利を有しないことになります。著作権の譲渡の登録は、両当事者(譲受人および譲渡人)が行うものですが、譲渡人の承諾があれば譲受人単独で登録することもでき、譲受人が必要に応じて登録できるよう、契約書に登録を承諾する条項を設けておくことが望ましいと思われます。

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3-2. 商品化権契約

商品化権契約は、著作権者若しくは著作権管理者と商品販売者等との間に締結される、商品に著作権の利用を許諾することを内容とする契約です。漫画やゲーム主人公のようなコンテンツキャラクターの場合には、著作物の利用の形態は、複製権の利用若しくは二次的著作物(翻案権)の利用となり、例えばマンガ のキャラクターを立体化し、そのフィギュア人形を販売したり、Tシャツや文房具にキャラクターを印刷したりして販売することができます。また、キャラクターの利用許諾契約は、著作権だけではなく、商標権や意匠権、不正競争防止法も、特に第3者に模倣・盗用された場合に力を発揮するように構成されます。

商品化許諾の範囲 商品化について許諾される範囲としては、許諾商品、許諾地域、そして許諾期間があります。また、使用料率やミニマム(最低保証数量)なども、ライセンス交渉での条件となります。一般的に、日本の方式の例として、交渉相手毎に変動するような許諾条件を別紙とし、そこに項目ごとの数値を書き込むことが良く行われます。これらの条件を交渉で複数の相手ごとに変えた場合に、別紙部分だけ書き換えれば済むからです。契約書の印刷も今日では簡単ですので、別紙にしなくとも契約内容は同じです。許諾地域としては、日本国内に限定される場合が多いと思いますが、日本に限定しない契約も当事者間の合意があれば可能です。許諾期間について、単年や複数年とすることが多く、合意により更新可能とするものが多く、許諾商品の販売予定日が属する日の月初を許諾期間の開始日と設定する例が多いものと思われます。

使用形態の制限・品質管理 使用できるキャラクターについては、全く同じものを複製する場合は問題を生じない場合でも、少し改変させる場合などでは2次著作物の問題があり、その場合には、著作権者若しくは著作権管理者の許可を必要とするように条件を盛り込む例が多いものと思います。例えば、キャラクターが画像でイラストの仕様書には正面顔だけの場合、横顔を制作して商品に使用する場合には、許可を要することになります。実際に販売する製品と同じサンプルを提出し、許可を得てからという事例も多いと思います。この少し改変の部分が、著作人格権の不行使にあたりますので、著作権者若しくは著作権管理者は著作者からの譲渡契約の権利処理に失敗しますと、賠償責任の問題となり得ます。色を変える、姿勢を変える、背景を変える、表情を変える、セリフを加えるという改変の全てが許される訳ではありませんので、許可を要する設定が望ましいと思います。また、許諾されるキャラクターの使用であっても、販売や広告に、社会的・教育的に悪影響を与えるような方法での行為を禁止するという条項を設け、例えば正義のヒーローの如きキャラクターが反社会的行為の手前で気づくというようなストーリーにはNGを出せるようにという配慮が必要です。

サブライセンス 著作権の利用者として、さらに他人に利用させる場合をサブライセンスあるいは再許諾といいます。契約自由の原則からサブライセンスが全くできない訳ではありませんが、商品化権契約については、その地域のプロモーターや仲介役として商品化権契約を結ぶ場合を除いて、他人への再許諾を禁止する例が多いものと思います。著作権者若しくは著作権管理者としては、販売数量がロイヤリティーの額に影響するため、販売数量の把握が重要であり、もし売り上げが立たない事業者には他の事業者への交代なども業務上必要だったりします。再許諾では、全数把握ができなかったり品質管理などもありますので、再許諾禁止が多いものと思います。また、権利義務について第3者への譲渡は、相手側の同意を要する例も多いと思います。

著作権表示 商品化権契約について著作権表示を必ずしなければならないということはなく、購買者の誤認混同を防止するための条項となります。ただし、契約としては、著作権表示を義務付ける条件の商品化権契約が多いものと思います。著作権表示の例としては、©マークと、発行年,著作権者名のような例が使用されていますが、©マーク自体は単に慣例で使用されているだけで法的な根拠はなく、他の表示方法も利用できます。著作権表示は、商品の一部に表示することが義務付けられたりしますが、商品によってはタグや包装材の一部に表示することも可能です。

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検数証紙 著作物の利用者が商品に使用した件数を正確に報告することを義務づけることで、使用料を確保する狙いがあり、例えば、半年や3か月ごとの数量を報告することを義務付けます。これと平行して、あるいは証紙を商品に貼って販売することを義務付ける場合では、渡す証紙の数や証紙の残数を管理することで、商品化された著作物の数量を把握することができます。証紙の貼り方として、商品1点ごとに一つ貼る方法と、代表証紙としてインナーカートン(例えばたばこの1カートン)に一つ貼る方法もあります。証紙としては、簡単に偽造できないホログラム採用のものもあり、より管理を徹底するためID番号を印字するなどの手法も存在します。証紙のあるなしが問われる場合は一目瞭然ですが、証紙の真贋を問うような場合には、簡単に偽造できない工夫も要します。

他の知的財産 著作物を商品に展開した場合に、他人の意匠権や商標権と抵触するような態様も考えられ、例えば、著作権管理者がキャラクターの図柄だけ管理し名前については管理しないというような場合には、利用者サイドでのトラブルが発生することにもなります。例えば、非コンテンツキャラクターの名前が〇〇ちゃんとされ、その”〇〇ちゃん”の名前についてライセンシーに使用してもらう商品についての商標登録を確保しない場合には、他人が”〇〇ちゃん”の商標を後からでも登録してしまうことがあり、その結果、商品化権ライセンスのライセンシーが使用できなくなるというような問題が発生します。このような問題を未然に防止するため、できれば著作権者あるいは著作権管理者で他の知的財産権を取得することが望まれ、特に商標権は必要性が高いものと思います。また、商品販売者等がもし商標権や意匠権などの他の知的財産権を取得するようなことがあれば、他のライセンシーに対する影響もあることから、著作権者あるいは著作権管理者に有償若しくは無償で譲渡することを義務付けたり、同意がなければ出願もできないとする条項が有効です。また、ライセンシーに他の知的財産権をとらせないのは、日本だけでなく世界中とすべきで、例えば中国での商標権は勝手にどうぞという考え方では、中国にもライセンスする際に商標などの問題を生ずることになります。

第3者対応 商品化権契約で考慮すべき第3者対応は2つに大別でき、1つは他人の侵害行為に対するもので、もう1つは他人から商品化権の利用が侵害だと言われる場合です。この第3者対応のうちの他人の侵害行為については、ライセンサーである著作権者若しくは著作権管理者に侵害排除を義務づける条項があれば、ライセンシー側からみて十分とも思えますが、他人の侵害排除はいくらかかるかは計算できないところがあり、義務までではなく排除すべく最善の努力とする例や、合理的措置を講じる(ライセンス料に比べて訴訟費用がかかりすぎると判断すれば辞められる)とする例が多いものと思います。一方、ライセンシー側の義務としては、侵害行為を発見したときは通知する義務があるとする契約が多いものと思います。次に、ライセンシー側の商品化の行為が他人の権利と抵触する場合には、著作権などの知的財産権を侵害する行為なのか、それ以外の製造物賠償責任等なのかを区別するような条項としている契約例が多く、製造物賠償責任等の場合は次項のように著作権者若しくは著作権管理者の免責条項が求められます。また、ライセンシーが著作権を侵害しているとして第3者から訴えられたり、文句を言われる場合には、当該商品化権契約の根底となる事項に問題ありとなる可能性があり、商品化権契約自体の契約が無効となったり、損害賠償責任が生ずる可能性もあり、それに対するライセンス料の不返還特約を予め入れるかどうかというような話になりかねませんが、著作権自体は著作者が盗作・冒認などをしない限りは、著作権が簡単につぶれるようなことはなく、著作権の譲渡契約に錯誤がなければ、問題とならない事案が多い筈です。第3者からの著作権侵害の訴えや警告については場合、著作権者若しくは著作権管理者の費用負担で処理すべき事項にはなります。著作権侵害の要件として簡単には1)類似性と2)依拠性(いきょせい)が挙げられます。キャラクターの著作物についての類似性に関しては、前述のように第三者の図画が登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りるとされています。

製造物賠償責任と免責 商品化権契約による商品の製造や販売に起因して万一の事故などが生じた場合には、ライセンサーである著作権者若しくは著作権管理者を免責とする条項を記載する例が多いものと思います。例えば、キャラクターの形状にオリジナルの製品形状から改変することで、強度の低下が生じ、何等かの事故が発生したような事件では、著作権者若しくは著作権管理者はいかなる責任も負わないと規定したり、ライセンシー側に商品についての製造物賠償責任保険の加入を義務付けるなどの規定を設けることができます。

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4. 商標と商品化権

コンテンツキャラクターと非コンテンツキャラクターの両方とも著作権を中心とするため、商標権などを取らなくてもライセンス自体影響がないように考える方もいるかと思いますが、著作物を商品に適用する行為は、商標の使用行為とかさなるため、コンテンツキャラクターは物販による収益を考えた場合に、また非コンテンツキャラクターはほぼ間違いなく、商標による保護を無視できないと思います。たとえば、キャラクターに同一の図柄や似た図柄は存在していない場合であっても、その名前について先に他人が商標登録している場合には、キャラクターをその抵触する名前で使用ができない状態になります。このような先登録商標の存在は、キャラクターの命名前に商標調査を行うことで見出すことが重要で、その後に仮に商標登録出願をしない場合であっても商標調査は必要です。従いまして、商標調査のタイミングは、一般大衆に公表する前でまだ名前の変更が可能なうちに行うことが重要で、一般大衆に知られた後でのキャラクターの変名は宣伝活動がふりだしに戻ることになります。また、名前だけではなくキャラクターの絵自体についても商標登録を行うことが一般に行われています。これは似ているキャラクターの絵を使用する者に対して著作権侵害を訴えることを想定した場合、著作権だけでは著作物を創作した日付けの証明が容易ではなく、その権利者も相対的であるため、商標権も用いることで日付や権利者の曖昧さを少しでも回避する狙いもあります。アニメーションなどの場合では、キャラクターの姿勢などは動いて変化しますが、商標権として保護する場合には、代表的な画像が選択されて登録される例が多いものと思います。

5.当事者別の契約事項の要点

5-1. デザイナー・イラストレーター

デザイナー/イラストレーターの方は、キャラクターを創作するという行為を行って著作者となりますが、職務著作の場合には、デザインした人はその組織の一員にすぎず、著作者は組織である法人等になります。その場合、著作権人格権は職務著作をした法人が享有することになります。職務著作とされるには著作権法第15条に規定があり、次の要件があります。1)著作物の作成が法人等の発意に基づく、2)法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物である、3)その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの、4)その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないの各要件を満たせば職務著作が成立します。外部の独立したデザイナーの場合には、法人等の業務に従事する者ではないので、職務著作には該当しません。従って、デザイナー個人が著作権を当初を有し、一般的には依頼者に譲渡する形か依頼者に利用を許諾する形となります。これらはいずれも契約により生じる権利関係ですので、書面で契約することがトラブルを未然に回避する上でも望ましいところですが契約書を作成せずに口頭で契約を結んでも有効です。目安として例えば10万円以上の対価が発生するような仕事には、書面で契約するというようなポリシーもありかなと思います。

5-2.イベント主催者

町興しのようなイベントでは、キャラクターを利用した宣伝活動やメディア露出などの手法がとられることがあり、県や町などの地方自治体や、協同組合や観光協会のような組織が主催者になることがあります。この場合、広告代理店に依頼することも多いと思いますが、独自に契約を結んでキャラクターを制作し、それを利用する場合には、それぞれの契約が必要となります。外部のデザイナーが選ばれてキャラクターを制作する場合には、デザイナーとの間で利用契約する以外は、確実な譲渡契約や人格権の権利処理が必要であり、できない場合にはひこにゃん事件のような紛争が生ずるおそれがあります。また、自治体が著作権・商品化権を管理するにしろ、代理店が商品化権を管理するにしろ、著作権の利用者の管理だけでなく許諾を得ていない第3者の使用を排除する必要もあり、また、商標権についても商品化権を設定する商品チャンネルには、キャラクターの名前での問題が生じないように商標権の取得などの手当てが求められます。また、デザインを公募する場合には、その応募の段階から、譲渡契約や人格権の不行使処理について知らせる必要があります。また、地方自治体は、平等の原則があり、利益を追求して誰かと契約するような場合や侵害が疑われる第3者を訴えるという点で遅れる傾向もあり、特にライセンス料を取っている場合には素早い侵害対応は必要となります。

5-3. 広告代理店

スターボ事件では、裁判所は広告代理店の義務についても言及しており、1)被告の広告代理店は、イラストなどが広告、リーフレット及びパッケージに使用することができるように、著作者から翻案の許諾を得、かつ著作者人格権が行使されないように権利処理を行う義務があり、2)このような権利処理が行われていなかったことを認識し又は認識し得たときは、契約による信義則上、原告の依頼者にその使用をしないよう連絡するなどの方法により、依頼者に発生する被害の拡大を防止する義務があり、3)さらに広告代理店は、自己の履行補助者の立場にある孫請け制作会社に製作過程等を確認するなどして、著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務もあると判示しています。すなわち、著作権の仲介を行う広告代理店は、i)制作過程の確認による制作者側での著作を確認、ii)著作者人格権の不行使と2次著作物の利用の確保、iii)万一、権利処理ができない場合、依頼者に連絡するという善管注意義務があると述べています。また、キャラクターに名前がある場合には、特に他人の商標権に抵触しないかどうかを注意する必要があり、抵触する場合には、名前を変更するなどの対策が重要です。商品化権を設定する場合には、Tshirtなどの被服(第25類)や、文房具(第16類)などが販売促進用商品として設定される場合が多く、他にも菓子・パン(第30類)や、アプリ(第9類)などの多く出願されています。この当りの商品についてのライセンスを図る場合には事前の商標クリアランス調査が必要となります。

5-4.商品製造販売業者

商品化権契約を結んでキャラクターを利用する業者の方は、通常、商品化権の管理者から書面の商品化権設定契約書などの何等かの契約書が準備されていて、許諾期間、ライセンス料、許諾商品、許諾地域などの諸条件について話し合いを行って、書面に数字が入れられ署名捺印して契約書が完成する形式が多いものと思います。ライセンシー側からすれば、ライセンス料と利用する期間や商品や役務以外にはあまり交渉の余地はないようですが、いくつかのチェック事項は挙げられます。1)許諾がその商品及びそれに類似する商品に関して独占なのか非独占なのかを確認すること。非独占であれば、競合する商品も現れますので、要注意です。2)数量の特定方法は、自己申告なのか、検数証紙方式なのか、通し番号なのか、IDをサーバー等で管理する方式なのかを判断し、あまりに負担とならない方法かを確認します。3)サブライセンス又は再許諾は可能なのかを確認します。一般にサブライセンスはNGか、事前の合意という条件になると思います。4)翻案の範囲を業務上支障のない範囲としているのかを確認します。これは27条さらには28条についても、管理者が権利を有しているのかということでもあり、余りにその範囲が狭い場合には、少しの翻案(改変)もできないため、商品化が難しくなります。また商品サンプルの提出を義務付ける契約も存在します。5)商標権、意匠権の取得についての規定があるかどうかを確認します。キャラクターの名前や絵の商標権を管理者が取得していない場合、他人にとられることで、ライセンシーの利用が大幅に制限される可能性があります。そのあたりの手当てがどのようになっているかが重要です。6)第3者の権利侵害の対処 第3者の権利侵害が横行するようでは、ライセンスした意義も失われることになりますので、原則、ライセンス料の支払いを受けている著作権者若しくは著作権管理者が侵害行為に対処すべきです。この場合、商標権侵害や不正競争防止法(形態模倣など)による救済も可能な場合もあります。一般的は、ライセンシーが他人の侵害行為を知ったときには、著作権者若しくは著作権管理者に通知する義務があるとする契約が多いものと思います。

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5-5.ゲーム会社

例えばインターラクティヴゲームなどの登場人物をゲーム制作会社内で社員が内製した場合には、原則職務著作の規定が当てはまると思いますが、キャラクターのデザインを外注により制作した場合、特に外注先が個人のデザイナーの場合には、著作権人格権の問題が生じる可能性があり、契約等で著作権人格権の不行使特約がなければ2次著作物(Tシャツや文具など)に展開する場合の障害となり得ます。直接外注でなくとも、下請けのさらに孫請けが個人の場合もありますので、下請けがデザイン会社でも制作過程のチェックは必要です。ビデオゲームはプログラムの著作権でもありますが、同時に映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現される動画等は、映画の著作物にもなることから、ビデオゲームは映画の著作物にもなります(中古ゲームソフト事件 最高裁 平成14年4月25日、但し頒布権は消尽)。映画の著作物の著作権は、著作者が映画製作者に対し当該映画の直作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属するとの規定があります(著作権法第29条)。すなわち、映画の著作物については、著作者の権利のうち「財産権」の部分が、参加契約があれば自動的に監督等の著作者から映画会社(映画製作者)に移ることになっています(法定譲渡)。この場合、著作権人格権は、映画会社の社員で制作された場合には職務著作となり、映画会社が人格権も有しますが、独立した監督など(所謂モダンオーサー)により製作された場合には著作権人格権は監督などが享有したままとなります。なお、映画の原作部分の著作者はクラシカルオーサーと呼ばれ、映画の著作物の著作者からは除外されます。

5-6.出版社

小説家や漫画家、随筆家などは出版社との間に出版権を設定する出版契約が結ばれることが多いと思われます。出版権者は、その目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有します(著作権法第80条第1項)。出版権は、著作権のうちの複製権を有する者が出版社との契約を締結して発生します。通常は、出版権の契約書は、対価と交換した複製権の専有が基本事項ですので、商品化権については別途の契約となるものが多いと思われます。著作者に支払われる印税は刷り部数に本の本体価格を乗じた金額の10%が多いとされ、刷部数に対して印税を払う生産印税方式と、欧米では売れた部数に対して払う販売印税方式があります。なお、出版権の設定を受けた出版者は、原稿の引渡し等を受けた日から6ヶ月以内に著作物について出版、電子出版を行う義務や継続して出版、電子出版を行う義務を負います。また、出版権の設定については、登録しなければ第三者に対抗することができないというルール(第79条~第88条)になっています。

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著作者 著作権法第14条乃至第16条
第二節 著作者
(著作者の推定)
第十四条 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。
(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
(映画の著作物の著作者)
第十六条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。
翻訳権、翻案権等 著作権法第27条、第28条
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)
第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
映画の著作物の著作権の帰属 著作権法第29条
第四款 映画の著作物の著作権の帰属
第二十九条 映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
2 専ら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該放送事業者に帰属する。
一 その著作物を放送する権利及び放送されるその著作物について、有線放送し、自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により放送事業者に頒布する権利
3 専ら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物(第十五条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権のうち次に掲げる権利は、映画製作者としての当該有線放送事業者に帰属する。
一 その著作物を有線放送する権利及び有線放送されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利
二 その著作物を複製し、又はその複製物により有線放送事業者に頒布する権利
著作者人格権 著作権法第59条
第五節 著作者人格権の一身専属性等
(著作者人格権の一身専属性)
第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
(著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
第六節 著作権の譲渡及び消滅
(著作権の譲渡)
第六十一条 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
東京オリンピックマスコット・応募作品の知的財産権等について(応募要項より)
    1. 応募者はその応募作品が最終審査候備作品に決定した場合、当該作品に関する著作権(著作権法第27条および第21条に規定する権利を含みます。}、商標権意匠権その他の知的財産権(これらを出版する権利や当該作品を譲渡し、再現し、復製し、出版し、変更し、改変し、修正し、または頒布する権利を含みますがこれらに限られません。) 所有権等一切の全世界における権利を組織委員会に無償で譲渡していただきます.また当該作品こ関する著作者人格権その他一切の人格権を組織委員会およびその指定する者に対して行使しない旨をご了解いただきます。
    2. 応募者には、その応募作品が最終審査候補作品に決定した場合、応募作品について組織委員会またはその指定する者等により商標・意匠の出願・登録が行われることにつきご了解いただきます。なお、大会終了後当該作品の一切の権利は、オリンピックに関するものはIOCに、パラリンピックに関するものはIPCにそれぞれ帰属することになります。
    3. 応募者には、上記1.その他に基づく応募作品に関する権利の譲渡や保護等に関して必要となる書類の提出、その他の各種事務・手続等についてご協力いただきます。
    4. すべての応募作品について組織委員会並びにIOCおよびIPCが、全世界において、期間の制限なく、広報・記録等の目的で、印刷物、Webへの掲載、展示会での展示その他あらゆる方法で、無償で非独占的に、これらを利用できるものとすることをご了解いただきます(撤回、取消等はできませんので、ご注意ください。)当該利用について、応募者は応募作品に 関する著作者人格権その他一切の人格権を組織委員会およびその指定する者に対して行使しないことをご了解いただきます。なお、大会終了後、当該作品の一切の権利は、オリンピックに関するものはIOCに、パラりンピックに閲するものはIPCにそれぞれ帰属することになります。
    5. 応募者には、その応募作品が当該応募者自らが創作したオリジナルの作品であって、既に発表されているもの(Web等で掲載されたものも含みます。)と同一または類似ではないこと、最終結果発表前に第三者に公開していないこと、および第三者の著作権、商標権、意匠権その他の知的財産権等の一切の権利を侵害するものではないこと、その他応募要項の違反がないことを表明し、保証していただきます。なお、これらに遣反した場合は、「制作にあたっての注憲事項」に記載したとおり、審査の対象外とし、また応募を無効とさせていたどくことがあります。
    6. 応募者には、応募要項の違反があった場合、その一切の責任(当該違反に起因する一切の損害について賠償する責任が含まれます。)を負うとともに組織委員会ないしIOC、IPCに一切の迷惑をかけないことを確約していただきます。
    7. 採用作品および最終審査候補作品の決定にあたり、制作過程に関する情報や制作段階におけるスケッチ、デッサン等の関連資料を確認さゼていただく場合があります。
    8. 応募者には、IOCおよびIPCの要請に応じて上記の権利譲渡および許諾を証明または確認するために必要となるあらゆる書類や資料の作戚を行うことをご了解いただきます。

UPOV(ユポフ)条約 加盟国一覧

UPOV(ユポフ)条約は、植物の新品種の保護に関する国際条約(英: International Convention for the Protection of New Varieties of Plants、仏: Convention internationale pour la protection des obtentions végétales)であり、マドリッド制度(国際登録制度)と同じようにWIPOがその中心となって、各国の育成者権(plant breeder’s right: PBR)を保護するように構成されています。

UPOV(ユポフ)条約は、2018年1月現在75の加盟国(Contracting party or member)が参加し、94の国と地域に保護が及びます。

UPOV条約締約国 from wipo website

アジア

china中国 (香港非適用) China 78Act/1999.4.23
japan日本 Japan 91Act/1988.12.24
south-korea韓国 Republic of Korea 91Act/2002.1.7
viet-namベトナム Viet Nam 91Act/2006.12.24
singaporeシンガポール Singapore 91Act/2004.7.30

欧州

united-kingdomgreat-britainイギリス United Kingdom 91Act/1999.1.3
swedenスウェーデン Sweden 91Act/1998.4.24
spainスペイン Spain 91Act/2007.7.18
denmarkデンマーク(グリーンランド・フェロー諸島未適用) Denmark 91Act/1998.4.24
germanyドイツ Germany 91Act/1998.7.25
norwayノルウェー Norway 78Act/1993.9.13
finlandフィンランド Finland 91Act/2001.7.20.
czech-republicチェコ Czech Republic 91Act/2002.11.24
polandポーランド Poland 91Act/2003.8.15
portugalポルトガル Portugal 78Act/1995.10.14
icelandアイスランド Iceland 91Act/2006.5.3
switzerlandスイス Switzerland 91Act/2006.9.1
russian-federationロシア Russian Federation 91Act/1998.4.24
slovakiaスロバキア Slovakia 91Act/2009.6.12
hungaryハンガリー Hungary 91Act/2003.1.1
franceフランス France 91Act/2012.5.27
lithuaniaリトアニア Lithuania 91Act/2003.12.10
moldovaモルドバ Republic of Moldova 91Act/1998.10.28
serbiayugoslaviaセルビア Serbia 91Act/2013.1.5
sloveniaスロベニア Slovenia 91Act/1999.7.29
netherlandsオランダ Netherlands 91Act/1998.4.24
belgiumベルギー Belgium 61/72Act/1976.12.5
romaniaルーマニア Romania 91Act/2001.3.16
georgiaジョージア Georgia 91Act/2008.11.29
estoniaエストニア Estonia 91Act/2000.9.24
latviaラトビア Latvia 91Act/2002.8.30
italyイタリア Italy 78Act/1986.5.28
ukraineウクライナ Ukraine 91Act/2007.1.19
bulgariaブルガリア Bulgaria 91Act/1998.4.24
irelandアイルランド Ireland 91Act/2012.1.8
belarusベラルーシ Belarus 91Act/2003.1.5
macedoniaマケドニア The former Yugoslav Republic of Macedonia 91Act/2011.5.4
albaniaアルバニア Albania 91Act/2005.10.15
croatiaクロアチア Republic of Croatia 91Act/2001.9.1
kyrgyzstanキルギス Kyrgyzstan 91Act/2000.6.26
european-union欧州連合 European Union 91Act/2005.7.29
uzbekistanウズベキスタン Uzbekistan 91Act/2004.11.14
montenegroモンテネグロ Montenegro 91Act/2015.9.24
azerbaijanアゼルバイジャン Azerbaijan 91Act/2004.12.9
austriaオーストリア Austria 91Act/2004.7.1
Bosnia-Herzegovinaボズニア・ヘルツェゴビナ Bosnia-Herzegovina 91Act/2017.11.10

アフリカ

kenyaケニア Kenya 91Act/2016.5.11
moroccoモロッコ Morocco 91Act/2006.10.8
tunisiaチュニジア Tunisia 91Act/2003.8.31
OAPI アフリカ知的財産機関(OAPI) African Intellectual Property Organization 91Act/2014.7.10
South Africa南アフリカ共和国 South Africa 78Act/1981.11.8
Tanzaniaタンザニア Tanzania 91Act/2015.11.22

中東

turkeyトルコ Turkey 91Act/2007.11.18
omanオマーン Oman 91Act/2009.11.22
israelイスラエル Israel 91Act/1998.4.24
Jordanヨルダン Jordan 91Act/2004.10.24

北米

united-states-of-americausa米国 United States of America 91Act/1999.2.22
canadaカナダ Canada 91Act/2015.7.19

中南米

Argentinaアルゼンチン Argentina 78Act/1994.12.25
Boliviaボリビア Bolivia 78Act/1999.5.21
Brazilブラジル Brazil 78Act/1999.5.23
Chileチリ Chile 78Act/1996.1.5
colombiaコロンビア Colombia 78Act/1996.9.13
Costa-Ricaコスタリカ Costa-Rica 91Act/2009.1.12
Dominican-Republicドミニカ共和国 Dominican-Republic 91Act/2007.6.16
Equadorエクアドル Equador 78Act/1997.8.8
mexicoメキシコ Mexico 78Act/1997.8.9
Nicaraguaニカラグア Nicaragua 78Act/2001.9.6
Panamaパナマ Panama 91Act/2012.11.22
Paraguayパラグアイ Paraguay 78Act/1997.2.8
Peruペルー Peru 91Act/2011.8.8
Trinidad & Tobagoトリニダートトバコ Trinidad and Tobago 78Act/1998.1.30
Uruguayウルグアイ Uruguay 78Act/1994.11.13

オセアニア

australiaオーストラリア Australia 91Act/2000.1.20
new-zealandニュージーランド(トケラウ諸島未適用) New Zealand 78Act/1981.11.8

マドリッド制度 加盟国一覧
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税法と商標権 vol.2 印紙税と登録免許税

契約と印紙税

商標権譲渡契約書の印紙税

商標権を譲渡する場合には契約書に印紙を貼付(印紙税)しなければなりません。税法上、契約書とは契約証書、協定書、約定書、覚書その他名称のいかんを問わず、契約の当事者の間において、契約(その予約を含みます。)の成立、更改、内容の変更や補充の事実(以下、これらを「契約の成立等」といいます。)を証明する目的で作成される文書をいいます。譲渡金額のうち消費税額分は印紙税の対象金額に含めないこととされていますので、商標権の「譲渡対価」と消費税金額を区分して契約書に記載することが望まれます。契約書に貼付する印紙の額は次のとおりです。

印紙税額(平成 28 年5月現在)
不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
(注) 無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権をいいます。

記載された契約金額が
1万円以上 10万円以下のもの 200円
10万円を超え 50万円以下 〃 400円
50万円を超え 100万円以下 〃 1千円
100万円を超え 500万円以下 〃 2千円
500万円を超え1千万円以下 〃 1万円
1千万円を超え5千万円以下 〃 2万円
5千万円を超え 1億円以下 〃 6万円
1億円を超え 5億円以下 〃 10万円
5億円を超え 10億円以下 〃 20万円
10億円を超え 50億円以下 〃 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

Accounting & Tax
Accounting & Tax

商標登録を受ける権利の譲渡契約書の印紙税

商標登録を受ける権利(出願権)の譲渡を約することを内容とする文書は、商標権そのものの譲渡を約することを内容とするものではないから、課税文書に該当しないと解釈され、印紙税はありません。商標登録を受ける権利は、商標権の設定の登録により商標権になります。商標権の設定の登録は特許庁で行われる事務作業で、登録査定の後、登録料を納付すれば行われることになっています。

商標権の使用権の設定契約書の印紙税

商標権の専用使用権の設定や通常使用権の許諾を内容とする文書は、商標権そのものの譲渡を約することを内容とするものでありませんので、課税文書に該当しないと解釈され、印紙税はありません。ただし、国内の商標権についてのライセンスの契約であれば消費税の課税があります。

外国人との譲渡契約

商標権の譲渡契約の一方が外国法人や外国人で他方が日本法人や日本人である場合に、印紙税が必要か否かについては、課税文書である譲渡証書若しくは契約書の作成が国外で行われるか、国内で行われるかによって、印紙税が必要か否かが分かれます(印紙税法基本通達第49条)。すなわち契約書等の作成が国外の場合、印紙税は不要で、他方、契約書等の作成が国内の場合、印紙税が必要です。ここで契約書等の作成とは、譲渡証書若しくは契約書の文章の作成を意味するのではなく、契約当事者の合意がなされること(印鑑の押印若しくは署名の記載)を契約書等の作成としています。従いまして、商標権の譲渡契約の契約書(両当事者の記名)では、当事者双方の印鑑若しくは署名が揃った場所が国内ならば課税となり、譲渡証書のように登録義務者(譲渡人)の印鑑若しくは署名で済む場合は、その登録義務者(譲渡人)の住所、居所が国内であれば課税となります。一方、外国に住所のある外国法人から日本法人に商標を譲渡する譲渡証書では、登録義務者(譲渡人)である外国法人の署名で譲渡証書が足りますので、そのような譲渡証書には印紙は不要となります。外国法人の代表者が来日して契約書に署名して当事者の署名がそろった場合には、印紙税の課税対象となります。

印紙税の納付方法

印紙税の納付は、原則、課税文書に所定の額の印紙を貼付し消印することで行われます。これに替えて、予め税額を納付し、税務署で税印を押してもらうこともできます。印紙の貼り忘れなどの印紙税の納付がない場合、3倍の懲罰的な過怠税が課されます。印紙を貼り消印を忘れた場合、印紙税と同額の過怠税が課されます。但し、印紙の貼り忘れに気づいた場合や、課税文書であることに気づいて税務署に申し出た場合には、印紙税は1.1倍の納付で済むことになります。印紙税の納付ができなかった契約書でも、印紙税の未納によりその契約自体が無効なることはありません。契約に際して契約書の正本を2通作成して、当事者のそれぞれが所有する方法もありますが、その場合は契約書が1通で済ませる場合の2倍の印紙税がかかります。節税の観点からは、正本1通でそれには印紙税分の印紙を貼付捺印し、他の当事者はその複写を所持することが望ましいと思われます。

契約書や領収書と印紙税、14:26、国税庁動画チャンネル

登録免許税

商標権の登録手続の登録免許税

商標権の登録手続きには所定の登録免許税がかかります。登録免許税は特許印紙ではなく収入印紙を申請書に貼付して支払います。これらは基本的に特許庁の登録原簿に対する手続になります。
a)商標権の一般承継・・・3000円/件
b)商標権の譲渡・・・30,000円/件
c)専用使用権の設定・・・30,000円/件
d)質権の設定・・・債権額の1000分の4
一般承継は相続又は”法人の合併”による移転を指します。詳しくは、商標権の移転手続の解説のページを参照して下さい。

税法と商標権 vol.1 会計処理のページ

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仲裁法 vol.2

仲裁法 vol.1から続く

   第六章 仲裁判断及び仲裁手続の終了

(仲裁判断において準拠すべき法)
第三十六条  仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによる。この場合において、一の国の法令が定められたときは、反対の意思が明示された場合を除き、当該定めは、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなす。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に最も密接な関係がある国の法令であって事案に直接適用されるべきものを適用しなければならない。
3  仲裁廷は、当事者双方の明示された求めがあるときは、前二項の規定にかかわらず、衡平と善により判断するものとする。
4  仲裁廷は、仲裁手続に付された民事上の紛争に係る契約があるときはこれに定められたところに従って判断し、当該民事上の紛争に適用することができる慣習があるときはこれを考慮しなければならない。
(合議体である仲裁廷の議事)
第三十七条  合議体である仲裁廷は、仲裁人の互選により、仲裁廷の長である仲裁人を選任しなければならない。
2  合議体である仲裁廷の議事は、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数で決する。
3  前項の規定にかかわらず、仲裁手続における手続上の事項は、当事者双方の合意又は他のすべての仲裁人の委任があるときは、仲裁廷の長である仲裁人が決することができる。
4  前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
(和解)
第三十八条  仲裁廷は、仲裁手続の進行中において、仲裁手続に付された民事上の紛争について当事者間に和解が成立し、かつ、当事者双方の申立てがあるときは、当該和解における合意を内容とする決定をすることができる。
2  前項の決定は、仲裁判断としての効力を有する。
3  第一項の決定をするには、次条第一項及び第三項の規定に従って決定書を作成し、かつ、これに仲裁判断であることの表示をしなければならない。
4  当事者双方の承諾がある場合には、仲裁廷又はその選任した一人若しくは二人以上の仲裁人は、仲裁手続に付された民事上の紛争について、和解を試みることができる。
5  前項の承諾又はその撤回は、当事者間に別段の合意がない限り、書面でしなければならない。
(仲裁判断書)
第三十九条  仲裁判断をするには、仲裁判断書を作成し、これに仲裁判断をした仲裁人が署名しなければならない。ただし、仲裁廷が合議体である場合には、仲裁廷を構成する仲裁人の過半数が署名し、かつ、他の仲裁人の署名がないことの理由を記載すれば足りる。
2  仲裁判断書には、理由を記載しなければならない。ただし、当事者間に別段の合意がある場合は、この限りでない。
3  仲裁判断書には、作成の年月日及び仲裁地を記載しなければならない。
4  仲裁判断は、仲裁地においてされたものとみなす。
5  仲裁廷は、仲裁判断がされたときは、仲裁人の署名のある仲裁判断書の写しを送付する方法により、仲裁判断を各当事者に通知しなければならない。
6  第一項ただし書の規定は、前項の仲裁判断書の写しについて準用する。
(仲裁手続の終了)
第四十条  仲裁手続は、仲裁判断又は仲裁手続の終了決定があったときに、終了する。
2  仲裁廷は、第二十三条第四項第二号又は第三十三条第一項の規定による場合のほか、次に掲げる事由のいずれかがあるときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。
一  仲裁申立人がその申立てを取り下げたとき。ただし、仲裁被申立人が取下げに異議を述べ、かつ、仲裁手続に付された民事上の紛争の解決について仲裁被申立人が正当な利益を有すると仲裁廷が認めるときは、この限りでない。
二  当事者双方が仲裁手続を終了させる旨の合意をしたとき。
三  仲裁手続に付された民事上の紛争について、当事者間に和解が成立したとき(第三十八条第一項の決定があったときを除く。)。
四  前三号に掲げる場合のほか、仲裁廷が、仲裁手続を続行する必要がなく、又は仲裁手続を続行することが不可能であると認めたとき。
3  仲裁手続が終了したときは、仲裁廷の任務は、終了する。ただし、次条から第四十三条までの規定による行為をすることができる。
(仲裁判断の訂正)
第四十一条  仲裁廷は、当事者の申立てにより又は職権で、仲裁判断における計算違い、誤記その他これらに類する誤りを訂正することができる。
2  前項の申立ては、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁判断の通知を受けた日から三十日以内にしなければならない。
3  当事者は、第一項の申立てをするときは、あらかじめ、又は同時に、他の当事者に対して、当該申立ての内容を記載した通知を発しなければならない。
4  仲裁廷は、第一項の申立ての日から三十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。
5  仲裁廷は、必要があると認めるときは、前項の期間を延長することができる。
6  第三十九条の規定は、仲裁判断の訂正の決定及び第一項の申立てを却下する決定について準用する。
(仲裁廷による仲裁判断の解釈)
第四十二条  当事者は、仲裁廷に対し、仲裁判断の特定の部分の解釈を求める申立てをすることができる。
2  前項の申立ては、当事者間にかかる申立てをすることができる旨の合意がある場合に限り、することができる。
3  前条第二項及び第三項の規定は第一項の申立てについて、第三十九条並びに前条第四項及び第五項の規定は第一項の申立てについての決定について、それぞれ準用する。
(追加仲裁判断)
第四十三条  当事者は、仲裁手続における申立てのうちに仲裁判断において判断が示されなかったものがあるときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁廷に対し、当該申立てについての仲裁判断を求める申立てをすることができる。この場合においては、第四十一条第二項及び第三項の規定を準用する。
2  仲裁廷は、前項の申立ての日から六十日以内に、当該申立てについての決定をしなければならない。この場合においては、第四十一条第五項の規定を準用する。
3  第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。

   第七章 仲裁判断の取消し

第四十四条  当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁判断の取消しの申立てをすることができる。
一  仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二  仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、日本の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三  申立人が、仲裁人の選任手続又は仲裁手続において、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
四  申立人が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
五  仲裁判断が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
六  仲裁廷の構成又は仲裁手続が、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
七  仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
八  仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
2  前項の申立ては、仲裁判断書(第四十一条から前条までの規定による仲裁廷の決定の決定書を含む。)の写しの送付による通知がされた日から三箇月を経過したとき、又は第四十六条の規定による執行決定が確定したときは、することができない。
3  裁判所は、第一項の申立てに係る事件がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
4  第一項の申立てに係る事件についての第五条第三項又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5  裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第一項の申立てについての決定をすることができない。
6  裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、同項各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(同項第一号から第六号までに掲げる事由にあっては、申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)は、仲裁判断を取り消すことができる。
7  第一項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、裁判所は、仲裁判断のうち当該部分のみを取り消すことができる。
8  第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

   第八章 仲裁判断の承認及び執行決定

(仲裁判断の承認)
第四十五条  仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する。ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。
2  前項の規定は、次に掲げる事由のいずれかがある場合(第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、当事者のいずれかが当該事由の存在を証明した場合に限る。)には、適用しない。
一  仲裁合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二  仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、仲裁地が属する国の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三  当事者が、仲裁人の選任手続又は仲裁手続において、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)により必要とされる通知を受けなかったこと。
四  当事者が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。
五  仲裁判断が、仲裁合意又は仲裁手続における申立ての範囲を超える事項に関する判断を含むものであること。
六  仲裁廷の構成又は仲裁手続が、仲裁地が属する国の法令の規定(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。
七  仲裁地が属する国(仲裁手続に適用された法令が仲裁地が属する国以外の国の法令である場合にあっては、当該国)の法令によれば、仲裁判断が確定していないこと、又は仲裁判断がその国の裁判機関により取り消され、若しくは効力を停止されたこと。
八  仲裁手続における申立てが、日本の法令によれば、仲裁合意の対象とすることができない紛争に関するものであること。
九  仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
3  前項第五号に掲げる事由がある場合において、当該仲裁判断から同号に規定する事項に関する部分を区分することができるときは、当該部分及び当該仲裁判断のその他の部分をそれぞれ独立した仲裁判断とみなして、同項の規定を適用する。
(仲裁判断の執行決定)
第四十六条  仲裁判断に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(仲裁判断に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをすることができる。
2  前項の申立てをするときは、仲裁判断書の写し、当該写しの内容が仲裁判断書と同一であることを証明する文書及び仲裁判断書(日本語で作成されたものを除く。)の日本語による翻訳文を提出しなければならない。
3  第一項の申立てを受けた裁判所は、前条第二項第七号に規定する裁判機関に対して仲裁判断の取消し又はその効力の停止を求める申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第一項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、同項の申立てをした者の申立てにより、他の当事者に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
4  第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる裁判所及び請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
5  裁判所は、第一項の申立てに係る事件がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
6  第一項の申立てに係る事件についての第五条第三項又は前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7  裁判所は、次項又は第九項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。
8  裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、前条第二項各号に掲げる事由のいずれかがあると認める場合(同項第一号から第七号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
9  前条第三項の規定は、同条第二項第五号に掲げる事由がある場合における前項の規定の適用について準用する。
10  第四十四条第五項及び第八項の規定は、第一項の申立てについての決定について準用する。

   第九章 雑則

(仲裁人の報酬)
第四十七条  仲裁人は、当事者が合意により定めるところにより、報酬を受けることができる。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁人の報酬を決定する。この場合において、当該報酬は、相当な額でなければならない。
(仲裁費用の予納)
第四十八条  仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続の費用の概算額として仲裁廷の定める金額について、相当の期間を定めて、当事者に予納を命ずることができる。
2  仲裁廷は、前項の規定により予納を命じた場合において、その予納がないときは、当事者間に別段の合意がない限り、仲裁手続を中止し、又は終了することができる。
(仲裁費用の分担)
第四十九条  当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担は、当事者が合意により定めるところによる。
2  前項の合意がないときは、当事者が仲裁手続に関して支出した費用は、各自が負担する。
3  仲裁廷は、当事者間に合意があるときは、当該合意により定めるところにより、仲裁判断又は独立の決定において、当事者が仲裁手続に関して支出した費用の当事者間における分担及びこれに基づき一方の当事者が他方の当事者に対して償還すべき額を定めることができる。
4  独立の決定において前項に規定する事項を定めた場合においては、当該決定は、仲裁判断としての効力を有する。
5  第三十九条の規定は、前項の決定について準用する。

   第十章 罰則

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第五十条  仲裁人が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2  仲裁人になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、仲裁人となった場合において、五年以下の懲役に処する。
(第三者供賄)
第五十一条  仲裁人が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(加重収賄及び事後収賄)
第五十二条  仲裁人が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2  仲裁人が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3  仲裁人であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第五十三条  犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄)
第五十四条  第五十条から第五十二条までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(国外犯)
第五十五条  第五十条から第五十三条までの規定は、日本国外において第五十条から第五十二条までの罪を犯した者にも適用する。
2  前条の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二条 の例に従う。

仲裁法 vol.1

仲裁法 vol.1

仲裁法(平成十五年八月一日法律第百三十八号)

   第一章 総則

(趣旨)
第一条  仲裁地が日本国内にある仲裁手続及び仲裁手続に関して裁判所が行う手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(定義)
第二条  この法律において「仲裁合意」とは、既に生じた民事上の紛争又は将来において生ずる一定の法律関係(契約に基づくものであるかどうかを問わない。)に関する民事上の紛争の全部又は一部の解決を一人又は二人以上の仲裁人にゆだね、かつ、その判断(以下「仲裁判断」という。)に服する旨の合意をいう。
2  この法律において「仲裁廷」とは、仲裁合意に基づき、その対象となる民事上の紛争について審理し、仲裁判断を行う一人の仲裁人又は二人以上の仲裁人の合議体をいう。
3  この法律において「主張書面」とは、仲裁手続において当事者が作成して仲裁廷に提出する書面であって、当該当事者の主張が記載されているものをいう。
(適用範囲)
第三条  次章から第七章まで、第九章及び第十章の規定は、次項及び第八条に定めるものを除き、仲裁地が日本国内にある場合について適用する。
2  第十四条第一項及び第十五条の規定は、仲裁地が日本国内にある場合、仲裁地が日本国外にある場合及び仲裁地が定まっていない場合に適用する。
3  第八章の規定は、仲裁地が日本国内にある場合及び仲裁地が日本国外にある場合に適用する。
(裁判所の関与)
第四条  仲裁手続に関しては、裁判所は、この法律に規定する場合に限り、その権限を行使することができる。
(裁判所の管轄)
第五条  この法律の規定により裁判所が行う手続に係る事件は、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
一  当事者が合意により定めた地方裁判所
二  仲裁地(一の地方裁判所の管轄区域のみに属する地域を仲裁地として定めた場合に限る。)を管轄する地方裁判所
三  当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
2  この法律の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に申立てがあった裁判所が管轄する。
3  裁判所は、この法律の規定により裁判所が行う手続に係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
(任意的口頭弁論)
第六条  この法律の規定により裁判所が行う手続に係る裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
(裁判に対する不服申立て)
第七条  この法律の規定により裁判所が行う手続に係る裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
(仲裁地が定まっていない場合における裁判所の関与)
第八条  裁判所に対する次の各号に掲げる申立ては、仲裁地が定まっていない場合であって、仲裁地が日本国内となる可能性があり、かつ、申立人又は被申立人の普通裁判籍(最後の住所により定まるものを除く。)の所在地が日本国内にあるときも、することができる。この場合においては、当該各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める規定を適用する。
一  第十六条第三項の申立て 同条
二  第十七条第二項から第五項までの申立て 同条
三  第十九条第四項の申立て 第十八条及び第十九条
四  第二十条の申立て 同条
2  前項の場合における同項各号に掲げる申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、前項に規定する普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
(裁判所が行う手続に係る事件の記録の閲覧等)
第九条  この法律の規定により裁判所が行う手続について利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、次に掲げる事項を請求することができる。
一  事件の記録の閲覧又は謄写
二  事件の記録中の電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録の複製
三  事件の記録の正本、謄本又は抄本の交付
四  事件に関する事項の証明書の交付
(裁判所が行う手続についての民事訴訟法 の準用)
第十条  この法律の規定により裁判所が行う手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定を準用する。
(最高裁判所規則)
第十一条  この法律に定めるもののほか、この法律の規定により裁判所が行う手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
(書面によってする通知)
第十二条  仲裁手続における通知を書面によってするときは、当事者間に別段の合意がない限り、名あて人が直接当該書面を受領した時又は名あて人の住所、常居所、営業所、事務所若しくは配達場所(名あて人が発信人からの書面の配達を受けるべき場所として指定した場所をいう。以下この条において同じ。)に当該書面が配達された時に、通知がされたものとする。
2  裁判所は、仲裁手続における書面によってする通知について、当該書面を名あて人の住所、常居所、営業所、事務所又は配達場所に配達することが可能であるが、発信人が当該配達の事実を証明する資料を得ることが困難である場合において、必要があると認めるときは、発信人の申立てにより、裁判所が当該書面の送達をする旨の決定をすることができる。この場合における送達については、民事訴訟法第百四条 及び第百十条 から第百十三条 までの規定は適用しない。
3  前項の規定は、当事者間に同項の送達を行わない旨の合意がある場合には、適用しない。
4  第二項の申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、同項第一号及び第二号に掲げる裁判所並びに名あて人の住所、常居所、営業所、事務所又は配達場所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
5  仲裁手続における通知を書面によってする場合において、名あて人の住所、常居所、営業所、事務所及び配達場所のすべてが相当の調査をしても分からないときは、当事者間に別段の合意がない限り、発信人は、名あて人の最後の住所、常居所、営業所、事務所又は配達場所にあてて当該書面を書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法により発送すれば足りる。この場合においては、当該書面が通常到達すべきであった時に通知がされたものとする。
6  第一項及び前項の規定は、この法律の規定により裁判所が行う手続において通知を行う場合については、適用しない。

   第二章 仲裁合意

(仲裁合意の効力等)
第十三条  仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有する。
2  仲裁合意は、当事者の全部が署名した文書、当事者が交換した書簡又は電報(ファクシミリ装置その他の隔地者間の通信手段で文字による通信内容の記録が受信者に提供されるものを用いて送信されたものを含む。)その他の書面によってしなければならない。
3  書面によってされた契約において、仲裁合意を内容とする条項が記載された文書が当該契約の一部を構成するものとして引用されているときは、その仲裁合意は、書面によってされたものとする。
4  仲裁合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その仲裁合意は、書面によってされたものとする。
5  仲裁手続において、一方の当事者が提出した主張書面に仲裁合意の内容の記載があり、これに対して他方の当事者が提出した主張書面にこれを争う旨の記載がないときは、その仲裁合意は、書面によってされたものとみなす。
6  仲裁合意を含む一の契約において、仲裁合意以外の契約条項が無効、取消しその他の事由により効力を有しないものとされる場合においても、仲裁合意は、当然には、その効力を妨げられない。
(仲裁合意と本案訴訟)
第十四条  仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一  仲裁合意が無効、取消しその他の事由により効力を有しないとき。
二  仲裁合意に基づく仲裁手続を行うことができないとき。
三  当該申立てが、本案について、被告が弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後にされたものであるとき。
2  仲裁廷は、前項の訴えに係る訴訟が裁判所に係属する間においても、仲裁手続を開始し、又は続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
(仲裁合意と裁判所の保全処分)
第十五条  仲裁合意は、その当事者が、当該仲裁合意の対象となる民事上の紛争に関して、仲裁手続の開始前又は進行中に、裁判所に対して保全処分の申立てをすること、及びその申立てを受けた裁判所が保全処分を命ずることを妨げない。

   第三章 仲裁人

(仲裁人の数)
第十六条  仲裁人の数は、当事者が合意により定めるところによる。
2  当事者の数が二人である場合において、前項の合意がないときは、仲裁人の数は、三人とする。
3  当事者の数が三人以上である場合において、第一項の合意がないときは、当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人の数を定める。
(仲裁人の選任)
第十七条  仲裁人の選任手続は、当事者が合意により定めるところによる。ただし、第五項又は第六項に規定するものについては、この限りでない。
2  当事者の数が二人であり、仲裁人の数が三人である場合において、前項の合意がないときは、当事者がそれぞれ一人の仲裁人を、当事者により選任された二人の仲裁人がその余の仲裁人を、選任する。この場合において、一方の当事者が仲裁人を選任した他方の当事者から仲裁人を選任すべき旨の催告を受けた日から三十日以内にその選任をしないときは当該当事者の申立てにより、当事者により選任された二人の仲裁人がその選任後三十日以内にその余の仲裁人を選任しないときは一方の当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
3  当事者の数が二人であり、仲裁人の数が一人である場合において、第一項の合意がなく、かつ、当事者間に仲裁人の選任についての合意が成立しないときは、一方の当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
4  当事者の数が三人以上である場合において、第一項の合意がないときは、当事者の申立てにより、裁判所が仲裁人を選任する。
5  第一項の合意により仲裁人の選任手続が定められた場合であっても、当該選任手続において定められた行為がされないことその他の理由によって当該選任手続による仲裁人の選任ができなくなったときは、一方の当事者は、裁判所に対し、仲裁人の選任の申立てをすることができる。
6  裁判所は、第二項から前項までの規定による仲裁人の選任に当たっては、次に掲げる事項に配慮しなければならない。
一  当事者の合意により定められた仲裁人の要件
二  選任される者の公正性及び独立性
三  仲裁人の数を一人とする場合又は当事者により選任された二人の仲裁人が選任すべき仲裁人を選任すべき場合にあっては、当事者双方の国籍と異なる国籍を有する者を選任することが適当かどうか。
(忌避の原因等)
第十八条  当事者は、仲裁人に次に掲げる事由があるときは、当該仲裁人を忌避することができる。
一  当事者の合意により定められた仲裁人の要件を具備しないとき。
二  仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。
2  仲裁人を選任し、又は当該仲裁人の選任について推薦その他これに類する関与をした当事者は、当該選任後に知った事由を忌避の原因とする場合に限り、当該仲裁人を忌避することができる。
3  仲裁人への就任の依頼を受けてその交渉に応じようとする者は、当該依頼をした者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない。
4  仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部を遅滞なく開示しなければならない。
(忌避の手続)
第十九条  仲裁人の忌避の手続は、当事者が合意により定めるところによる。ただし、第四項に規定するものについては、この限りでない。
2  前項の合意がない場合において、仲裁人の忌避についての決定は、当事者の申立てにより、仲裁廷が行う。
3  前項の申立てをしようとする当事者は、仲裁廷が構成されたことを知った日又は前条第一項各号に掲げる事由のいずれかがあることを知った日のいずれか遅い日から十五日以内に、忌避の原因を記載した申立書を仲裁廷に提出しなければならない。この場合において、仲裁廷は、当該仲裁人に忌避の原因があると認めるときは、忌避を理由があるとする決定をしなければならない。
4  前三項に規定する忌避の手続において仲裁人の忌避を理由がないとする決定がされた場合には、その忌避をした当事者は、当該決定の通知を受けた日から三十日以内に、裁判所に対し、当該仲裁人の忌避の申立てをすることができる。この場合において、裁判所は、当該仲裁人に忌避の原因があると認めるときは、忌避を理由があるとする決定をしなければならない。
5  仲裁廷は、前項の忌避の申立てに係る事件が裁判所に係属する間においても、仲裁手続を開始し、又は続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
(解任の申立て)
第二十条  当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁人の解任の申立てをすることができる。この場合において、裁判所は、当該仲裁人にその申立てに係る事由があると認めるときは、当該仲裁人を解任する決定をしなければならない。
一  仲裁人が法律上又は事実上その任務を遂行することができなくなったとき。
二  前号の場合を除くほか、仲裁人がその任務の遂行を不当に遅滞させたとき。
(仲裁人の任務の終了)
第二十一条  仲裁人の任務は、次に掲げる事由により、終了する。
一  仲裁人の死亡
二  仲裁人の辞任
三  当事者の合意による仲裁人の解任
四  第十九条第一項から第四項までに規定する忌避の手続においてされた忌避を理由があるとする決定
五  前条の規定による仲裁人の解任の決定
2  第十九条第一項から第四項までに規定する忌避の手続又は前条の規定による解任の手続の進行中に、仲裁人が辞任し、又は当事者の合意により仲裁人が解任されたという事実のみから、当該仲裁人について第十八条第一項各号又は前条各号に掲げる事由があるものと推定してはならない。
(後任の仲裁人の選任方法)
第二十二条  前条第一項各号に掲げる事由により仲裁人の任務が終了した場合における後任の仲裁人の選任の方法は、当事者間に別段の合意がない限り、任務が終了した仲裁人の選任に適用された選任の方法による。

   第四章 仲裁廷の特別の権限

(自己の仲裁権限の有無についての判断)
第二十三条  仲裁廷は、仲裁合意の存否又は効力に関する主張についての判断その他自己の仲裁権限(仲裁手続における審理及び仲裁判断を行う権限をいう。以下この条において同じ。)の有無についての判断を示すことができる。
2  仲裁手続において、仲裁廷が仲裁権限を有しない旨の主張は、その原因となる事由が仲裁手続の進行中に生じた場合にあってはその後速やかに、その他の場合にあっては本案についての最初の主張書面の提出の時(口頭審理において口頭で最初に本案についての主張をする時を含む。)までに、しなければならない。ただし、仲裁権限を有しない旨の主張の遅延について正当な理由があると仲裁廷が認めるときは、この限りでない。
3  当事者は、仲裁人を選任し、又は仲裁人の選任について推薦その他これに類する関与をした場合であっても、前項の主張をすることができる。
4  仲裁廷は、適法な第二項の主張があったときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める決定又は仲裁判断により、当該主張に対する判断を示さなければならない。
一  自己が仲裁権限を有する旨の判断を示す場合 仲裁判断前の独立の決定又は仲裁判断
二  自己が仲裁権限を有しない旨の判断を示す場合 仲裁手続の終了決定
5  仲裁廷が仲裁判断前の独立の決定において自己が仲裁権限を有する旨の判断を示したときは、当事者は、当該決定の通知を受けた日から三十日以内に、裁判所に対し、当該仲裁廷が仲裁権限を有するかどうかについての判断を求める申立てをすることができる。この場合において、当該申立てに係る事件が裁判所に係属する場合であっても、当該仲裁廷は、仲裁手続を続行し、かつ、仲裁判断をすることができる。
(暫定措置又は保全措置)
第二十四条  仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、その一方の申立てにより、いずれの当事者に対しても、紛争の対象について仲裁廷が必要と認める暫定措置又は保全措置を講ずることを命ずることができる。
2  仲裁廷は、いずれの当事者に対しても、前項の暫定措置又は保全措置を講ずるについて、相当な担保を提供すべきことを命ずることができる。

   第五章 仲裁手続の開始及び仲裁手続における審理

(当事者の平等待遇)
第二十五条  仲裁手続においては、当事者は、平等に取り扱われなければならない。
2  仲裁手続においては、当事者は、事案について説明する十分な機会が与えられなければならない。
(仲裁手続の準則)
第二十六条  仲裁廷が従うべき仲裁手続の準則は、当事者が合意により定めるところによる。ただし、この法律の公の秩序に関する規定に反してはならない。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷は、この法律の規定に反しない限り、適当と認める方法によって仲裁手続を実施することができる。
3  第一項の合意がない場合における仲裁廷の権限には、証拠に関し、証拠としての許容性、取調べの必要性及びその証明力についての判断をする権限が含まれる。
(異議権の放棄)
第二十七条  仲裁手続においては、当事者は、この法律の規定又は当事者間の合意により定められた仲裁手続の準則(いずれも公の秩序に関しないものに限る。)が遵守されていないことを知りながら、遅滞なく(異議を述べるべき期限についての定めがある場合にあっては、当該期限までに)異議を述べないときは、当事者間に別段の合意がない限り、異議を述べる権利を放棄したものとみなす。
(仲裁地)
第二十八条  仲裁地は、当事者が合意により定めるところによる。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷は、当事者の利便その他の紛争に関する事情を考慮して、仲裁地を定める。
3  仲裁廷は、当事者間に別段の合意がない限り、前二項の規定による仲裁地にかかわらず、適当と認めるいかなる場所においても、次に掲げる手続を行うことができる。
一  合議体である仲裁廷の評議
二  当事者、鑑定人又は第三者の陳述の聴取
三  物又は文書の見分
(仲裁手続の開始及び時効の中断)
第二十九条  仲裁手続は、当事者間に別段の合意がない限り、特定の民事上の紛争について、一方の当事者が他方の当事者に対し、これを仲裁手続に付する旨の通知をした日に開始する。
2  仲裁手続における請求は、時効中断の効力を生ずる。ただし、当該仲裁手続が仲裁判断によらずに終了したときは、この限りでない。
(言語)
第三十条  仲裁手続において使用する言語及びその言語を使用して行うべき手続は、当事者が合意により定めるところによる。
2  前項の合意がないときは、仲裁廷が、仲裁手続において使用する言語及びその言語を使用して行うべき手続を定める。
3  第一項の合意又は前項の決定において、定められた言語を使用して行うべき手続についての定めがないときは、その言語を使用して行うべき手続は、次に掲げるものとする。
一  口頭による手続
二  当事者が行う書面による陳述又は通知
三  仲裁廷が行う書面による決定(仲裁判断を含む。)又は通知
4  仲裁廷は、すべての証拠書類について、第一項の合意又は第二項の決定により定められた言語(翻訳文について使用すべき言語の定めがある場合にあっては、当該言語)による翻訳文を添付することを命ずることができる。
(当事者の陳述の時期的制限)
第三十一条  仲裁申立人(仲裁手続において、これを開始させるための行為をした当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、申立ての趣旨、申立ての根拠となる事実及び紛争の要点を陳述しなければならない。この場合において、仲裁申立人は、取り調べる必要があると思料するすべての証拠書類を提出し、又は提出予定の証拠書類その他の証拠を引用することができる。
2  仲裁被申立人(仲裁申立人以外の仲裁手続の当事者をいう。以下同じ。)は、仲裁廷が定めた期間内に、前項の規定により陳述された事項についての自己の主張を陳述しなければならない。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
3  すべての当事者は、仲裁手続の進行中において、自己の陳述の変更又は追加をすることができる。ただし、当該変更又は追加が時機に後れてされたものであるときは、仲裁廷は、これを許さないことができる。
4  前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
(審理の方法)
第三十二条  仲裁廷は、当事者に証拠の提出又は意見の陳述をさせるため、口頭審理を実施することができる。ただし、一方の当事者が第三十四条第三項の求めその他の口頭審理の実施の申立てをしたときは、仲裁手続における適切な時期に、当該口頭審理を実施しなければならない。
2  前項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
3  仲裁廷は、意見の聴取又は物若しくは文書の見分を行うために口頭審理を行うときは、当該口頭審理の期日までに相当な期間をおいて、当事者に対し、当該口頭審理の日時及び場所を通知しなければならない。
4  当事者は、主張書面、証拠書類その他の記録を仲裁廷に提供したときは、他の当事者がその内容を知ることができるようにする措置を執らなければならない。
5  仲裁廷は、仲裁判断その他の仲裁廷の決定の基礎となるべき鑑定人の報告その他の証拠資料の内容を、すべての当事者が知ることができるようにする措置を執らなければならない。
(不熱心な当事者がいる場合の取扱い)
第三十三条  仲裁廷は、仲裁申立人が第三十一条第一項の規定に違反したときは、仲裁手続の終了決定をしなければならない。ただし、違反したことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
2  仲裁廷は、仲裁被申立人が第三十一条第二項の規定に違反した場合であっても、仲裁被申立人が仲裁申立人の主張を認めたものとして取り扱うことなく、仲裁手続を続行しなければならない。
3  仲裁廷は、一方の当事者が口頭審理の期日に出頭せず、又は証拠書類を提出しないときは、その時までに収集された証拠に基づいて、仲裁判断をすることができる。ただし、当該当事者が口頭審理に出頭せず、又は証拠書類を提出しないことについて正当な理由がある場合は、この限りでない。
4  前三項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
(仲裁廷による鑑定人の選任等)
第三十四条  仲裁廷は、一人又は二人以上の鑑定人を選任し、必要な事項について鑑定をさせ、文書又は口頭によりその結果の報告をさせることができる。
2  前項の場合において、仲裁廷は、当事者に対し、次に掲げる行為をすることを求めることができる。
一  鑑定に必要な情報を鑑定人に提供すること。
二  鑑定に必要な文書その他の物を、鑑定人に提出し、又は鑑定人が見分をすることができるようにすること。
3  当事者の求めがあるとき、又は仲裁廷が必要と認めるときは、鑑定人は、第一項の規定による報告をした後、口頭審理の期日に出頭しなければならない。
4  当事者は、前項の口頭審理の期日において、次に掲げる行為をすることができる。
一  鑑定人に質問をすること。
二  自己が依頼した専門的知識を有する者に当該鑑定に係る事項について陳述をさせること。
5  前各項の規定は、当事者間に別段の合意がある場合には、適用しない。
(裁判所により実施する証拠調べ)
第三十五条  仲裁廷又は当事者は、民事訴訟法 の規定による調査の嘱託、証人尋問、鑑定、書証(当事者が文書を提出してするものを除く。)及び検証(当事者が検証の目的を提示してするものを除く。)であって仲裁廷が必要と認めるものにつき、裁判所に対し、その実施を求める申立てをすることができる。ただし、当事者間にこれらの全部又は一部についてその実施を求める申立てをしない旨の合意がある場合は、この限りでない。
2  当事者が前項の申立てをするには、仲裁廷の同意を得なければならない。
3  第一項の申立てに係る事件は、第五条第一項の規定にかかわらず、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
一  第五条第一項第二号に掲げる裁判所
二  尋問を受けるべき者若しくは文書を所持する者の住所若しくは居所又は検証の目的の所在地を管轄する地方裁判所
三  申立人又は被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(前二号に掲げる裁判所がない場合に限る。)
4  第一項の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5  第一項の申立てにより裁判所が当該証拠調べを実施するに当たり、仲裁人は、文書を閲読し、検証の目的を検証し、又は裁判長の許可を得て証人若しくは鑑定人(民事訴訟法第二百十三条 に規定する鑑定人をいう。)に対して質問をすることができる。
6  裁判所書記官は、第一項の申立てにより裁判所が実施する証拠調べについて、調書を作成しなければならない。

仲裁法 vol.2へ続く