ネーミングのポイント

商標登録を前提とした賢いネーミングについて

一般に、ネーミングとは商品や役務(サービス)に用いる文字の配列を案出することと定義することができ、命名された商品、サービス、商号を商標(マーク:商標法上は”標章”といいます。)を通じて強く印象付けることを念頭に案出されるべきです。ところが、このネーミング段階と案出された商標を登録するための商標登録出願は2つの異なる観点から同じ商標を見ることになり、従ってネーミング段階からこの2つの異なる観点を予め検討しながら、商品、サービス、商号のネーミングを進めることが賢いネーミング方法になるでしょう。2つの異なる観点とは、、ネーミング段階の段階では、選択された文字列が商品のコンセプト、機能に沿ったものであったり、ブランド戦略の一部や高級感としてイメージを与えるためのものであったりしますが、一方、商標登録をするための商標登録要件からは、具体的には商標法第3条、第4条に挙げられた登録要件を備えていることが必要となります。ネーミングした商標は必ず登録しなければいけないかというと、登録せずに使用することもできる可能性もあります。ただし、商標登録なしで商標を使用することは常にリスクを抱えていることも承知しておくべきでしょう。

ネーミングの発想

ネーミングは商品や役務(サービス)に用いる文字の配列をデザインすることですから、いろいろな形での命名手法があり、それらはターゲットとなる客層の性別、年齢層、語感による心理的効果、呼び易さ、見た目の審美度、命名すべき商品や役務(サービス)の機能、特徴、変な読み違えが生じにくいか否か、ハウスマークやショルダーフレーズを伴うか否か、斬新的な商品や役務(サービス)を対象にするのか否か、個別の商品かあるいは商品群かといった多数のチェックポイントをある程度総合的に勘案することになるでしょう。以下に具体的なネーミング手法を例示します。

1.文字列を見た目の心理

漢字縦書き、横書き逆配列 伝統的
漢字横書き 重厚な語感
ひらがな ソフトな語感
カタカナ 斬新的
英数字 知的、技術的、機械的
ギリシャ文字、記号を含むもの 近未来的

2.組み合わせ手法

商標には文字商標、図形商標(2次元および立体(3次元))、結合商標があり、このうち文字を含むのは文字商標と結合商標である。文字列の1部だけを図案化、色彩化したり、異なるフォント、文字サイズ、段の変更、社名、コーポレーションID, ハウスマークの挿入などあります。

3.読み方や語感による心理的効果

濁音たとえば”ダ”、”GA”の選択 ダイナミックな印象
半濁音たとえば”ぱ”、”PO”の選択 軽快でソフトな印象
擬人化 たとえば ”くん” ”すけ” 親しみ易い語感
語尾を”a”にする。例)Aptiva ® フレンドリーな語感

4.変形、抽出、結合による造語 (以下の各例はそれぞれ各社の登録商標です。)

省略形 例)東芝、FEDEX
頭文字 例)JR、TDK、IBM
語尾変化 例)トロピカーナ
結合 例)ポケットモンスター

ネーミングと商標の登録要件

ネーミングの段階で、商標法第3条、第4条に挙げられた登録要件を考慮しながら商標を選ぶことが賢いネーミングです。まず、商標法第3条の登録要件ですが、簡単に説明すると、自分の商標として機能できない商標は登録しないということが規定されています。まず普通名称と慣用商標は登録されません(第3条第1項第1、2号)。普通名称とは、卓上電子計算機についての”電卓”、石鹸に”石鹸”などをさし、慣用商標とは、清酒に”男山”や”正宗”なる商標を用いる場合をいいます。また、記述的な商標(第3条第1項第3乃至6号)も原則的に登録できません。どうような商標が記述的かというと、産地、品質、用途などを普通に表現するもの(第3号)、ありふれた氏または名称を普通に表現するもの(第4号)、簡単かつありふれたマーク(第5号)、その他、出所表示しないもの(第6号)があげられています。したがって、ネーミングの段階で、素直に命名すべき商品や役務(サービス)の機能、特徴に着目し、それをそのまま表現したときは逆にこの第3条の規定が引っかかってきます。たとえば、高速で回転するモーターに単に”高速”と命名する場合があげられます。ネーミング上は特徴を捉えたものとして評価されるかもしれませんが、さらに一歩進んで独占するに値するかどうかの観点も登録要件に関しては必要となります。以上は原則でその例外もあります。それは実務的には使用による特別顕著性とよばれるもので、宣伝、広告の結果、識別力が備わった商標で、著名なものとしては、トヨタ自動車、本田技研などがあります。仮に、宣伝予算が億単位ならば、普通名称と慣用商標だけ外せば登録の可能性があることになります。

次に商標法第4条の登録要件(不登録事由)ですが、ネーミングとの関係で主なものは、他人の周知商標(10号、19号)、他人の類似登録商標(11号)、誤認を生ずる恐れのある商標(15号)などです。このうち、他人の類似登録商標(11号)は一般に次の商標調査によって判別します。周知商標は広くしられている商標であり、ブランド品として著名なシャネル、ナイキのスウッシュ(Swoosh)、コカコーラ、ファーストフードのマックのゴールデンアーチなどがあげられます。ネーミングとの関係では、特に、誤認を生ずる恐れのある商標(15号)でないことが観点として重要です。これはどのような場合かというと、アルミニウム製の自転車に、”セラミックバイク”という商標を使用する場合や、”アルミスクーター”という商標を使用する場合などです。また、地理的な誤認を生じさせる恐れがあるものの拒絶されます。たとえば、韓国で取れたマグロに”ハワイアンマグロ”なる商標を付与することも拒絶理由になります。したがって、ネーミングの段階で、客観的に見て誤認を生じさせないような文字列を選択する必要があります。

ネーミングと商標調査

識別力ありとされる商標でも、他人の登録商標に類似する商標を登録することはできません。このような不登録の原因となる商標があるかいなかの調査をすることを一般に商標調査と言います。商標の類似は称呼、外観、観念の要素を対比して判断されるもので、そのうちの1つの要素でも類似のとき、同一、類似の指定商品に使用する場合に後の出願が拒絶されることになります。従って、ネーミングの段階では、単一の商標に絞るよりは、複数の商標の候補を、できれば10個から20個準備して、その中で商標調査の結果を勘案しながら商標を選定することが賢いネーミング手法ということができると思います。ただし、商標調査には必ずブラインド期間(調査不能期間)があり、100%の調査はできません。電子出願と出願公開により、出願状況の把握は早くなってきていますが、たとえば前日に出願されたものについてその翌日知ることはできないのが現状です。

商標登録をしない場合のリスク

前述のようにネーミングした商標は必ず登録しなければいけないかというと、登録せずに使用することも可能です。ただし、商標登録なしで商標を使用することは常にリスクを抱えることになります。リスクのその1は、真似された場合にそれを辞めさせる法的手段が商標法上はないことになります。すなわち、明らかに真似たと思われる場合でも、不正競争防止法に頼らざるを得なくなり、原則的に商標が周知のものであることが必要となります。リスクのその2は、他人から自己の商標の使用が商標権侵害だと言われる可能性があるということです。一旦、商標登録されるということは、類似範囲に他人の登録商標が存在しないことを意味します。したがって、他人から侵害であるといわれることは、特許庁の判断に反する主張であることになります。逆に商標登録なしで商標を使用することは、類似範囲に他人の登録商標が存在しないことを誰も保証するものではなく、このような他人の登録商標が存在すれば、侵害であると言われる可能性がつきまとうことになります。

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