1 名称
はりま
(注) 酒類の地理的表示に関する表示基準(平成 27 年 10 月国税庁告示第 19 号。以下「表示基準」という。)第9項((地理的表示の保護))の規定に基づき、その翻訳及び「種類」、「型」、「様式」、「模造品」等の表現を伴い使用される場合も保護の対象となる。
2 産地の範囲
兵庫県姫路市、相生市、加古川市、赤穂市、西脇市、三木市、高砂市、小野市、加西市、宍粟市、加東市、たつの市、明石市、多可町、稲美町、播磨町、市川町、福崎町、神河町、太子町、上郡町及び佐用町
3 酒類区分
清酒
4 生産基準
第1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項
⑴ 酒類の特性について
はりまの清酒は、総じて口当たりは柔らかく優しい丸みがあり、苦み渋みが少ない繊細なコクと豊かな香味のふくらみを有している。また、兵庫県で生産された酒米の山田錦を用いて健全に育成した麹を使用することにより、醪において心地良い酸味が付与され、後味が軽快な酒質となる。特に、純米酒、本醸造酒はこく、香味及び酸味のバランスが取れた飲み飽きしない酒質となる。また、純米吟醸酒、吟醸酒は華やかなリンゴの様な果実様の甘い香りが心地良い酸味と調和することにより、更にのど越しの良い酒質となる。
⑵ 酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて
(イ) 自然的要因
兵庫県は、日本列島の中心付近に位置し、北は日本海、南は瀬戸内海に面している。県の中央には、標高が 1,000 メートルに満たない比較的低い山で構成された中国山地が東西に伸びており、日本海側からの湿った風がこの山地に豊富な降雨をもたらしている。山々に蓄えられた水は、県内で一番長い加古川をはじめ市川、夢前川、揖保川及び千種川などの多くの河川を形成し、山麓に広がる穀倉地帯に豊かな水資源を提供している。清酒の原料となる米はこの穀倉地帯で栽培されており、山田錦は清酒原料の専用品種としてこの地で品種改良により生み出された。米が登熟する時期には六甲山系が南からの温かい空気を遮り、一日の気温差が大きくなる気候や、ミネラル分が多い粘土質の農地によって、山田錦に心白の形状、脂肪やたんぱく質の少なさなど、清酒原料としての良い影響を与えている。また、はりまの清酒産地は、明石海峡より西側で、中国山地の南側に広がる地域に位置しており、気候は温暖で日照時間が長く降水量が少ない。このことにより、清酒の原料として中国山地に由来した鉄分が少なく、無機塩類(カリウム、リン酸、マグネシウム、カルシウム等)を適量に有した水を仕込み水として用いることができる。
(ロ) 人的要因
奈良時代に編さんされた「播磨国風土記」に、現在の酒造りの原型とされる米麹を糖化剤とした酒造りがはりまで行われていたという最初の記録がなされている。また、江戸時代には近隣の灘五郷で酒の生産が隆盛となったが、はりまは、播州杜氏に代表される労働力及び原料米の供給地として重要な機能を果たした。江戸時代後期には、それらの資産を活用して多くの酒蔵が開業することとなり、清酒の産地として確立していくこととなった。昭和3年には、日本で唯一の酒米専門研究機関「兵庫県酒米試験地」が開設され、藤川禎次氏を中心に酒米の産地適応性の試験を繰り返し、昭和 11 年には酒造好適米である山田錦が誕生した。その後、現在に至るまで兵庫県立農林水産技術総合センターにおいて山田錦の原種(育成家種子)を護持するほか、主要農作物種子生産条例(兵庫県条例第 31号)により厳格に米の品質を守ることにより、兵庫県に山田錦を根付かせてきた。また、醸造技術については、国税局鑑定官を招いた「酒造講話会」や「新酒利き酒会」等での製造技術の指導や兵庫県立技術センターの「兵庫県酒造技術研究会」を通じた、製造技術交流、共同研究、講習会、講演会、見学会等を行うことにより、地域全体として清酒製造技術の向上や人材育成を図っている。更に、平成 25 年には姫路市をはじめとする地方自治体 13 市9町で構成する「播磨広域連携協議会」や、播磨4酒造組合で構成する「はりま酒文化ツーリズム協議会」を設置し、「山田錦発祥の地」、「播磨は日本酒のふるさと」を標榜し、酒文化を広める活動を行っている。