商標法上の審判の解説

審判は、審査よりもより裁判に近い形式で審判官が審理するものです。自己の出願についてなされた審査官等の判断(査定等)に対して行う査定系審判と、すでに商標登録されたものに対して主に当事者間の紛争を解決するために行う当事者系審判とがあります。また、当事者系審判には登録無効審判と登録取消審判とがあり、登録無効審判の場合、無効審決が確定すると、原則として権利は初めからなかったものとなります。一方、登録取消審判の場合、取消審決が確定すると、審判請求登録日かその審決確定の後に権利がなかったものとなります。また、審理の方式には口頭審理と書面審理とがあり、当事者系審判は口頭審理が原則ですが、当事者の申し立て又は職権により書面審理とすることもできます。

Ⅰ.査定系審判

 A.拒絶査定不服審判(商標法第44条)

自己の出願について拒絶査定がなされた場合に、不服を申し立てる審判です。なお、自己の出願について登録査定がなされた場合は、不服を申し立てることは考えられませんので、この審判を請求することはできません。他人の登録査定について不服を申し立てる場合には、登録されてから以下の登録異議申立や登録無効審判が請求できます。また、拒絶査定謄本送達の日から30日以内に請求することが必要です。

 B.補正却下不服審判(商標法第45条)

自己の出願について、内容を補充・訂正する場合は、補正の手続きをしますが、その補正の手続きについて却下される場合があります。その却下処分に対して不服を申し立てるのがこの審判です。なお、決定謄本送達の日から30日以内に請求することが必要です。

Ⅱ.当事者系審判

 A.無効審判

  1.登録無効審判(商標法第46条)

登録に不備のあることを理由にその登録の無効を請求する審判です。紛争解決手段として利用されますので、この審判を請求するには利害関係が必要とされます。無効審決が確定すると、原則として商標権は初めから存在しなかったのものとみなされます。なお、無効理由によっては、5年以内に請求することが必要な場合があります。

 B.取消審判

  1.不使用による取消審判(商標法第50条)

3年間日本国内で権利者の誰もが登録商標を使用していないことを理由に登録の取り消しを求める審判です。商標は使用されなければ誰の商標か区別できず、保護に値しないため、一定期間不使用の登録商標は誰でも登録の取り消しを請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権は審判請求登録日から消滅したものとみなされます。詳しくは不使用取消審判へ。

  2.商標権者の不正使用による取消審判(商標法第51条)

商標権者が紛らわしい商標の使用をしていることを理由に登録の取り消しを求める審判です。例えば、登録商標に似た商標を使用することにより、他人の商品と誤認させたり、その他人と関係があるものと混同させたりした場合が該当します。制裁措置として、誰でも請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  3.使用権者の不正使用による取消審判(商標法第53条)

使用権者が紛らわしい商標の使用をしていることを理由に登録の取り消しを求める審判です。商標権者の監督義務違反という性質もあり、誰でも商標登録そのものの取り消しを請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  4.商標権移転の結果の混同使用による取消審判(商標法第52条の2)

商標権が移転された結果、商品の類似範囲内で同じ登録商標が別々の権利者の所有となる場合があります。この場合、それぞれが登録商標を使用することによって需要者等が誤認混同した場合には、誰でも登録の取り消しを請求できます。なお、一方の権利者が他方の権利者に紛らわしくならないような表示を求めることもできます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  5.代理人等の不当登録による取消審判(商標法第53条の2)

代理人等が商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその商標を登録した場合に、商標に関する権利を有する者がその商標の取り消しを求める審判です。例えば、外国の商標権をもっている会社の日本代理店がその会社の承諾を得ないで、その会社の商標を登録した場合が該当します。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、商標権設定登録日から5年以内に請求することが必要です。

明治時代の商標審決録
明治時代の商標審決録

Ⅲ.登録異議申立(商標法第43条の2)

登録異議を申し立てることによって取消決定が確定すると、商標権が初めから存在しなかったのものとみなされる点で、登録無効審判に似たものです。再審査してもらうといった性質のものですので、誰でも申し立てることができます。なお、登録を維持する旨の決定がなされた場合には、その決定に対して不服を申し立てることはできません。また、商標掲載公報発行日から2ヶ月以内に申し立てることが必要です。詳しくは登録異議申立て

Ⅳ.判定(商標法第28条)

商標権の効力について特許庁の見解を求めるものです。自己の権利が侵害されているか、又は他人の権利を侵害しているかを判断する目安となります。なお、判定は鑑定的なものであり、行政処分ではありません。また、判定の内容について不服を申し立てることはできません。なお、判定は何回でも請求することができます。

審判廷
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