商品・役務の類否と類似群コード

2つの商標が競合関係に有るか無いかの基準としては、その標章(マーク自体)の類否と、指定する商品・役務の類否の2つの視点があり、指定商品・指定役務が類似か否かは、審査段階よりもその後の拒絶査定不服審判や商標登録無効審判などの審判段階か或いは審決取消訴訟段階で争点となり得ます。これは一般的に審査段階では個々の指定商品・指定役務について具体的な判断をするよりも類似群コードで画一的な推定を行っており、標章が類似している場合に、類似群コードが重なっているかどうかで4条1項11号の拒絶理由を挙げるか否かの判断をしています。ところが、類似群コードは絶対的な基準ではなく、特に審判や審決取消訴訟においては、同じ類似群コードに属する2つの商品であっても非類似な商品(役務)であると判断されることもあり、その逆に類似群コードは異なっているものの類似する商品(役務)であると判断されることもあります。

審決取消訴訟

同じ類似群ながら非類似と判断

平成15年 (行ケ) 456号 審決取消請求事件(「SUMCO事件」)
【争点】商品「半導体ウエハ」は商品「電子応用機械器具(医療器械器具に属するものを除く。)」に類似するか否か。
【背景】原告シリコンウエハ会社は、標章「SUMCO」について9類「半導体ウエハ」を指定して出願したが、指定商品を商品「電子応用機械器具(医療器械器具に属するものを除く。)」とする「サームコ」と「thermco」の欧文字の各先登録商標の存在を理由に、登録できないと判断された。
【裁判所の判断】商標法4条1項11号に規定する指定商品の類否は,取引の実情に照らし,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるか否かによって判断されるべきである。橘正宗事件(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決)。半導体ウエハの製造は専業化が進んでおり、半導体ウエハと集積回路等の電子応用機械器具とについて,同一又は類似の商標が使用されたときに,半導体ウエハの需要者であるデバイスメーカー等において,それらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはないというほかはない。と判断されています。

異なる類似群ながら類似と判断

平成27年(行ケ)第10134号 審決取消請求事件(「Dual Scan事件」)
【争点】商標法4条1項11号該当性(指定商品の類似性):指定商品を第9類「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」とする「デュアルスキャン/Dual Scan」の 商標は、指定商品を第10類「体脂肪測定器,体組成計」とする「Dual Scan」の引用商標と類似するか否か。
【背景】被告(タニタ(株))は第9類「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」を指定商品として、出願をして登録査定を受けた。これに対して原告は、第10類「体脂肪測定器,体組成計」の指定商品の登録商標を所有しており、無効審判請求をしたが、無効審判請求は成り立たないとして棄却され、この審決に不服として提訴したものである。
【裁判所の判断】本件商標と引用商標の指定商品に関連する体脂肪計,体組成計,体重計等の取引の実情に関し、医療用と家庭用の体脂肪計,体組成計,体重計において性能や価格、販売方法などを分析した結果、本件査定時においては,医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は,誤認混同のおそれがある類似した商品に属するというべきである。「類似商品・役務審査基準」が,一般的な商品の類否の判断に当たって、一定の基準を付与しており,画一的な判断を容易にする機能を果たしていることは否定できないが、同基準自身が,類似群コードが異なる場合に非類似とみなさずに推定しているだけであり,推定が覆滅されることを許容している。医療用と非医療用とでは,その機能や性質,価格帯,生産・販売部門が完全には一致しないこと,これらが商品の類否判断において重要な考慮要素となることは,原告の指摘するとおりである。しかしながら,これらの指摘は,医療用として高額なものと家庭用でも最も安価なものに重点を置いて対比した結果にすぎない。

平成27年(行ケ)第10096号 審決取消請求事件(「ブロマガ」事件)
【争点】「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」と「電子計算機用プログラム」の類否
【背景】原告(FC2)は第42類 ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等を指定役務とする「ブロマガ/BlogMaga」の二段の文字商標(登録第5621414号商標)の商標権者であり、被告(ドワンゴ)は第9類電子計算機用プログラムを指定商品とする「ブロマガ/BlogMag」の先登録商標権者である。被告が原告の商標権に対して無効審判を請求し、登録無効の審決は出され、それを不服とした原告が提訴したものである。
【裁判所の判断】商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通するといえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンラインによるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異なるものとは認められない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

拒絶査定不服審判

同じ類似群ながら非類似と判断

不服2019-7187(審決確定日令和1年8月23日)商標「ULTIMA」類似群コード[24C01]
本願商標「ULTIMA」 指定商品 第28類「アーチェリー用具」
引用商標「ULTIMA Ti/ウルティマ Ti」 指定商品 第28類「ウッド型ゴルフクラブ,ウッド型ゴルフクラブヘッド,カーボンファイバー製ゴルフクラブ,ゴルフアイアン,ゴルフクラブ用のグリップ,ゴルフクラブ用のヘッドカバー,ゴルフクラブ用インサート,ゴルフクラブ用グリップテープ,ゴルフクラブ用シャフト,ゴルフクラブ用ヘッド,ゴルフティー,ゴルフバッグ(車付・車のないもの),ゴルフバッグ用ストラップ,ゴルフパター,ゴルフパター用カバー,ゴルフボール,ゴルフ手袋,ゴルフ用ディボット修復具」
【審決】アーチェリー用具は、主にアーチェリー用具を専門に扱う販売店を通じて、主としてアーチェリー競技者に販売されているのに対し、ゴルフ用具は、主にゴルフ用具を専門に扱う販売店又は一般のスポーツ用品店を通じて、ゴルフ競技者のみならず一般のゴルフ愛好者に広く販売されているものであり、さらに、それらの用具を取り扱う製造メーカーも異なるものである。

不服2019-2010(審決確定日令和1年11月5日)商標「ファインクリスタル」類似群コード[01A01]
本願商標「ファインクリスタル」第1類「自動車用コーティング剤」
引用商標 「ファインクリスタル/FINE CRYSTAL」 指定商品 第2類「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤,染料,顔料,塗料,防錆グリース,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の貴金属はく及び粉」
【審決】本願の指定商品「自動車用コーティング剤」と引用商標の指定商品中の「カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」とは、その用途が明らかに相違するものであって、生産、販売及び需要者の範囲が共通するとはいい難いものであり、ほかに、これらの商品が類似するというべき取引の実情を見いだすこともできない。

不服2017-17236(審決確定日平成30年7月30日)商標「FIREFLY」類似群コード[11C01]
本件商標「FIREFLY」 指定商品 「文字認識用のコンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。),商品のバーコードを読み取り商品を特定するための携帯電話・スマートフォン・タブレットコンピュータ用のコンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。),電話機を利用した情報検索用コンピュータソフトウェア(医療用及び外科用のものを除く。)」
引用商標「FIREFLY」 指定商品「Luminescence diodes.」(発光ダイオード)
【審決】ソフトウェアと発光ダイオードは,共に電子応用機械器具及びその部品の範ちゅうに属する商品であるとしても,その用途,販売部門,需要者,生産部門及び品質が明らかに異なるものであるから,両者に同一又は類似の商標を使用しても,それらが同一の営業主の製造,販売に係る商品と誤認混同されるおそれはないものと判断するのが相当である。

不服2017-18020(審決確定日 平成30年9月11日)商標「NINJA」類似群コード[20C01]
本願商標「NINJA」 指定商品 第20類「フィルム間に液晶材料を狭持させた積層フィルムを備えた屋内用ブラインド」
引用商標「Ninja」 第14類「貴金属製像,貴金属製造形品,貴金属製胸像,貴金属製小立像,銀製造形品」
【審決】本願商品と引用商品とは,その需要者を共通にする場合があるとしても,その生産部門,販売部門,原材料及び用途において相違するものである。そうすると,本願商品と引用商品に同一又は類似の商標が使用されたときに,これらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。

不服2018-10633(審決確定日平成31年2月13日) 商標「チャオ」類似群コード[19A01]
本願商標「チャオ/炒」 指定商品 第21類「鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん」
引用商標「チャオ/炒」漢字部分は小さく右上 指定商品 第11類「ガス湯沸かし器」
【審決】 販売部門、用途、需要者は両社間で異なっており、両者が完成品と部品との関係にないことも明らかである。よって本願商品「鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん」と,引用商標の指定商品中,「ガス湯沸かし器」とは,両者に同一又は類似の商標を使用しても,それらの商品が同一営業主の製造,販売に係る商品と誤認混同するおそれはなく,類似する商品ということはできない。

不服2014-8941(審決確定日平成27年4月7日)商標「LOGOS」類似群コード[20C01]
本願商標「LOGOS」 指定商品 第20類「日よけ」
引用商標「LOGOS」 指定商品 第16類「紙製テーブルクロス」
【審決】 本願商品は、ブラインドやカーテンなど窓まわりのインテリアを取り扱う業者が製造し、その販売方法は、大型の一般小売店やホームセンターなどで一般家庭向けに販売されている。他方。引用商品については、当審における職権調査によると、引用商品は、主にホテル、レストランなどの外食産業で使用される紙製のテーブルクロスであって、使い捨ての商品である。そして、引用商品は、パルプ・紙製造業者が製造し、その主たる販売方法は、飲食用紙製品総合メーカーから、ホテルやレストランなど外食産業に直接販売されている。以上を総合判断すれば、本願商品と引用商品は、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び品質において相違し、また、完成品と部品との関係にないことも明らかであるから、両者に同一又は類似の商標が使用された場合において、取引上商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。

韓国知的財産庁(KIPO) vol.14 商標_動画(embedded)

1.특허심판원 홍보영상、5:22
韓国知的財産庁審判廷 広報

2.특허청 지식재산 보호 설명회、1:10
知的財産保護政策説明会

3.2018 여성발명왕EXPO 영상、1:06

4.내가 뽑는 세계 발명왕!、1:09

社会通念上同一と認められる商標

平成8年改正商標法における不使用取消審判の改善では、登録商標の使用と認める範囲を社会通念上同一と認められる商標まで広げています。どこまでが社会通念上同一という境界を探ることで、どの程度の幅を以て登録商標からの差異が容認されるのかを知ることができ、また不使用取消を請求する際に請求するか否かの判断の基準ともなります。

登録商標と使用商標の関係

社会通念上同一か否かは登録商標に係る指定商品 及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、個々具体的 な事例に基づいて判断すべきとされています。審査基準には、次のような例が挙げれています。①書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、②平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであっ て同一の称呼及び観念を生ずる商標、③外観において同視される図形からなる 商標は社会通念上同一と認められるという原則が挙げられています。以下の表で、“使用”は社会通念上同一と認められるという判断になります。

登録商標 使用商標 説明 使用/不使用
鳥獣の戯 鳥獣の戯 fontを変更 使用
鳥獣の戯 鳥獣の戯 書体を変更 使用
鳥獣の戯 鳥獣の戯 筆記体の使用 使用
鳥獣の戯 鳥獸の戲 旧字体と新字体 使用
CHYOJYU-NO-GI chyojyu-no-gi 大文字と小文字 使用
 ちょうじゅうのぎ  チョウジュウノギ 平仮名と片仮名 使用
鳥獣の戯  ちょうじゅうのぎ 漢字と仮名 使用
バード or ばーど Bird 仮名と英字 使用
2段書きの1段 使用
  Bird 2段書きの1段 使用
縦書きと横書き 使用
     背景が異なるが外観がほぼ同一 使用
 鳥  Bird  同一概念 不使用
 蛙    文字と図形

(同一概念)

不使用
図形が相違

(同一概念)

不使用
ロード ROAD or LOAD 多義語に対応 不使用

不使用は社会通念上同一とは認められないという判断になります。

不使用取消審判の解説†

不使用取消審判

  
不使用取消審判は、使用していないことを理由に、競合するような他人の商標登録を取り消す手続です。商標調査の結果や出願の審査段階で、欲しいと思う商標に競合する他人の商標があったときでは、不使用を理由とする取消審判を請求することで、その競合する他人の商標を取り除くことが可能です。

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どのような場合に不使用取消審判を請求できますか?

典型的には次のような状況で不使用取消審判を請求します。
A.商標調査を行った結果、使用する予定の商品やサービスの範囲に、欲しいと思う商標と同一または類似の先に登録された他人の商標がある場合、その他人の商標を取り消すように求めるとき。
B.出願後、審査の段階で先に登録された他人の商標を理由に拒絶理由を通知された場合(すなわち商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶理由の場合)、意見書や補正書の提出と並行するように請求するとき。これは、通常、上申書により意見書の提出を審査官の方で不使用取消審判の決審まで待ってもらいます。交渉によるアサインバック(Assign Back)とは別の選択ともなりますが、アサインバックと不使用取消審判を同時進行させる方策もあります。

不使用により取消されるとどうなりますか?

取消が認められば、その商標権は消滅します。詳しくは不使用取消審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、不使用取消審判の請求の登録日まで遡及して取消審決の確定の効果を与えます(商標法第54条2項)。従いまして、自分の欲しいと思う商標との競合関係が解消され、拒絶理由の解消や自分の商標を登録することができるようになります。また、商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した時に取り消されますので、裁判所に審決取消を求めている状態では審決が確定していないので、まだ取り消されていないことになります。

取消されるべき不使用とはどのような状況でしょうか?

審判の請求の登録日を基準に考えて、その時点から過去3年間日本国内で登録にかかる商標が指定商品若しくは指定役務について使用されていない場合、取消対象となります。ただし、専用使用権者や通常使用権者が使用している場合や、まだ、登録から3年も経っていない場合は、不使用には該当しません。審判の請求前3月から請求の登録日までの間にされた使用について、その使用が審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したときは、その使用について正当な理由がない限り、登録商標の使用をしたものとしては認めないこととしています。所謂駆け込み使用を防止するためで平成8年より導入されています。また、社会通念上同一と認められる商標については使用があるものと判断されます。審判の請求の登録日から遡った過去3年間を要証期間といいます。審判請求が受理された日から通常2週間程度で審判の予告登録がなされ、その予告登録の日が審判の請求の登録日です。商標権者に審判請求書の副本が送達される前に、出願時の代理人に審判事件の代理をするか否かの問い合わせが特許庁審判部より代理人にFAX送信されることが慣行されていまして、ずれ込むこともありますが特許庁審判部からのFAXの送信日が予告登録の日の1、2日後となるケースが多いものと思います。

誰が不使用取消審判を請求できますか?

法人、自然人を問わずだれでも不使用取消審判を請求できます。利害関係人には限定されておりません。実務上は、実際に取消で利益を受ける者以外のダミーでの審判請求も行われたりします。例えば取引先だけど権利を潰したいというような場合は、ダミーの審判請求人とすることがあります。

どのような資料や証拠が必要でしょうか?

不使用取消審判では、請求された商標権者が使っていることを証明をする必要があります。挙証責任が請求人側には当初ないことから、請求人側は実体的な証拠を出す必要がない場合が多いです。被請求人側である商標権者側は、登録商標の使用を証明するための証拠を出すことになりますが、登録商標の使用と認める範囲は「社会通念上同一と認められる商標を含む。」と明記されています。その例示として、i)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、ii)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、iii)外観において同視される図形からなる商標が挙げられます。登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用は不使用取消審判では使用に該当します。

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成功する不使用取消審判

不使用取消審判の成功率は一般に8割程度です。これは使用していないことについて、ある程度の確信を以て審判請求される場合が多いからと思われます。取消にかかる指定商品や指定役務は、通常、競合が生ずる範囲だけを限定しますので、その範囲を狭すぎず広すぎないようにすることが重要です。また、商標調査の結果で不使用取消を請求する場合、1つの競合する商標だけに着目して他の商標を見落とさないように、複数の重なるような権利状況になっているのかいないのかを確認する必要もあります。また、不使用取消審判が請求される場合、同じ審判請求人から取消対象の範囲で同一若しくは類似の商標が出願されることがほぼ間違いなく行われます。これは取消審判の結果を待って、審判請求人が競合する範囲の出願をした場合には、先に被請求人が出願をしてしまえば、先後願の関係で被請求人が優位に立ち、不使用取消を請求が無意味になるからです。
不使用取消審判では取消を求める指定商品・指定役務の範囲を請求の趣旨の欄に記載します。この請求時に記載した取消を求める指定商品・指定役務の範囲の範囲は、後から追加したり減縮したりすることはできず、請求の一部を取り下げることはできない規則になっています。従って、1度不使用取消審判を例えば第25類の指定商品「被服と運動用特殊靴」に対して請求した後、相手が「背広」について証拠を出してきたので「運動用特殊靴」だけに変更するというようなことはできず、もし「運動用特殊靴」に固執するならば「運動用特殊靴」だけ初めからやり直しで不使用取消審判で取消を求める必要があります。
不使用取消審判では、取消を求める指定商品・指定役務の範囲で1つでも使用する証拠を挙げられてしまえば不成功となります。従って、比較的に広い範囲の指定商品・指定役務に対して取消を求める場合、最も効果的な攻撃方法は”同時多発”となります。やや不謹慎な表現かもしれませんが、同時に多発即ち類似群コード別ぐらいの狭い範囲で取消を請求すれば、相手に証拠を準備できる範囲と証拠を準備できない範囲が生ずる確率が高くなり、且つ同時ですのでやり直しによる時間ロスなども防ぐことができます。但し、わざわざ狭い指定商品・指定役務の範囲で請求しますので、審判費用はそれなりに増えることにはなります。

不使用取消審判を請求する場合のリスク

不使用取消審判を請求することは、勝手に相手の権利を消滅させる手続きを開始することになるため、請求人はその商標がなくなることに何かのメリットがあることがほとんどです。仮に不使用取消が失敗した場合では、商標権は存続しつづけますので、その権利範囲の使用は侵害行為にあたる場合も多いと考えられます。従いまして、不使用取消審判の請求が不成立の場合、契約やライセンスで何とかするか或いはその商標をあきらめることを覚悟する必要があります。

不使用取消審判で被請求人が証する使用の証拠

被請求人の場合、取消を免れるには、審判請求の登録の日から3年前までの過去(要証期間と言います。)の証拠を提出する必要があります。一般には、納品書、領収書、カタログの頒布や広告の有る雑誌、新聞などへの掲載などの資料を挙げることになります。宣伝の事実などの場合には、パンフレット、カタログ等とそれを裏付ける陳述書などでも可能です。請求書、納品書などの取引書類も使用の証拠とすることができますが、日付を証明する必要があり、外国語の物であれば国内での頒布も証明する必要があります。ウエブサイトも広告として機能させることができますが、要証期間にそのような掲載があったことを証明する必要があり、The Internet Archiveのwebsite(URL http://www.archive.org)に保存されているものがあれば、それを証拠とすることも可能です。なお外国語のwebsiteの場合、外国語であるから直ちに国外という訳でもありませんが、国内という要件を満たすように証拠を挙げる必要があります。また証拠を提出するタイミングですが、通常訴訟経済から被請求人は所持している証拠を早めに出すものとはなりますが、審判の早期の証拠の提出機会である答弁書に添付せずに、それよりも後にタイミングで提出することもできます。審判段階では、証拠を提出せずに或いは弱めの証拠だけを提出し、取消の決定を受け、審決取消訴訟で新たな証拠を提出することもできます。証拠に基づく審決が絶対的でないのも、商標の不使用取消審判の1つの特徴とも言えます。また、使用を証拠づける場合に、商標法第2条第3項の第何号の使用なのかを明白する必要があり、特に口頭審理では、第何号に定義された商標の使用なのかを尋ねられることが頻繁にあります。

正当理由の主張

もし審判請求の登録の日から3年前までの過去で日本国内での使用がない場合でも、その不使用に正当な理由があれば取消を免れることができます。一般に、医薬品の製造許可申請や農薬登録申請などの作業は、申請が要証期間内であれば正当な理由として認められる傾向にあります。国内にいなかった、店舗の準備に時間がかかる、その製品の特許査定を待っているなどは正当理由として否定された事例があります。また、商標権を譲渡された場合でも、不使用にはかわりないとされた事例もあります。

一事不再理の適用は?

不使用取消審判が請求され、その請求が成り立たないとした審決が得られ確定したとしても、後日同じ指定商品指定役務の範囲で再度不使用取消審判を請求することもできます。これはそれぞれの不使用取消審判にかかる要証期間が異なっており、要証期間が異なれば一事不再理の適用はないと判断された審決例があります(取消2015-300125)。

審決に不服の場合は審決取消訴訟の提起

不使用取消審判について審決がなされた場合、審決書が当事者に送達されます。審決の内容について不服がある当事者は、東京の知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起することができます。

審判請求、被請求の費用†

不使用取消審判を請求するには、特許庁に払う費用として、55,000円(1区分)かかり、区分が増加するごとに40,000円がかかります。当事務所に依頼の場合の請求人の代理手数料費用は、事件にもよりますが一般的に、110,000円+tax(区分毎、審判請求、弁駁書を含む。)で、成功報酬(成功時のみ)も110,000円+taxとなります。不使用取消審判の被請求人の場合には、特許庁に審判請求に関して払う費用はありませんが、当事務所に依頼の場合の被請求人の代理手数料費用は、一般的に140,000円+tax(区分毎、答弁書、審尋回答を含む)で、成功報酬(成功時のみ)は140,000円+taxとなります。通常、不使用取消審判を請求する場合には、請求する前に取消の成功可能性についての調査とコンサルティングを行いますが、インターネット調査(コンサルティング込み)は20,000円~、調査会社を入れる場合には50,000円~となります。また、往々にして口頭審理(準備書面の提出を含み90,000円+tax(区分毎))となることがあり、もし口頭審理が東京以外の場所で開催される場合には、移動の交通費もお願いするところとなります。

審判廷
審判廷

商標法上の審判の解説

審判は、審査よりもより裁判に近い形式で審判官が審理するものです。自己の出願についてなされた審査官等の判断(査定等)に対して行う査定系審判と、すでに商標登録されたものに対して主に当事者間の紛争を解決するために行う当事者系審判とがあります。また、当事者系審判には登録無効審判と登録取消審判とがあり、登録無効審判の場合、無効審決が確定すると、原則として権利は初めからなかったものとなります。一方、登録取消審判の場合、取消審決が確定すると、審判請求登録日かその審決確定の後に権利がなかったものとなります。また、審理の方式には口頭審理と書面審理とがあり、当事者系審判は口頭審理が原則ですが、当事者の申し立て又は職権により書面審理とすることもできます。

Ⅰ.査定系審判

 A.拒絶査定不服審判(商標法第44条)

自己の出願について拒絶査定がなされた場合に、不服を申し立てる審判です。なお、自己の出願について登録査定がなされた場合は、不服を申し立てることは考えられませんので、この審判を請求することはできません。他人の登録査定について不服を申し立てる場合には、登録されてから以下の登録異議申立や登録無効審判が請求できます。また、拒絶査定謄本送達の日から30日以内に請求することが必要です。

 B.補正却下不服審判(商標法第45条)

自己の出願について、内容を補充・訂正する場合は、補正の手続きをしますが、その補正の手続きについて却下される場合があります。その却下処分に対して不服を申し立てるのがこの審判です。なお、決定謄本送達の日から30日以内に請求することが必要です。

Ⅱ.当事者系審判

 A.無効審判

  1.登録無効審判(商標法第46条)

登録に不備のあることを理由にその登録の無効を請求する審判です。紛争解決手段として利用されますので、この審判を請求するには利害関係が必要とされます。無効審決が確定すると、原則として商標権は初めから存在しなかったのものとみなされます。なお、無効理由によっては、5年以内に請求することが必要な場合があります。

 B.取消審判

  1.不使用による取消審判(商標法第50条)

3年間日本国内で権利者の誰もが登録商標を使用していないことを理由に登録の取り消しを求める審判です。商標は使用されなければ誰の商標か区別できず、保護に値しないため、一定期間不使用の登録商標は誰でも登録の取り消しを請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権は審判請求登録日から消滅したものとみなされます。詳しくは不使用取消審判へ。

  2.商標権者の不正使用による取消審判(商標法第51条)

商標権者が紛らわしい商標の使用をしていることを理由に登録の取り消しを求める審判です。例えば、登録商標に似た商標を使用することにより、他人の商品と誤認させたり、その他人と関係があるものと混同させたりした場合が該当します。制裁措置として、誰でも請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  3.使用権者の不正使用による取消審判(商標法第53条)

使用権者が紛らわしい商標の使用をしていることを理由に登録の取り消しを求める審判です。商標権者の監督義務違反という性質もあり、誰でも商標登録そのものの取り消しを請求できます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  4.商標権移転の結果の混同使用による取消審判(商標法第52条の2)

商標権が移転された結果、商品の類似範囲内で同じ登録商標が別々の権利者の所有となる場合があります。この場合、それぞれが登録商標を使用することによって需要者等が誤認混同した場合には、誰でも登録の取り消しを請求できます。なお、一方の権利者が他方の権利者に紛らわしくならないような表示を求めることもできます。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することが必要です。

  5.代理人等の不当登録による取消審判(商標法第53条の2)

代理人等が商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその商標を登録した場合に、商標に関する権利を有する者がその商標の取り消しを求める審判です。例えば、外国の商標権をもっている会社の日本代理店がその会社の承諾を得ないで、その会社の商標を登録した場合が該当します。この審判の請求によって取消審決が確定すると、商標権はその後消滅します。なお、商標権設定登録日から5年以内に請求することが必要です。

明治時代の商標審決録
明治時代の商標審決録

Ⅲ.登録異議申立(商標法第43条の2)

登録異議を申し立てることによって取消決定が確定すると、商標権が初めから存在しなかったのものとみなされる点で、登録無効審判に似たものです。再審査してもらうといった性質のものですので、誰でも申し立てることができます。なお、登録を維持する旨の決定がなされた場合には、その決定に対して不服を申し立てることはできません。また、商標掲載公報発行日から2ヶ月以内に申し立てることが必要です。詳しくは登録異議申立て

Ⅳ.判定(商標法第28条)

商標権の効力について特許庁の見解を求めるものです。自己の権利が侵害されているか、又は他人の権利を侵害しているかを判断する目安となります。なお、判定は鑑定的なものであり、行政処分ではありません。また、判定の内容について不服を申し立てることはできません。なお、判定は何回でも請求することができます。

審判廷
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