「GUZZILLA」商標無効 建機部品愛称、「ゴジラ」と酷似―混同の恐れ指摘・知財高裁 | 時事ドットコム

GUZZILLAはGODZILLAと類似 知財高裁

建設機械部品の愛称「GUZZILLA」(ガジラ)は、怪獣「ゴジラ」の英語表記「GODZILLA」と混同する恐れがある―。岡山市のメーカーが商標登録無効の取り消しを求めた訴訟の判決で、知財高裁はこのように指摘し、特許庁の無効判断を支持した。

情報源: 「GUZZILLA」商標無効 建機部品愛称、「ゴジラ」と酷似―混同の恐れ指摘・知財高裁:時事ドットコム

登録番号:第6143667
登録日:令和1(2019)年 5月 10日
商標(検索用):§GUZZILLA
権利者:株式会社タグチ工業

GUZZILLAはGODZILLAと類似
商標登録第6143667号

【特報】映画『ゴジラ-1.0』【2023年11月3日公開】, 0:30

【特報】映画『ゴジラ-1.0』【2023年11月3日公開】

ツインシリンダー鉄筋・鉄骨カッター「ガジラDSカッター」登場 | DSX/DX |田口 |英語, 1:09

Introducing Twin Cylinder Rebar/Steel Frame Cutter “Guzzilla DS Cutter” | DSX/DX | TAGUCHI | English
無効審判 2019-890064 審決
 請求人         東宝 株式会社

 被請求人        株式会社 タグチ工業

   上記当事者間の登録第6143667号商標の商標登録無効審判事件につ
  いて、次のとおり審決する。

 結 論
   登録第6143667号の登録を無効とする。
   審判費用は被請求人の負担とする。

 理 由
  第1 本件商標
   本件登録第6143667号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲
  のとおりの構成よりなり、平成30年7月25日に登録出願、第7類「パワ
  ーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」を指
  定商品として、同31年4月3日に登録査定、令和元年5月10日に設定登
  録されたものである。

  第2 請求人の主張
   請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠
  方法として、甲第1号証ないし甲第246号証(枝番を含む。以下、証拠に
  おいて、全ての枝番を示す場合は枝番を省略する。)を提出した。
   1 請求の理由
   本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第19号及び同項第7号
  に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は
  無効にすべきものである。
  (1)「GODZILLA」の周知・著名性について
   ア 審判請求人について
   請求人は、映画の制作・配給・興行、演劇の興行、劇場・映画館・レジャ
  ー施設等の経営を主とした業務を一貫して行ってきており、その設立以来す
  でに80年余の歴史を有し、この業界における我が国の第一人者の地位を築

3/
  き現在に至っている(甲2)。
   イ 映画「ゴジラ」第1作について
   請求人は、昭和29年に映画「ゴジラ」を制作し、当時の大ヒット作とな
  ったのであり、その後も請求人により20作を超えるゴジラ映画が制作され
  、ゴジラは60年以上も経た現在も依然として新鮮さと映画のヒーローとし
  ての生命を持ち続けているめである。事実、「昭和」あるいは「20世紀」
  の時代に起きた日々の出来事をまとめた書籍類には、昭和29年11月の映
  画「ゴジラ」の封切りが大きく取り上げられているが、このことは、「ゴジ
  ラ」という映画及び「ゴジラ」の存在が日本の映画史上のみならず社会・文
  化史にも残ることを示しているといえる(甲5、甲6)。
   ウ ゴジラの欧文字表記「GODZILLA」について
   ゴジラの欧文字表記である「GODZILLA」が我が国においてはじめ
  て登場したのは、第1作目の映画「ゴジラ」の海外輸出用に昭和30年に作
  成されたプロモーション用の海外向けポスター及び宣伝素材である(甲7)
  。
   「GODZILLA」のスペリングについては、諸説あるが(甲8)、い
  ずれにしても、「GODZILLA」の語は造語であり、識別力の高い極め
  て強い出所表示力を有している。このことは、例えば、特許情報プラットフ
  ォームで検索したところ、語頭が「G」で始まり語尾が「ZILLA」で終
  わる商標は、本件商標等の被請求人の商標を除き、請求人の「GODZIL
  LA」商標しか存在しないことからも明らかである。
   「GODZILLA」は、映画のタイトルやキャラクター商品等に多数使
  用されてきたが、現在日本で発行されている多数の国語辞典、英和辞典及び
  和英辞典にも「GODZILLA」の語が掲載されている(甲125~甲1
  29、甲143~甲153)。このことは、「ゴジラ」といえば「GODZ
  ILLA」を意味し、「ゴジラ」のみならず「GODZILLA」が我が国
  において周知・著名であることの証左である。
   エ 「GODZILLA(ゴジラ)」の一般への浸透度及び請求人の貢献
  度
   映画によって作られた架空の存在であるゴジラは、請求人の貴重な知的財
  産となり、この第1作から現在までに、平成28年7月29日に公開され大
  ヒットを記録している「シン・ゴジラ」を含め、合計29作のゴジラ映画が
  制作された(甲9)。これら合計29作のゴジラ映画は、累計の観客動員数
  が1億484万人にも達しており(甲9)、60年以上もの長期にわたり、
  これほど多くの観客を集め、国民の幅広い層から熱烈に支持されてきた映画
  シリーズは、少なくとも日本映画史上において他に類を見ない。その間、ゴ
  ジラ映画を特集した雑誌やゴジラを内容とする書籍が数多く出版され(甲1
  0、甲11、甲53~甲73)、また、請求人は作品が封切られる度に大々
  的な宣伝を行っており、「GODZILLA」はより広範に、かつ、深く知

4/
  られるようになった。
   また、平成16年11月には、「GODZILLA」が米国ハリウッドの
  「ウォーク・オブ・フェーム」に日本のキャラクターとしては初めて殿堂入
  りした。「GODZILLA」が世界的に有名なキャラクターであることの
  証左といえるが、この表彰式には着ぐるみの「GODZILLA」も参加し
  、米国の有力業界紙ばかりではなく、日本でも新聞等で大きく報道された(
  甲23~甲26)。
   このような事実は、日本のみならず、米国等において、「GODZILL
  A」が一般大衆からどれ程深く愛されているかを示すものに他ならない。
   オ ゴジラ映画のアメリカ版「GODZILLA」
   請求人によるゴジラ映画は、日本以外でも欧米を中心に公開され世界各国
  で人気を集めている(甲9)。アメリカでは、邦画のゴジラ作品の多くがテ
  レビで放映されているところ(甲75)「ゴジラ」は「GODZILLA」
  と表記されている(甲76~甲78)。
   したがって、「GODZILLA亅は日本のみならず、外国でもそのまま
  通用するキャラクターの名称である。
   また、米国における「GODZILLA」の人気に着目した米国のトライ
  スター・ピクチャーズ社は、請求人の許諾を受け米国ハリウッドで「GOD
  ZILLA」を主人公とする映画を制作した(甲76)。
   さらに、平成26年5月には、請求人の許諾を受けて米国のレジェンダリ
  ー・ピクチャーズ社が制作した「GODZILLA(邦題:GODZILL
  Aゴジラ)」がアメリカで公開され、約2億米国ドルの興行収入を上げる大
  ヒットとなった(甲27)。日本でも同年7月に公開され、10年ぶりのゴ
  ジラ作品として大きな話題を呼び、約32億円の国内興行収入を上げる大ヒ
  ットとなった(甲9)。これはその年に公開された洋画では4位となる成績
  である(甲28)。また、全世界では5億米国ドルを超える興行収入を上げ
  ている(甲27)。同映画の冒頭クレジットには「BASED ON TH
  E CHARACTER“GODZILLA”OWNED AND CRE
  ATED BY TOHO Co.,LTD.」とあり(甲29)、このク
  レジットは劇場用パンフレットやDVDパッケージ等に記載されているばか
  りではなく、日本のチラシやポスター等の宣伝素材においても「東宝株式会
  社が創造し、かつ所有するGODZILLAキャラクターに基づく」との表
  記がある(甲30~甲34)。
   カ 「GODZILLA(ゴジラ)」の商品化権
   請求人は「GODZILLA(ゴジラ)」の文字及びキャラクターについ
  て、多くの企業にいわゆる商品化権を与えており、「GODZILLA(ゴ
  ジラ)」のイメージを損なわないように使用権者等の商品を管理する一方、
  適正な使用料を使用権者等から継続的に得ている(甲169~甲181、甲
  186)。それらの商品は多岐にわたっており、平成13年6月の時点で使

5/
  用権者(ライセンシー)の総数は97社であった。
   また、それらの商品には人形、ぬいぐるみ、玩具、陶器、カード、菓子、
  キーホルダー、ライター、パズル、貯金箱、氷型器、ペーパーホルダー、コ
  ード、シール、文房具、時計、CDケース、エプロン、メンコ、ポスター、
  バッジ、Tシャツ、トランクス、トレーナー、電気スタンド、ぬりえ、バッ
  ク、ミニリュック、ルアー、缶詰、食料品、ガラス食器等々多岐にわたって
  いる(甲83、甲84)。 
   これらのキャラクター商品は、平成28年3月から11月の9か月間だけ
  でも248万9,770個製造されており、小売価格(税抜)に製造数量を
  乗じた金額は合計27億7,192万8,514円に上っている(甲12)
  。
   また、その中でも、ゴジラのフィギュア商品は、上記の9か月間だけで合
  計53万9,903個製造され、小売価格(税抜)に製造数量を乗じた金額
  は合計11億5,102万9,453円に上っているものである(甲12)
  。
   さらに、請求人の主要なライセンシーである株式会社バンダイにおいて平
  成25年4月から令和元年6月までの間に日本国内で製造販売された「ゴジ
  ラ」キャラクターの商品の製造数量は125万3,629個であり、小売価
  格(税抜)に製造数量を乗じた金額は46億5,950万3,081円であ
  る(甲135)。また、各年の製造数量及び小売価格(税抜)に製造数量を
  乗じた金額は、甲第135号証のとおりである。
   「GODZILLA(ゴジラ)」の商品化権を請求人から得て販売されて
  いる上記の商品には、共通して、「GODZILLA(ゴジラ)」のキャラ
  クターが使用され、「GODZILLA」(又は「ゴジラ」)の表示が商品
  自体、商品の包装、宣伝広告物、取引書類等のいずれかに使用されている。
   また、これらの商品の店頭あるいは電話による取引に際しては、当業者は
  当該商品を単に「GODZILLA」(「ゴジラ」)と特定せざるを得ない
  。
   したがって、上記の商品の取引に当たっては「ゴジラのキャラクター」及
  び「GODZILLA」(「ゴジラ」)の文字は商標として使用され、出所
  表示機能あるいは品質保証機能を十分に発揮してきた。「GODZILLA
  (ゴジラ)」は、もともとは、請求人が制作した映画の主人公のキャラクタ
  ーの名称であるが、商品化事業を通じ様々な商品について使用された結果、
  今日では単に怪獣の名称としてばかりでなく、様々な商品及び役務の出所を
  表示する請求人の商標としても広く認識されている。
   キ 請求人によるゴジラ・キャラクターの独占的な使用及び使用許諾
  (ア)映画における使用
   請求人は、平成19年公開の映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の
  劇中におけるゴジラ・キャラクターの使用を許諾した(甲85、甲86)。

6/
  (イ)宣伝広告における使用
   請求人は、古くから、企業が宣伝広告においてゴジラ・キャラクターを使
  用することを許諾してきた(甲87~甲91)。
  (ウ)人形(フィギュア)における使用
   請求人は、古くから、人形の製造にあたり、「GODZILLA(ゴジラ
  )」・キャラククーの使用を許諾しており、これに基づき、多数のゴジラ人
  形が製造され、「GODZILLA」の表示を使用して販売されてきた(甲
  92~甲96)。
   さらに、上記したとおり、「GODZILLA(ゴジラ)」・キャラクタ
  ーの人形(フィギュア)は、現在でも好評を博しており、平成28年3月か
  ら11月までの最近9か月間でも、ゴジラのフィギュア商品は合計53万9
  ,903個製造され、小売価格(税抜)に製造数量を乗じた金額は合計11
  億5,102万9,453円にも上っている(甲12)。
  (エ)その他の使用
   その他、請求人は、長年にわたり、ゴジラ・キャラクターを使用した菓子
  、玩具、アパレル、文具及びゲームソフト等の製造販売について、許諾を行
  ってきた(甲97~甲100)。
   なお、甲第97号証は、請求人が「GODZILLA」の表示によりゴジ
  ラ・キャラクターの商品化権を宣伝広告するものである。
   また、ゴジラ・キャラクターはパチンコにも登場した(甲101、甲10
  2)。
   ク 請求人が所有している「GODZILLA」関連商標
   請求人は、「GODZILLA」の名称及びキャラクターの保護を図るた
  めに、ほぼ全ての商品及び役務の分野において商標登録を取得している(甲
  103~甲113)。
   ケ 「シン・ゴジラ」の大ヒット、新宿東宝ビルの開業及び「ゴジラ」シ
  リーズの最新映画等
   平成28年7月25日には、日本で12年ぶりに制作された「GODZI
  LLA(ゴジラ)」シリーズ「シン・ゴジラ」が封切られ、大ヒットし、平
  成28年11月27日時点で、観客動員数は僅か4か月で555万人に達し
  、興行収入は80億円を超えた(甲9、甲35)。同映画は世界100ヶ国
  ・地域において配給がなされた(甲36~甲38)。
   また、新宿東宝ビルが平成27年4月17日に、新宿の歌舞伎町のコマ劇
  場跡に誕生し(甲114~甲119)、同28年7月25日に新宿の歌舞伎
  町で行われた映画「シン・ゴジラ」のプレミアムイベンドにおいて、靖国通
  りから新宿東宝ビルにかけて南北に伸びる「セントラルロード」が「ゴジラ
  ロード」、「GODZILLA ROAD」と命名された(甲120~甲1
  24)。
   さらに、「ゴジラ」シリーズの最新映画として、アニメーション3部作「

7/
  GODZILLA」の第1作が平成29年11月に公開された(甲182)
  。また、同30年年5月には第2作が公開され(甲183)、同年11月に
  は第3作が公開された(甲154)。そして、令和元年5月31日には「ゴ
  ジラキングオブモンスターズ(原題:Godzilla:King of 
  the Monsters)」が全世界で公開され、大ヒットを記録してい
  る(甲155)。
   このように「GODZILLA」が日本の映画のタイトルに使用されるの
  は、請求人の周知・著名商標「GODZILLA」が日本国民にとって極め
  てなじみやすいものとなったことの証左である。
   加えて、平成30年2月20日から約1年間、東京駅前常盤橋プロジェク
  トのA棟新築工事仮囲いに、「ゴジラ」シリーズ29作品のポスターが高さ
  3メートル、全長140メートルのスケールで展示された(甲184、甲1
  85)。当該29作品のポスターのうち、「キングゴング対ゴジラ」、「モ
  スラ対ゴジラ」、「ゴジラ(昭和59年度作品)」、「ゴジラVSモスラ」
  、「ゴジラFINALWARS」の各ポスターには、「GODZILLA」
  が表示されており(甲55)、請求人の周知・著名商標「GODZILLA
  」は、多数の通行者の目に触れることとなった。
   「GODZILLA(ゴジラ)」映画はその第1作の発表後すでに60年
  以上も経過しているにもかかわらず、その人気はいっこうに衰えず今も新作
  が制作され、大ヒットとなっており、日本社会において広く愛され、その名
  声を確固としたものにする一方、常に新しい話題を提供しながら現在ではよ
  り国際的な著名性を獲得していることは明らかである。
   コ 「GODZILLA」の語の辞書への掲載
   「GODZILLA」は、映画のタイトルやキャラクター商品等に多数使
  用されてきたが、現在日本で発行されている多数の国語辞典、英和辞典、和
  英辞典にも「GODZILLA」、の語が掲載されている(甲125~甲1
  29、甲143~甲153)。このことは、「GODZILLA」が「ゴジ
  ラ」を意味し、我が国において周知・著名であることの証左である。
   サ まとめ
   以上のような商品化事業等を通じて、「GODZILLA」の名称及びそ
  のキャラクターが、請求人にとって貴重な経済的価値を有する財産となって
  いること、並びにそれらの権利が請求人の所有に係るものであることが一般
  にも広く認知されていることは明らかである。
  (2)商標法第4条第1項第15号に関する主張
   ア 商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混
  同を生ずるおそれがある商標は商標登録を受けることができない旨を規定す
  る。
   同号の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似
  性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商

8/
  品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性
  の程度並びに商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基
  準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第8
  5号(レールデュタン判決))。
   イ 本件商標と請求人の表示との類似性の程度並びに表示の周知著名性及
  び独創性の程度
   本件商標は、欧文字「GUZZILLA」を横書きした構成からなる。
   一方、請求人の表示は、欧文字により横書きした「GODZILLA」(
  以下「引用商標」という。)である。
  (ア)外観上の類似
   本件商標と引用商標の外観を比較すると、これらはともに8文字からなり
  、看者にとって印象の薄い第2文字目及び第3文字目が異なるにすぎず、そ
  の他の6文字を共通にする。
   また、「GODZILLA」は、通常の欧文字表記であれば「GOJIR
  A」又は「GOZIRA」となるところ、後半部分に「ZILLA」の表記
  を用いた点に特徴を有している。本件商標と引用商標は、外観上強く印象に
  残る語頭の「G」と請求人の表示として特徴的な「ZILLA」の文字を共
  通にするから、これらは外観上類似する。
  (イ)称呼上の類似
   次に、本件商標と引用商標の称呼を比較する。
   本件商標の「GUZZILLA」を英語読みすると、「ガア」と発音され
  、「ガア」の音は「ゴ」の音に聞き間違えるおそれがある。
   一方、引用商標の「GODZILLA」の発音記号によれば(甲143~
  甲153)、語頭音は、「ゴ」と「ガ」の中間の音として称呼される。
   したがって、本件商標と引用商標は、語調、語感が極めて紛らわしいので
  、称呼上類似する。
   また、本件商標の「U」の文字が「O」の文字と見誤ってしまう可能性が
  高いことを考慮すれば、本件商標がその欧文字部分より「ゴジラ」と称呼さ
  れる可能性も高いといわなければならない。
  (ウ)以上述べた理由により、本件商標は引用商標と類似する。
   ウ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との関連性並びに取
  引者及び需要者の共通性
  (ア)請求人は、映画の制作・配給・上映、映画・演芸・演劇の興行、テレ
  ビ放送番組及び録画の制作等を主たる業務とする同業界における我が国の代
  表的な企業であって、請求人は、戦後も引き続き映画の制作・配給・興行、
  演劇の興行、劇場・映画館・レジャー施設等の経営を主とした業務を一貫し
  て行ってきており、その設立以来すでに80年余の歴史を有し、この業界に
  おける我が国の第一人者の地位を築き現在に至っている(甲2)。
   さらに、請求人は、映画・演劇の企画、制作及び制作請負等のみならず、

9/
  土地及び建物の賃貸、管理、売買及びこれらの仲介並びに駐車場の経営も行
  うなど、極めて広い業務を行っている(甲159)。
   しかして、請求人の商品・役務の需要者は、年齢、性別、職種等を問わず
  、あらゆる分野の広汎な一般消費者である。
  (イ)請求人はこれまで、「GODZILLA(ゴジラ)」の著作物及びそ
  の名称に関し、様々な業種の企業と使用許諾契約書を締結してきたが、プリ
  ンター、住宅、自動車等の高額の消費財について使用許諾をしてきたケース
  も多々ある(甲160~甲162)。
  (ウ)本件商標の指定商品は「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機
  ・穿孔機等のアタッチメント」であり、建設機械用のアタッチメントである
  。このような建設機械及びその部品・附属品は、中古販売やレンタルされて
  いる実情がある(甲168、甲188~甲193)。1日のレンタルであれ
  ば、数千円からと低額でレンタル可能であり、しかも、いわゆる建築関係の
  企業のみならず、個人業者でもレンタルすることが可能である(甲188、
  甲189)。本件商標の商標権者の商品も、中古販売やレンタルされている
  (甲190~甲193)。
   上記したとおり、請求人の商品・役務の需要者は、あらゆる分野の広汎な
  一般消費者であるから、その中には、本件商標の指定商品に接する取引者及
  び需要者も当然含まれている。
   しかして、本件商標の指定商品に接する取引者及び需要者と請求人の業務
  に係る商品及び役務の取引者及び需要者との関連性の程度は高いというべき
  である。
  (エ)請求人は平成27年9月11日に、請求人所有の登録第478587
  6号商標「GODZILLA\ゴジラ」の指定商品中、業務用商品である「
  塗装槭械器具」について使用許諾を求められた事実もある(甲194)。
   このことは、請求人の商標が消費財のみならず、生産財にも使用許諾され
  る可能性があることを示すものである。
  (オ)請求人は、ゴジラシリーズの映画に関し、様々な業種の企業とタイア
  ップ、使用許諾をしてきた。例えば、請求人は、映画「シン・ゴジラ」(平
  成28年7月25日公開)及び映画「GODZILLA キングオブモンス
  ターズ」(令和元年5月31日公開)では、被請求人の業務と関連のある業
  種の企業とタイアップ、使用許諾をした実績がある(甲195~甲212)
  。
   怪獣「GODZILLA」はこれまでに、映画の中で国会議事堂、銀座の
  服部時計店、勝鬨橋、さっぽろテレビ塔、横浜ベイブリッジ、JR東京駅及
  び東京都庁等の有名な建造物を破壊してきた(甲214、甲215)。
   これにより、多くの人に、「GODZILLA」といえば「建造物の破壊
  」というイメージが定着している。上記被請求人の業務と関連のある産廃処
  理業者、解体業者等は、「建造物の破壊」という「GODZILLA」の持

10/
  つイメージを利用し、タイアップ、使用許諾を得てきた。
   被請求人の製品紹介動画(甲213~甲219)は、「GODZILLA
  」の持つ「建造物の破壊」というイメージを流用したものである。需要者・
  取引者がこのような被請求人の広告に接すると、請求人と被請求人との間に
  夕イアップ、使用許諾契約が存在するものと誤認混同する可能性は極めて高
  い。
  (カ)上記の事実に鑑みれば、請求人の周知・著名商標と類似する本件商標
  がその指定商品に使用されると、本件商標の指定商品に接する取引者及び需
  要者が、その商品を請求人との間に緊密な営業上の関係にある営業主の業務
  に係る商品であるとともに、被請求人の商品が請求人の「GODZILLA
  (ゴジラ)」の使用許諾を受けたものであると誤認混同するおそれがあるこ
  とは明白である。
   エ 以上のような状況下において、引用商標と類似する本件商標がその指
  定商品に使用されれば、当該商品はあたかも請求人又はその関連会社の関与
  する商品であるかのようにその出所につき誤認・混同を生じさせることは明
  らかである。
   よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
  (3)商標法第4条第1項第19号に関する主張
   ア 商標法第4条第1項第19号は、他人の業務に係る商品等を表示する
  ものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標
  と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものは、商
  標登録を受けることができない旨を規定する。
   イ 引用商標が請求人の周知・著名商標であること及び本件商標が引用商
  標と類似することは、上記(2)のとおりである。
   ウ 商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」とは、図利目
  的、加害目的をはじめとして、取引上の信義則に反するような目的のことを
  いう。
   上記(2)のとおり、引用商標は、請求人の周知・著名商標である。
   また、引用商標は、請求人の創作に係る独創的な商標であるから、請求人
  の出所を表示する標識として極めて強い出所表示力を有している。
   しかも、語頭が「G」ではじまり語尾が「ZILLA」で終了する商標は
  、請求人と被請求人の商標以外に存在しない。
   さらに、被請求人は、ホームページにおいて特撮物を連想させるストーリ
  ー仕立ての動画を多数掲載したり、怪獣を想起させる重機を用いた見学会を
  行っている(甲136~甲138)。
   したがって、請求人の周知・著名商標と類似する本件商標が請求人の周知
  ・著名商標と無関係に採択されたとは到底考えられず、本件商標が「GOD
  ZILLA」の有する顧客吸引力を利用しようとするものであることは容易
  に看取される。

11/
   しかして、本件商標が請求人の商品と無関係の商品に使用されれば、「G
  ODZILLA」のキャラクターに愛情をもって接してきた需要者はこれに
  よって欺かれる結果となり、長年にわたり注意深くそのキャラクター商品の
  品質維持に努めてきた請求人の信用、イメージが大きく損なわれることは見
  易い道理である。
   また、被請求人が請求人の周知・著名商標に化体した信用、名声及び顧客
  吸引力にただ乗り(フリーライド)する意図を有していたことは、被請求人
  が本件商標の他に、「ガリガリ君」及び「STUDIO GABULLI」
  商標を登録出願してきた事実からもうかがえる(甲139~甲142)。
   このような状況下、本件商標が「不正の目的」をもって使用されるもので
  あることは明らかである。
   よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
  (4)商標法第4条第1項第7号に関する主張
   引用商標が請求人の周知・著名な商標及び表示であること、本件商標が請
  求人の周知・著名な商標及び表示と類似すること、並びに被請求人が「GO
  DZILLA」に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーラ
  イド)する不正の目的を有していたことは、上記(3)のとおりである。
   しかして、本件商標は、商標を保護することにより、商標を使用する者の
  業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(
  商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反す
  るものであるから、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、
  その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認
  し得ないというべきである。
   よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
   2 被請求人の答弁に対する弁駁
  (1)引用商標の周知・著名性と本件商標採用の経緯について
   ア 引用商標の周知・著名性について
  (ア)被請求人は答弁書で、被請求人が本件商標の使用を開始した平成6年
  当時において、「ゴジラ」なる片仮名表記は周知・著名であっても、その欧
  文字表記「GODZILLA」(引用商標)はさほど知られてはいなかった
  と主張する。
   本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するか否
  かの判断時は、登録出願時及び査定時であり、同項第7号に該当するか否か
  の判断時は、査定時である(同法第4条第3項)。
   本件商標の登録出願日は平成30年7月25日であるから、引用商標がそ
  の日前から現在に至るまで周知・著名であれば、同法第4条第1項第15号
  、同項19号及び同項7号は適用され得る。
   しかしながら、引用商標が平成6年9月よりも前から請求人の商品又は営
  業の表示として使用され、周知・著名となっていたことは明らかであるから

12/
  、以下この点を敷えんする。
  (イ)引用商標が日本においてはじめて登場したのは、第1作目の映画「ゴ
  ジラ」の海外輸出用に昭和30年に作成されたプロモーション用の海外向け
  ポスター及び宣伝素材である(甲220~甲223)。
   なお、当時「ゴジラ」を海外向けに紹介するため、「ゴジラ」を欧文字で
  表記する必要があったところ、当初は、「Gozilla」という表記が考
  えられていたようである(甲第224号証は、第1作の映画「ゴジラ」の脚
  本等を英語に翻訳した翻訳家の昭和49年3月8日付東京新聞夕刊における
  エッセイである)。その後、正式には「GODZILLA」となり、上述し
  た海外向けポスター等では「GODZILLA」が使用された。
   以後、映画「ゴジラ」シリーズは、国内製作作品では平成28年公開まで
  の29作品が、海外製作作品では令和元年公開まで3作品が製作、公開され
  (甲135)、請求人は、これら作品が封切られるたびに、映画の作品名の
  多くに引用商標を使用するのみならず、ポスターや宣伝素材等においても、
  引用商標を使用して宣伝を行った(甲225)。
  (ウ)また、国内制作作品のうち第1作「ゴジラ」(昭和29年)、第2作
  「ゴジラの逆襲」(昭和30年)、第4作「モスラ対ゴジラ」(昭和39年
  )、第16作「ゴジラ」(昭和59年)、第23作「ゴジラ2000ミレニ
  アム」(平成11年)は、キャストや脚本を海外向けにアレンジした日本国
  外版が制作され、その中でも、第1作「ゴジラ」(昭和29年)の日本国外
  版である「怪獣王ゴジラ(Godzilla, King of the 
  Monsters!)」(昭和31年)は全世界でヒットしたことから(甲
  221、甲220)、日本に逆輸入され、昭和32年には日本でも全国各地
  で劇場公開された(甲226)。この逆輸入版の「怪獣王ゴジラ(Godz
  illa, King of the Monsters!)」にも引用商
  標が使用されており、日本国内では、劇場公開時、全国各地でポスターや宣
  伝素材等において引用商標を使用して大々的な宣伝がなされた(甲220、
  甲221、甲226)。
  (エ)請求人は、「ゴジラ」(「GODZILLA」)シリーズの映画の劇
  場公開後に発売したビデオテープ、レーザーディスク、DVD、BD等のビ
  デオグラム作品においても引用商標を使用してきた。例えば、甲第227号
  証は、平成6年9月よりも前の平成4年に発行されたゴジラ作品に係るビデ
  オグラム(VHSビデオテープ及びレーザーディスク)のカタログであるが
  、当時発売されていたゴジラ作品21タイトル(ビデオテープ版全18タイ
  トル、レーザーディスク版全3タイトル)のほぼ全てに引用商標がそのジャ
  ケット面において使用されている(なお、甲228は、amazon.co
  .jpで「ゴジラ」映画のVHSビデオテープを検索した結果の一部である
  が、甲227に記載されているVHSビデオテープと同一の商品が数点掲載
  されており、VHSビデオテープのジャケット面に引用商標が明瞭に示され

13/
  ている)。
   平成6年9月よりも前に劇場公開された第1作「ゴジラ」から第20作「
  ゴジラVSメカゴジラ」までのビデオグラムの売上数量及び売上金額を合計
  すると、数量にして812,260、金額にして約65億1601万245
  2円となる(甲135の別紙2)。
   また、甲第229号証は、平成6年11月に発売されたレーザーディスク
  「GODZILLA 40th ANNIVERSARY SPECIAL
   BOX ゴジラ生誕40周年記念・特別版」の写真及び付属解説であるが
  、そのタイトルにも引用商標が使用されている。
  (オ)映画「ゴジラ」シリーズを紹介する多数の書籍や雑誌等においても、
  引用商標が使用されてきた(甲231~甲237)。
   例えば、平成6年9月以前において引用商標が使用されていた書籍や雑誌
  は、多数存在する。
   また、「GODZILLA」は、現在日本で発行されている多数の国語辞
  典、英和辞典、和英辞典にも「GODZILLA」の語が掲載されている(
  甲125~129、甲143~153)。
   以上のとおり、引用商標は、請求人の怪獣映画「ゴジラ」シリーズやその
  ビデオグラム作品等に、平成6年9月より前から繰り返し使用されてきたも
  のであるから、平成6年9月よりも前から、請求人の商品又は営業の表示と
  して使用され、周知・著名となっていたことは明らかである。
   イ 「GODZILLA」の識別力について
  (ア)既に述べたとおり、「GODZILLA」の語は造語であり、識別力
  の高い極めて強い出所表示力を有している。このことは、たとえば、特許情
  報プラットフォームで検索したところ、語頭が「G」で始まり語尾が「ZI
  LLA」で終わる商標は、本件商標等の被請求人の商標を除き、請求人の「
  GODZILLA」商標しか存在しないことからも明らかである。
   これに対し、被請求人は、語尾が「ZILLA」で終わる商標をいくつか
  指摘しているが(乙8、乙9)、語頭が「G」で始まり語尾が「ZILLA
  」で終わる商標が他に存在していない以上(このことは、被請求人も争って
  いない。)、「GODZILLA」の識別力が極めて高く、強い出所表示力
  を有していることに変わりはない。
  (イ)被請求人は、本件商標採用の経緯として、「粉砕機等の機能や動作を
  端的に表現する英単語『GUZZLE』」と「GORILLA」を組み合わ
  せたと主張するが、大いに疑問である。そもそも、何故に、英単語「GUZ
  ZLE」が「粉砕機等の機能や動作を端的に表現する」といえるのか、不明
  である。「食う」ことや「飲む」ことは、「粉砕機等の機能や動作」とは関
  係がない。
  (ウ)「GUZZLE」という英単語は、辞書には掲載されているものの、
  高校や大学では通常勉強しない英単語であり、被請求人がこの英単語を想起

14/
  したうえで本件商標を思いついたというのは、疑わしいといわざるをえない
  。
   ちなみに、甲第238号証によれば、英単語「GUZZLE」は、レベル
  1~30のうち、レベル24という極めてレベルの高い英単語である。また
  、甲第238号証によれば、英単語「GORILLA」はレベル5というレ
  ベル24に比して著しく低いレベルであるにもかかわらず、「難関大対策レ
  ベル」とされている。このことからも、レベル24というレベルの高さがう
  かがえよう。
   また、被請求人は、「実在しない想像上のキャラクターである『怪獣』の
  名称としては、『濁音』や『ラ』がつくものが多いことは周知の事実である
  (乙6)架空の怪獣キャラクターにおける『濁音』や『ラ』を伴う3文字か
  らなる名称は、もはや人口にかいしゃ(膾炙)した、ありふれたパターンの
  名称であると考えられる」と主張する。
   しかしながら、そもそも、怪獣キャラクターに「濁音」や「ラ」のつくも
  のが多いにしても、語頭音が「ガ」行で、「ジラ」と続く怪獣キャラクター
  は「ゴジラ」しか存在しないし、「ゴジラ」ほど著名な怪獣キャラクターは
  存在しない。引用商標の周知・著名性と独創性の高さを勘案すれば、本件商
  標が怪獣キャラクターであると認識されれば、それは、引用商標と混同する
  おそれが高い。
   被請求人は、「本件商標は、被請求人が製造・販売する破砕機や切断機な
  ど土木建設機械のアタッチメントの自他識別標識として、遅くとも平成6年
  9月頃から使用されてきた」と主張し、乙第2号証ないし乙第5号証を提出
  するが、たとえば、乙第2号証をみても、これが、当時撮影されものか、不
  明である。
   また、乙第3号証の発行日は不明であり、乙第3号証の表紙に記載された
  発行元は、被請求人ではなく、「ユタニ工業株式会社」である。
   さらにいえば、平成6年の前年の平成5年12月11日には、「ゴジラ」
  シリーズの20作目が公開されており、その当時で既に8千万人を超える観
  客動員数に達していたことや(甲9)上記(1)で説明した事実に鑑みれば
  、平成6年9月時点において、「GODZILLA」の周知・著名性は顕著
  であった。
   ウ 本件商標採用の経緯について
   このような引用商標の周知・著名性を考えると、被請求人による本件商標
  採用の経緯として、「粉砕機等の機能や動作」である建築物等の破壊をイメ
  ージさせる「GODZILLA」の存在があったと推察することは極めて自
  然である。
  (2)本件商標と引用商標の類似性について
   ア 本件商標のデザインについて
   被請求人は、本件商標のデザイン上の特徴を主張しているが、甲第132

15/
  号証、甲第239号証ないし甲第245号証を見れば明らかなとおり、そも
  そも、被請求人は、このような態様で本件商標を使用していない。
   また、近時、商品の広告、宣伝等において、商標の全部もしくは一部を図
  案化して、独自性をアピールするなど、各種のレタリング文字が使用されて
  おり、文字のレタリングの技法においても、様々な技法が考案され、被請求
  人が答弁書において主張した上記デザイン処理程度のことは、一般に行われ
  ているところである。本件商標は一見して「GUZZILLA」の文字を書
  したものと容易に理解されるものであって、外観上、特殊な態様で表されて
  いるものとはいえない。
   イ 外観上の類似性について
   被請求人は、「本件商標における第2文字目『U』と第3文字目『Z』は
  各文字の上端が連続しているというデザイン上の特徴があるうえ、当該第2
  文字目(これは、第3文字目の誤記であると思われる。)『Z』とこれに続
  く第4文字目『Z』の両文字は、それらの左下端がともに鋭く前下方に突尖
  しているというデザイン上の特徴があるために、本件商標の中間部分にある
  『ZZ』の文字部分が顕著に目立っており、常に看者の目を強く惹きつける
  ことは明らかである」と主張しているが、被請求人は、このような態様で本
  件商標を使用していないし、また、本件商標に施された程度のデザイン上の
  処理は一般に行われているものにすぎず、ありふれたデザイン処理にすぎな
  い。
   さらに、被請求人は、語尾が「ZILLA」で終わる商標をいくつか指摘
  しているが(乙8)、語頭が「G」で始まり語尾が「ZILLA」で終わる
  商標が他に存在していない以上(このことは、被請求人も争っていない。)
  、「GODZILLA」の識別力が極めて高く、強い出所表示力を有してい
  ることに変わりはない。
   特に、商標を外観上区別する上で語頭の文字は強く印象に残り、極めて重
  要な構成要素となる。
   したがって、語尾が「ZILLA」で終わる商標が本件商標以外にも複数
  存在している事実は、本件商標と引用商標が外観上類似することを否定する
  根拠とはならない。
   上記1の請求の理由で述べたとおり、本件商標と引用商標はともに8文字
  からなり、看者にとって印象の薄い、商標の中間部である第2文字目及び第
  3文字目が異なるにすぎず、その他の6文字を共通にし、外観上強く印象に
  残る語頭の「G」と請求人の表示として特徴的な「ZILLA」の文字を共
  通にする。さらに、本件商標の欧文字部分における「U」の文字の上の開い
  た部分の右側は「Z」の文字と連続しており、また、「U」の文字の上の開
  いた部分の間隔は小さいため、「O」の文字と見誤るおそれがある。
   しかも、本件商標の実際の使用態様に着目すると、この間隔はさらに小さ
  く見え、「O」の文字と見誤るおそれがより一層高い。

16/
   また、被請求人は、「GOD」なる部分が引用商標の要部であると主張す
  るが、引用商標は、全ての文字が同書・同大・同間隔で表示されており、し
  かも、わずか3音からなるものであってよどみなく一連に称呼し得るのであ
  るから、全体として一つの商標である。
   したがって、引用商標につき、要部観察や分離観察がなされることはない
  。
   以上述べた理由により、本件商標が外観上引用商標と類似することは明白
  である。
   ウ 称呼上の類似性について
  (ア)被請求人は、引用商標はイギリス英語では「ゴ」と発音されること、
  映画「シン・ゴジラ」でも1名の俳優を除いて日本人は「ゴジラ」と発音し
  ていること、海外映画「GODZILLA ゴジラ」において日本人の俳優
  は「ゴジラ」と発音していること、海外映画「GODZILLA KING
   OF THE MONSTERS」でも「ゴジラ」と発音される台詞が出
  てくること、原告は「ゴジラ」と「GODZILLA」の二段書きからなる
  登録商標を多数有していること、などを挙げて、引用商標は「ゴジラ」と称
  呼されるのが自然であると主張する。
   しかしながら、引用商標は欧文字であり、かつ、英和辞典に掲載されてい
  る英単語であるから(甲126~129、甲143~149)、原則として
  、英語の発音で称呼されるべきである。
   また、一般に欧文字の造語商標が英語風に無理なく発音し得る場合には、
  日本人に最もなじみのある英語読み又はローマ字読みによってその称呼が特
  定される。
  (イ)被請求人の主張するとおり、イギリス英語における発音とアメリカ英
  語における発音は異なっているが、少なくともアメリカ英語では引用商標は
  「ゴ」と「ガ」の中間音として称呼され得るのであるから、本件商標と称呼
  を対比するに際し、アメリカ英語における称呼を考慮することには何らの問
  題もない。さらに、請求人が「ゴジラ」と「GODZILLA」の二段書き
  からなる登録商標を有していたとしても、二段書きの上下の文字が同一に称
  呼されなければならないとする根拠はない。2以上の自然な称呼を有する文
  字商標は、その一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の称
  呼も生ずるからである。
  (ウ)したがって、本件商標は、引用商標と称呼上類似する。
  (3)商標法第4条第1項第15号について
   ア 被請求人は、「請求人は、ゴジラ・キャラクターの独占的な使用及び
  使用許諾について縷々主張しているが、キャラクターは著作権法による保護
  の対象となる場合があるものであって、必ずしも特定の商品又は役務につい
  て、特定の出所を表示する商標や商品等表示に該当するものではなく、商品
  化権使用許諾契約(例えば、甲93)といっても、商品等表示の使用に関す

17/
  るライセンス契約ではない可能性が高い(甲93『東宝怪獣キャラクター』
  商品化権使用許諾契約書の第1条においても『著作物』の使用を許諾する旨
  を規定している)」と主張するが、甲第93号証の第1条で定義されている
  「著作物」とは別紙(3)記載のキャラクターの名称を含むものであるから
  (別紙(3)のキャラクターの名称には、「ゴジラ(GODZILLA)」
  も含まれる。)、当該名称が商品等表示として機能し得ることは明白である
  。
   また、実際に引用商標が商品に使用されている(甲74、甲92)。
   よって、被請求人の上記主張は失当である。
   イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
   上記(2)のとおり、本件商標は引用商標と類似する。
   ウ 引用商標の周知・著名性及び創作性の程度
   既に述べたとおり、引用商標は、本件商標の登録出願日のはるか前から現
  在に至るまで周知・著名である。
   また、引用商標は、請求人の怪獣映画「ゴジラ」シリーズやそのビデオグ
  ラム作品等に、被請求人が本件商標の使用を開始したと主張する平成6年9
  月より前から繰り返し使用されてきたものであるから、平成6年9月よりも
  前から、請求人の商品又は営業の表示として使用され、周知著名となってい
  たことも明白である。
   さらに、引用商標は造語であるから、創作性の程度は極めて高い。
   エ 商品の関連性の程度
   被請求人は、「本件商標の指定商品・・・は、専門的な分野において使用
  される特殊な機械器具であって、映画やそのキャラクターに基づき引用商標
  が展開される玩具・菓子・文房具といった日用品的な商品群(甲83~甲1
  00)とは、商品自体の目的・用途・性格等の性質が全く異なる無関係な商
  品であるうえに、そもそも商品化事業は、漫画や映画等のキャラクターの顧
  客吸引力を利用して経済的利益を得るものであるところ、本件商標が使用さ
  れている破砕機等のアタッチメントでは、製品仕様の異なる各メーカーの重
  機であっても問題なく適合して使用できることを大前提として、機械そのも
  のの性能や品質が問題とされるのであるから、同種商品においてキャラクタ
  ーが付いている商品の方が需要者の購買意欲が増す(キャラクターの顧客吸
  引力が付加価値として評価される)という性格の商品ではない」と主張する
  。
   しかしながら、商品化事業やタイアップ、使用許諾等は、キャラクターの
  持つ顧客吸引力により、製品を広く周知させたり、製品イメージの向上を目
  的としてなされるものである。この結果、需要者の購買意欲を増大又は刺激
  することができる。
   既に述べたとおり、産廃業者や解体業者は、「建造物の破壊」という「G
  ODZILLA」の持つイメージを利用し、タイアップ、使用許諾を得てき

18/
  たのである。
   したがって、被請求人の上記主張は誤りである。 
   オ 取引者及び需要者の共通性
   被請求人は、本件商標の指定商品の需要者は産業機械分野の業務に従事す
  る者であり、その取引者は産業機械器具の製造販売やリース等を行う者であ
  ることから、本件商標に係る指定商品と引用商標が展開され得る商品群とは
  、需要者、取引者が全く相違する旨主張する。
   しかしながら、既に述べたとおり、本件商標の指定商品のような建設機械
  及びその部品・附属品は、中古販売やレンタルされている実情がある(甲1
  68、甲188~甲193)。1日のレンタルであれば、数千円からと低額
  でレンタル可能であり、しかも、いわゆる建築関係の企業のみならず、個人
  業者でもレンタルすることが可能である(甲188、甲189)。甲第19
  0号証ないし甲第193号証に示すとおり、本件商標の商標権者の商品も、
  中古販売やレンタルされている。請求人の商品・役務の需要者は、年齢、性
  別、職種等を問わず、あらゆる分野の広汎な一般消費者であるから、その中
  には、本件商標の指定商品に接する取引者及び需要者も当然含まれる。
   また、請求人が、ゴジラシリーズの映画に関しタイアップや使用許諾を与
  えてきた、産廃業者、解体業者等の分野で使用される機械器具の需要者は、
  産業機械器具を購入・リース・レンタル等によりこれを調達し、使用する者
  である。
   したがって、本件商標の指定商品の需要者及び取引者の中には、請求人の
  業務に係る商品及び役務の取引者及び需要者と共通する者が含まれる。
   カ 小括
   以上より、引用商標と類似する本件商標がその指定商品に使用されれば、
  当該商品はあたかも請求人の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあ
  るのみならず、請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業
  上の関係又は商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に
  係る商品であると誤信されるおそれがあることは明白である。
   キ イメージの共通性
   被請求人は、「破砕機など重機のアタッチメントに使用される本件商標と
  、映画や巨大怪獣を表示する引用商標においては、イメージの共通性など一
  切ないのである。」と主張するが、根拠がない。
   本件商標は、引用商標の有する建造物等の破壊というイメージを利用して
  いるのである。もし、イメージの共通性がないとすれば、破砕機を、建造物
  等を破壊する怪獣に見立てたりしないし、「架空の怪獣キャラクター名称と
  してありがちなパターンの『濁音』や『ラ』を伴う3文字からなる語」を選
  択しようとはしないはずである。
   ク 広義の混同
   被請求人は、「請求人が映画『シン・ゴジラ』の広報にあたりタイアップ

19/
  したという産廃業者クリーンシステムのCMにおいては、引用商標が使用さ
  れているものではないうえ、怪獣ゴジラの登場場面には『建物の解体は』『
  ただ壊すだけじゃ/ダメ!!』という文字が表示され、銃器の登場場面には
  『丁寧・きれい/“リサイクル型解体”』という文字が表示されており、両
  者は対極のイメージとして表現されている」と主張するが、引用商標の有す
  るイメージと産廃業者クリーンシステムが行う業務が有するイメージは、建
  造物等の破壊という点で共通するものである。引用商標は建造物等の破壊を
  伴う業務を行う企業に対しても、現実にタイアップや使用許諾がなされてい
  るのであるから、本件商標がその指定商品に使用されれば、少なくともいわ
  ゆる広義の混同を生じさせるおそれがあることは明白である。
   被請求人は、請求人が業務用商品である「塗装機械器具」について使用許
  諾を求められた事実に関し(甲194)、「『塗装機械器具』は、本件商標
  の指定商品である『パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等
  のアタッチメント』とはまったく異なる」と主張するが、本件商標の指定商
  品も「塗装機械器具」も、いわゆる産業用の機械器具である。当該事実は、
  被請求人が産業用の機械器具を製造販売する企業とタイアップしたり、使用
  許諾を与える可能性を証明し、いわゆる広義の混同を生じさせるおそれのあ
  る業務範囲が広いことを指摘したものである。
   また、被請求人は、ゴジラシリーズの映画に関する様々な業種の企業との
  タイアップや使用許諾に関し、必ずしも引用商標の使用がなされているもの
  ではないうえ、タイアップにおけるキャラクターの使用は、必ずしもキャラ
  クターが使用されている商品又は役務の出所を表示する商標としての使用で
  はない旨及び請求人がタイアップ、使用許諾してきた企業は、産廃業や解体
  業等といった役務を提供する事業者なのであり、本件商標の指定商品とは全
  く異なる旨主張するが、タイアップにおいても引用商標は商標として使用さ
  れているものと考えるが、そもそも引用商標が厳密な意味で商標として使用
  されているかどうかは、商標法第4条第1項第15号の適用要件ではない。
   さらに、産廃業者や解体業者の役務は、本件商標の指定商品を用いて行わ
  れるものであるから、これらは極めて密接な関連を有する。つまり、引用商
  標そのものを連想・想起させるゴジラシリーズの映画に関し、本件商標の指
  定商品が使用される産廃業者や解体業者にタイアップや使用許諾がなされて
  きたという事実は、本件商標がその指定商品に使用されれば、少なくともい
  わゆる広義の混同を生じさせるおそれがあるのである。
   したがって、被請求人の主張は失当である。
   ケ 引用商標へのただ乗り(フリーライド)及び引用商標の希釈化(ダイ
  リューション)について
   請求人は縷々述べて、本件商標が引用商標の持つ顧客吸引力にただ乗り(
  フリーライド)等したものではない旨主張するが、既に述べたとおり、引用
  商標は、請求人の怪獣映画「ゴジラ」シリーズやそのビデオグラム作品等に

20/
  、被請求人が本件商標の使用を開始したと主張する平成6年9月より前から
  繰り返し使用されてきたものであるから、平成6年9月よりも前から、請求
  人の商品又は営業の表示として使用され、周知・著名となっていたことは明
  白である。
   また、「SUPER GUZZILA」及び「SPACE GUZZIL
  A」の使用経緯について広告代理店からの提案を受けたものであって、いさ
  さかもやましい意図はない旨主張するが、最終的にこれらの採択を決断した
  のは被請求人なのであるから、何ら正当化されるものではない。
   さらに、「ガリガリ君」及び「STUDIO GABULLI」について
  も、商標登録の経緯如何に係わらず、被請求人がこのような商標登録を複数
  保有していること自体が、他社の周知・著名商標が有する顧客吸引力にただ
  乗り(フリーライド)する意図を有していたことの証左である。
  (4)商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について
   ア 引用商標の周知・著名性、本件商標と引用商標の類似性及び本件商標
  採用の経緯等を考慮すれば、被請求人にただ乗り(フリーライド)の意図が
  存在することは明らかである。
   イ 被請求人による他の登録出願について
   請求の理由で述べたとおり、被請求人が引用商標に化体した信用、名声及
  び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する意図を有していたことは、被
  請求人が本件商標の他に、「ガリガリ君」や「STUDIO GABULL
  I」などの商標を登録出願してきた事実からもうかがえる(甲139~甲1
  42)。
   被請求人が上記の商標を登録出願し、登録してきたという事実は、引用商
  標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する意
  図を有していたことを支持するものである。
   ウ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に
  該当する。
   3 むすび
   以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第19号
  及び同項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから
  、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。

  第3 被請求人の主張
   被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とす
  る、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書(以下「答弁書」という。
  )及び審判事件上申書(以下「上申書」という。)により、要旨次のように
  述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第84号証(枝番を含む。以下
  、証拠において、全ての枝番を示す場合は、枝番を省略する。)を提出した
  。

21/
   1 答弁の理由
  (1)本件商標について
   本件商標は、別掲のとおりの構成よりなり、その各構成文字が、同じ太さ
  と大きさをもって別掲のとおりデザイン化された本件商標は、外観上まとま
  りよく一体的に表されたものである。
   しかし、「GUZZILLA」なる欧文字つづりについては、これが英和
  辞典等に掲載されている成語ではないから、いわゆる造語として理解され認
  識されるため、本来的には当該構成文字から何らかの観念が生ずるものでは
  ない。
   そして、称呼については、欧文字つづりの場合はローマ字読みがなされる
  という我が国の慣習からすれば、「グジラ」といった発音がなされるとも考
  えられるものの、本件商標と同じ欧文字と「ガジラ」なる片仮名を上下二段
  書きした被請求人の登録商標(乙1)の存在や、被請求人が永年にわたって
  本件商標と併用してきた片仮名表記「ガジラ」によって、主として「ガジラ
  」なる称呼が生じると考えるのが自然である。
   すなわち、本件商標は、被請求人が製造・販売する破砕機や切断機など土
  木建設機械のアタッチメントの自他識別標識として、遅くとも平成6年9月
  頃から使用されてきたものである(乙2~乙5)。
   そして、破砕機等の機能や動作を端的に表現する英単語「GUZZLE」
  (「~をガツガツ食う。~をガブガブ飲む」の意)と、力強い動物の代表例
  である「ゴリラ」(英単語では「GORILLA」)を組み合わせた語とし
  て被請求人により創作された造語である。
   しかるに、本件商標「GUZZILLA」を「ガジラ」と称呼し、また本
  件商標とともに片仮名表記の「ガジラ」を併用しているのは、その語源とし
  た上記英単語の「GUZZLE」が「~をガツガツ食う、~をガブガブ飲む
  」の意味であるうえに、日本語では「ガズル」と発音されることに由来して
  いるのである。
   ここで、語源とした英単語「GUZZLE」につき、請求人からは関連知
  財高裁判決の審決取消訴訟等において「極めてレベルの高い英単語であるか
  ら、被告がこの英単語を想起したうえで本件商標を思いついたというのは、
  疑わしい」などと主張されているが、建設現場において破砕機が動作してい
  る様は、あたかも巨大なマシーンが一種の生き物であるかのようにガツガツ
  食ったり飲み込んだりしているように見えるものであり、こうした破砕機の
  動作から連想する適当な言葉を探す際に、まずは最も手近な参考資料である
  和英辞典等に当たることは新しいネーミングの選定手順における基本的知識
  なのであるから、レベルの高低に関わらず、適当な英単語を語源としてネー
  ミングを行うこと自体、何ら不自然なことではない。
   また、実在しない想像上のキャラクターである「怪獣」の名称としては、
  「濁音」や「ラ」がつくものが多いことは周知の事実である(乙6)。

22/
   さらに、語尾が「ZILLA」で終わる商標は、引用商標や本件商標以外
  にも日本国内において複数存在しているし(乙8)、請求人が発音を問題と
  している米国においては200件を超える商標があり、そのなかには語頭が
  「G」で始まり語尾が「ZILLA」で終わる商標も多数存在している(乙
  9)。
   したがって、架空の怪獣キャラクターにおける「濁音」や「ラ」を伴う3
  文字からなる名称は、もはや人口にかいしゃ(膾炙)した、ありふれたパタ
  ーンの名称であると考えられるし、語尾の「ZILLA」は、「爬虫類ある
  いは大きなもの」を連想させ、辞書の記載によれば「~ジラ、巨大怪獣のよ
  うな~」の意味の接尾辞として使われるものであるというのである(乙10
  )から、「ガジラ」の称呼が生じる本件商標「GUZZILLA」もまた、
  言葉本来としては、せいぜいそうした空想上のキャラクター名称の一つと認
  識されるにとどまるものである。
   そして、本件商標は、被請求人によって、その製造販売する破砕機(重機
  用アタッチメント)につき、遅くとも平成6年9月頃から現在に至るまで継
  続的に使用されてきたものであるが、同23年3月7日にはフジテレビ系全
  国放送の人気番組「ほこ×たて」にて紹介され、盗難防止目的用の特殊合金
  のチェーンとの対決においては、ナレーターから「どんな物でも切れる最強
  カッター『ガジラカッター』」と連呼されて話題となった。
   その後も平成23年12月18日全国放送の「ほこ×たて2時間スペシャ
  ル」における「絶対に切断できないワイヤーロープ」との対決、同24年9
  月23日全国放送の「ほこ×たて永久保存版3時間スペシャル」における「
  最強の鉄球」との破壊王決定戦が話題を呼んだ(乙11~乙17)。
   また、上記テレビ番組「ほこ×たて」中においても紹介されたように、被
  請求人の破砕機(重機用アタッチメント)は子供向けの書籍にも掲載されて
  いる(乙16、乙17)。
   また、被請求人の破砕機(重機用アタッチメント)は、その性能やデザイ
  ンも高く評価されており、日本を代表する大手工作機械メーカーのコミュニ
  ケーション誌の表紙を飾って製品が紹介されたり(乙18)、4,789件
  の応募作のなかから平成30年度グッドデザイン・ベスト100賞及び特別
  賞「グッドフォーカス賞〔技術・伝承デザイン〕」を受賞したりした(乙1
  9)。このグッドデザイン賞では、審査員から「油圧ショベルの先端に取り
  付けるだけで、鉄骨などを切断、圧砕するカッターになるアタッチメントで
  ある。構造力学から生まれた姿がとても美しく、まるでティラノサウルスの
  頭部のようだ。存在感もあり、圧倒的な破壊力を実現した。脅威すら感じる
  デザインといえる。」との高い評価を受けており、その受賞は、建機業界で
  も大いに話題となっている(乙20~乙23)。
   その他、被請求人は、建機レンタル業界最大手のレンタル総合カタログへ
  の広告掲載(乙24)や一般新聞紙への広告掲載(乙25)を行うなど、被

23/
  請求人製品の広告宣伝にも務めており、後述するように、被請求人が広告宣
  伝用として製作したロボット型の作業用重機「スーパーガジラ(SUPER
   GUZZILLA)」や、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発
  機構)の宇宙探査プロジェクトの研究テーマとして応募した超軽量建機アタ
  ッチメントの開発事業「スペースガジラ(SUPACE GUZZILLA
  )」の話題性もあって、遅くとも本件商標の登録がなされた令和元年5月1
  0日において被請求人は岡山県の技術開発企業としても大いに注目されてい
  たのであり(乙26、乙27)、本件商標「GUZZILLA」もまた、被
  請求人を代表する破砕機(重機用アタッチメント)の商品名称「ガジラ」の
  欧文字表記として広く知られていたのである。
  (2)引用商標について
   ア 商標としての周知・著名性
   請求人は、その制作等に係る映画「ゴジラ」や、その主役として登場する
  想像上のキャラクター怪獣の名称「ゴジラ」の欧文字表記「GODZILL
  A」が同人の表示すなわち引用商標であるとし、この引用商標が、請求人の
  表示として周知・著名であると主張して、多数の書証を提出している。
   映画「ゴジラ」や怪獣「ゴジラ」の著名性については、被請求人としても
  争うものではなく、また、映画や怪獣「ゴジラ」の欧文字表記として「GO
  DZILLA」が長年使用されてきた事実については、特に争う意思はない
  。ただ、果たして映画や怪獣「ゴジラ」を知る人の全てが、これに対応した
  欧文字表記を書けといわれたときに「GODZILLA」と正確に答えられ
  るかとなると、疑問を禁じ得ない。
   事実、請求人の映画「ゴジラ」は、国内29作品、海外2作品あるとされ
  ているところ(甲9の別紙1)、その国内作品の公開当時の状況を反映して
  いる映画ポスター(甲55)によれば、第3作目(昭和37年)「キングゴ
  ング対ゴジラ」と第4作目(昭和39年)「モスラ対ゴジラ」、第16作目
  (昭和59年)「ゴジラ」、第19作目(平成4年)「ゴジラ対モスラ」そ
  して第28作目(平成16年)「ゴジラファイナルウォーズ」のわずかに5
  作品しか「GODZILLA」の欧文字表記は使用されていない(しかも前
  4作品においては、欧文字表記は小さくて目立たない。)。残る国内24作
  品においては「ゴジラ」の片仮名表記しか使用されていないのである。
   しかも、海外2作品のうち平成26年に公開されたものでは、欧文字表記
  「GODZILLA」だけでなく、わざわざ片仮名「ゴジラ」が併記されて
  いる。
   イ 称呼
   引用商標の発音につき、請求人は、その発音記号から語頭音は「ゴ」と「
  ガ」の中間の音として称呼されると主張しているが、これはアメリカ英語の
  発音であって、イギリス英語の発音記号では、「ゴ」と明瞭に発音される(
  乙29)。

24/
   映画や怪獣「ゴジラ」に慣れ親しんでいる日本人にとっては、引用商標が
  外国人にどのように発音されようとも、やはり「ゴジラ」なのであって、日
  本語らしく1音1音明瞭に「ゴジラ」と称呼されるのが自然である。
   よって、上記事実からすれば、引用商標から生じる称呼は、「ゴジラ」で
  あることは明らかである。
  (3)本件商標と引用商標との類否
   請求人の映画等において使用されている引用商標の具体的な文字態様(デ
  ザイン)は多種様々であって、一の使用態様を特定することはできないので
  あるが、請求人の主張全体を通じて、請求人は、標準的な文字書体による「
  GODZILLA」をもって本件商標と対比していると考えられるので、以
  下は、その前提において比較検討する。
   ア 外観について
   本件商標と引用商標とは、ともに欧文字8文字から構成される点において
  共通しているが、第2文字目「U」と「O」、第3文字目「Z」と「D」の
  2文字において相違している。
   請求人は、これら相違する文字は看者にとって印象が薄いと主張するが、
  本件商標における第2文字目「U」と第3文字目「Z」は各文字の上端が連
  続しているというデザイン上の特徴があるうえ、当該第2文字目「Z」とこ
  れに続く第4文字目「Z」の両文字は、それらの左下端がともに鋭く前下方
  に突尖しているというデザイン上の特徴があるために、本件商標の中間部分
  にある「ZZ」の文字部分が顕著に目立っており、常に看者の目を強く惹き
  つけることは明らかであるから、当該「ZZ」の文字部分を分離して引用商
  標との類否判断をすることは許されない。
   また、請求人は、引用商標のスペリングについては諸説あると述べる一方
  で、後半部分に「ZILLA」の表記を用いた点に特徴を有していると主張
  する。
   そうであれば、前半部分「GOD」は、やはり神を意味する語として入れ
  られたものであろうし、その「GOD」が我が国においても広く習熟された
  英単語であるゆえに、看者においても容易にその英単語の存在を認識できる
  はずである。まして、語尾が「ZILLA」で終わる商標は、本件商標以外
  にも複数存在しているのである(乙8、乙9)。語頭が「G」で始まり、語
  尾が「ZILLA」で終わる商標は他にはないとする請求人の主張は、単に
  現時点における日本の商標登録・出願状況がそうであることを敷えんしてい
  るにすぎないから、上記外観上の相違を凌駕するような事実ではない。
   しかも、上記のように、「ZILLA」なる語は昭和29年の日本映画に
  登場した空想上の怪獣「ゴジラ(GODZILLA)」からの逆成であり、
  「~ジラ、巨大怪獣のような~」の意味の接尾辞として使われるものであっ
  て、ソフトウェアの語尾としても用いられ、その場合は「他製品を圧倒する
  、良い意味の怪物」などのニュアンスがあるものである(乙10の2)。

25/
   引用商標は造語であって、日本語の「ゴジラ」を英語表記するのであれば
  、請求人が主張するように、「GOZIRA」や「GOJIRA」と表記さ
  れるのが自然であるところ、「JI」の発音がアメリカ人には難しいため、
  神を意味する「GOD」を入れたとの説があるというのである(甲8)。
   以上述べたことからすれば、「ZILLA」なる語は、「~ジラ、巨大怪
  獣のような~」の意味の接尾辞として使われる場合や、これを単独で用いる
  ことによって日本のゴジラとは別の怪獣を意味する場合がある。
   また、「GODZILLA」なる造語は神を意味する「GOD」を入れた
  ことに特徴があるというのであるから、「GOD」なる文字部分が、引用商
  標の要部であると認められる。
   結局、本件商標と引用商標を対比観察した際に外観上強く印象に残るのは
  、本件商標における上記デザイン上の特徴なのであるから、請求人による映
  画やライセンス品において、こうしたデザイン上の特徴を有した商標の使用
  例が全く見られない以上、本件商標と引用商標は、外観上明確に区別するこ
  とができる。
   イ 称呼について
   既に述べたように、本件商標は、被請求人が永年、本件商標と併用してき
  て、今や被請求人が製造販売する重機用アタッチメントの名称「ガジラ」と
  して広く知られていることからすれば、やはり「ガジラ」なる称呼が生ずる
  と考えるのが自然であるのに対して、引用商標からは「ゴジラ」の称呼が生
  じると考えるのが自然であるから、両商標は、語頭の「ガ」と「ゴ」の1音
  において相違し、残る「ジラ」の2音において共通することになる。
   したがって、わずか3音で構成される短い称呼において、日本語としての
  発音されるときには強く高いアクセントが置かれる傾向がある語頭音におい
  て、「ガ」と「ゴ」の濁音の相違があることによって、本件商標と引用商標
  は、称呼上も明瞭に聴別することができる。
   ウ 観念について
   引用商標及び「ゴジラ」よりは、周知・著名な映画「ゴジラ」や、その主
  人公で架空の生物たる怪獣のキャラクターを連想することには疑問の余地が
  ない。
   他方、本件商標は、いわゆる造語として理解され認識されるために、本来
  的には当該構成文字から何らかの観念が生ずるとはいえない(ただし、少な
  くとも解体工事業者を中心とする一部の建築土木機械分野においては、広く
  知られた商標であることを否定するものではない。)。
   よって、特定の観念が生じない本件商標については、その観念を比較する
  ことができないから、本件商標と引用商標は、観念上において相違している
  。
  (4)商標法第4条第1項第15号の該当性について商標法第4条第1項第
  15号における『混同を生ずるおそれ』の有無の判断につき、最高裁判決(

26/
  最高裁平成10年(行ヒ)第85号)では、
   ア 当該商標と他人の表示との類似性の程度、
   イ 他人の表示の周知著名性及び創作性の程度、
   ウ 当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途
  又は目的における関連性の程度並びに
   エ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、
   オ 当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注
  意力を基準として、
   カ 総合的に判断されるべきであると判示されている。
   仮に、引用商標につき、創作性が高く、かつ、周知著名商標であるからと
  いって、本件商標がその指定商品に使用されたときにまで、請求人の業務に
  係る商品等と混同を生ずるおそれがあるわけではない。
   なお、請求人は、ゴジラ・キャラクターの独占的な使用及び使用許諾につ
  いて縷々主張しているが、キャラクターは著作権法による保護の対象となる
  場合があるものであって、必ずしも特定の商品又は役務について、特定の出
  所を表示する商標や商品等表示に該当するものではなく、商品化権使用許諾
  契約(甲93)といっても、商品等表示の使用に関するライセンス契約では
  ない可能性が高い(甲93:「東宝怪獣キャラクター」商品化権使用許諾契
  約書の第1条においても、「著作物」の使用を許諾する旨を規定している。
  )。
   キ 本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、観念上のみならず、
  外観上及び称呼上においても明瞭に区別することができる、相互に非類似の
  商標である。
   ク 本件商標の指定商品たる第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機
  ・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」は、専門的な分野において使用され
  る特殊な機械器具装置であって、映画やそのキャラクターに基づき引用商標
  が展開される玩具・菓子・文房具といった日用品的な商品群(甲83~甲1
  00)とは、商品自体の目的・用途・性格等の性質が全く異なる無関係な商
  品であるうえに、そもそも商品化事業は、漫画や映画等のキャラクターの顧
  客吸引力を利用して経済的利益を得るものであるところ、本件商標が使用さ
  れている破砕機等のアタッチメントでは、製品仕様の異なる各メーカーの重
  機であっても問題なく適合して使用できることを大前提として、機械そのも
  のの性能や品質が問題とされるのであるから、同種商品においてキャラクタ
  ーが付いている商品の方が需要者の購買意欲が増す(キャラクターの顧客吸
  引力が付加価値として評価される)という性格の商品ではない。
   ケ 本件商標に係る指定商品と、引用商標が展開されうる商品群とは、需
  要者、取引者が全く相違しているほか、機械器具装置としての特殊性から一
  般に商品単価が極端に高額であるため(ちなみに、被請求人の製造販売する
  破砕機は、1機当たり200万円から2,200万円程度である。乙34)

27/
  、商品取引に際しては事前見積書が必須とされ、同等他社製品と性能等を慎
  重に比較吟味されるのが通例であるが、引用商標の使用が想定される商品群
  においてはそのような特質は見られないのである。
   コ 以上を総合的に判断すると、本件商標をその指定商品に使用したとき
  に、当該商品等が他人たる請求人の業務に係る商品等と誤信されるおそれが
  ないことはいうをまたないし、当該商品等が請求人との間において緊密な営
  業上の関係等にあるかのように誤信されるおそれもないのである。
   なお、請求人は、自らにつき映画の制作・配給・上映等を主たる業務とす
  る我が国の代表的な企業であるから、請求人の商品及び役務の需要者は、年
  齢、性別、職種等を問わず、あらゆる分野の広範な一般消費者であって、そ
  の中には建築・土木従事者も当然含まれていると主張しているが、架空のキ
  ャラクター怪獣に関心を抱く需要者層と、専門技術性の高い機械器具のユー
  ザーとしての需要者層が一致しているとは到底考えられない。
   もとより、多角経営を行なっているとはいえ、請求人の事業内容は、映画
  ・演劇の企画、制作及び制作の請負等や、土地及び建物の賃貸、管理、売買
  及びこれらの仲介並びに駐車場の経営(甲159)であるというのであるか
  ら、本件商標の指定商品に係る専門性の高い重機のアタッチメントの製造・
  販売業とは無関係な事業分野である。
   したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合においても、使用
  した商品の出所について、請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何ら
  かの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所に
  ついて混同を生ずるおそれはないから、本件商標「GUZZILLA」は、
  商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではない。
   サ ところで、請求人は、建設機械及びその部品・附属品は、中古販売や
  レンタルされている実情があり(甲168、甲188~甲193)、1日の
  レンタルであれば数千円からと低額でレンタル可能であり、しかも、いわゆ
  る建築関係の企業のみならず、個人業者でもレンタルすることが可能である
  と主張しているが、個人事業者は一般消費者ではないうえ、建設機械の部品
  ・附属品については、建設機械本体を有していることが前提であり、一般消
  費者が需要者になるものではなく、請求人の主張は失当である。
   特に、建設機械といっても、パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機
  ・穿孔機等は、いわゆる重機・(重工業や建築・土木などで用いる重量のあ
  る大きな機械)であって、一般消費者が需要者となるものではない。
   また、請求人は、業務用商品である「塗装機械器具」について使用許諾を
  求められた事実もあり(甲194)、請求人の商標が消費財のみならず、生
  産財にも使用許諾される可能性がある旨主張しているが、「塗装機械器具」
  は、本件商標の指定商品である「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み
  機・穿孔機等のアタッチメント」とはまったく異なるものであるから、請求
  人の主張は失当である。

28/
   さらに、請求人は、ゴジラシリーズの映画に関し、様々な業種の企業とタ
  イアップ、使用許諾をしてきた実績があると主張しているが(甲195~甲
  212)、必ずしも引用商標の使用がなされているものではないうえ、タイ
  アップにおけるキャラクターの使用は、映画のタイトル表示等として映画の
  宣伝広告になるとしても、必ずしもキャラクターが使用されている商品又は
  役務の出所を表示する商標としての使用ではないし、請求人が主張する企業
  とは、産廃業者、解体業者、コンクリート圧送工事、給排水工事、防水工事
  等の業者、産廃処理業者、産業廃棄物処理業者といった役務を提供する事業
  者なのであり、本件商標の指定商品である「パワーショベル用の破砕機・切
  断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」とはまったく異なるものである
  から、請求人の主張は失当である。
   加えて、請求人は、被請求人がハンドカッターにも本件商標を使用してい
  ると主張し(甲216~甲218)、ハンドカッターは広範囲の需要者を想
  定した商品である旨を主張しているが、本件商標の指定商品である「パワー
  ショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」は、い
  わゆる重機(重工業や建築・土木などで用いる重量のある大きな機械)であ
  るパワーショベルを前提とするものであって、一般消費者が需要者となるも
  のではないから、請求人の主張は失当である。
  (5)被請求人のフリーライドと引用商標のダイリューションについての反
  論
   請求人は、本件商標が、引用商標の持つ顧客吸引力にただ乗りしたもので
  ある等と主張している。
   ア 請求人によると、ゴジラ映画のアメリカ版「GODZILLA」が封
  切られたのは、平成10年5月22日とのことであるが、この映画を報道し
  た朝日新聞は「ゴジラにゆかりの人たちは、違和感を覚え、日米の文化の違
  いを感じ、あるいは時代の差を口にした」と報道しており、これまで日本の
  映画「ゴジラ」の着ぐるみに入ってゴジラを動かしてきたS氏ですら当該映
  画を見で愕然として「イメージが違いすぎるよねえ。あれじゃあ、トカゲの
  お化けじゃない」とコメントしたと報道しているのである(甲78)。
   このハリウッド映画が日本で公開されることにより、「ゴジラ」を欧文字
  表記した引用商標が本格的に日本国内で知られるようになったとすると、被
  請求人が本件商標の使用をすでに開始していた平成6年9月当時(乙2等)
  においては、「ゴジラ」はともかくとして、引用商標までもが周知・著名で
  あったとは考えられない(乙28)。
   しかるに、本件商標の採択にあたってフリーライド等の意思が全くなかっ
  たことは明白である。
   イ 本件商標のタオル、腕時計、手袋等への使用について
   請求人指摘のとおり、被請求人は、本件商標を、タオル、腕時計、手袋、
  帽子、Tシャツ、ミニチュアモデルに付していたことは事実である。

29/
   しかし、こうしたタオル等は、企業PRの一環として、被請求人の社員や
  関係事業者、販売代理店、製品を購入したユーザー等に対してノベルティと
  して無償配布したり、雑誌の景品として提供したり(乙15)、実費程度で
  販売したりしていただけであって、本件商標を請求人のようなキャラクター
  の商品化事業において出所を示す表示として使用していたものではない。
   そもそも建機業界においては、各メーカーが自社の名称や製品のブランド
  を付した各種商品を広告媒体として製作し販売するという慣習があり(乙5
  3)、被請求人においても建機本体メーカーに倣って、本件商標を使用して
  いる破砕機(重機用アタッチメント)の宣伝広告用として制作したものであ
  る。
   したがって、これら商品の性格上、一般消費者に向けたものではないので
  、自社ウェブサイト内に設けた専用の通販ページ(「PROJECT GU
  ZZILLA」におけるウェブショップや、「HOSEMAN SHOP」
  )において販売しているにすぎなかったが、関連知財高裁判決後は、全ての
  商品の販売を中止している。
   ウ 「ガリガリ君」の商標登録経緯について
   「ガリガリ君」は、平成18年より、被請求人が製造してバケットランド
  販売株式会社(以下「バケットランド販売社」という。)が販売する「アス
  ファルト・コンクリート切削機」の名称として採択使用されていた(乙54
  ~乙56)。
   このバケットランド販売社は、住友商事グループにおいて建機レンタル事
  業を行なってきた住商レンタルサポート株式会社が、新たに建機アタッチメ
  ントの販売事業を行うべく被請求人と共同出資により平成18年2月に設立
  した会社であり(乙57)、その建機販売事業の最初の対象製品として被請
  求人が従来から製造していた切削機を同社の自社ブランドを付して販売する
  ことになったものである。
   その製品名称「ガリガリ君」は、同時期に販売開始となった「ガラ処理バ
  ケット」の製品名称「バリバリ君」(乙58)ととともに、製品を使用した
  作業状態において生じる大きな音を擬音語としてネーミングされたもので、
  同社の社内公募によって同社社員から提案され採択された。
   以上のような経緯であるから、被請求人の登録商標「ガリガリ君」の採択
  ・使用について、請求人が指摘するような、氷菓についての赤城乳業株式会
  社の登録商標に化体した信用等にただ乗りする「不正な目的」はない。
   エ 「STUDIO GABULLI」の商標登録経緯等について
   「STUDIO GABULLI」は、その「GABULLI」の文字部
  分につき、破砕機の動作状況から容易に連想される「口を開いて噛みついた
  り飲みこんだりするさま」(広辞苑第六版)の意味の語である「がぶり」と
  、本件商標「GUZZILLA」の文字つづりとを組み合わせて被請求人が
  創作した造語であり、被請求人の社内における特別プロジェクトという意味

30/
  において「仕事場、アトリエ、工房」という意味で汎用されている英単語「
  STUDIO」を冠したものである。
   被請求人による建機の特注トータル・カスタマイズ事業も、また、請求人
  が指摘するアニメ映画製作会社の事業内容とは全く無関係であるし、登録商
  標における「STUDIO」の文字部分を細く小さく表示してアーチを施し
  、その下側に「GABULLI」の文字部分を太く大きく表示した実際の使
  用態様(乙67)は、アニメ映画製作会社が使用している商標の使用態様に
  は一切見られないものであるから、被請求人において、アニメ映画製作会社
  の商標に化体した信用等にただ乗りするような「不正な目的」はないのであ
  る。
  (6)商標法第4条第1項第19号該当性について
   既に述べたとおり、本件商標は、引用商標とは、観念上のみならず、外観
  上及び称呼上においても明瞭に区別することができる相互に非類似の商標で
  あるから、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたもので
  はない。
  (7)商標法第4条第1項第7号該当性について
   既に述べたとおり、本件商標は、被請求人が製造・販売する破砕機や切断
  機など土木建設機械のアタッチメントの自他識別標識として、遅くとも平成
  6年9月頃から使用されてきたものであって(乙2~乙5)、破砕機等の機
  能や動作を端的に表現する英単語「GUZZLE」(「~をカツカツ食う。
  ~をガブガブ飲む」の意)と、力強い動物の代表例である「ゴリラ」(英単
  語では「GORILLA」)を組み合わせた語として被請求人により創作さ
  れた造語である。以来、現在に至るまで継続的に被請求人の製造する破砕機
  等の商品商標として使用され、商品ラインナップの拡充に伴って多種多様な
  破砕機等の統一ブランドとして使用されてきたものであるが、平成23年3
  月頃から人気テレビ番組に紹介されるようになったことを契機に、本件商標
  と同一商標につき第7類「鉱山機械器具、土木機械器具、荷役機械器具、農
  業用機械器具、廃棄物圧縮装置、廃棄物破砕装置」を指定商品として同年1
  1月21日付で登録出願をし、同24年4月27日付で商標登録を受けた(
  商標登録第5490432号)。この登録商標については、上記関連知財高
  裁判決によって商標法第4条第1項第15号によりその登録を無効とする差
  戻し審決を受けたが、その指定商品中、第7類「パワーショベル等の破砕機
  ・切断機・掴み機・穿孔機等のアタッチメント」につき商標権の分割を行な
  ったうえで、現在、審決取消訴訟に係属している(令和元年(行ケ)第10
  167号)(審決注:令和2年8月20日判決言渡、甲246)。
   しかるに、本件商標は引用商標に類似するものではないうえに、引用商標
  の信用、名声及び顧客吸引力にフリーライドする意図もなく、「ゴジラ」の
  海外名である引用商標が日本国内において広く知られるようになったという
  平成10年(乙28)より前の平成6年から使用してきた自社商品ブランド

31/
  の商標登録を図ったにすぎないから、その出願の経緯に社会的相当性を欠く
  ものではなく、その他、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反する
  ものとして到底容認し得ない事情もない。
   したがって、本件商標「GUZZILLA」は、商標法第4条第1項第7
  号の規定に違反して登録されたものではない。
   2 上申書における主張
  (1)引用商標について
   ア 商標的使用について
  (ア)はじめに
   使用に係る具体的な文字態様(デザイン)が多種様々である点を別にする
  としても、本件商標と対比される標章は、「ゴジラ」という怪獣やそのキャ
  ラクターではなく、「GODZILLA」という欧文字からなる標章(引用
  商標)である。
  (イ)映画の題号や映画に登場するキャラクターの商標的使用について
   甲第9号証の別紙1「ゴジラ」映画目録の記載によれば、請求人が製作し
  たと主張する映画の題号は、それぞれ異なるものであり、その題号は国内製
  作作品では、第1作及び第16作を除き「ゴジラ」の対決相手その他の怪獣
  の名称等「ゴジラ」以外の文言と併せて一体的に表示しているのに対し、第
  5作、第6作、第8作、第9作及び第15作では「ゴジラ」という怪獣の名
  称は表示されていない(なお、第8作では「ゴジラの息子」と表示されてい
  るが、これは「ゴジラ」という怪獣ではなく「ミニラ」という怪獣を意味す
  る表示である。)。
   また、請求人が「ゴジラ」シリーズと主張する映画は、原作、原案脚本及
  び監督も同一ではなく、それぞれの題号がそれぞれの映画の内容を特定して
  いるものである。
   そして、上記映画の宣伝広告媒体や請求人主張に係る映画「ゴジラ」シリ
  ーズ(ただし、題号はそれぞれ異なる。以下同じ。)や「ゴジラ」という怪
  獣を紹介する書籍・雑誌・新聞においては、「ゴジラ」という怪獣の肖像(
  写真・図柄を含む。)や「ゴジラ」という片仮名が表示されているものの、
  「GODZILLA」という欧文字からなる標章は表示されていないもの(
  甲11、甲13~甲16、甲19~甲20、甲25、甲35~甲37、甲5
  1、甲75、甲84、甲118~甲122)や、「GODZILLA」とい
  う欧文字からなる標章が表示されているとしても看者の注意を惹く態様で表
  示されているものではないもの(甲10、甲17、甲18、甲21(甲22
  7)、甲22、甲26、甲38~甲41、甲43~甲44、甲46~甲48
  、甲50、甲55(甲225)、甲70(甲235)、甲72、甲73(甲
  237)、甲86の1、甲92)も多い。
   また、甲第9号証の別紙1及び弁駁書における請求人の主張によれば、海
  外製作3作品の日本公開時のそれぞれの題号は、「GODZILLA」、「

32/
  GODZILLA ゴジラ」、「GODZILLA KING OF TH
  E MONSTERS」であり、いずれも題名を異にしているうえ、製作、
  ストーリー、脚本及び監督が異なっているものである。
   さらに、請求人は、「ゴジラ」シリーズの最新映画としてアニメーション
  3部作が公開され(甲154、甲182、甲183)、「ゴジラ キングオ
  ブモンスターズ(原題:Godzilla:King of the Mo
  nsters)」が全世界で公開され、大ヒットしている(甲154)旨主
  張し、「GODZILLA」が日本の映画のタイトルに使用されるのは、「
  GODZILLA」が日本国民にとって極めてなじみやすいものとなったこ
  との証左である旨主張しているが、請求人主張に係るアニメーション3部作
  のタイトルは、「GODZILLA 怪獣惑星」、「GODZILLA 決
  戦機動増殖都市」及び「GODZILLA 星を喰う者」であり、「ゴジラ
   キングオブモンスターズ」の原題も「Godzilla:King of
   the Monsters」であって、いずれも映画のタイトルの一部に
  映画に登場する「ゴジラ」という怪獣の名称(固有名詞)が表示されている
  にすぎない。
   しかるところ、「ゴジラ」という怪獣が登場する映画あるいは当該映画を
  収録したビデオグラム並びにこれらの宣伝広告媒体や請求人主張に係る映画
  「ゴジラ」シリーズや「ゴジラ」という怪獣を紹介する書籍や雑誌に「GO
  DZILLA」という欧文字からなる標章が付されていたとしても(甲31
  ~甲34等)、一般消費者は、「ゴジラ」という怪獣が登場する映画あるい
  は当該映画を収録したビデオグラムや、「ゴジラ」という怪獣が登場する映
  画あるいは「ゴジラ」という怪獣が掲載されている書籍や雑誌等であると認
  識するにすぎず、「GODZILLA」という欧文字からなる標章は、せい
  ぜい「ゴジラ」という怪獣が登場する映画あるいは「ゴジラ」という怪獣自
  体を特定するものであって、商品やその出所ないし映画の製作、配給事業を
  行う営業主体を識別する表示として認識されるものではない。
   すなわち、映画あるいは当該映画を収録したビデオグラム並びにこれらの
  宣伝広告媒体や請求人主張に係る映画「ゴジラ」シリーズや「ゴジラ」とい
  う怪獣を紹介する書籍や雑誌に付されたタイトルに「GODZILLA」と
  いう欧文字からなる標章が付されていたとしても、いずれもそれぞれ異なる
  題号の映画ないしビデオグラムに収録された当該映画の題名あるいは「ゴジ
  ラ」という怪獣の名称(固有名詞)として表示されているものであり、商品
  又は役務の出所を表示する商標として使用されているものではなく、当該表
  示をもって請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示するものとして需
  要者の間に広く認識されていたことを認めることはできない(知財高裁判決
  平成29年7月27日平成28年(行ケ)第10275号、知財高裁判決平
  成29年6月29日平成28年(行ケ)第10206号、知財高裁判決平成
  28年8月9日平成27年(行ケ)第10221号ないし同第10223号

33/
  等参照)。
  (ウ)クレジットについて
   請求人は、米国のレジェンダリー・ピクチャーズが制作した「GODZI
  LLA(邦題:GODZILLA ゴジラ)」という映画の「BASED 
  ON THE CHARACTER“GODZILLA”OWNED AN
  D CREATED BY TOHO CO.,LTD」なる冒頭クレジッ
  ト(甲29)は、劇場用パンフレットやDVDパッケージだけでなく、日本
  のチラシやポスター等の宣伝素材においても、「東宝株式会社が創造し、か
  つ所有するGODZILLAキャラクターに基づく」との表記がある(甲3
  0~甲34)旨主張している。
   しかるところ、甲第30号証及び甲第34号証において、請求人主張に係
  る表記が他の記載と区別されることなく、それらの記載の一部として記載さ
  れていることがうかがえるものの、その態様は、到底商品又は役務の出所を
  示す商標として使用されているものとはいえないものである。
   また、甲第31号証ないし甲第33号証においては、請求人主張に係る表
  記の存在自体を確認することができない。
   そもそも、請求人主張に係る表記は、映画に登場する怪獣というキャラク
  ター(著作物)に関するものであり、商品又は役務の出所を示す商標として
  使用されているものではない。
  (エ)被許諾者(ライセンシー)の商号又は商標の表示について
   「東宝怪獣キャラクター」商品化権使用許諾契約書である、甲第93号証
  の第8条(4)、甲第94号証の第8条(4)、甲第95号証の第9条(4
  )、甲第96号証の第9条(4)、甲第98号証の第7条(4)、甲第99
  号証の第8条(4)及び甲第100号証の第10条(5)では、被許諾者(
  ライセンシー)の商号又は商標を表示することが定められており、当該商号
  又は商標が出所識別機能を果たすことが想定されている。
  (オ)商標権表示について
   ところで、甲第95号証の別紙(2)、甲第96号証の別紙(2)の「G
  ODZILLA」(1998年度作品)、甲第100号証の別紙(4)のト
  ライスター・ピクチャーズ社(TSP)が製作する怪獣映画「GODZIL
  LA」のロゴ、「GODZILLA」の名称キャラクター「ゴジラ」の形状
  には、「GODZILLA AND THE CHARACTER DES
  IGN ARE TRADEMARAKS OF TOHO CO.,LT
  D.」なる商標権表示を付する旨規定されている。
   しかしながら、いずれも、平成10年公開のハリウッド版の映画「GOD
  ZILLA」に関するものに限定されたものであるところ、当該商標権表示
  自体は商標的使用ではないうえ、商標、商標登録番号及び商標の表示位置、
  大きさ等使用態様の特定もなく、被許諾者(ライセンシー)の商号又は商標
  を表示することが定めた、甲第95号証の第9条(4)、甲第96号証の第

34/
  9条(4)及び甲第100号証の第10条(5)の規定や商標使用料の対価
  に関する規定がないことからしても、具体的な請求人保有に係る商標の使用
  が想定されていたものではないと思料される。
  (カ)証紙について
   証紙は許諾関係を示すものであるところ、「東宝怪獣キャラクター」商品
  化権使用許諾契約書である、甲第93号証の第8条(6)、甲第94号証の
  第8条(6)、甲第95号証の第9条(7)、甲第96号証の第9条(7)
  、甲第99号証の第8条(6)及び甲第100号証の第10条(8)で貼付
  が規定されている証紙は、著作物の利用許諾を示すものであり、このことか
  ら明らかなとおり、請求人の商品化事業において使用される証紙は特定の表
  示の利用許諾関係があることや出所表示機能を示すものではない。
  (キ)引用商標の使用に関する請求人主張立証に対する反論について
   甲第39号証ないし甲第41号証、甲第46号証、甲第47号証、甲第5
  0号証及び甲第55号証(甲225)によると、請求人が引用商標を使用し
  た例として挙げる3作品(第3作、第4作、第19作)の映画の題名の日本
  語表記である「キングコング対ゴジラ」、「モスラ対ゴジラ」及び「ゴジラ
  VSモスラ」の欧文字表記として引用商標と異なる字体で「KINGKON
  G VS GODZILLA」、「GODZILLA AGAINST M
  OTHRA」及び「GODZILLA VS MOTHRA」と記載されて
  いるものであり、「GODZILLA」という欧文字は、映画に登場する怪
  獣(「ゴジラ」とその対決相手その他の怪獣)の名称(固有名詞)を用いた
  映画の題名の一部として表示されているにすぎず、商品又は役務の出所を示
  す商標として使用されているものではない。
   また、甲第42号証及び甲第49号証の「GODZILLA FINAL
   WARS」、甲第43号証及び甲第44号証の「GODZILLA」、甲
  第48号証及び甲第49号証の「GODZILLA」という欧文字は、「ゴ
  ジラ」なる片仮名及び怪獣「ゴジラの肖像」とともに、映画に登場する怪獣
  「ゴジラ」の名称(固有名詞)を用いた映画の題名の一部として表示されて
  いるにすぎず、商品又は役務の出所を示す商標として使用されているもので
  はない。 
   ところで、請求人は、2018年2月20日から約1年間、東京駅前常盤
  橋プロジェクトのA棟新築工事仮囲いに、「ゴジラ」シリーズ29作品のポ
  スターが展示された(甲184、甲185)旨主張するとともに、「キング
  コング対ゴジラ」、「モスラ対ゴジラ」、「ゴジラ(昭和59年度作品)」
  、「ゴジラVSモスラ」及び「ゴジラ FINAL WARS」の各ポスタ
  ーには、「GODZILLA」が表示されており、当該表示は多数の通行者
  の目に触れることとなった旨主張している。
   しかしながら、東京駅前の工事仮囲いに約1年間、展示されたからといっ
  て、周知性を獲得できるものではなないうえ、そもそも映画のポスターに使

35/
  用された「GODZILLA」という欧文字は、「ゴジラ」なる片仮名及び
  怪獣「ゴジラの肖像」とともに、映画に登場する怪獣「ゴジラ」の名称(固
  有名詞)を用いた映画の題名の一部として表示されているにすぎず、商品又
  は役務の出所を示す商標として使用されているものではない。
   請求人は、国内製作作品のうち第1作「ゴジラ」、第2作「ゴジラの逆襲
  」、第4作「モスラ対ゴジラ」、第16作「ゴジラ」及び第23作「ゴジラ
  2000ミレニアム」については日本国外版が製作された旨主張しているが
  、甲第55号証(甲225)と同様、仮に「GODZILLA」という欧文
  字が使用されていたとしても、映画に登場する怪獣(「ゴジラ」とその対決
  相手その他の怪獣)の名称(固有名詞)を映画の題名又はその一部として表
  示されているにすぎず、商品又は役務の出所を示す商標として使用されてい
  るものではない。
   請求人が「怪獣王(Godzilla King of the Mon
  sters!)」の逆輸入版に関するものであると主張する関東版の新聞広
  告である甲第226号証の3枚目と4枚目についても、「GODZILLA
  」という欧文字は、「怪獣王ゴジラ」と大きく書かれた文字の上方又は右側
  に「KING OF THE MONSTERS!」という欧文字とともに
  小さく書かれているにすぎず、「GODZILLA」という欧文字が看者の
  注意を引く態様で描かれておらず、出所識別力を有するものではないばかり
  か、映画の題名の一部及び映画に登場する怪獣の名称(固有名詞)が表示さ
  れているにすぎず、商品又は役務の出所を示す商標として使用されているも
  のではない。
   また、請求人が第1作目の「ゴジラ」の海外輸出用に昭和30年に作成さ
  れたプロモーション用の海外向けポスター及び宣伝素材であると主張する甲
  第7号証(甲220)の8頁には「Produced by TOHO C
  O.,LTD.Tokyo Japan」という表示がなされ、甲第7号証
  (甲220)の9頁には「Produced by・・・Toho Co.
  ,Ltd.」という表示がなされ、甲第8号証(甲221)には、「東宝株
  式会社製作・配給」という表示がなされ、これらによって出所を識別する表
  示がなされているうえ、これらの書証及び甲第226号証の3枚目及び4枚
  目も、「GODZILLA」という欧文字は、「Godzilla Kin
  g of the Monsters!」又は「KING OF THE 
  MONSTERS!」という欧文字表示とともに、映画の題名の一部及び映
  画に登場する怪獣の名称(固有名詞)として表示されているにすぎず、商品
  又は役務の出所を示す商標として使用されているものではない。
   引用商標が使用されていると請求人が主張する書証のうち、例えば甲第7
  号証(甲220)、甲第8号証(甲221)、甲第21号証(甲227)、
  甲第54号証(甲231)、甲第60号証(甲232)、甲第63号証(甲
  233)、甲第64号証(甲234)、甲第71号証(甲236)、甲第7

36/
  3号証(甲237)、甲第74号証、甲第92号証等における「GODZI
  LLA」という欧文字は、「ゴジラ」という片仮名や「ゴジラ」という怪獣
  と共に映画に登場する怪獣の名称(固有名詞)又は映画の題名の一部若しく
  はその一部を示すために表示されているにすぎず、「GODZILLA」と
  いう欧文字が商品又は役務の出所を示す商標として使用されているものでは
  ない。
   請求人は、映画「ゴジラ」シリーズやそのビデオグラムを示す表示として
  、また、同映画やビデオグラムの宣伝広告活動において引用商標を使用して
  きた旨主張し、甲第7号証(甲220)、甲第8号証(甲221)、甲第2
  1号証(甲227)、甲第39号証ないし甲第51号証を引用している。
   しかしながら、「GODZILLA」という欧文字からなる標章は、映画
  あるいは映画を収録したビデオグラム並びにこれらの宣伝広告媒体に付され
  たタイトルは、いずれも当該映画ないしビデオグラムに収録された映画の題
  名の一部あるいは「ゴジラ」という怪獣が登場する映画あるいは映画を収録
  したビデオグラムや「ゴジラ」という怪獣の名称(固有名詞)として表示さ
  れているものであり、商品やその出所ないし映画の製作、配給事業を行う営
  業主体を識別する表示として認識されるものではなく、商品又は役務の出所
  を示す商標として使用されているものではない。
   請求人は、「ゴジラ」映画を特集した雑誌やゴジラを内容とする書籍が数
  多く出版され、また、作品が封切られる度に大々的な宣伝を行っており、「
  GODZILLA」はより広範に、かつ、より深く、一般大衆に知られるよ
  うになった旨主張し、その例として甲第10号証、甲第11号証、甲第53
  号証ないし甲第73号証を引用している。
   しかしながら、上記各甲号証においては、「GODZILLA」という欧
  文字からなる標章が表示されているとしても看者の注意を惹く態様で表示さ
  れているものではないうえ、請求人も主張するとおり、請求人主張に係る映
  画「ゴジラ」を紹介するものであり、映画に登場する怪獣の名称(固有名詞
  )を映画の題名又はその一部として表示されているにすぎず、商品又は役務
  の出所を示す商標として使用されているものではない。
   請求人は、多くの企業にゴジラのキャラクターの商品化権を与え、これら
  の企業により、引用商標が付された多くのキャラクター商品が販売されてき
  た旨主張し、その例として甲第74号証及び甲第92号証を引用している。
   しかしながら、後述のとおり、請求人による商品化事業は、「ゴジラ」と
  いう怪獣のキャラクターという著作物の利用許諾であり、その名称(固有名
  詞)として「GODZILLA」という欧文字が使用されたとしても、「ゴ
  ジラ」という怪獣の名称(固有名詞)として表示されているものであり、商
  品又は役務の出所を示す商標として使用されているものではないところ、甲
  第74号証及び甲第92号証における「GODZILLA」という欧文字は
  、「ゴジラ」という怪獣の名称(固有名詞)として使用されているにすぎな

37/
  い。
   また、甲第74号証及び甲第92号証における「GODZILLA」とい
  う欧文字の使用が「同一の表示による商品化事業」に関する商品化契約であ
  ることを示す契約書も書証として提出されていない。
   なお、この点については、請求人が請求人ライセンス商品であると主張の
  裏付けとして提出する甲第169号証ないし甲第175号証記載の商品につ
  いても、同様である。
   さらに、甲第176号証ないし甲第181号証は、海外向け請求人ライセ
  ンス商品と主張されているものであり、日本国内の需要者を対象とするもの
  ではなく、商標法第4条第1項第15号適用の有無に関係しない。
   請求人は、現在日本で発行されている多数の国語辞典、英和辞典及び和英
  辞典(甲125~甲129、甲143~甲153)においても、「GODZ
  ILLA」が「ゴジラ」を意味する語として掲載されていることから、引用
  商標が請求人の商品又は営業の表示として使用され、周知・著名となってい
  たことを示している旨主張している。
   しかしながら、上記各辞書では、「昭和29年(1954))製作の東宝
  映画『ゴジラ』にはじめて出てくる怪獣の名」、「日本の東宝映画(195
  4)に登場する怪獣」、「日本のSF映画中の怪獣」、「日本の東宝映画に
  登場する怪獣」、「1954年製作の日本映画に登場した怪獣」等というよ
  うに、映画に登場する特定の怪獣の名称(固有名詞)として記載されている
  にすぎず、引用商標が商品又は役務の出所を示す商標として使用されていこ
  とを示すものではない。
   請求人は、平成6年の映画の日(毎年12月1日)の式典において全国興
  行環境衛生同業組合連合会から「マネーメーキングスター賞」の名目で表彰
  され(甲13の1~3)、同7年1月には、「今年はハリウッド版ゴジラ映
  画が初めて製作され、全世界で公開される予定。・・・日本映画が生んだ最
  大の国際スター」と紹介され(甲16)、同年に制作された「ゴジラVSデ
  ストロイア」で壮絶な最期を遂げるゴジラの追悼式が現実に行われた(甲1
  4、甲15)旨主張しているが、引用商標が付されているものではないうえ
  、「ゴジラ」という片仮名が怪獣の名称(固有名詞)を示すものとして付さ
  れているものの、商品又は役務の出所を示す商標として使用されているもの
  ではない。
   請求人は、平成16年11月に「GODZILLA」が米国ハリウッドの
  「ウォーク・オブ・フェーム」に日本のキャラクターとして初めて殿堂入り
  したこと及び米国の有力業界紙のみならず、日本でも新聞等で大きく報道さ
  れた(甲23~甲26)ことをもって、日本のみならず、米国等において、
  「GODZILLA」が一般大衆からどれ程深く愛されているかを示すもの
  に他ならない旨主張している。
   しかしながら、いずれも「ゴジラ」という怪獣の名称(固有名詞)を示す

38/
  ものとして使用されているものであり、商品又は役務の出所を示す商標とし
  て使用されているものではない。
  (ク)小括
   以上のとおり、引用商標には商品又は役務の出所を示す商標的使用が認め
  られず、引用商標をもって請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示す
  るものとして需要者の間に広く認識されていたことを認めることはできない
  。
   イ 周知性又は著名性について
  (ア)周知性又は著名性の対象となる需要者について
   特許庁商標審査基準によれば、商標法第4条第1項第15号について、「
  外国において著名な標章が、我が国内の需要者によって広く認識されている
  ときは、その事実を十分考慮して判断する。」と規定されていることからも
  明らかなとおり、本件において引用商標の周知性又は著名性については、英
  語の発音等を十分に理解していない者を多数含む日本国内の需要者に対する
  周知性又は著名性が認められなければならない。
   ところで、「ゴジラ」という片仮名が周知又は著名であったからといって
  、引用商標は造語であって、日本語の「ゴジラ」を英語表記するのであれば
  、請求人が主張するように「GOZIRA」や「GOJIRA」と表記され
  るのが自然であり、称呼についても、請求人自身、語頭音は「ゴ」と「ガ」
  の中間の音として称呼されると主張していること、アメリカ英語とイギリス
  英語とで異なること、アメリカ人であっても「GODZILLA」を「ゴッ
  ズィラ」と発音することがあるというのである(乙30)。
   そうすると、「GODZILLA」が「ゴジラ」という怪獣の英語訳(表
  記)であると日本国内の需要者の誰もが容易に理解できるわけではなく、「
  GODZILLA」という欧文字が直ちに周知性を獲得できるわけではない
  。
  (イ)周知性又は著名性に関する請求人主張に対する反論について
   請求人が引用商標の使用を開始したと主張するのは、映画「ゴジラ」の海
  外輸出用に作成されたプロモーション用のポスター及び宣伝素材においてで
  あり(甲7(甲220)、甲8(甲221)、甲222)、対象が日本国内
  の需要者ではなく、日本国内の需要者に対する周知性及び著名性が認められ
  る根拠とならない。
   請求人は、国内製作作品のうち第1作「ゴジラ」、第2作「ゴジラの逆襲
  」、第4作「モスラ対ゴジラ」、第16作「ゴジラ」及び第23作「ゴジラ
  2000ミレニアム」については、日本国外版が製作された旨主張している
  が、日本国外版の映画は、対象が日本国内の需要者ではなく、日本国内の需
  要者に対する周知性又は著名性が認められる根拠とならない。
   請求人は、多くの企業に「ゴジラ(GODZILLA)」の商品化権を与
  え、これら企業により、引用商標が付された人形、ぬいぐるみ等の玩具、T

39/
  シャツ等の衣料品、文房具、食料品、雑貨等の多くのキャラクター商品が多
  数製造販売されている旨主張しているが、これらの販売地域、販売時期、売
  上額等を示す客観的な証拠は全く提出されておらず、また、後述のとおり、
  請求人の商品化事業に関する商品化権使用許諾契約等の契約は、著作物の使
  用許諾に関する契約であって、「同一の表示による商品化事業」に関する商
  品化契約ではないから、結局、引用商標が請求人の商品表示としてどの程度
  認識されているかを示す事情を認定することは困難であり、請求人の商品表
  示として著名又は周知であると認めることはできない。
   また、請求人が請求人ライセンス商品であると主張の裏付けとして提出す
  る甲第169号証ないし甲第175号証記載の商品についても、その販売地
  域、販売時期、売上額等を示す客観的な証拠も全く提出されておらず、また
  、「GODZILLA」という欧文字の使用が「同一の表示による商品化事
  業」に関する商品化契約であることを示す契約書も書証として提出されてお
  らず、引用商標が請求人の商品表示としてどの程度認識されているかを示す
  事情を認定することは困難であり、請求人の商品表示として著名又は周知で
  あると認めることはできない。
  (ウ)小括
   以上のとおり、引用商標は商品又は役務の出所を表示する態様で使用して
  いるもの(商標的使用をするもの)ではないので、引用商標が商品又は役務
  の出所を示す商標として周知性又は著名性を認められることはない。
   ウ 請求人の商品化事業について
  (ア)請求人の商品化事業の目的・対象等について
   請求人の商品化事業に関する契約書である甲第93号証及び甲第85号証
  ないし甲第100号証によれば、以下aないしcに述べることが認められる
  。
   a 映画の表題並びにその中に登場するキャラクターの形状及び名称の使
  用許諾であること(甲93の第1条、甲85の第2条、甲87の前文、第4
  条、甲88の第1条、甲89の第1条、甲90の第1条、甲91の前文、甲
  94の第1条、甲95の第1条、甲96の第1条、甲98の第1条、甲99
  の第1条、甲100の第1条)。
   なお、上記規定のうち、甲第93号証の第1条、甲第85号証の第2条、
  甲第87号証の前文、甲第94号証の第1条、甲第95号証の第1条、甲第
  96号証の第1条、甲第98号証の第1条、甲第99号証の第1条、甲第1
  00号証の第1条の各規定については、「著作物」との文言を用いており、
  甲第87号証の第4条については、「キャラクターに関する著作権」との文
  言を用いている。
   b 対価も「著作物使用料」と規定していること(甲93の第14条、甲
  94の第14条、甲95の第14条、甲98の第12条、甲100の第16
  条)。

40/
   c 著作権表示することを規定していること(甲93の第8条(4)、甲
  85の第8条1項2(審決注:2は○付き。)、甲87の第6条(5)、甲
  88の第7条、甲89の第7条、甲91の第5条、甲94の第8条(4)、
  甲95の第9条(4)、甲96の第9条(4)、甲98の第7条(4)、甲
  99の第14条、甲100の第10条(5))。
   したがって、請求人の商品化事業は、キャラクターという著作物の使用を
  許諾することが目的であり、しかも対象は「ゴジラ」だけではない場合もあ
  るうえ(甲93の別紙(3)、甲87の前文、甲88の第1条、甲94の別
  紙(3)、甲95の別紙(3)、甲96の別紙(3)、甲98の別紙(3)
  、甲99の別紙(3)、甲100の別紙(3))、「GODZILLA」な
  る欧文字が許諾対象に含まれていることは明示されていないことが認められ
  る。
  (イ)商標権表示について
   上述のとおり、「東宝怪獣キャラクター」商品化権使用許諾契約書である
  甲第95号証の別紙(2)、甲第96号証の別紙(2)の「GODZILL
  A」(1998年度作品)、甲第100号証の別紙(4)のトライスター・
  ピクチャーズ社(TSP)が製作する怪獣映画「GODZILLA」のロゴ
  、「GODZILLA」の名称、キャラクター「ゴジラ」の形状には、「G
  ODZILLA AND THE CHARACTER DESIGN A
  RE TRADEMARAKS OF TOHO CO.,LTD」なる商
  標権表示を付する旨規定されているが、具体的な請求人保有に係る商標の使
  用が想定されていたものではない。
  (ウ)他人性について
   特許庁商標審査基準によれば、商標法第4条第1項第15号所定の「他人
  」には、「その他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)
  であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそ
  れがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係があ
  る者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出
  所について混同するおそれがある場合をもいう。」とされている。
   この点、最高裁判所平成12年7月11日判決(民集54巻6号1848
  頁(レールデュタン事件))は、「商標法第4条第1項第15号にいう『他
  人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標』には、当該
  商標をその指定商品又は指定役務(以下『指定商品等』という。)に使用し
  たときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下『商品等』という。)に
  係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右
  他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一
  の表示による商品か事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に
  係る商品であると誤信されるおそれ(以下『広義の混同を生ずるおそれ』と
  いう。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規

41/
  定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当
  該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機
  能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り
  、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨か
  らすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束す
  る企業グループの形成、有名ブランドの成立等企業や市場の変化に応じて、
  周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保誰するためには
  、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができな
  いものとすべきであるからである。」と判示している。
   しかしながら、請求人の商品化事業に関する契約書である甲第93号証及
  び甲第85号証ないし甲第100号証などの請求人の商品化事業に関する商
  品化権使用許諾契約等の契約は、「同一の表示による商品化事業」に関する
  商品化契約ではなく、著作物の使用許諾に関する契約であるので、請求人が
  被許諾者(ライセンシー)らと商品化事業を行っているとしても、請求人と
  被許諾者(ライセンシー)らは、「同一の表示による商品化事業を営むグル
  ープ」には該当しないため、請求人には商標法第4条第1項第15号所定の
  「他人性」は認められず、同法第4条第1項第15号の適用は認められない
  。
   なお、上記のとおり、「東宝怪獣キャラクター」商品化権使用許諾契約書
  である、甲第93号証の第8条(4)、甲第94号証の第8条(4)、甲第
  95号証の第9条(4)、甲第96号証の第9条(4)、甲第98号証の第
  7条(4)、甲第99号証の第8条(4)、甲第100号証の第10条(5
  )では、被許諾者(ライセンシー)の商号又は商標を表示することが定めら
  れている。
  (エ)商品化事業に関する請求人の主張に対する反諭について
   請求人は、甲第93号証の第1条で定義されている「著作物」とは別紙(
  3)記載のキャラクターの名称を含むものであるから、当該名称が商品等表
  示として機能し得ることは明白であり、甲第74号証及び甲第92号証を引
  用して、実際に引用商標が商品に使用されていることから、著作物の使用許
  諾が規定されており、商品等表示に関するライセンス契約ではない可能性が
  大きいとの被請求人の主張は失当である旨主張している。
   しかしながら、請求人がいうキャラクターは、著作物である「ゴジラ」と
  いう怪獣であって、「GODZILLA」という欧文字はその名称(固有名
  詞)にすぎず、ライセンシーは、著作物の複製物としてキャラクター商品を
  販売等し、その名称(固有名詞)として「GODZILLA」という欧文字
  を付しているのであって、「GODZILLA」という欧文字を商品や役務
  の出所を表示する商標として使用しているものではない。
   また、そもそも、ライセンシーは、著作物である「ゴジラ」という怪獣の
  名称と無関係にライセンシーの商品又は役務の出所を表示する態様で(商標

42/
  として)「GODZILLA」という欧文字を使用することまで許諾されて
  いるものではない。
   しかも、甲第74号証及び甲第92号証における「GODZILLA」と
  いう欧文字の使用が「同一の表示による商品化事業」に関する商品化契約で
  あることを示す契約書も書証として提出されていない。この点については、
  請求人が請求人ライセンス商品であると主張の裏付けとして提出する甲第1
  69号証ないし甲第175号証記載の商品についても、同様である。
   また、請求人は、キャラクター商品の多くにおいて、引用商標は商品名と
  しても使用されており(甲174、甲176~甲181)、商標として使用
  されていることは明らかであると主張している。
   請求人が主張する商品名とは、「GODZILLA 怪獣惑星マスキング
  テープセット」(甲174)、「Godzilla Logo Youth
   Black T-shirt」(甲176)、「Godzilla Ki
  ng of the Monsters Youth White T-s
  hirt」(甲176)、「Godzilla Ocean Scene 
  Sublimation Allover Print T-shirt」
  (甲176)、 「Godzilla Theatrical One S
  heet Allover Print T-shirt」(甲176)、
  「Godzilla Logo Phone Case for iPho
  ne and Galaxy」(甲177)、「Godzilla Log
  o Mouse Pad」(甲178)、「Godzilla Roari
  ng Seatbelt Belt」(甲179)、「Godzilla 
  Logo Black Mug」(甲180)及び「Godzilla L
  ogo Water Bottle」(甲181)である。
   しかしながら、甲第174号のサイトの運営者は株式会社東宝ステラであ
  り、甲第176号証ないし甲第181号証のサイトの運営者はWarner
   Bros.Entertainment Inc.であり、これらが出所
  であるところ、仮に上記表示が商品名であるとしても、それらに「GODZ
  ILLA」という欧文字(ロゴ)が使用されているのは、「GODZILL
  A」という欧文字(ロゴ)がデザインとして使用されており、そのことを示
  すために他の文字とともに使用されているのであって、「GODZILLA
  」という欧文字(ロゴ)が単独で特定の出所を表示する商標として使用され
  ているわけではない。
   また、そもそも甲第176号証ないし甲第181号証記載の商品は、海外
  向け商品であり、対象が日本国内の需要者ではなく、日本国内の需要者に対
  する周知性又は著名性が認められる根拠とならない。
   エ 需要者について
   被請求人らは、本件商標を付してロボット型作業用重機、アプリ、タオル
  、時計、手袋、帽子、Tシャツ等を展開しているものの、これらは企業PR

43/
  の一環であり、請求人のように商品化事業を行っているものではない。
   被請求人らは、タオル等を、関係事業者、販売代理店、製品を購入したユ
  ーザー等に無償配布や実費程度で販売しているものであって、これらは、被
  請求人商品の性格上、一般消費者に向けたものではない。
   また、被請求人は、被請求人キャラクターに「SUPER GUZZIL
  LA」なる標章を付して、自社製品を展示する展示会、自社店舗における展
  示会や業界向けの各種イベントで被請求人キャラクターを設置し、被請求人
  キャラクターを稼働させることがあり、自社製品を展示する展示会、自社店
  舗における展示会や業界向けの各種イベントの来場客に被請求人ゲームに体
  験させたことがあった。
   上記いずれの標章の使用も、被請求人が同社の製品(破砕機等)や専門性
  の高い破砕機等のアタッチメントの製造を主たる事業とする被請求人の宣伝
  広告のためであり、当該宣伝広告の対象となる、専門性の高い破砕機等のア
  タッチメント需要者は、主としてパワーショベル用の粉砕機・切断機・掴み
  機・穿孔機等の製造、販売業者や土木工事業者であって、一般消費者ではな
  い。
   ところで、請求人は、被請求人がハンドカッターにも本件商標を使用して
  いると主張し(甲216~甲218)、ハンドカッターは広範囲の需要者を
  想定した商品である旨を主張しているが、被請求人も認めるとおり、当該製
  品は、操作部だけでも13.4キログラムの重量があり、かつ、その羽先の
  開閉操作には送油ケーブルで連結された油圧ユニット(ポンプ)の存在を必
  須としており、さらにその用途は事故や災害現場における金属切断用なので
  あるから(甲217)、一般消費者の使用を想定したものではないことは明
  らかである。
  (2)引用商標と本件商標との「類似」又は「混同」について
   ア はじめに
   請求人の商品又は営業と被請求人の商品又は営業との間で混同は生ずるお
  それがないことは、答弁書において主張したとおりであり、引用商標は本件
  商標と非類似であることは、答弁書において主張したとおりである。
   しかるところ、本件商標が周知性を有することからしても、請求人の商品
  又は営業と被請求人の商品又は営業との間で混同は生ずるおそれがないこと
  並びに引用商標は本件商標と非類似であることは、より一層強く裏付けられ
  る。
   仮に引用商標が「商品又は役務の出所を表示する商標」として周知であっ
  たとしても、本件商標も「商品又は役務の出所を表示する商標」として周知
  であれば、他の事情と併せて取引の実情の一つとして本件商標の周知性を考
  慮することで、請求人の商品又は営業との混同のおそれは否定されることと
  なる(松川充康「周知性の地理的範囲及び先使用表示等との関係」牧野利秋
  ほか編「知的財産訴訟実務大系II」(平成26年)409頁、大阪地判昭

44/
  和48年9月21日無体集5巻2号321頁(大阪第一ホテル事件)、東京
  地判平成2年8月31日判タ743号222頁(ラジオ日本事件)等)。
   イ 本件商標の周知性(補充)について
  (ア)「スーパーガジラ(SUPER GUZZILLA)」について
   被請求人が広告宣伝用として製造したロボット型の作業用重機「スーパー
  ガジラ(SUPER GUZZILLA)」は、建機業界以外においても大
  いに話題とされたが、いずれも将来的な現実感のあるロボットないし工業マ
  シンとして紹介されたのみであって、映画やそこに登場するキャラクターを
  引き合いに出されることは些かもなかった(乙38~乙45)。
  (イ)ガジラ通信について
   被請求人は、「ガジラ通信」なる「社内報」を年4回発行し、約200人
  の従業員に配るだけでなく、社外でも、13都府県のカフェや書店50店に
  置いて一般の人にも無料で配布しており、社外の読者から「次はまだですか
  」と注文が入る人気ぶりで、社内報を読んで就職を希望する人もでてきてい
  るほど、社外でも人気を集めている(乙69)。
  (ウ)ガジラシリーズの出荷台数及び圧砕機国内需要に占める台数ベースで
  のシェアについて
   平成26年4月1日から令和元年11月末までの圧砕機国内需要台数18
  ,578台(一般社団法人日本建設機械工業会の統計資料による)のうち、
  被請求人によるガジラシリーズの出荷台数(海外出荷分を除く)は2,54
  5台であり、台数ベースで13.7%のシェアを占めている(乙83)。
  (エ)小括
   上記(ア)ないし(ウ)の事実からして、本件商標は周知性を有するもの
  である。
   ウ 「類似」について
  (ア)外観について
   請求人は、外観を対比する場合において、音節によって分離したうえで対
  比すべきとする必然性はなく、むしろ、引用商標は、後半部分に「ZILL
  A」の表記を用いた点にも特徴を有する造語であって、「GODZILLA
  」全体が識別力を有するというべきである旨主張している。
   この点、請求人は、語頭が「G」で始まり、語尾が「ZILLA」で終わ
  る商標は、請求人の保有する一連の「GODZILLA」からなる関連商標
  しか存在せず、本件商標も語頭が「G」で始まり、語尾が「ZILLA」で
  終わる表示という点で共通することから、引用商標と本件商標が外観上類似
  する旨主張している。
   引用商標は、図形標章ではなく、表音文字である欧文字からなる表示(標
  章)であるところ、子音の次の母音によって語頭音が異なることからすれば
  、外観においても音節毎に区切って認識するのが自然であり、子音である「
  G」のみをもって語頭とすることは相当ではなく、母音を含んだ音節である

45/
  「GOD」と「ZIL」と「LA」2音節からなる接尾辞である「ZILL
  A」とを分離して要部を認定すべきである。
   なお、昭和29年の日本映画に登場した空想上の怪獣GODZILLA(
  ゴジラ)からの逆成であるという由来はともかく、現在では、「ZILLA
  」なる語は、米国人にとって「爬虫類あるいは大きなもの」を連想させるも
  のであって、「~ジラ、巨大怪獣のような~」の意味の接尾辞として使われ
  るものであり、ソフトウェア名の語尾としても用い、その場合は「他製品を
  圧倒する、良い意味の怪物」などのニュアンスがあるものであることからす
  れば(乙10)、需要者を基準に外観の類否を判断する場合、「ZILLA
  」は要部とはならない。
   また、仮に「GODZILLA」を分離せず、一連一体の表示として外観
  類似を判断するとしても、引用商標は、デザイン化されていない「GODZ
  ILLA」の8文字の欧文字で表してなるのに対し、本件商標は、各構成文
  字が同じ太さと大きさをもってデザイン化された「GUZZILLA」の8
  文字の太い欧文字で表してなり、1文字目の「G」と8文字目の「A」の字
  体はやや丸みを帯び、2文字目の「U」と3文字目の「Z」の上端及び7文
  字目の「L」と8文字目の「A」の下端はそれぞれ結合し、3文字目及び4
  文字目の「Z」は両文字の左下が前下方に鋭く突尖しているほか、やや縦長
  の大文字で表されているというデザイン上の特徴があるために、2文字目か
  ら4文字目の「UZZ」は目立っており、看者の目を強く惹きつけるもので
  あり、本件商標は、デザイン上の特徴を有しない引用商標とは外観上非類似
  である。
   なお、「GODZILLA」は、「GOD」と「ZILLA」とを合成し
  た造語であるが、「GOD」なる英単語は日本人でも広く認識しており、「
  GUZ」なる文字や「GUZZ」なる文字と混同することはない。
   また、本件商標が周知性を有することからすれば、引用商標と本件商標と
  は、外観上区別し得るものである。
  (イ)称呼について
   請求人は、引用商標は欧文字であり、かつ、英和辞典に掲載されている英
  単語であるから、原則として、英語の発音で称呼すべきである旨主張すると
  ともに、イギリス英語における発音とアメリカ英語における発音は異なって
  いるが、本件商標と称呼を対比するに際し、アメリカ英語における称呼を考
  慮することは何ら問題もない旨主張している。
   しかしながら、商標法の場所的適用範囲は日本国内であり、本件において
  商標法第4条第1項第15号における混同の有無が問題となるのも日本国内
  における本件商標の使用であり、英語の発音等を十分に理解していない者を
  多数含む日本国内の需要者に対する周知性又は著名性が認められなければな
  らない。
   この点、日本人俳優が「ゴジラ」と発音した例は、片仮名表記の「ゴジラ

46/
  」に引っ張られて発音したと主張するように、英語の発音等を十分に理解し
  ていない者を多数含む日本国内の需要者にとっては、映画に登場する架空の
  怪獣の著名な名称(固有名詞)である「ゴジラ」を欧文字表記した引用商標
  は、「GODZILLA」が外国人にどのように発音されようとも、やはり
  「ゴジラ」であって、日本語らしく1音1音明瞭に「ゴジラ」と称呼される
  のが自然である。
   なお、アメリカのゴジラファンもまた、日本の映画「ゴジラ」を字幕で観
  ており、日本人俳優が「ゴジラ」というのを聞いて馴染みがあったというの
  である(乙10の1)。
   これに対し、被請求人アタッチメントの名称は「ガジラ」として広く知ら
  れていたものであって、本件商標からは「ガジラ」との称呼のみが生じるも
  のであり、称呼上も本件商標と引用商標は非類似である。
   エ 「混同」について
   仮に引用商標が商標として周知であったとしても、本件商標も商品等表示
  として周知であれば、他の事情と併せて取引の実情の一つとして本件商標の
  周知性を考慮することで、請求人の商品又は営業との混同のおそれは否定さ
  れることとなる。
   オ フリーライドの意思について
   被請求人は、答弁書で主張したとおり、本件商標の採択・使用にあたって
  、被請求人にフリーライド等の意思が全くなかったことは明白である。
   そもそも「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機・穿孔機等のアタ
  ッチメント」の取引者及び需要者は、専らその性能や品質などを商品選択の
  基準とするものであり、引用商標が有する映画「ゴジラ」や想像上の怪獣「
  ゴジラ」のイメージに誘引されて取引を行うことはなく(換言すると、当該
  取引者及び需要者に対する顧客吸引力は引用商標にはない。)、被請求人商
  品、被請求人キャラクター又は被請求人ゲームに本件商標が使用されたとし
  ても、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や
  その希釈化(いわゆるダイリュージョン)を招く結果は生じない。
   そのことからしても、被請求人は、引用商標が有する力強いイメージを想
  起させることを企図して、被請求人商品、被請求人キャラクター又は被請求
  人ゲームに、本件商標を付していたということがないことは明らかである。
   ところで、請求人は、被請求人がホームページに特撮物を連想させるスト
  ーリー仕立ての動画を多数掲載したり、怪獣ロボットを想起させる重機を用
  いた見学会を行ったこと、被請求人キャラクターを「怪獣のガジラ」と表示
  して紹介していることをもって、請求人のキャラクター「ゴジラ」を意識し
  ていることは明らかであると主張している。
   しかしながら、そもそも、近年の人材不足は国内土木建設業界においても
  極めて深刻な問題となっており、急激な地球温暖化による過酷な気象状況の
  なかで解体工事など屋外における作業は特に敬遠される傾向が強いから、こ

47/
  うした屋外解体作業の労働環境の改善を図り、若い将来を担う人材確保を図
  るには、将来的にロボットのようにリモート操作や自動操縦ができる重機が
  使用されることは自明なのであるし、普段の生活において若い世代が接する
  ことが少ない土木建設業界に対するネガティブなイメージを払拭することも
  重要な課題になっているから、被請求人による上記動画やロボット重機の製
  作等は全てこうした問題解決を目的として行なっているものにすぎない。
   パワーショベル用の粉砕機・切断機・掴み機・穿孔機等の建設機械用アタ
  ッチメントなどは、専門的・職業的な分野において使用される特殊な機械器
  具装置であり、専らその性能や品質信頼性、安定性などが商品選択の基準と
  されるものであって、キャラクターの顧客吸引力が有効に機能するものでは
  なく、請求人のキャラクター「ゴジラ」にフリーライドできるものではない
  。
   また、「怪獣」は「ゴジラ」に限られるものではないところ、平成30年
  度のグッドデザイン賞の審査員からも「油圧ショベルの先端に取り付けるだ
  けで、鉄骨などを切断、圧砕するカッターになるアタッチメントである。構
  造力学から生まれた姿がとても美しく、まるでティラノサウルスの頭部のよ
  うだ。存在感もあり、圧倒的な破壊力を実現した。脅威すら感じるデザイン
  といえる。」との評価を受けていたものであって、請求人のキャラクター「
  ゴジラ」と無関係に被請求人キャラクターを「怪獣のガジラ」と表示したに
  すぎない。
   カ 需要者層の違いについて
   引用商標が、いわゆるキャラクターの商品化事業によって多種多用な商品
  に使用されているとしても、キャラクターの商品化事業ゆえにそれら対象商
  品は普段使いの日用品ばかりであって、専門性の高い破砕機等のアタッチメ
  ントとは商取引の実情が全く異なる。
   この点、建設機械といっても、特に、パワーショベル用の破砕機・切断機
  ・掴み機・穿孔機等は、いわゆる重機(重工業や建築・士木などで用いる重
  量のある大きな機械)であって、その操縦・操作には特別な資格(例えば「
  車両系建設機械(解体用)運転技能講習」など)を要することからしても(
  乙84)、一般消費者が需要者となるものではないことは明らかである。
   そして、専門性の高い破砕機等のアタッチメントと引用商標に係る商品の
  需要者層は異なり、連想するイメージも異なるところ、被請求人商品、被請
  求人キャラクター及び被請求人ゲームは、あくまで被請求人アタッチメント
  の宣伝広告媒体にすぎないものであるため、被請求人商品、被請求人キャラ
  クター又は被請求人ゲームに付された本件商標を見た取引先は、本件商標が
  被請求人アタッチメントの出所を識別していると認識するものであり、需要
  者は被請求人アタッチメントの需要者である。
   3 むすび
   以上述べたように、本件商標は引用商標に類似していないし、少なくとも

48/
  本件商標の指定商品の第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴み機
  ・穿孔機等のアタッチメント」は、専門的な分野において使用される特殊な
  機械器具装置として請求人の業務に係る商品等との間において、それらの性
  質・用途又は目的における関連性の程度は低く、かつ、それら商品等の取引
  者及び需要者の共通性はないために、「他人の業務に係る商品と混同を生ず
  るおそれがある商標」に該当しないことはもちろんのこと、「他人の周知商
  標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標」に該当せず、また
  、公序良俗にも違反していないことから、商標法第4条第1項第15号、同
  項第19号又は同項第7号の規定に違反して登録されたものではない。

  第4 当審の判断
   1 商標法第4条第1項第15号該当性について 
  (1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務
  と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定
  役務に使用したときに、当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務
  であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品又は役務が上記
  他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一
  の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に
  係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして
  、上記の「混同を生じるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似
  性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商
  品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目
  的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性そ
  の他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及
  び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断される
  べきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号)。
  (2)商標の類似性の程度について
   ア 外観について
   本件商標は、別掲のとおり「GUZZILLA」の欧文字よりなるもので
  ある。
   本件商標において、「G」と「A」の字体は、やや丸みを帯び、「U」と
  3文字目の「Z」の上端及び7文字目の「L」と「A」の下端は、それぞれ
  結合し、3文字目及び4文字目の「Z」は、両文字の左下が前下方に鋭く突
  尖しているほか、やや縦長の太文字で表されることによって、デザイン化さ
  れている。
   引用商標は、「GODZILLA」の欧文字よりなるものである。
   なお、実際には、様々な書体で使用されている。
   本件商標と引用商標の外観とを対比すると、いずれも8文字の欧文字から
  なり、語頭の「G」と語尾の5文字「ZILLA」を共通にするもので、2

49/
  文字目において、本件商標は「U」からなるのに対し、引用商標は「O」か
  らなるが、本件商標において「U」と3文字目の「Z」の上端は結合し、や
  や縦長の太文字で表されているから、見誤るおそれがある。
   もっとも、本件商標と引用商標は、3文字目において相違するほか、本件
  商標は上記のとおりデザイン化され、全体的に外観上まとまりよく表されて
  いる。
   そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において相紛らわしい点を含
  むものということができる。
   イ 称呼について
   本件商標の語頭の2文字「GU」は、ローマ字の表記に従って発音すれば
  「グ」と称呼され、我が国において、なじみのある「GUM」などの英単語
  と同様に発音すれば「ガ」と称呼される。
   したがって、本件商標は、「グジラ」又は「ガジラ」と称呼され、語頭音
  は「グ」と「ガ」の中間音としても称呼されるものである。
   なお、被請求人が製造販売等する建設機械用アタッチメント(以下「被請
  求人アタッチメント」という。)は、本件商標の登録出願日以前において、
  その外観に本件商標が付され、「ガジラ」との名称で取引されていたことが
  認められるものの(甲216~甲218)、その名称が「ガジラ」として、
  広く知られていたと認めるに足りる証拠はない。
   したがって、本件商標から「ガジラ」との称呼のみが生じるとはいえない
  。
   引用商標は、下記(3)イのとおり、怪獣映画に登場する怪獣の名称とし
  て著名な「ゴジラ」の欧文字表記として広く知られているから、「ゴジラ」
  と称呼されるものである。
   また、引用商標の語頭音は、英語の発音において、「ゴ」と「ガ」の中間
  音としても称呼され、現に大ヒットした映画「シン・ゴジラ」でも、「ゴ」
  と「ガ」の中間音として称呼されていたものである(甲163~甲166)
  。
   そして、我が国において、本件商標の登録出願時、引用商標の英語の発音
  による称呼も一般化していたものであるから(甲79~甲82)、引用商標
  の語頭音の「ゴ」は、「ゴ」と「ガ」の中間音としても称呼されるものであ
  る。
   本件商標と引用商標の称呼を対比すると、語頭音を除く称呼は「ジラ」と
  共通する。
   また、語頭音は、本件商標は「グ」と「ガ」の中間音として称呼され得る
  ものであって、引用商標は「ゴ」と「ガ」の中間音として称呼され得るもの
  であるところ、本件商標における「グ」と「ガ」の中間音と、引用商標にお
  ける「ゴ」と「ガ」の中間音とは、いずれも子音を共通にし、母音も近似す
  る。

50/
   したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしいものと
  いうべきである。
   ウ 観念について
   本件商標からは特定の観念が生じず、引用商標からは怪獣映画に登場する
  怪獣「ゴジラ」との観念が生じる。
   エ 本件商標と引用商標の類似性について
   以上アないしウのとおり、本件商標と引用商標とは、観念において、紛れ
  るおそれがなく、称呼において相紛らわしいものであって、外観においても
  相紛らわしい点を含むものということができるから、本件商標と引用商標と
  は、類似性が高い商標ということができる。
  (3)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について
   ア 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」は、請求人によって創作さ
  れたものであり(甲4)、「ゴジラ」が著名であることは当事者間に争いが
  ない。
   イ 怪獣映画に登場する怪獣である「ゴジラ」には、昭和30年、欧文字
  表記として引用商標が当てられ、その後、引用商標が「ゴジラ」を示すもの
  として使用されるようになったものである(甲7、甲8)。欧文字表記の引
  用商標は、我が国において、遅くとも昭和32年以降、映画の広告や当該映
  画中に頻繁に使用され(甲7、甲8、甲21、甲29~甲34、甲39~甲
  50)、遅くとも昭和58年以降、怪獣である「ゴジラ」を紹介する書籍や
  、これを基にした物品に多数使用されていること(甲53~甲74、甲10
  1、甲102)、さらに、怪獣である「ゴジラ」の英語表記として多くの辞
  書にも掲載されていること(甲125~甲129、甲143~甲153)か
  らすれば、引用商標は著名であるということができる。
   ウ 語頭が「G」で始まり、語尾が「ZILLA」で終わる登録商標は、
  引用商標の他には、本件商標を除き見当たらない。架空の怪獣の名称におい
  て、語頭が濁音で始まり、語尾が「ラ」で終わる3文字のものが多いとして
  も、これらは怪獣「ゴジラ」が著名であることの影響によるものと認められ
  (乙6、乙7)、さらに、欧文字表記において、引用商標と類似するものも
  見当たらない。
   エ 以上によれば、引用商標は周知著名であって、その独創性の程度も高
  いというべきである。
  (4)商品の関連性の程度について
   本件商標の指定商品は、第7類「パワーショベル用の破砕機・切断機・掴
  み機・穿孔機等のアタッチメント」である。
   本件商標の指定商品は、土木機械の一種である動力ショベル用の附属装置
  (アタッチメント)であって、その土木作業の用途(破砕・切断・掴み・穿
  孔等)によって交換される動力ショベル専用の装置といえ、土木に関する専
  門的・職業的な分野において使用される機械器具といえる。

51/
   そして、被請求人は、これらの商品を製造、販売する者であり、本件商標
  の指定商品の需要者はこれらの商品を使用する土木関連分野業務に従事する
  専門業者といえ、その取引者はそれら機械器具の製造販売やリースを行う者
  である。
   これに対し、請求人の主な業務は、映画の制作・配給、演劇の制作・興行
  、不動産経営等のほか、キャラクター商品等の企画・制作・販売・賃貸、著
  作権・商品化権・商標権その他の知的財産権の取得・使用・利用許諾その他
  の管理であり(甲159)、多角化している。請求人は、100社近くの企
  業に対し、引用商標の使用を許諾しているところ、その対象商品は、人形や
  ぬいぐるみ等の玩具、文房具、衣料品、食料品、雑貨等であるなど、多岐に
  わたる(甲83~甲96)ものである。
   そして、請求人は、これらの商品を製造、販売する者であり、需要者は一
  般消費者といえ、その取引者はこれらの商品の製造販売や小売等を行う者で
  ある。
   そうすると、本件商標の指定商品と、請求人が引用商標の使用を許諾した
  玩具、文房具、衣料品、食料品、雑貨等とは、前者が、土砂の掘削等の作業
  現場で使用される動力ショベル用の附属装置(アタッチメント)であって、
  専らその性能や品質などが商品選択の基準とされるのに対し、後者は、日常
  生活で、一般消費者によって使用される物であり、性質、用途及び目的にお
  ける関連性の程度は高くなく、両者の取引者及び需要者は、共通していると
  はいい難いものである。
   したがって、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る商品と比較した
  場合、性質、用途又は目的における関連性の程度は高いとはいえず、その取
  引者及び需要者を共通しているとはいえない。
  (5)出所混同のおそれについて
   以上のとおり、「混同を生じるおそれ」の有無を判断するに当たっての各
  事情について、取引の実情などに照らして考慮すれば、本件商標の指定商品
  である土木に関する専門的・職業的な分野において使用される機械器具と、
  請求人の業務に係る商品との関連性は高いとはいえず、その商品の取引者及
  び需要者を共通しているとはいえない。
   しかしながら、引用商標は周知著名な商標であって、その独創性は高いも
  のであり、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしいものであっ
  て、外観においても相紛らわしい点を含むものであるから類似性は高いもの
  である。
   さらに、請求人の業務内容は多角化しているといえる。
   そうすると、本件商標を使用したときに、当該商品が請求人又は請求人と
  の間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示
  による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商
  品であると誤信されるおそれがある場合も少なくないといわざるを得ない。

52/
  (6)被請求人の主張について
   被請求人は、本件商標は、被請求人により、英単語「GUZZLE」と「
  GORILLA」とを組み合わせるなどして創作された造語であると主張す
  る。
   しかしながら、引用商標は、周知著名なものであって、怪獣映画に登場す
  る怪獣「ゴジラ」との観念を生じさせるものであり、街や建造物を破壊する
  という力強いイメージを有するものである。
   また、本件商標の指定商品は、土砂を掘削したり、固い岩盤を粉砕したり
  するなどに用いられる動力ショベル専用の装置であるから、その取引者及び
  需要者は、引用商標が有する力強いイメージに誘引されて、取引を行うこと
  が十分に考えられるものである。
   さらに、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において、本件商標が、
  英単語「GUZZLE」と「GORILLA」とを組み合わせるなどして独
  自に創作された造語であって、引用商標と異なるということを認識した上で
  取引を行うことは、英単語「GUZZLE」が見慣れない英単語(甲238
  )であることからすれば考えにくいものである。
   したがって、本件商標が被請求人により創作された造語であるとの被請求
  人の主張は、本件商標を本件商標の指定商品に使用したときに、本件商標の
  指定商品が請求人の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとの判
  断を左右するものにはならない。
  (7)小括
   以上によれば、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。  
   2 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
   本件商標は、引用商標との関係において、上記1のとおり、取引者、需要
  者に混同を生じさせるおそれがあるとしても、本件商標の商標権者が、引用
  商標を剽窃する目的で本件商標を登録出願し、本件商標をその指定商品につ
  いて使用することにより、引用商標の周知・著名性に便乗し、不正に利益を
  得ようとする意図があったと認めるに足りる証拠の提出はないから、本件商
  標は、不正の目的をもって使用する商標と認めることができない。
   また、本件商標は、登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあ
  るとか不正の目的をもって登録出願されたものである等の公の秩序又は善良
  の風俗を害するおそれがある商標に該当するものであると認めるに足りる証
  拠の提出はない。
   したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に
  該当する商標と認めることができない。
   3 むすび
   以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第
  19号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであり、その登
  録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第

  1項の規定により無効とすべきである。
   よって、結論のとおり審決する。

        令和 4年 3月31日

                 審判長  特許庁審判官 小松 里美
                      特許庁審判官 榎本 政実
                      特許庁審判官 小俣 克巳

 

控訴事件 令04行ケ10035
商標登録insideNews:「ティラノサウルスレース」なぜ商標取得?ネタに見えて熱い背景事情 | withnews.jp

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