マドプロからの米国保護拡張の際に出される最初の暫定拒絶理由をなるべく回避

マドリッド制度による国際登録出願では、1つの登録出願で多数の国での商標権を得ることができるというメリットがあります。ところが、国際登録出願の願書の記載内容は、各国様式の最大公約数的なところがありますので、各国の詳細な事情には対応できないというデメリットもあります。米国での商標登録には、連邦登録として公示される際に掲載される事項が幾つか決められており、マドリッド制度による国際登録出願の願書(MM2)には、それらの事項についての記載欄がありますが、その記載方法はルールを理解した上での英語での記載が必要なことから、一般には簡単ではなく国際登録出願に対しては高い確率で拒絶理由が打たれる傾向があります。このような記載事項の欠落や訂正についての比較的軽微な拒絶理由に対しては補正によって対処できますが、その応答には、米国弁護士 による応答が必要になります。

米国特許商標庁/USPTO Alexandria Virgina, USA

1.標章の説明(mark description)

標章についての説明を記載します。標章が文字列からなり、標準文字でない場合には、一般に”The mark consists of the stylized wording ABCDE.” (マークは様式化された文字”ABCDE”からなる。)また、図形からなる場合では、”The mark consists of a stylized drawing of ‘an ITEM'” (マークは様式化されたITEMの図形からなる。)などの記載も可能ですが、図形はより複雑な場合では、構成要素ごとに詳しく説明する記載が求められています。もし、標章が標準文字からなる場合には、原則、標章の説明は不要となります。説明は標章の全ての主要な部分について記載する必要があり、それは文字と図形の両方の部分を含みます。標章の説明は、マドリッド制度MM2のSection.9のMISCELLANEOUS INDICATIONSの欄で(e) Description of the markの(ii) Voluntary description of the markに記載可能です。もし(i)に記載すると国際出願室からの削除要請があると思われます。

色の請求(color claim)

標章が色を含む場合、標章の説明欄には、含まれる色を挙げ、標章のどこにそれらの色が現れるにかを説明します。従って、色を含む標章の場合、マドリッド制度MM2のSection.8のColor Claimedの欄で、(a)でcolor claimを行い、(b)でどこにそれらの色が現れるがを書き込むことになります。ただし、標準文字の場合は、Description of Markは不要となり、色の請求もできません。Color claimの記載は、色の要素が権利の対象なのかをはっきりさせるための記載で、色は権利に関係ない場合は、”Color is not claimed as a feature of the mark. ”色が権利に関係する場合には”The color(s) blue, light blue, aqua blue, dark blue, navy is/are claimed as a feature of the mark.”のような記載をします。TESSのデータベースでは、color claimの記載がmark descriptionの内容の一部となり、それぞれの色がどのような要素に現れるかも標章の説明に記載することになります。もし、黒、白、及び/または灰色が背景、輪郭、影、及び/または透明な領域を現し、それらが標章の一部ではない場合には、そのように説明に記載する必要があります。

2.翻訳(mark translation)

翻訳と音訳は英語以外の外国語での記載がある場合に必要であり、標章を構成する図形の一部に例えば片仮名が含まれる場合でも、翻訳及び音訳が必要となります。米国では知られていますのように、Doctrine of Foreign Equivalents(外国同義語の法理:TMEP 1207.01(b)(vi))とよばれるルールがあり、これは米国消費者の一部に馴染んだ言語における外国語とその英語の同義語は、類似として取り扱うという法理です。Thomas, 79 USPQ2d at 1025-26; see also In re Jos. Schlitz Brewing Co., 223 USPQ 45, 45-46 (TTAB 1983) (considering whether purchasers would be likely to translate the mark “KUHLBRAU” into its merely descriptive English equivalent, “cool brew”).この法理に従って類似と認定される商標もありますので、外国語には翻訳及び音訳が必要となります。特に音訳はできても、その言語での意味が生じない場合には、”has (having) no meaning in a foreign language.”と記載します。マドリッド制度MM2のSection.9のMISCELLANEOUS INDICATIONSの欄で”(b) Translation of the mark (as may be required by certain designated Contracting Parties;”の部分に翻訳を記載できます。

音訳(mark transliteration)

漢字や平仮名、カタカナで書かれた文字をどのように読むのかを記載します。たとえば”夏の思い出”の文字商標では、”The transliteration of the non-Latin characters in the mark is”NATU NO OMOIDE””のように記載されます。典型的には、音訳と翻訳が結合した記載が使われます(Ex.”The non-Latin characters in the mark transliterate to “Asahi” and this means “Rising Sun” in English.”)。マドリッド制度MM2のSection.9のMISCELLANEOUS INDICATIONSの欄で”(a) Transliteration of the mark”の部分に音訳を記載できます。

3.権利不要求(disclaimer)

権利不要求は、商標権者は商標の一部について独占的な使用をしないとする主張になります。どのような部分が権利不要求となる登録できないか部分となるのかというと、商品や役務の名称や、出所を表示しないもの、商品や役務の単なる記述や誤った記述、商標や役務の主に地理的な記述であるものなどが該当します。名字は一般的に権利不要求の対象となりないとされています。例えばハンドクリームの指定商品で、商標”○○○ cream”の”cream”の部分です。権利不要求の記載方法は、典型的には”No claim is made to the exclusive right to use ____________ apart from the mark as shown.”と記載します。企業の法人格を示す部分やその短縮名称(e.g., Corporation, Corp., Co., Inc., Ltd., etc.) 或いは家族的な企業構造部分(e.g., “& Sons” or “Bros.”)は権利不要求となります。外国語の文字が翻訳した場合に権利不要求となる場合には、その外国語の文字も権利不要求となります。この場合の記載は、”No claim is made to the exclusive right to use the non-Latin characters that transliterate to “[specify Latin character transliteration]” apart from the mark as shown.”となります。マドリッド制度MM2のSection.9のMISCELLANEOUS INDICATIONSの欄で”(g) The applicant wishes to disclaim protection for the following element(s) of the mark:”のところにdisclaimerを記載することが可能です。

文字結合商標の権利不要求

2つ以上の文字を結合した商標は、原則、権利不要求とはなりません (e.g., BOOKCHOICE, PROSHOT, MAXIMACHINE, and PULSAIR)。また、2つ以上の文字の同じスペルを重ねた言葉(Telescoped Words)からなる商標も原則、権利不要求とはなりません (e.g.,HAMERICAN, ORDERECORDER, SUPERINSE, VITAMINSURANCE, and POLLENERGY)。結合文字商標がハイフンで分離されている商標も原則、権利不要求とはなりません(”TIRE-X”for tireの”tire”)。また、ハイフン以外のアスタリスク (e.g., RIB*TYPE), スラッシュ (e.g., RIB/TYPE) or 上付きのピリオド(e.g., RIB°TYPE) なども同様に原則、権利不要求とはなりません。ただし、ハイフンで分離されていても、全体として識別力がないものとされて全体として権利不要となることがあります(OVER-COATは”OVERCOAT”が権利不要求になります。)。

4.標準文字(standard character letters)

米国での保護拡張に標準文字を用いる場合には元の国際出願も標準文字を採用していることが必要であり、従って本国登録、日本国民の場合には基礎となる日本出願も標準文字で登録している必要があります。米国商標に採用できる標準文字は、ウエブ上にリストがあり、ラテン文字や数字なども含まれていますが、漢字、片仮名、平仮名は含まれていません。米国での保護拡張では、マドリッド制度MM2のSection.7のMarkの欄で、(c) The applicant declares that he wishes the mark to be considered as a mark in standard charactersのチェックボックスにチェックを入れます。

5.指定商品指定役務(goods and services identification)

日本からの国際登録出願の指定商品・指定役務は、広い言葉の選択での商品役務の指定が行われる傾向があり、多くの場合で、その区分全部の商品役務を指定していたりしますが、このような指定は米国での保護拡張には認められないことになります。従いまして、日本からの国際登録出願が単に元出願の翻訳で商品役務の指定をしている場合には、審査官は補正を求めることになります。米国での保護拡張の際に、指定商品・指定役務の補正を受けずに審査を通過させることは難易度が高い作業ですが、マドリッド制度MM2のSection.10のGoods and Servicesの欄で、(b) The applicant wishes to limit the list of goods and services in respect of one or more designated Contracting Parties, as follows:の欄にチェックを入れて、米国だけ異なる形式での指定が可能です。この場合、指定商品・指定役務の記載を日本の基礎出願の範囲から同じかより狭い範囲に限定する必要あります。米国のID Manualに従った何度か同じ指定商品や指定役務での登録が既にある場合は、それを複写することでも良いように思います。

Auditとの関係

日本からの国際登録出願では、登録時の使用宣誓書の提出が不要で、最初の使用宣誓書の提出が5-6年目の提出時期の際となります。ところが、日本の登録で商標が不使用の指定商品や指定役務があってもそれだけでは問題を生じさせない制度になっていますが、米国では不使用の指定商品や指定役務は登録上は存在しないことになっていますので、5-6年目の使用宣誓書の提出の際に、実際に使用していない商品役務を削除しておかないと検査(Audit)に引っかかるおそれがあり、登録が取り消しになったり、2020.7時点で準備されている法改正の後になりますが補正する際に費用(1区分 250USドル)を求められたりもします。

6.法人の記載(Entity Clarification)

法人格の表記については、疑義が生じないように記載することが求められ、特に日本からの国際登録出願では、例えばCo.Ltd.を入れた記載をする場合に、Examining Attorneyが質問することがあります。マドリッド制度MM2のSection.2のApplicantの欄で,(f) Other indications (as may be required by certain designated Contracting Parties, such as, for example, the United States of America; のところで(ii)のlegal nature of the legal entity:の欄で”Corporation”と記入し、– State (country) and, where applicable, territorial unit within that State (canton, province, state, etc.), under the law of which the said legal entity has been organized:”Japan”と記入すれば日本法人であることが分かります。

7.団体商標、証明標章(Collective Certificate or Guarantee mark)

団体商標や証明標章を国際登録によって権利化することも可能で、マドリッド制度MM2のSection.9のMISCELLANEOUS INDICATIONSの欄で(d) Where applicable, check the relevant box or boxes below:Collective mark, certification mark, or guarantee markのチェックボックスにチェックを入れます。米国での保護拡張の際には、宣誓書を提出することになりますが、次の文章をMISCELLANEOUS STATEMENTとして提出することでも、手続完了にすることができます。例えば団体商標の場合には、”As of the application filing date, applicant has had a bona fide intention to exercise legitimate control over its members’ use of the collective mark in commerce that the United States Congress can regulate. Applicant’s bylaws or other written provisions specify the manner of control, or intended manner of control, of the use of Applicant’s mark by its members. ”という主張をする必要があります。また、団体員についても明らかにする必要があり、出願人と団体員との関係や、制約の仕方などについても説明します。証明標章の場合には、”as of the application filing date, the applicant has had a bona fide intention to exercise legitimate control over the use of the certification mark in commerce that the United States Congress can regulate; he/she believes the applicant to be entitled to exercise legitimate control over the use of the mark in commerce that the United States Congress can regulate; applicant will not engage in the production or marketing of the goods or services to which the mark is applied;”という主張をする必要があります。また、出願人は証明の基準についてのコピーを提出する必要があります。

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