商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#8

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「MobileBoard/モバイルボード」

1.出願番号  平成10年商標登録願第70795号
2.商  標  「MobileBoard/モバイルボード」
3.商品区分  第9類:電子機械器具及びその部品
4.適用条文 商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号
5.拒絶理由  「『PHS通信カード、デジタル携帯通信カード等のモバイル周辺機器及び携帯情報端末、携帯用ノートパソコン、携帯電話等のモバイル商品』について使用するときは、これに接する取引者・需用者が、モバイル周辺機器用のボード盤又は該ボードを搭載したものであると理解するにすぎない。」

出願商標
審判における反論 拒絶理由通知 tm8-1

審判における反論 拒絶理由通知

(1)手続の経緯
出願 平成10年 8月20日
拒絶理由の通知 平成11年10月 1日(起案:平成11年 9月21日)
意見書   平成11年10月 8日
拒絶査定 平成11年11月11日
同謄本送達   平成11年11月26日

(2)拒絶理由通知 拒絶査定の理由の要点
原査定の拒絶理由は、「本願は、平成11年9月21日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。なお、出願人は意見書において種々述べているが、さきの認定を覆すにたりない。」というものであり、具体的には、拒絶理由通知書に示すとおり、「本願商標は、『携帯用ボード盤』程度の意味合いを認識する『MobileBoard』『モバイルボード』の文字を普通に用いられる方法で書してなるので、これをその指定商品中『PHS通信カード、デジタル携帯通信カード等のモバイル周辺機器及び携帯情報端末、携帯用ノートパソコン、携帯電話等のモバイル商品』について使用するときは、これに接する取引者・需用者が、モバイル周辺機器用のボード盤又は該ボードを搭載したものであると理解するから、単に該商品の品質・機能を表示するにすぎないものと認められ、したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する」というものである。
なお、意見書に添付して第7号証として提出した登録第4015035号「SOUNDBOARD\サウンドボード」に関して、付与後異議申し立てにより指定商品の一部が取り消されている旨の指摘が原査定でなされている。

(3)本願商標が登録されるべき理由
然るに、本出願人は、意見書において、本願商標が2つの言葉を結合した造語商標であって、一般的に品質・機能表示として流通し機能しているわけではないこと、及び、現に「MOBILE」「モバイル」や「BOARD」「ボード」の文字を含む商標は多数登録されていること、等の事実を指摘し、本願商標は拒絶理由には該当しないことを主張したにも拘わらず、かかる認定をされたことに対しては承服できないところがある。従って、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

(A)本願商標の構成
 本願商標は、願書に表示した商標からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「MobileBoard/モバイルボード」と二段併記した態様からなるものであり、且つ指定商品を第9類の「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」とするものである。

(B)審査官の認定に対する反論
 然るに本願商標の「MobileBoard/モバイルボード」は、審査官もご指摘のように、「Mobile」と「Board」の言葉の意味合いを考えれば、なるほど全体として「携帯用ボード盤」程度の意味合いになり得ることは否定するものではないが、一般的には、そのような意味合いを表す言葉(熟語)として、「MobileBoard/モバイルボード」が理解され、確立されているという事実はない。
 「MobileBoard/モバイルボード」が、ある一つの商品を表す言葉としてコンピュータ・電子・通信等を扱う業界において確立され流通されていればまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質・機能表示だと言うことはできないものと思料する。
 そして仮に、本願商標を「携帯用ボード盤」という意味に取ったとしても、それが如何なる商品を表すものなのか定かではないし、「モバイル周辺機器用のボード盤又は該ボードを搭載したもの」というのも、如何なる商品を想定しているのか定かでない。それ故、取引者・需用者が、モバイル商品に使用されている本願商標をみて、モバイル周辺機器用のボード盤又は該ボードを搭載したものであるなどと理解することも、通常はあり得ないと思料する。

この点に関連して、例えば、「Mobile」「モバイル」や「Board」「ボード」を用いた商標は、以下のように、本願と同一の商品分野において、多数登録されている。

a.登録第4005656号 「MOBILEGEAR\モバイルギア」……第1号証
b.登録第4207016号 「MobileScope\モバイルスコープ」……第2号証
c.登録第4235975号 「MOBILEGUIDE」……………………第3号証
d.登録第4246235号 「モバイルナビゲーター」………………………第4号証
e.登録第2265121号 「メガボード\MEGABOARD」…………第5号証
f.登録第3174832号 「SMARTBOARD\スマートボード」…第6号証
g.登録第4038849号 「MusicBoard」………………………第7号証
h.登録第4059464号 「POWER BOARD」…………………… 第8号証
i.登録第4153450号 「Partitionboard\パーティションボード」…第9号証
j.登録第4194389号 「リモートボード\remoteboard」…… 第10号証
k.登録第4200706号 「Stationboard\ステーションボード」………第11号証
l.登録第4206317号 「Contactboard\コンタクトボード」…………第12号証

 もし仮に、審査官の考え方に従うのであれば、上記aの「MOBILEGEAR\モバイルギア」は「携帯用電動装置」程度の意味合いを認識させるであろうし、また、bの「MobileScope\モバイルスコープ」は「携帯用検器」程度の、cの「MOBILEGUIDE」は「携帯用誘導装置」程度の、dの「モバイルナビゲーター」は「携帯用進路自動調整装置」程度の、それぞれ意味合いを生ずるということになるのであろう。

そして、その意味合いからすれば、これらを、その指定商品中「PHS通信カード、デジタル携帯通信カード等のモバイル周辺機器及び携帯情報端末、携帯用ノートパソコン、携帯電話等のモバイル商品」について使用するときは、審査官の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、モバイル周辺機器用の商品を搭載したものであると理解し、単に該商品の品質・機能を表示するにすぎないということになって、拒絶と言うことになるであろうが、実際には登録されている。

また、同様に、もし仮に審査官の考え方に従うのであれば、eの「メガボード\MEGABOARD」は「大容量用のボード盤」程度の、fの「SMARTBOARD\スマートボード」は「細くすらりとしたボード盤」程度の、gの「MusicBoard」は「音楽ボード盤」程度の、hの「POWER BOARD」は「出力ボード盤」程度の、iの「Partitionboard\パーティションボード」は「仕切りボード盤」程度の、jの「リモートボード\remoteboard」は「遠隔操作用のボード盤」程度の、kの「Stationboard\ステーションボード」は「局となるボード盤」程度の、lの「Contactboard\コンタクトボード」は「交信ボード盤」程度の、それぞれ意味合いを生ずるということになるのであろう。

そして、その意味合いからすれば、これらをその指定商品について使用するときは、審査官の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、単に該商品の品質・機能を表示するにすぎないということになって拒絶と言うことになるのであろうが、実際には登録されているのである。

このように、審査官のような見方をすれば、一見、品質・機能表示的な商標と思われるものであっても、実際には、本願商品分野において、拒絶されることなく登録されている例は多数にのぼっている。

 然るに、これらの商標が登録できて、本願商標の「MobileBoard/モバイルボード」だけが、登録できないとされるいわれはない。本願商標は、あくまでも「Mobile」「モバイル」と「Board」「ボード」が結合して一体となった造語商標であり、一般的に品質・機能表示として流通し機能しているわけではないのであるから、十分に自他商品識別力を有し、登録適格なものと思料する。

なお、拒絶査定において審査官が指摘した、第7号証の登録第4015035号「SOUNDBOARD\サウンドボード」に関する付与後異議申し立てにおける指定商品の一部取り消しに関してであるが、この取り消された指定商品は「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」であるところ(平成9年異議第90278号の異議の申し立てについての決定=第13号証参照)、これは所定期間内に意見書を提出しなかったことにも一因があり、しかも英和辞典を紐解けば明らかなように、「sound board」は「sounding board」のことであり、「共鳴板」とか「反響板」とかを意味する熟語として確立された言葉となっていることが、その一部取り消しの大きな要因であったと思料する。つまり、英和辞典等に熟語として載せられている「SOUNDBOARD\サウンドボード」と、造語商標であって、熟語として未だ確立されていない本願商標の「MobileBoard/モバイルボード」とでは、意味合いが異なる。

(4)むすび
 以上の次第でありますので、本願商標の「MobileBoard/モバイルボード」は、既存の前記登録商標などと同様に自他商品識別力を有し、充分に登録適格性を有するものと思料します。

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