米国特許商標庁(USPTO)に対する手続代理人の代理権限

米国の知的財産実務に精通している方は何を今更というところですが、日本の特許庁(JPO)に対する弁理士と弁護士の職業代理人として認められている権限と、米国特許商標庁(USPTO)に対するPatent Agent(米国弁理士)、Patent Attorney(米国特許弁護士)、及び米国弁護士(Attorney at Law)のそれぞれ職業代理人として認められている権限が、実は微妙に同じではないので、分かり易く解説できればと存じます。また、2019年8月3日から米国商標について外国人は米国弁護士による代理が必須となります。

米国特許商標庁(USPTO)に対する代理人

特許

米国特許商標庁では、特許についての代理人は、Patent Agent(米国弁理士)かPatent Attorney(米国特許弁護士)のどちらかの資格が必要というように決められています。Patent AgentとPatent Attorneyは、それぞれPatent Bar Examinationに合格した者が登録できる資格で、一般の方がPatent Bar Examinationに合格すればPatent Agent(米国弁理士)になることができ、米国のいずれかの州の弁護士資格を有する者がPatent Bar Examinationに合格すればPatent Attorney(米国特許弁護士)となります。また、Patent Agent(米国弁理士)がLaw Degreeを取得して州の弁護士試験に合格して米国のいずれかの州の弁護士に登録してもPatent Attorney(米国特許弁護士)になれます。Patent Bar Examinationは連邦法によるルールが当て嵌まりますので、国益を守る観点から外国籍の人間即ち外国人を排除することができ、日本人がPatent Barを受験するには、理工系の学位等と就労ビザに特許の仕事についての記載が求められ、合格した場合でもLimited Recognition(visaの範囲での限定許可)となります。永住権を取得すれば、日本人という外国人の枠がはずれて、限定した資格ではなく正式なPatent Agent(米国弁理士)かPatent Attorney(米国特許弁護士)となることができますが、税法上180日ルールなどが適用になりますので、日本に帰国する人は過去にPatent Bar Examinationに合格した者としかならない仕組みになっています。米国特許商標庁で扱う特許は、通常の特許(Utility Patent)だけではなく意匠登録(Design Patent)も含まれます。Patent Agent(米国弁理士)とPatent Attorney(米国特許弁護士)の間には、弁護士か否かという差があり、弁護士はlaw degreeを有した者、Law Schoolで学んだ経験を持ち、裁判所などへの対応もできるということで、アメリカ国民にとっては弁護士か否かは明らかな違いになっています。日本人に対しては、Patent Attorneyを弁理士と訳すことで、それ自体は誤訳でもないとは思いますが、米国弁理士と称している方について、Agentだけの米国弁理士なのかAttorney資格を有しているけど日本の資格に寄せて弁理士と称しているのかは、米国での裁判所の手続を依頼することも考えると気に掛ける必要があります。

商標

米国特許商標庁では、商標についての代理人は、米国のいずれかの州の弁護士(Attorney at Law)である必要があります。米国でtrademark bar examinationという商標の資格試験はありません。米国の特許弁護士(Patent Attorney)はその前提として弁護士ですので、商標についての手続を代理することはできますが、Patent Agent(米国弁理士)は商標についての手続の代理をすることができません。米国のいずれかの州の弁護士(Attorney at Law)になるには、通常、law degreeを取得して州の弁護士試験(State bar examination)に合格する必要があり、州の弁護士をstate bar memberと称することもあり、例えばイリノイ州であればIllinois state bar memberと呼ぶこともあります。また、州の弁護士については、履歴書などに正式には、州の最高裁判所での実務を認可された、admitted to practice the highest or supreme court of the Stateというような言い方もしますし、米国特許商標庁の2019年8月3日のルール改正で、外国人(自然人及び法人)は出願等に関して米国弁護士の代理が必須となりますが、米国弁護士(US-licensed attorney)であれば代理でき、例えばカナダの弁護士も単独代理はできなくなっています。弁護士数の極めて少ない州では、ロースクールの卒業だけで弁護士資格を認め、試験のない州もありますが、大都会のある州では最近では弁護士数の増大傾向にあり、人数を制限する意味から州の弁護士試験の合格率も低下している傾向があります。米国特許商標庁に対する代理人は、米国のいずれかの州の弁護士であれば良いので、多くのbusiness lawyerやin-house attorneyの方も商標の手続きに関して代理することができます。弁護士になれるか否かは州法の範囲ですので、外国籍の人間を排除するということは差別としてできないルールとなっており、特に住む場所や就労ビザなどで制限されることはありません。商標の出願や使用宣誓書の提出の代理については、米国の特許弁護士から見れば、州の弁護士であれば特別な試験合格なしに代理できるということになります。また、日本の外国法事務弁護士の登録制度と同様な州の外国法コンサルタント登録の制度もあり、これも州の弁護士に寄せて米国弁護士の肩書(なお州弁護士と称することは禁止されています。)を入れている方もいるかと思いますが、提供できるサービスは、日本の資格をベースにしている場合には、日本法の範囲でだけアドバイスでき、その州の法律や米国連邦法についてのアドバイスをすることはできないルールとなっています。

日本の特許庁(JPO)に対する代理人

日本の特許庁に対する手続の代理人は、日本の弁理士又は弁護士です。弁理士、弁護士になるには、それぞれ資格試験があります。日本の特許庁は、特許の職業代理人と、商標の職業代理人を区別するようなことはなく、弁理士であれば特許、実用新案、意匠登録、商標登録の産業財産権の4法についての手続代理の権限を有します。

有明国際特許事務所では、日本の弁理士資格と、アメリカ合衆国連邦規則§11.1に定義されている米国弁護士資格により、特許庁 (JPO)と米国特許商標庁(USPTO)にそれぞれ直接手続でき、現地代理人は不要です。

米国商標の外国人に対する新規則

2019年8月3日より、米国の商標に関して、米国以外の外国人の出願人や商標権者(法人も含む。)は、米国特許商標庁(USPTO)への商標出願、その他の種類の手続には、米国の州ライセンスを持つ弁護士(US-licensed attoreny)に代理させることが必要となります。米国の州弁護士であることが必須なため、日本の弁理士を含む外国ライセンスの弁理士・弁護士であっても、米国の州弁護士の有資格者を雇う必要があります。Pro se filingと呼ばれる、外国法人や個人が行う自分での出願や使用宣誓書の提出、更新手続はできなくなります。マドプロで米国を指定した出願も、米国特許商標庁からの暫定拒絶通報やその後の米国特許商標庁に対する権利維持の対応には、米国弁護士を雇って提出することになります。USPTO announces new trademark rule requiring foreign-domiciled applicants and registrants to have a U.S.-licensed attorney | USPTO