米国特許商標庁の使用証拠検査制度

使用証拠の登録後検査制度(Post-Registration Proof of Use Audit Program)

米国ての商標登録の登録後の手続に関しては、Bose事件(In re Bose Corporation, No. 08-1448 (Fed. Cir. 2009))で、連邦巡回区控訴裁判所はMedinol Standard (使用宣誓書で全商品を使用していると宣誓したにも拘わらず、一部商品について不使用はフロードとする基準、Medinol Ltd. v. Neuro Vasx Inc., 67 USPQ2d 1205)を破棄し、商標権利者のミスで使用宣誓書の全商品を使用していなくとも権利無効とまではならないという判決を出しておりましたが、ここで米国特許商標庁(USPTO)は5年―6年目の使用宣誓書を提出した商標権者を抜き打ちで検査し、不使用の商品を含んで使用していると宣誓書を提出したか否かをチェックするシステム(Post Registration Proof of Use Audit Program)を始めています。2018年では10%程度が検査対象となると言われていましたが、米国特許商標庁は2019年には登録の正確性を維持するための改革を進めており、Auditプログラムを遂行するためのスタッフを増強し、年間5000件ぐらいは検査するのではと言われています。最近の統計では、検査対象者の79%が弁護士によって代理されており、そのうちの52%が商品またはサービスを削除する必要があることを示しています。さらに2020年8月予定の法改正で、Auditプログラムでの指摘に応じて商品を削除する補正は1つ商品を削除するごとに100USDの補正削除費用を必要となる見込です。

paper and pen

検査対象となる宣誓書

§8若しくは§71の使用宣誓書を提出し、商標登録が1つの区分だけの場合、4若しくはそれ以上の商品又は役務を含むとき、あるいは商標登録が少なくとも2区分の場合、その少なくとも2区分で2若しくはそれ以上の商品又は役務を含むときに検査対象となることがあります。検査対象とされた場合は、使用宣誓書を提出した後でも拒絶理由通知(Office Action)を受け取ります。5-6年目の§71の使用宣誓書を提出した登録も対象ですので、マドリッド制度により米国にも保護拡張がなされた国際登録も対象となります。

検査対象となった場合の拒絶理由通知

検査対象となった場合の拒絶理由通知には、検査対象の選択された旨が記載されており、それぞれ検査対象となった区分で2つの追加の商品又は役務について使用証明(proof of use)を提出することが求められます。この時、先に提出した使用宣誓書に問題があれば指摘され、その点についての対応も必要となります。使用証明(proof of use)は単なる使用見本(specimen)の提出よりはやや厳しい書類で、タグだけ、ラベルだけ、パッケージだけの場合は十分ではないと判断される可能性があり、実際に使用しているとの証拠も必要となります。

拒絶理由通知に対する応答

拒絶理由通知に対する応答が全ての要件を満たす場合には、受理の通知(notice of acceptance)が送付され、検査手続は終了します。ところが、拒絶理由通知に対する応答が使用証明を求められた商品を削除するのみであった場合や使用証明を伴わない場合には、残っている全ての商品又は役務についての使用証明を出すように第2の拒絶理由通知が打たれます。従いまして、一部の検査対象とされた商品又は役務について使用証拠を出せない場合には、使用証拠が出せない商品又は役務の全てを削除することが必要となります。第2の拒絶理由通知が出された後は全ての残っている商品又は役務に使用証拠を提出するか削除するかの応答となります。なお、残っている全ての商品又は役務についての使用証明を出すことが合理性を欠くほど重荷である場合には、Peitionを提出することができます。

拒絶理由通知に対して応答しない場合

最初若しくは第2の拒絶理由通知に対して応答しない場合、その検査対象となった登録が取り消しとなります。期限内の応答ができなかったことに正当な理由がある場合には、Petitionを提出して取消を回避することができます。Petitionの提出理由としては、台風などの天変地異や拒絶理由を受け取らなかったなどの理由によります。

審査官の決定に不服の場合

Petition(2.146 Petition to the Director)を提出して不服を申してることができます。

登録を取り消されないための対策

米国特許商標庁の登録後検査制度は不使用であるにも拘わらず登録を維持しているような状態を取り除くことを目的としています。対策としては、使用証拠が出せないような実際の使用がない商品や役務は削除することが求められます。特に2020年8月には、Audit後に指定商品、指定役務を削除する補正は有料になり、1つの商品(役務)あたりの削除費用が100USDとなることが予定されています。従いまして、予算に限りがある権利者にはAuditの入る前のSEC 8若しくはSEC 71の提出の5-6年目のタイミングで不使用商品・不使用役務を削除する補正をすることが求められます。特にマドリッド制度の国際登録は、最初の使用証明の提出が省略されて登録されており、指定商品・指定役務の記載も本国登録の指定商品・指定役務の記載を反映する傾向にあり、5-6年目宣誓書の提出時には細心の注意が要るものと思います。