米国商標の使用宣誓と虚偽(fraud)行為

米国では、虚偽の行為で得た権利は行使できないというルールがあり、特許ではinequitable conductとして例えばIDS(Information Disclosure Statement)の開示が不適切な場合には、侵害訴訟で権利が存在していても権利行使できないとなります。商標でも同じ知的財産ですので、不正な行為に対しては権利失効となるのが原則です。仮に使用証明として提出した写真が実際には存在しない合成写真であった場合には、状況証拠として意図的なところも露呈しますので、権利失効となることは確実と思います。継続的使用についての宣誓書で使用すると記載した商品・役務に不使用のものがある場合はどうなるでしょうか?

Chicago downtown

判例としてMedinol standardを破棄したIn re Bose Corporation decision, 580 F.3d 1240, 91 USPQ2d 1938 (Fed. Cir. 2009)事件の内容が現段階(2016年5月時点)のルールとされていると思います。Bose事件では、Hexawaveの商標出願に対しBose社が自社のWaveという商標登録と類似であると異議申し立てを行い、その異議のHexawave社からの反訴訴因として、もう製造していない商品(Audio tape recorders and players)を含むことをそのカウンセルが知るべきであったものであり、Bose社が虚偽行為で更新をしたというものでした。カウンセルは、製造を中止しているが、商品の修理などがあるので市場で使用されていると考えていました。それ以前のMedinol standard(Medinol v. Neuro Vasx, Inc., 67 U.S.P.Q.2d 1205 (T.T.A.B. 2003))では、いわゆるshould-have-known standard(知るべきであった基準)が適用され、不使用の商品を含む更新は権利取り消しという厳しいルールでしたので、TTABはBoseの権利失効を審決しました。しかし、控訴審でのCAFCでは、USPTOに対する虚偽行為の判断基準は、should-have-known standardではなく、clear and convincing(疑いようのない) standardであると認定し、USPTOを騙そうとする意図は十分に証拠立てされておらず、権利失効ではないと審決差し戻し判決をしています。

CAFC, Washington DC
CAFC, Washington DC

使用宣誓書が虚偽であり米国特許商標庁を騙す意図があったとするためには、単なる誤記で不使用の商品・役務が混ざったとするには、十分ではないと考えられます。しかしながら、不使用の商品・役務が混ざることを知っていて、意図的に代理人に指示したというような証拠が発見されれば、権利行使できないことになる可能性は否定できません。実務的に、すべての使用宣誓書の提出時(ITUの登録時、5-6年の使用宣誓、10年毎の更新時)に不使用商品や不使用役務の補正による削除が必要となることは知っておくべきことと考えます。米国商標制度では、登録商標の指定商品、指定役務に不使用の商品・役務が混ざっていても良いのはなく、不使用の商品・役務が混ざっていては権利失効の可能性が残ることになります。

米国特許商標庁は5-6年の使用宣誓を対象に、使用宣誓書の検査制度(Proof of Use Audit Program)を始めています。これは抜き打ちで使用宣誓書の証明書の出ていない残った商品に追加の使用証拠を提出させるものです。詳しくは使用証拠の検査制度を参照ください。