特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。
本願商標 「SWEET ROUGE/スウィートルージュ」×「ルージュ/Rouge」
1.出願番号 商願2015-117295
2.商 標 「SWEET ROUGE/スウィートルージュ」
3.商品区分 第30類
4.適用条文 商標法第4条1項11号
5.拒絶理由 「SWEET ROUGE/スウィートルージュ」は「ルージュ/Rouge」と類似する。
拒絶理由通知 意見書における反論
【意見の内容】
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、登録第4065793号(商願平7-125184)の商標(以下、「引用商標」という)と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定されました。しかしながら、本出願人は、本願商標はあくまでも「SWEET ROUGE/スウィートルージュ」全体で一連一体の商標であり、単に「ルージュ/Rouge」からなる引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。
(2) まず、本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、英文字の「SWEETROUGE」を上段に、カタカナ文字の「スウィートルージュ」を下段に配置して、「SWEETROUGE/スウィートルージュ」と二段に書した態様からなるもので、指定商品を「第30類 茶,コーヒー,ココア」とするものであります。これに対し、引用商標は、カタカナ文字の「ルージュ」を上段に、英文字の「Rouge」を下段に配置して、単に「ルージュ/Rouge」と二段に書した態様からなるもので、同じく指定商品を「第30類 コーヒー及びココア,茶」とするものであります。したがって、本願商標と引用商標とは、外観上類似しないことは明らかであります。
(3) また、本願商標の「SWEETROUGE/スウィートルージュ」は、その上段の英文字部分「SWEETROUGE」が、「甘い、甘美な」等の意味を有する英語の「SWEET」と、「ルージュ、口紅、ほお紅」等の意味を有する英語の「ROUGE」とからなるもので、「甘美なルージュ」「甘美な口紅」「甘美で愛らしい口紅」等の意味合いを有し、また、下段の片仮名部分「スウィートルージュ」も同様の意味合いを有するものであります。
即ち、本願商標中の「SWEET/スウィート」の言葉は、商品「コーヒー」等の味覚を、ある意味で示唆する言葉ではあっても、本願商標はその「SWEET/スウィート」の言葉のみから成るものではなく、あくまでも「SWEET/スウィート」と「ROUGE/ルージュ」の2つの単語を組み合わせて不可分一体とした造語からなるものであります。そして、全体として「甘美なルージュ」「甘美な口紅」「甘美で愛らしい口紅」といった一定のまとまった意味合いを生じさせるものでありますが、本願指定商品「コーヒー」等との関係にあってこの「SWEETROUGE/スウィートルージュ」の商標は、「モカの持つ甘い香り」をイメージしたものであり、「SWEET/スウィート」単体でも、「ROUGE/ルージュ」単体でも、このイメージを表現できるものではありません。それ故、本願商標は、「SWEET」と「ROUGE」の間にやや間隔を空けた態様ではあっても、あくまでも全体を一体のものとして把握し称呼すべき商標で、一連に称呼して決して冗長にならず、無理なく一連に称呼・観念できるものであり、左右を分断して把握すべき性質のものでは無いと考えます。
これに対し、引用商標は、単に「ルージュ/Rouge」と書してなるもので、単に「ルージュ」「口紅」「ほお紅」等の意味合いを生じさせるものにすぎず、本願商標のような「甘美なルージュ」「甘美な口紅」のような観念、あるいは、指定商品「コーヒー」等との関係にあって、「モカの持つ甘い香り」をイメージさせるものではありません。この「モカの持つ甘い香り」のイメージは、「SWEET/スウィート」単体でも、「ROUGE/ルージュ」単体でも、決してこれを表現できるものではありません。
よって、本願商標「SWEETROUGE/スウィートルージュ」と引用商標「ルージュ/Rouge」とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標であります。
(4)そこで、次に称呼の点につき検討しますと、本願商標「SWEETROUGE/スウィートルージュ」は、全体が一連に書され、かつ上述の如く全体として一つの意味合いを生じさせるものでありますから、常に全体を一連に称呼するのが自然であり、「スウィートルージュ」とのみ称呼されるべきものと思料します。この点、審査官殿は、本願商標中の「SWEET/スィート」の部分は、指定商品との関係にあって、要部を構成せず、従って「ROUGE/ルージュ」のみに識別力を認め、単に「ルージュ」のみの称呼も生じるとみて今般の拒絶理由通知を発したのではないかと推察しますが、そのような認定はおかしいと考えます。本願商標は、前述のように、(a)前段と後段を分けることなくあくまでも同一書体でバランスよく一連に書された態様です。また、(b)全体としてまとまった特定の意味合いを観念させ、又はイメージさせるものであり、分断して一方を取り出し発音すべき理由はありません。例えば、前段の「SWEET」を無視して後段「ROUGE」のみを取り出して本願商標を把握したのでは、「甘美なルージュ」というまとまった観念は生じませんし、指定商品「コーヒー」との関係にあって「モカの持つ甘い香り」をイメージさせることもできません。また、(c)「SWEET」(スウィート)の部分も「ROUGE」(ルージュ)の部分もバランスよく配され軽重の差なく称呼できます。特に、(d)「SWEET」(スウィート)の部分は前段部分にあり、称呼上重要な位置を占め、この部分を省略して発音することは通常ありません。そして、(e)全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすく、一連に称呼するのが自然であると考えられます。よって、本願商標はあくまでも「スウィートルージュ」とのみ称呼されるものと思料します。
ところで、過去の商標登録例を見ると、例えば、第30類コーヒーを指定商品とする、あるいはこれと類似と判断される第35類のコーヒー等の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供などの役務を指定役務とする商標同士において、以下のような並存登録例が存在します。
即ち、
(イ)「MOUNTAIN/マウンテン」(登録596856、30類、横山商店)(第1号証)が有りながら、別人により「スウィートマウンテン」(登録5189053、30類、ワタル株式会社)(第2号証)が登録されていますし、
(ロ)「poem」(登録1113534、30類、山内本子)(第3号証)が有りながら、別人により、「Sweet Poem」(登録5024471、30類、日糧製パン株式会社)(第4号証)が登録されています。また、
(ハ)「SweetAngel」(登録5393762、35類、株式会社ワイ・ヨット)(第5号証)が有りながら、別人により、「Angel」(登録5624287、30類、森永製菓株式会社)(第6号証)が登録されていますし、
(ニ)「SweetGarden」(登録5165067、35類、株式会社スイートガーデン)(第7号証)が有りながら、別人により、「ガーデン/GARDEN」(登録5207630、30類、株式会社シェルガーデン)(第8号証)が登録されています。
これらは、指定商品・役務等が全て抵触関係にありますので、「SWEET」「Sweet」「スウィート」の部分も一体となった商標、即ち「SWEET MOUNTAIN/スウィート マウンテン」、「Sweet Poem」、「Sweet Angel」「SweetGarden」に関しては、前後分断できない一体の商標として理解され把握されたからこそ、単なる「MOUNTAIN/マウンテン」、「Poem」、「Angel」「ガーデン/GARDEN」との並存登録が認められたものと思料します。
本願商標「SWEETROUGE/スウィートルージュ」とて同様であります。全体として一体不可分の商標と見るべきであります。そこで、本願商標の称呼である「スウィートルージュ」と引用商標の称呼である「ルージュ」とを対比すると、「スィート」の称呼の有無によって、両者は音数及び語感語調が全く異なり明確に識別できるものと考えますので、両者は称呼上も相紛れることのない非類似の商標であると考えます。
(5) 以上のように、本願商標は、あくまでも、「スウィートルージュ」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に引用商標の称呼である単なる「ルージュ」とは、類似することはありません。本願商標と引用商標とは、外観及び観念上類似しないことは勿論、称呼上も「スィート」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。