商標登録+α: 拒絶理由通知に対する意見書記載例#3

意見書例 +α

特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書」の具体例を小川特許商標事務所のサイトから転載しております。

本願商標:「東大セミナー」

1.出願番号  平成4年商標登録願第100022号
2.商  標  「東大セミナー」
3.役務区分  第41類:学習塾における教授
4.適用条文 商標法第4条第1項第8号
5.拒絶理由  東京大学(東京都文京区本郷7-3-1)の著名な略称である
        「東大」の文字を含む商標である。

出願商標
tm3-1

意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は、その構成中に、東京大学(東京都文京区本郷7-3-1)の著名な略称である「東大」の文字を有するものであり、該大学の承諾を得たものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」と認定された。

しかしながら、本出願人は、かかる認定に承服できないので、以下に意見を申し述べる。

(2)本願商標は、図形部分と文字部分とからなり、そのうち文字部分は、漢字と片仮名で「東大セミナー」と一連に横書きした態様からなるものである。また、本願商標の指定役務は、願書の記載から明らかなように、「学習塾における教授」である。

つまり、本願商標の「東大セミナー」は、学習塾の塾名であって、この塾名は、昭和52年3月の開塾以来(願書に添付した営業証明書参照)、現在まで18年間継続して用いてきたもので、千葉県内の都市部を中心に受験指導に力を入れ、かつ周辺地域及び地方都市部にも進出してきた結果、現在では千葉県内に22教室(津田沼、船橋、西船橋、北習志野、鎌ヶ谷大仏、六実、松戸、みもみ、八千代台、成田、稲毛、千葉、都賀、四街道、土気、茂原、蘇我、八幡宿、五井、長浦、袖ヶ浦、富津の各教室)、千葉県外に13教室(西小山、三鷹、東川口、白岡、久喜、蒲生、蓮田、厚木、大分、金沢、健軍、井水、清水の各教室)を保有するまでなっている(願書に添付した「商標の使用の事実を示す書類(1)」の「東大セミナー1991入会ガイド」第21頁右欄の「教室一覧」参照)。

その結果、「東大セミナー」は、学習塾として、千葉県内はもちろん、千葉県外の教室保有地域周辺において、受験生、並びに父兄,学生,一般社会人らの間において広く認識されるに至っている(願書に添付の「商標の使用の事実を示す書類(6)」の写真が一つの例となるが、本学習塾の看板は全てにおいて、目立つように表示されている。この点は、他の学習塾も同様の傾向にある)。従って、本願商標の「東大セミナー」は、この一連の名称で学習塾として名を馳せている固有名詞であって、あくまで「東大セミナー」を一体として把握すべきものである。分断して把握すべき余地はない。

それ故、本願商標「東大セミナー」の「東大」部分をとらえて、この文字部分が出所としての「東京大学」を表示していると判断すること自体、奇異な見方である。学習塾の「東大セミナー」をとらえて、東京大学と関わりのある学習塾であると認識されるようなことは勿論ないし、常識的に見ても国立大学である東京大学が学習塾「東大セミナー」の経営母胎であるとか、何らかの関係があるとか理解されることはないであろう。その意味で、東京大学の名声を害するとか、名誉を傷つけるとか、イメージを壊すとか、そういうことは全くあり得ない。

 現に、開塾以来18年間、この「東大」の文字をとらえて、「東京大学」と関連のある学習塾であると理解されたことはない。この学習塾「東大セミナー」は、あくまで、その学習塾を営む会社名そのものを、学習塾の名称(商標サービスマーク)として用いているに過ぎないのであって、「東大セミナー」と常に一連に書されて永年継続的に使用された結果、「東大」と「セミナー」とは強い一体性をもった不可分の名称として認識されている。

(3)ところで、審査官殿が、本願商標拒絶の根拠として挙げた条文である商標法第4条第1項第8号は、人格権保護の規定であると理解する(それ故に、カッコ書きで許諾を得れば登録を許すこととしている)が、前述したように、本学習塾の名称は、「東京大学」が関わって塾を経営しているといった認識を世間一般に与えることはないのであるから、「東京大学」の人格権を何ら害することはないはずである。

つまり、本号の立法趣旨は、自己の氏名、名称等が他人によりその商品又は役務の商標として使用され、それによって世人がそれらの氏名、名称と、商品又は役務との間に何らかの関係があるかのように認識し、そのために氏名、名称を有するものがこれを不快とし、その人格権を毀損されたものであると感ずるであろうことが、社会通念上客観的に明らかであると認められるような場合において、人格権保護の建て前から事前にこのような者の承諾を得せしめようとするにあるのであって、前述したように、学習塾「東大セミナー」が、東京大学と何らかの関わりある学習塾と理解されることがなければ、東京大学の人格権の毀損もなく、従って、事前に東京大学の承諾を得る必要もないものと考える。

そして、このことは一歩譲って、「東大セミナー」の「東大」部分が、著名な東京大学を間接的にしろ認識させる場合があるとしても、それは、あくまで受験生の合格目標、努力目標としての東京大学を指すと理解すべきなのであって、決して「東京大学」が関わって塾を経営しているとか、何らかの形で経営に関係しているといった認識を与えるものではない。それ故、「東京大学」の人格権を何ら害することはないはずである。受験生の努力目標としての東京大学を認識させるのであれば、むしろ東京大学としても名誉に感ずることであり、ましてや大学のイメージを害することにもならず、商標法第4条第1項第8号の人格権保護の趣旨を何ら害していない。

(4)更に付言すると、前述のように、本出願人の学習塾「東大セミナー」は、昭和52年の開塾以来18年間、学習指導・受験指導に熱心に取り組み、その甲斐合って、千葉県の内外を合わせて35教室を所有するに至っており、その名声も決して低くない。

 しかるに、この間「東大セミナー」の名称を無断で使用されるケースも、多々あった。このような場合、誤認した受験生の迷惑を考え、それらの者へはその都度注意を促していたが、商標権のように登録した権利があった訳ではないので、十分な対処ができないでいた。また、最終的には不正競争防止法で対処すればよいのであろうが、実際問題として、周知性や故意・過失の立証等の点で煩わしいのが、現状である。

 平成4年4月から導入されたサービスマーク登録制度は、まさしくこのような場合に、サービスマークを登録して、サービス事業者の業務上の信用の維持及び需要者の利益の保護を図り、もって健全な競業秩序を維持する制度であると理解する。それ故、昭和52年以来使用を続け、千葉県内を中心に全国35教室を保有するに至り、実績も積み上げてきた学習塾名「東大セミナー」を、かかる他人の無断使用から有効に保護できないでは、かえって商標法の法目的である競業秩序の維持、及び需要者の保護が達成できなくなると考える。

特に、学習塾の場合、ご承知のように大手に至っては全国的に多数の教室を保有するため、未だ進出していない地域であっても、同一の名称を用いられると、あたかも同一主体の学習塾であるかの如き誤認が生じ、それによって受講した受験生は勿論、その名前を使われた学習塾の信用も害され、その痛手は大きなものがある。それ故、商標法の目的とする競業秩序維持及び需要者保護の観点から、是非とも本願商標の登録を希望する次第である。

(5)以上のように、①「東大セミナー」は、昭和52年の開塾以来拡張を広げ、千葉県内を中心として、全国に35教室を有する周知性のある学習塾であること、②「東大セミナー」は、「東大」部分と「セミナー」部分を分断できない強い一体性を持った不可分の名称として有名であること、③学習塾の「東大セミナー」をとらえて、東京大学と関わりのある学習塾であると認識されるようなことは勿論ないし、常識的に見ても国立大学である東京大学が学習塾「東大セミナー」の経営母胎であるとか、何らかの関係があるとか理解されることはないこと、④従って、東京大学の名声を害するとか、名誉を傷つけるとか、イメージを壊すとか、ということは全くあり得ないこと、⑤かえって、現に18年間も継続使用され、全国に35教室を数えるに至り周知性を獲得している塾名「東大セミナー」を登録させないとすることは、サービスマーク登録制度導入の趣旨に反すること等の理由により、本願商標は、十分に登録適格性を備えているものと確信する。

 よって、本願商標は、商標法の目的に照らし、また決して東京大学の人格権を毀損していない点を十分ご理解頂いた上、再度ご審査頂き、本願を公告決定下さるようお願いする次第であります。

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