商標の類否

日本の商標法では、商標の類否(るいひ)の判断を特許庁や裁判所が判断することになっています。そこには商標自体の取り扱い方に所定のルールがあります。この種のルールは、商標登録の出願段階においては、他人の周知商標、登録商標に基づく拒絶理由に対する中間処理の際に考える必要があり、さらには登録異議申立、登録無効審判事件、商標権侵害事件などの商標権の発生後においても、特許庁や裁判所の判断の基準となります。以下、特許庁の発行した”商標審査基準(第5版、旧版)”を引用しながら商標の類否の判断について説明します。

類否判断の3要素

外観、称呼および観念
商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼および観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察して決められます。その他の部分に紛らわしいところが無い場合であっても、外観、称呼および観念のうち1つでも類似であれば類似商標となり得ます。

隔離的観察
また、これら要素のうち外観は、全体的で隔離的な観察により判断されます。ここで隔離的観察とは、取引における経験則に基づき場所と時間を異ならせて類似・非類似を観察する方法であって、この隔離的観察が2つの商標について判断する場合の自他商品の識別の状況に即したものと考えられています。1つの商標を見て、その内容を記憶して、その最初の商標が見えない状態としたところで、比較する商標を観察します。2つの商標を並べて観察する対比観察よりも、隔離的観察では、細部に拘らずに全体的な感覚で類否を決めることになります。

類否判断の主体

誰の目による判断か?
特定の誰かとうことではなく、客観的な一般的取引者・需要者が用いる通常の注意力を判断基準として商標の類否を判断します。審査段階で審査官がこの一般的取引者・需要者になりかわって判断し、侵害訴訟では裁判官が一般的取引者・需要者になりかわって判断するものとされています。この点について、前記審査基準では、”商標の類否の判断は、商標が使用される商品の主たる需要者層(たとえば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならない。 ”と記載されています。

全体と要部

商標のすべての部分が一様に機能するわけではありません
商標の構成要素に着目すると、部分的に、商標の中で中心的な識別力を有する部分が存在し、これを抽出して対比することが行われています。この商標の中で中心的な識別力を有する部分が要部です。商標に類否判断においては全体観察と並行して要部についても観察すること(いわゆる要部観察)が通常行われます。

類似と非類似
類似か非類似か

類否観察の例

(以下、”審査基準(第5版)”からの抜粋 と 判決例@) 

A.振り仮名を付した文字商標

振り仮名を付した文字商標の称呼については、次のように審査基準(旧版)に記載されています。
(イ) たとえば、「紅梅」のような文字商標については、「ベニウメ」と振り仮名した場合であっても、なお、「コウバイ」の自然の称呼をも生ずるものとする。
(ロ) たとえば、「白梅」における「ハクバイ」および「シラウメ」のように2以上の自然の称呼を有する文字商標は、その一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の自然の称呼をも生ずるものとする。
(ハ) たとえば、商標「竜田川」に「タツタガワ」のような自然の称呼を振り仮名と して付したときは、「リュウデンセン」のような不自然な称呼は、生じないものとする。

B.結合商標

結合商標の類似は、その結合の強弱の程度を考慮し、たとえば、次のように判断します。ただし、著しく異なった外観、称呼または観念を生ずることが明らかなときは、この限りではありません。

B-1. 形容詞的文字を有する結合商標

形容詞的文字(商品の品質、原料、材料等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似します。

(例)類似する場合 「スーパーライオン」と「ライオン」

「銀座小判」     と「小判」

「ピンクレデイ」    と「レデイ」

@ 「Lumideluxe」 と 「ルミスーパー」

ただし、@「ワイキキパール」と「パール」は非類似(化粧品、香料)

B-2. 大小のある文字を有する結合商標

大小のある文字からなる商標は、原則として、大きさの相違するそれぞれの部分からなる商標と類似します。

(例)類似する場合  「富士白鳥」 と 「富士」 または 「白鳥」

「サンムーン」 と 「サン」 または 「ムーン」

B-3. 著しく離れた文字の部分からなる結合商標

著しく離れた文字の部分からなる商標は、原則として、離れたそれぞれの部分のみからなる商標と類似します。

(例)類似する場合 「鶴亀 万寿」 と 「鶴亀」 または 「万寿」

B-4. 簡略化される可能性の有る文字の部分を有する結合商標

長い称呼を有するため、または結合商標の一部が特に顕著であるため、その一部分によって簡略化される可能性がある商標は、原則として、簡略化される可能性がある部分のみからなる商標と類似します。

(例)類似する場合  「cherryblossomboy」 と 「チェリーブラッサム」

「chrysanthemumbluesky」 と 「クリサンシマム」 または 「ブルースカイ」

B-5. 慣用される文字と他の文字とを結合した結合商標

指定商品について慣用される文字と他の文字とを結合した商標は、慣用される文字を除いた部分からなる商標と類似します。

(例)類似する場合

清酒について 「男山富士」 と 「富士」

清酒について 「菊正宗」 と 「菊」

折りたたみナイフについて 「桜肥後守」 と 「桜」

B-6. 著名な商標と他の文字とを結合した結合商標

指定商品について著名な商標と他の文字とを結合した商標は、原則として、その著名な商標と類似します。

B-7. 商号商標を結合した結合商標

商号商標 (商号の略称からなる商標を含む。以下同じ。)については、商号の一部分として通常使用される「株式会社」 「商会」 「CO.」 「K.K.」 「Ltd」 「組合」 「協同組合」 等の文字が出題に係る商標の要部である文字の語尾または語頭のいずれにあるかを問わず、原則として、これらの文字を除外して商標の類否を判断します。

C.要部を含む商標

(1) 商標の構成部分中識別力のある部分が識別力のない部分に比較して著しく小さく表示された場合であっても、識別力のある部分から称呼または観念を生ずるものとします。
(2)商標が色彩を有するときは、その部分から称呼または観念を生ずることがあります。
(3)商標の要部が、それ自体は自他商品の識別力を有しないものであっても、使用により識別力を有するに至った場合は、その部分から称呼を生じます。

D.商標の称呼類否の判断

商標の称呼の類否を称呼に内在する音声上の判断要素および判断方法のみによって判断するときには、たとえば、次のD-1 原則およびD-2 基準のようにします。

D-1 原則

商標の称呼類否判断にあたっては、比較される両称呼の音質、音量及び音調ならびに音節に関する各判断要素のそれぞれにおいて、共通し、近似するところがあるか否かを比較するとともに、両商標が特定の観念のない造語であるか否か(たとえば、明らかな観念の違いによってその音調を異にしたり、その称呼に対する注意力が異なることがある)を考慮し、時と所を異にして、両商標が称呼され、聴覚されるときに聴者に与える称呼の全体的印象(音感)から、たがいに相紛れるおそれがあるか否かによって判断します。

D-1-a.音質(母音、子音の質的きまりから生ずる音の性質)に関する判断要素
i)母音の音の性質

相違する音の母音を共通にしているか、母音が近似しているか〔たとえば、1 音の相違にあって(i)その音が中間または語尾に位置し、母音を共通にするとき(ii)子音が調音の位置、方法において近似 (ともに両唇音であるとか、ともに摩擦音であるとかのように、子音表において、同一または近接する調音位置、方法にある場合をいう。ただし、相違する音の位置、音調、全体の音数の多少によって異なることがある。)し、母音を共通にするとき等においては、全体の音感が近似して聴覚されることが多い。〕

ii)子音の音の性質

相違する音の子音を共通にしているか、子音が近似しているか〔たとえば、1音の相違にあって(i)相違する音の子音がともに50音図の同行に属しその母音が近似 (たとえば、口の開き方と舌の位置の比較から、母子エはアとイに近似し、母音オは アとウに近似する。ただし、相違する音の位置、音調、全体の音数の多少によって異なることがある。)するとき(ii)相違する音が濁音(ガ、ザ、ダ、バ行音)と半濁音(パ 行音)、清音(カ、サ、タ、ハ行音)の違いにすぎないとき等においては、全体の音感が近似して聴覚されることが多い。〕 等が挙げられます。

D-1-b.音量(音の長短)に関する判断要素

(イ) 相違する音がその前母音の長音であるか(長音の有無にすぎないか)
(ロ) 相違する音がその後子音の長音であるか(促音の有無にすぎないか) 等が挙げられます。
音の長短は、長音、促音が比較的弱く聴覚されることから、音調(音の強弱)と関係があり(通常、長音、促音の前音が強く聴覚される)、また、長音、促音は発音したときに1単位的感じを与えることから、1音節を構成し音節に関する判断要素とも関係があります。

D-1-c.音調(音の強弱及びアクセントの位置)に関する判断要素

(イ) 相違する音がともに弱音(聴覚上、ひびきの弱い音)であるか、弱音の有無にすぎないか、長音と促音の差にすぎないか(弱音は通常、前音に吸収されて聴覚されにくい)
(ロ) 相違する音がともに中間または語尾に位置しているか(中間音、語尾音は比較的弱く聴覚されることが多い)
(ハ) 語頭もしくは語尾において、共通する音が同一の強音(聴覚上、ひびきの強い音)であるか(これが強音であるときには、全体の音感が近似して聴覚されることが多い)
(ニ) 欧文字商標の称呼において強めアクセントがある場合に、その位置が共通するか等が挙げられます。 音の強弱は音自体(口の開き方の小さな音、イ・ウ、口を開かずに発せられる音、ム・ン、声帯が振動せずに発せられる音、フ・ス等は聴覚上、明瞭でないために弱音とされる場合)からだけでなく、相違する音の位置、全体の音数 の長短等によって、相対的にその強弱が聴覚されることが多いです。(たとえば、相違する1音が音自体において上記のような弱音であっても、その前後の音も弱音である場合には弱音とはいえない場合がある。)

D-1-d.音節に関する判断要素

(イ) 音節数(音数。仮名文字1文字が1音節をなし、拗音は2文字で1音節をなす。 長音(符)、促音、撥音もそれぞれ1音節をなす。)の比較において、ともに多数音であるか(1音の相違があっても、音数が比較的多いときには、全体の音感が近似して聴覚されることが多いです。)
(ロ) 一つのまとまった感じとしての語の切れ方、分かれ方(シラブル、息の段落)において共通性があるか(その共通性があるときには、全体の音感が近似して聴覚されることが多い)等が挙げられます。

Similarity?
Similarity?

D-2 基準

以下の基準(1)乃至(8)(は、両商標が称呼上、類似すると判断された事例にあって判断を構成した主たる要素として、また、各事例に共通する要素となるものを整理し、列挙したものです。 両商標が本D-2 基準のいずれかに該当するときは、原則として称呼上類似するものとされています。基準(1)乃至(8)(及びそれらの事例)について、上記原則D-1の判断要素との関係は、基準(1)乃至(3)が主として音質に関するものであり、基準(4)は主として音調、基準(5)は、主として音量、基準(6)及び基準(7)は主として音節、基準(8)は、各判断要素に関するものです。なお、上記原則D-1の判断要素に記載されていないが考慮すべき判断要素として、発音の転訛の現象(たとえば、連続する2音が相互にその位置を置換して称呼されるような場合)が挙げられます。

なお、基準(1)乃至(8)に該当する場合であっても、つぎに挙げる(イ)ないし(ハ)等の事由があり、その全体の音感を異にするときには、例外とされる場合があります。

(イ) 語頭音に音質または音調上著しい差異があるとき
(ロ) 相違する音が語頭音でないがその音質(たとえば相違する1音がともに同行音であるが、その母音が近似しないとき)音調(たとえば、相違する音の部分に強めアクセントがあるとき)上著しい差異があるとき
(ハ) 音節に関する判断要素において (i) 称呼が少数音であるとき(3音以下) (ニ) 語の切れ方、分かれ方(シラブル、息の段落)が明らかに異なるとき。 なお、基準(6)及び基準(7)は、基準(1)乃至(5)に該当しない場合に適用されます。

D-2-a.音質に関する基準

(1) ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が母音を共通にするとき
スチッパー * SKiPPER  (スキッパーの称呼)
VANCOCIN/バンコシン * BUNCOMIN/バンコミン
ミギオン * ミチオン
但し、@ コザック とコダックは非類似とする判決例あり。
(2) ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が50音図の同行に属するとき
アスパ * アスペ
アトミン/Atomin * ATAMIN/アタミン
VULKENE(バルケンの称呼) * VALCAN (バルカンの称呼)
但し、@ ソンテックス と シンテックス は非類似とする判決例あり。
(3) ともに、同数音の称呼からなり、相違する1音が清音、濁音、半濁音の差にすぎないとき
HETRON(ヘトロンの称呼) * PETRON/ペトロン
KUREKA/クレカ * GLECA/グレカ
サンシール * SANZEEL/サンジール

D-2-b.主として音調に関する基準

(4) 相違する1音がともに弱音であるか、または弱音の有無の差にすぎないとき
DANNEL(ダンネルの称呼) * DYNEL(ダイネルの称呼)
山清/やませい * ヤマセ
VINYLA (ビニラの称呼) * Binilus (ビニラスの称呼)

D-2-c.主として音量に関する基準

(5) 相違する1音が長音の有無、促音の有無または長音と促音、長音と弱音の差にすぎないとき
レーマン * L′eman / レマン
コロネート * CORONET (コロネットの称呼)
たからはと * タカラート

D-2-d.主として音節に関する基準

(6) 同数音からなる比較的長い称呼で1音だけ異なるとき
サイバトロン * サイモトロン
(7) 比較的長い称呼で1音だけ多いとき
CAMPBEL (キャンプベルの称呼)* Cambell キャンベル
BPLEX/ビプレックス * ビタプレックス/ VITAPLEX

D-2-e.各判断要素に関する基準

(8) その他、全体の音感が近似するとき
(イ) 2音相違するが上記(1)ないし(5)に挙げる要素の組合せであるとき
COREXIT(コレクシットの称呼)* コレスキット
ビセラジン * ビゼラミン
フルーゲン * Frigen /フリゲン/ふりげん
天神丸(テンシンガンの称呼) * 電信丸(デンシンガンの称呼)
COMPA/コンパ * COMBER/コンバー
(ロ) 相違する1音が拗音と直音の差にすぎないとき
SAVONET/サボネット * シャボネット
(ハ) 相違する音の一方が外来語におこなわれる発音であって、これと他方の母音または子音が近似するとき
TYREX(タイレックスの称呼) * TWYLEX (トウイレックスの称呼)
FOLIOL(フォリオールの称呼) * HELIOL ヘリオール
(ニ) 相違する1音の母音または子音が近似するとき
サリージェ/SALIGZE * Sally Gee/ (サリージの称呼)
CERELAC(セレラックの称呼) * セレノック/SELENOC
(ホ) 発音上、聴覚上印象の強い部分が共通するとき
ハパヤ * パッパヤ
(ヘ) その他
POPISTAN/ポピスタン* HOSPITAN/ホスピタン
@日曜夕刊 (横書き)* 夕刊日曜 (縦書き) (定期刊行物)
「注.( )内の称呼は審決等で認定されています。」

商品の類否を判断

商品の類否を判断するに際しては、次の基準を総合的に考慮するものとする。この場合には、原則として、類似商品審査基準によるものとされています。

(イ) 生産部門が一致するかどうか
(ロ) 販売部門が一致するかどうか
(ハ) 原材料および品質が一致するかどうか
(ニ) 用途が一致するかどうか
(ホ) 需要者の範囲が一致するかどうか
(ヘ) 完成品と部品との関係にあるかどうか

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商標とは
商標登録とは
商標用語集

記載例#1~30の目次
記載例#1:本願商標「ふくやき」×引用商標「福雪」4条1項11号
記載例#2:本願商標「農協果汁、ストレート、季節の果実、をしぼりました。」の四段文字を楕円で囲んだ商標3条1項6号
記載例#3:本願商標「東大セミナー」4条1項8号
記載例#4:本願商標「健康バンザイ」3条1項6号
記載例#5:本願商標「家族」×引用商標「family/ファミリー」4条1項11号
記載例#6:本願商標「エステティック道」(拒絶査定に対する審判)×引用商標「Esthetique/エステチック」4条1項11号
記載例#7:本願商標「MAGIC STUDIO」×引用商標「スタジオマジック」4条1項11号
記載例#8:本願商標「MobilBoard/モバイルボード」…………3①3,4①16(拒絶査定に対する審判)
記載例#9:本願商標「ピュアエステ/B ブリアント」×引用商標「VALIANT/ヴァリアント」4条1項11号
記載例#10:本願商標「SARANAPERIOR/サランスペリオール」×引用商標「サラン/SARAN」4条1項11号
記載例#11:本願商標「果実実感」×引用商標「ジッカン」4条1項11号
記載例#12:本願商標「内面美容」第3類 化粧品関係 4条1項16号
記載例#13:指定商品中の商品の表現に対する反論「その他の記憶媒体」
記載例#14:本願商標「マルチファイル」(拒絶査定に対する審判) 3条1項3号
記載例#15:本願商標「ヒップスリム」3条1項3号,4条1項16号
記載例#16:本願商標「足心ラビング」×引用商標1,2「ラビング」4条1項11号(拒絶査定に対する審判)
記載例#17:本願商標「おいしい健康」×引用商標「健康」ほか4条1項11号
記載例#18:本願商標「DOOM WOOD」×引用商標「DOOM」4条1項11号
記載例#19:本願商標「秘文/SAFE」×引用商標「S.A.F.E.」4条1項11号
記載例#20:本願商標「Sanibio/サニバイオ」×引用商標「サナバイオ」「バイオサニー」4条1項11号
記載例#21:本願商標「Success Pack」×引用商標「サクセス/SUCCESS」ほか 4条1項11号
記載例#22:本願商標「IMPALA ILLUSTRATED/インパラ・イラストレイテッド」 3条1項3号、4条1項16号
記載例#23:本願商標「ACADPLUG/エーキャドプラグ」×引用商標「ACAD」 4条1項11号
記載例#24:本願商標「ACTIVECUP/アクティブカップ」×引用商標「ACTIVE他」 4条1項11号
記載例#25:本願商標「フルーツパーク」 3条1項6号
記載例#26:本願商標「とっておきの果実」×引用商標「とっておき」 4条1項11号
記載例#27:本願商標「ShareWizard」 4条1項6号、4条1項11号
記載例#28:本願商標「山麓の味わい」 3条1項6号
記載例#29:本願商標「Smart CRM Solution」×引用商標「CRM vision」他 4条1項11号
記載例#30:本願商標「四季彩美」×引用商標「四季彩味」 4条1項11号

国際登録出願制度の概要

“標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書”

PROTOCOL RELATING TO THE MADRID AGREEMENT CONCERNING THE INTERNATIONAL REGISTRATION OF MARKS

標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書とは?

"WIPO"  by United States Mission Geneva
“WIPO” by United States Mission Geneva / CC BY-SA 2.0, converted from .jpg to .png
標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書(以下「マドリッド協定議定書」という)は、「標章の国際登録に関するマドリッド協定」を修正・補完するもので、商標の国際登録を通じて、迅速・簡易な保護を目的とする独立した条約です。1989年6月27日にマドリッドで採択され、1995年12月に発効し、1996年4月から運用が始まりました。2003年6月現在での加盟国は57ヶ国で、日本は2000年3月14日に42番目の加盟国となりました。2019年6月17日にカナダが加盟し、その際には全部で加盟国は104ヶ国で、120の国または区域まで広がります。

マドリッド協定議定書とマドリッド協定の関係は?

マドリッド協定の方が先に存在していましたが、より多くの国が加盟しやすいような規定を設けて改善された規定がマドリッド協定議定書です。議定書はプロトコルですので、通称マドプロとも呼ばれています。マドリッド協定議定書の方が圧倒的に締約国が多く、2015年10月31日、マドリッド制度のメンバーのうちでマドリッド協定のみに加盟する最後の加盟国であったアルジェリアでマドリッド議定書が発効され、マドリッド制度(Madrid System)は事実上単一条約体制となっています。

手続きの概要は?

日本の特許庁に出願又は登録されている商標を基礎(基礎出願又は基礎登録という)として、WIPO国際事務局に国際出願を行います。まず、MM2という様式の願書に保護を求める締約国を明示し、その願書を日本国特許庁に提出し、そこで方式審査が行われ問題がなければ、2ヶ月以内に日本の特許庁からWIPO国際事務局へ提出されます。そこで再度方式審査が行われ、問題がなければ国際登録されます。そして、WIPO国際事務局は願書に記載された指定国官庁に通報することとなります。MM2、その他のWIPOが定めた願書様式は日本国特許庁ホームページよりダウンロードが可能です。また、WIPO国際事務局のホームページでもダウンロード可能です。

指定できる国は?

マドリッド協定議定書の締約国のみです。アメリカは2003年に締約国に移行し、アメリカへの出願が2003年11月2日から可能となりました。また、北朝鮮は締約国ではありますが、日本は北朝鮮を加盟国と認めていないために出願はできません。日本が加盟国となった後、アンティグア・バーブーダ(Antigua and Barbuda) とイタリアが新しく加盟しました[イタリア:2000.3.17; アンティグア・バーブーダ:2000.4.17]。韓国は2003年4月10日から締約国となっています。マドプロを利用した欧州連合商標の出願は、2004年10月1日から可能です。なお、自国指定(すなわち日本を指定する)は認められていません。台湾は現時点(2019. Mar.)では締約国ではありませんが、カナダは2019年6月17日から締約国となります。

従来の手続き(外国への直接出願)との違いは?(議定書出願のメリット)

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マドリッド協定議定書出願では、一つの手続きで加盟している各国での権利取得が可能となる点です。外国への直接出願の場合、通常は各国へそれぞれの手続きをそれぞれの言語で行う必要がありますが、議定書出願ではMM2という単一の様式を使って英語で手続きするだけで複数の締約国での権利を取得することができます。このため手続きが簡素化され、18ヶ月(最長)以内に登録することができます。また、手続きの一本化により、経費も節減できます。例えば、一類を40ヶ国に出願する場合、約60万円で、権利取得ができます(WIPO国際事務局への手数料のみ)。そして、ベネルクスを指定国とした場合、ベネルクスにはベルギー,ルクセンブルグ及びオランダが含まれるので、一指定国の費用で3カ国への出願が可能となります。

保護の対象となる出願はどういうものか?

日本の特許庁に出願中もしくは登録された商標を基礎とする国際登録出願です。(防護標章登録出願もしくは防護標章登録を基礎とするものも権利取得できます。)すなわち、日本特許庁へ出願中もしくは登録された商標でない限り、議定書に基づく国際商標出願は認められません。日本国特許庁に出願中もしくは登録された商標を基礎としているため、国際登録する商標は、これと同一のものである必要があります。例えば基礎登録がローマ字と漢字の二段書きであった場合、国際登録出願をローマ字だけにすることはできません。標準文字であった場合、国際登録出願には公報にある文字と同一にします(例えば公報に載っているものが明朝体であれば明朝体で商標を作成する)。基礎となる商標と、国際登録出願する商標は誰が観ても同一のものでなければ拒絶されます。また、商品・役務に関しては基礎出願又は基礎登録の商品・役務の範囲と実質的に同一又はその範囲内でなければなりません。願書(MM2)には8cm×8cmの範囲内で商標を書くようになっています。基礎出願又は基礎登録がカラーでなされていた場合は必ずカラーで行わなければいけません。しかし、WIPO国際事務局では、スキャナーで読みとったものを保存して、願書自体は破棄してしまうため、例えば金色・銀色などをつかった商標では、その部分は黒色としてしか残らないこととなります。何をもって原本とするかについてはっきりとされておらず、カラーを使った商標は注意が必要です。

誰が出願人となりうるか?

日本国民又は日本国内に住所または居所(法人にあっては営業所)を有する外国人です。2人以上の出願人がいる場合は、出願人全員がの条件を満たしていることが必要です。

国際登録出願の効果は?

日本国特許庁へ提出した日(日本国特許庁が受理した日)が国際登録日として認定されます。発信主義ではなく、到着主義がとられます。しかし、方式補正などで、日本国特許庁での手続きが2ヶ月を越えると、国際登録日は繰り下げられてしまいます。

事後指定とは?

国際登録の事後指定とは、国際登録出願後に指定国を足すことです。登録出願手続きと同様の手続きで行います[事後指定の様式MM4]。

国際登録の存続期間は?

国際登録日から10年にわたって効果を有します。ただし、本国官庁が受理した日から2ヶ月以内に国際事務局が受理しない場合には、国際事務局がその出願を受理した日が国際登録日として扱われます。事後指定日などは存続期間の計算に影響しません。

国際登録の更新手続は?

国際登録の存続期間は10 年づつ更新することができます(MM11/E-renewal)。国際登録日から 10 年後の満了日までに手続をする必要があります。ただし、更新期日から 6 月以内であれば割増手数料(基本手数料の 50%)の支払いを条件に、更新手続をすることができます。手数料の額が確定するのが満了日の 3 ヶ月前以降となりますので、手続は満了日の 3 ヶ月前から満了日までの間に済ませることが推奨されています。

セントラルアタックとは?

“WIPO lobby” photo by Vllle Oksanen / CC BY-SA 2.0, converted from .jpg to .png
国際登録出願での特別な規定です。国際登録の日から5年たてば、国際登録は基礎出願もしくは基礎登録から独立したものとなります。しかし、国際登録の日から5年以内に基礎出願もしくは基礎登録が更新されていないと、国際登録も取り消されてしまいます。例えば、基礎出願が拒絶されてしまうと、自動的に、その出願を基礎にした国際登録も拒絶され、抹消され取り消されます。そのため、出願は、基礎出願よる国際出願も基礎登録による国際出願のほうが安全と考えられます。

国際出願の手数料は?

(1)国際事務局へ納付する国際手数料
手数料の計算は各国の個別手数料が為替によって変わるために、複雑になっています。また、個別手数料のへの受領を宣言している締約国出願は、付加手数料及び追加手数料に代えてそれぞれの国が定める額(=個別手数料)を支払うため、さらに複雑です。従って、ベストな方法としては、WIPO国際事務局のホームページ(http://www.wipo.org/)のInternational Trademark Registration Fee Calculatorをクリックし料金を確認する方法です(MSエクセル(商品名)が必要)。支払いは、スイスフラン建てで行われます。支払方法としてはスイスの口座(クレジットスイスジュネーブ)に銀行振込する方法が安全です。その他の方法としては、現地支払い、銀行小切手支払い、国際郵便振替などがあります。
(2)日本国特許庁へ納付する手数料
国際登録出願する者は一件につき9000円を納付することとなります。事後指定する者、国際登録の存続期間の更新の申請者、国際登録の名義人の変更の記録の申請者は、それぞれ一件につき、4200円の手数料を納付することになります。なお、特許庁への手数料は特許印紙をもって納付されなければなりません。

議定書国際登録出願を作成できるのは?

弁理士法施行令の改正で、非弁理士の業務禁止の書類に「国際登録出願ノ願書」が追加され、国際登録出願の願書作成は弁理士が行うことになります。(弁施令38条1項7号)

各国の国内出願へ変更

国際登録日から5 年以内に基礎出願が拒絶・無効とされることなどによって国際登録が取り消されたとしても、国際登録日の利益を保持したまま各国の国内出願へ変更することができます。

締約国一覧

特許庁(JPO)vol.1 商標_動画(リンク)

特許庁(Japan Patent Office)の商標に関する動画になります。

1. 商標チャンネル(全体版)
2. なるほど!なっとく!商標の基礎知識 商標制度の概要編
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商標登録の指定商品・指定役務の区分

指定商品・指定役務の区分とはなんですか?

商標登録の指定商品・指定役務の区分とは、一まとめできる商品、役務(サービス)を第1類から第45類までの区分毎に分けたもので、ニース協定による国際分類(Nice Agreement Concerning the International Classification of Goods and Services for the Purposes of the Registration of Marks)に準拠しています。商標登録出願時には下記の区分から1つ又は複数の区分(類)を選んで出願することになります。また、区分が増える毎に印紙代等の費用は高くなります。下の表は商品区分を選択する場合の参考としてご利用下さい。1つの商標登録出願は複数の区分を指定して、その区分に属する商品を指定商品・指定役務とすることができますが、或る単独の商品や役務が複数の区分にまたがることはありません。また、ニース協定の加盟国であれば、同じ分類の番号を使うことができます。
より詳しくは商品・役務の区分の解説のページへ

指定商品・指定役務の区分の一覧表

 区分  商品
 第1類  工業用、科学用又は農業用の化学品
第2類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品
第3類 洗浄剤及び化粧品
第4類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤
第5類 薬剤
第6類 卑金属及びその製品
第7類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械
第8類 手動工具
第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具及び電気式又は光学式の機械器具
第10類 医療用機械器具及び医療用品
第11類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生用の装置
第12類 乗物その他の移動用の装置
第13類 火器及び火工器
第14類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計
第15類 楽器
第16類 紙、紙製品及び事務用品
第17類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック
第18類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具
第19類 金属製でない建築材料
第20類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの
第21類 家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品
第22類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維
第23類 織物用の糸
第24類 織物及び家庭用の織物製カバー
第25類 被服及び履物
第26類 裁縫用品
第27類 床敷物及び織物製でない壁掛け
第28類 がん具、遊戯用具及び運動用具
第29類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物
第30類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料
第31類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料
第32類 アルコールを含有しない飲料及びビール
第33類 ビールを除くアルコール飲料
第34類 たばこ、喫煙用具及びマッチ
区分 役務(サービス)
第35類 広告、事業の管理又は運営及び事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
第36類 金融、保険及び不動産の取引
第37類 建設、設置工事及び修理
第38類 電気通信
第39類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配
第40類 物品の加工その他の処理
第41類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動
第42類 化学技術又は産業に関する調査研究及び設計、電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発
第43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供
第44類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務
第45類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するものを除く。)、警備及び法律事務

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