米国における団体商標と証明標章

米国連邦商標法

米国連邦商標法では、通常の商標の他に、団体商標(Collective Trademark)と証明標章(Certification mark)があります。日本の商標制度にも団体商標と地域団体商標の各制度がありますが、証明標章という制度自体はなく通常の商標登録とライセンシングを利用しています。証明標章はいくつかの国(ポーランド、スウェーデンなど)ではGuarantee Markとも呼ばれることがありますが、米国ではCertification markになります。

米国における団体商標(Collective Trademark)と証明標章(Certification mark)ってなに?

米国の商標制度では、団体商標は次の3つのカテゴリーに分類できます。それらはcollective trademark(団体(商品)商標)、collective service mark(団体役務商標)、collective membership mark (団体会員標章)になります。このうちcollective trademarkとcollective service markはまとめてcollective markと呼ばれることもあります。団体商標は団体組織の構成員が指定商品や指定役務を非構成員の商品や役務と区別するために使用される標章です。一方証明標章は、或る商品や役務の特徴や品質を証明するために使用される標章です。証明標章の目的は、購買者に特定の者の商品や役務が或る性質を有し、若しくは所定の品質や標準を備えていることを知らせます。これらの団体商標や証明標章は、複数人によって使用されますが、その複数の使用者は団体内の組織によって関連した者に限定されます。団体商標は、構成員(会員)の全員が使用することができ、団体組織が構成員の利益のために団体商標権を保持します。証明標章の所有者は、証明する者の標準を満たす者にその標章の使用を許可します。証明商標は許可された者により使用されますが、その許可された者同士は関連性はない場合が多いです。団体会員標章は、その標章の使用者が特定の組織の構成員であることを示す標章で、この団体会員標章は一般的な意味での商品商標でもなく役務商標でもありません。

証明標章は主に次の3つのタイプのものがあるとされています。1.Geographic origin (地理的な出所) 2.Standards met with respect to quality, materials, or mode of manufacture (品質、素材、製造モードについての標準に適合) 3.Work/labor performed by member or that worker meets certain standards (会員若しくはある基準を満たす作業者によりなされる作業若しくは労働) 証明標章は、団体商標と比べて2つの大きな違いがあります。1つは証明標章は、その所有者ではなく、許可された使用者によって使用されます。もう1つは、証明標章は、商業的な出所を示したり、ある人物の商品や役務を他人のものから区別したりするのではなく、許可された使用者の商品/役務の特定の側面について認定されたものであることを示します。指定商品・指定役務についても通常の商標とは異なり、第何類の代わりにA(商品)かB(役務)のどちらかを選択するような指定となります。

団体商標(Collective Trademark)の例

米国商標登録第87762051号
米国商標登録第79128963号
米国商標登録第680603号

団体会員標章(Collective Membership Mark)の例

米国商標登録第77520761号
米国商標登録第77451590号
米国商標登録第85763654号

証明標章(Certification Mark)の例

米国商標登録第5778297号
米国商標登録第5034539号
米国商標登録第5100929号

出願に際して必要な書類は?

団体商標に対する書類

団体商標についての出願に含むべき情報は、通常の商標登録出願とほぼ同じとなりますが、出願の基礎として申し立てる情報が少し異なることになります。その1つは、団体メンバーによる商標の使用についての出願人の管理(Applicant’s control)の特質についての申立(statement)です。この申立には”Applicant controls the members’ use of the mark in the following manner: [specify, e.g., the applicant’s bylaws specify the manner of control]”という文言を用いることが慣用され、職権補正により加えることも可能です。もう1つは下記に示す宣誓書(DECLARATION)です。この宣誓書は、商標が商取引で使用され、出願人が商取引における標章の使用を正当に管理している。署名者の知る限りでは、商品上または商品に関連して使用された場合に、団体メンバー以外の人物は、同一の形式または類似している形で、商取引で商標を使用する権利を持たないことなどの事項を内容とします。また、商標使用の日付も団体メンバーの使用であったり、使用見本についても団体メンバーの使用を証するものである必要があります。

団体会員標章に対する書類

団体会員標章は、ビジネスや貿易で使用されておらず商品やサービスの出所を示すものではないので、団体会員標章は通常の意味での商標またはサービスマークではありません。団体会員標章についての出願に含むべき情報は、団体商標と同様に通常の商標登録出願とほぼ同じとなりますが、会員の種類、目的、活動分野などの会員組織の性質の説明(例えば、 “indicating membership in an organization of computer professionals” or “indicating membership in a motorcycle club”)が必要とされ、出願人の管理(Applicant’s control)の特質についての申立(statement)と、団体会員標章についての宣誓書(DECLARATION)も必要です。使用見本としては、名義欄を空けたり無効の印を付与した会員証や証明書などを最も一般的に使用でき、逆に一般的な会員募集の広告などでは使用見本とならない場合もあります。

証明標章に対する書類

証明標章を登録するためには、次の申立が必要です。1.出願人が商品や役務の何を証明しているか申立(Certification statement) 2.出願人が原則的に商品や役務の製造などに従事していない旨(statement) 3.下記に示すような宣誓書(DECLARATION:DECLARATION FORM for collective mark)です。この宣誓書では、出願人は商標の所有者であること、 商標が商取引で使用されていること、出願人が商取引における標章の使用を正当に管理していること、署名者の知る限りでは、許可された使用者以外の人物は、同一の形式で、またはそれに関連して使用される可能性が高いと思われる類似の形で、商取引で当該標章を使用する権利を持たないことを宣誓することになっています。何を証明しているかの説明であるCertification statementは公報記載になり、公表されます。

地理的証明標章(geographic certification mark)

地理的証明標章は、チーズを表すROQUEFORT、お茶を表すDARJEELING、コーヒーを表すCOLOMBIANの標章のように、関連する地理的領域の名称が商品や役務の出所を証する場合の標章です。この地理的証明標章では、地理的な名称がその出所を証するように機能する際には、単に地理的な記述であるとして拒絶することはできないとされています。しかし地理的な記述以外の部分では、権利不要求を求められることがあり、例えば、ウイスコンシンチーズのチーズはチーズの部分は一般名称として権利不要求が正当なものとなり得ます。出願人は、地理的証明標章を管理する権限を正当に有している(EXERCISE LEGITIMATE CONTROL)必要があり、通常地理的名称についての権限(AUTHORITY TO CONTROL THE GEOGRAPHIC TERM)から地方自治体またはこれに類する者が出願人となります。

地理的証明標章(Geographic Certification Mark)の例

米国商標登録第2914307号
米国商標登録第1632726号
米国商標登録第571798号

出願後の補正は可能ですか?

証明標章として出願した後に、実は通常の商標であった場合や、その逆であった場合には、出願を補正して的確な形式の出願に直すことが可能です。証明標章や団体商標、団体会員標章はTEASplusでは出願できないため、もしTEASplusで出願した商標をこれらの商標・標章に補正する場合には、追加の手数料が必要となります。

団体商標、証明標章の審査はどのように行われますか?

基本的には、団体商標、証明標章であっても通常の商標の審査と同様な審査が行われますが、例えば宣誓書などの有無や使用者は誰かなどの団体商標、証明標章の登録要件についての審査も行われます。出願の基礎が44E(外国商標登録)であり、外国の登録証明書に商標を団体商標として指定する見出しがある場合、または外国の証明書の本文に登録が団体商標であることを示す言語が含まれている場合、これらの表示は外国の登録が団体商品商標、団体役務商標、または団体会員標章であることを示している可能性があります。

日本の団体商標や地域団体商標、地理的表示についても登録できますか?

答えはYESですが、良く考えて出願しないと何度も拒絶理由通知(Office Action)を受けたり、望む形式での登録ができなかったります。特に日本で登録された地域団体商標は、そのフォーマットが識別力のない地理的名称+普通名称であるため要注意です。

i)図形と組み合わせの地域団体商標

日本で登録された地域団体商標でも、図形と組み合わせの地域団体商標は、文字部分が地理的名称+普通名称であっても図形の部分からの顕著性がありますので、主登録が可能です。しかし、地理的名称と普通名称のそれぞれに権利不要求(disclaimer)を求められることがあり、そのとおりに権利不要求を付加した場合には、図形だけの商標と同じ効力になります。従いまして、地域団体商標であっても米国では地域証明標章(geographic certification mark)として権利化を図ることを考えるべきと思います。米国では団体商標は、自分の団体と他人の団体を区別するための商標ですから、単なる地理的名称は識別性がないものと判断されますが、補正などで地理的な証明標章のカテゴリーに持っていけば地理的名称の権利不要求の問題は解消されます。日本で団体商標だから”COLLECTIVE MARK”と単純に決めつけないことが良い結果をもたらすこともあります。

ii)文字だけの地域団体商標

日本で登録された地域団体商標が文字だけの場合には、さらにハードルが上がり、もし終始団体商標として登録しようとすると、識別性がない単なる地理的名称の拒絶理由を回避することができないことになりかねません。主登録を諦めて、必要な場合には使用の証拠を添付し、出願の基礎を1aに替えて補助登録だけで済ませることにもなりがちです。文字だけの地域団体商標は、ローマ字の地理的名称とローマ字の商品名の組み合わせも含まれます。特にマドリッド制度を利用した出願の場合には、最終的に補助登録にもっていくことができないため、日本の地域団体商標をそのまま団体商標で登録することは容易ではありません。1つの解決策としては、補正により団体商標ではなく地理的な証明標章のカテゴリーに持っていけば、地理的名称の権利不要求の問題は解消されることがあります。重ねてですが、日本で団体商標だからといって単純に”COLLECTIVE MARK”と決めつけないことが良い結果になる可能性があります。地理的な証明標章の場合には、EXERCISE LEGITIMATE CONTROLとAUTHORITY TO CONTROL THE GEOGRAPHIC TERMなどを証明するために、いくつかの宣誓書を提出する必要がありますが、この場合、地域団体商標を取得するための規約等を翻訳して対処することになります。

マドリッド制度を利用して登録可能ですか?

マドリッド制度を利用した国際出願でも米国での登録は可能です。この場合には、出願時に必要とされる宣誓書と、団体商標、証明標章に必要な宣誓書は異なっており、米国での審査の段階で審査官が出願人に必要な宣誓を求めるようになっています。出願したまま中間処理なしに登録になることはないと思われます。

DECLARATION FORM for collective mark

DECLARATION



The undersigned being warned that willful false statements and the like are punishable by fine or imprisonment, or both, under 18 U.S.C. §1001, and that such willful false statements and the like may jeopardize the validity of the application or document or any registration resulting therefrom, declares that he/she is properly authorized to execute this declaration on behalf of applicant; he/she believes that, as of the application filing date, the applicant has had a bona fide intention to exercise legitimate control over its members’ use of the collective mark in commerce that the United States Congress can regulate; he/she believes the applicant to be entitled to exercise legitimate control over its members’ use of the mark in commerce that the United States Congress can regulate; to the best of his/her knowledge and belief, no other person, firm, corporation, or association has the right to use the mark in commerce that the United States Congress can regulate, either in the identical form thereof or in such near resemblance thereto as to be likely, when used on or in connection with the goods/services of such other person, firm, corporation, or association to cause confusion, or to cause mistake, or to deceive; and that all statements made of his/her own knowledge are true; and all statements made on information and belief are believed to be true.

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(Signature)

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(Print or Type Name and Position)

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(Date)

DECLARATION FORM for certification mark

DECLARATION



The undersigned being warned that willful false statements and the like are punishable by fine or imprisonment, or both, under 18 U.S.C. §1001, and that such willful false statements and the like may jeopardize the validity of the application or document or any registration resulting therefrom, declares that he/she is properly authorized to execute this declaration on behalf of applicant; he/she believes that, as of the application filing date, the applicant has had a bona fide intention to exercise legitimate control over the use of the certification mark in commerce that the United States Congress can regulate; he/she believes the applicant to be entitled to exercise legitimate control over the use of the mark in commerce that the United States Congress can regulate; applicant will not engage in the production or marketing of the goods or services to which the mark is applied; to the best of his/her knowledge and belief, no other person, firm, corporation, or association has the right to use the mark in commerce that the United States Congress can regulate, either in the identical form thereof or in such near resemblance thereto as to be likely, when used on or in connection with the goods/services of such other person, firm, corporation, or association to cause confusion, or to cause mistake, or to deceive; and that all statements made of his/her own knowledge are true; and all statements made on information and belief are believed to be true.

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(Signature)

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(Print or Type Name and Position)

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(Date)

DECLARATION BY SIGNATORY
DECLARATION:
The signatory being warned that willful false statements and the like are punishable by fine or imprisonment, or both, under 18 U.S.C. § 1001, and that such willful false statements and the like may jeopardize the validity of the application or submission or any registration resulting therefrom, declares that, if the applicant submitted the application or allegation of use (AOU) unsigned, all statements in the application or AOU and this submission based on the signatory’s own knowledge are true, and all statements in the application or AOU and this submission made on information and belief are believed to be true.

STATEMENTS FOR UNSIGNED SECTION 1(a) APPLICATION/AOU: If the applicant filed an unsigned application under 15 U.S.C. §1051(a) or AOU under 15 U.S.C. §1051(c), the signatory additionally believes that: the applicant is the owner of the mark sought to be registered; the mark is in use in commerce and was in use in commerce as of the filing date of the application or AOU on or in connection with the goods/services/collective membership organization in the application or AOU; the original specimen(s), if applicable, shows the mark in use in commerce as of the filing date of the application or AOU on or in connection with the goods/services/collective membership organization in the application or AOU; for a collective trademark, collective service mark, collective membership mark application, or certification mark application, the applicant is exercising legitimate control over the use of the mark in commerce and was exercising legitimate control over the use of the mark in commerce as of the filing date of the application or AOU; for a certification mark application, the applicant is not engaged in the production or marketing of the goods/services to which the mark is applied, except to advertise or promote recognition of the certification program or of the goods/services that meet the certification standards of the applicant. To the best of the signatory’s knowledge and belief, no other persons, except, if applicable, authorized users, members, and/or concurrent users, have the right to use the mark in commerce, either in the identical form or in such near resemblance as to be likely, when used on or in connection with the goods/services/collective membership organization of such other persons, to cause confusion or mistake, or to deceive.

STATEMENTS FOR UNSIGNED SECTION 1(b)/SECTION 44 APPLICATION AND FOR SECTION 66(a) COLLECTIVE/CERTIFICATION MARK APPLICATION: If the applicant filed an unsigned application under 15 U.S.C. §§ 1051(b), 1126(d), and/or 1126(e), or filed a collective/certification mark application under 15 U.S.C. §1141f(a), the signatory additionally believes that: for a trademark or service mark application, the applicant is entitled to use the mark in commerce on or in connection with the goods/services specified in the application; the applicant has a bona fide intention to use the mark in commerce and had a bona fide intention to use the mark in commerce as of the application filing date; for a collective trademark, collective service mark, collective membership mark, or certification mark application, the applicant has a bona fide intention, and is entitled, to exercise legitimate control over the use of the mark in commerce and had a bona fide intention, and was entitled, to exercise legitimate control over the use of the mark in commerce as of the application filing date; the signatory is properly authorized to execute the declaration on behalf of the applicant; for a certification mark application, the applicant will not engage in the production or marketing of the goods/services to which the mark is applied, except to advertise or promote recognition of the certification program or of the goods/services that meet the certification standards of the applicant. To the best of the signatory’s knowledge and belief, no other persons, except, if applicable, authorized users, members, and/or concurrent users, have the right to use the mark in commerce, either in the identical form or in such near resemblance as to be likely, when used on or in connection with the goods/services/collective membership organization of such other persons, to cause confusion or mistake, or to deceive.

/E-FORM SIGNING/

団体商標、団体会員標章のSection 8 Affidavits or Declarationsの提出には次の宣誓書の提出も必要となります。

DECLARATION FORM for Exercising Legitimate Control Statement

DECLARATION



Unless the owner specifically claimed excusable nonuse, the mark was in use in commerce on or in connection with the goods/services or to indicate membership in the collective membership organization identified in the registration, as evidenced by the submitted specimen(s) showing the mark as used in commerce, during the relevant period for filing the 10-year Section 8.

The signatory being warned that willful false statements and the like are punishable by fine or imprisonment, or both, under 18 U.S.C. §1001, and that such willful false statements and the like may jeopardize the validity of this submission, declares that all statements made of his/her own knowledge are true and that all statements made on information and belief are believed to be true.

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(Signature of Authorized Person)

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(Type or Print Name)

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(Date)

商標権の移転手続

商標権の移転手続

財産権としての商標権は、その所有者を変えることができ、このような所有者を変える手続を移転手続と言います。商標権の移転手続には、大きく分けて、相続や会社合併などの一般承継と、譲渡などの特別承継があります。また、商標権の所有者、即ち商標権者は、その持分の一部を他人に移転することも可能です。名義変更は一般には移転を意味し、これに対して、名義人の表示変更は、単に社名が変わったときのように商標権者は変わりませんがその住所や名称が変わる手続になります。

1.一般承継による移転手続

一般承継による移転手続は、例えば相続の場合や、合併の場合に必要となります。一般承継による移転の場合は、移転登録が効力発生要件ではありませんが、特許庁長官に届け出る義務があります。また、一般承継による移転手続では、承継人による単独申請が認められます。会社の合併の場合には、1つに会社が解散して、他の会社が承継する吸収合併と、会社の全てが解散して新設の会社を設立する新設合併とがあります。このうち吸収合併の場合における吸収した方の会社が商標権者である場合には、吸収合併により新会社名になることがありますが、この場合、商標権として必要な手続は、一般承継による移転手続ではなく、名義人の表示変更となります。

A.一般承継による移転手続に必要な書類

相続の場合には、商標権者であった者の死亡の事実を証明する書面(戸籍謄本など)と相続人であることを証明する書面(相続の資格を有する者全員の記載のある戸籍謄本)が必要になります。相続人の間で遺産の分割協議をした場合、例えば、死亡者の妻、兄弟が相続人で、長男に商標権と移転する場合には、遺産分割協議書の添付が必要となります。会社の合併による場合には、合併の事実を証明する書面として登記簿謄本(登記事項証明書、閉鎖登記事項証明書など)が必要となります。また、代理人による手続の場合には、その委任状が必要となります。なお、稀な事例と思われますが、遺言書が存在する場合には、公正証書遺言か検認済証明書が付いた遺言書を遺産分割協議書に代えて提出することになります。

B.一般承継による移転手続費用

一般承継による移転手続には、収入印紙3000円の費用がかかります。登録原簿に対する手続とも言えますので、特許印紙ではなく収入印紙を申請書に貼付します。

2.特別承継による移転手続

特別承継による移転手続は、例えば有償あるいは無償の譲渡により所有者を変える手続です。譲渡などの移転手続では、移転登録が効力発生要件ですので、移転手続しなければ権利の譲渡は発生しません。商標権の移転登録申請は、登録義務者(譲渡人)と登録権利者(譲受人)の双方で手続をするのが原則ですが、譲渡人が承諾したとの内容の単独申請承諾書を登録権利者が提出することもでき、商標権の移転の場合には、所定の書面(商標法条約第十一条(1)(b)に掲げる書面)を提出すれば登録義務者だけ或いは登録権利者だけの単独申請も可能です。

商標登録令 第八条
(登録の申請)
第八条 商標権の移転の登録は、申請書に商標法条約第十一条(1)(b)に掲げる書面であつて経済産業省令で定めるものを添付したときは、登録権利者又は登録義務者だけで申請することができる。
商標法条約 第11条 権利の移転
第 11 条 権利の移転
(1)[登録に係る権利の移転]
(a) 名義人である者に変更があった場合には,締約国は,自国の官庁に対する標章登録簿における移転の記録の申請が,名義人若しくはその代理人又は権利を取得した者(以下「新権利者」という。)若しくはその代理人によって署名され,かつ,関係する登録の登録番号及び記録すべき移転を記載した書類によって行われることを認める。当該移転に係る申請書の提出に関する要件について,次の場合のいずれかに該当する場合には,いかなる締約国も,申請を却下してはならない。
(i) 申請書が,書面に記載された場合において,(2)(a)の規定に従うことを条件として,規則で定める申請書様式に相当する様式で提出されたとき
(ii) 当該締約国が自国の官庁に対するファクシミリによる書類の送付を認め,かつ,申請書がファクシミリによって送付された場合において,(2)(a)の規定に従うことを条件として,送付された書類の写しが(i)に規定する様式に合致するとき
(b) 権利の移転が契約によるものである場合は,締約国は,申請書に,当該移転が契約によるものであることを記載し及び申請人の選択により次のいずれかのものを添付するよう要求することができる。
(i) 契約書の写し。当該写しについては,公証人その他の権限のある公の当局が当該契約書の原本と同一の内容であることを認証するよう要求することができる。
(ii) 契約書における当該権利の移転を表示する部分の抄本。当該抄本については,公証人その他の権限のある公の当局が当該契約書の真正な抄本であることを認証するよう要求することができる。
(iii) 規則で定める様式及び内容で作成され,かつ,名義人及び新権利者の双方が署名した譲渡証明書であって,認証されていないもの
(iv) 規則で定める様式及び内容で作成され,かつ,名義人及び新権利者の双方が署名した譲渡文書であって,認証されていないもの
(c) 権利の移転が合併によるものである場合には,締約国は,申請書に,当該移転が合併によるものであることを記載し及び権限のある当局が発行する合併を証明する文書の写し(例えば,商業登記簿の抄本の写し)を添付するよう要求することができる。当該写しについては,当該文書を発行した当局又は公証人その他の権限のある公の当局が当該文書の原本と同一の内容であることを認証するよう要求することができる。
(d) 移転が一部の共同名義人に係るものであるが全部の共同名義人に係るものでなく,かつ,当該移転が契約又は合併によるものである場合には,締約国は,権利の移転に関係しない共同名義人が自己の署名した文書において当該権利の移転に明示の同意を与えるよう要求することができる。
(e) 権利の移転が契約又は合併によるものでなく,法令の実施,裁判所の決定その他の理由によるものである場合には,締約国は,申請書に,当該移転が契約又は合併によるものでないことを記載し及び当該移転を証明する文書の写しを添付するよう要求することができる。当該写しについては,当該文書を発行した当局又は公証人その他の権限のある公の当局が当該文書の原本と同一の内容であることを認証するよう要求することができる。
(f) 締約国は,申請書に次の事項を記載するよう要求することができる。
(i) 名義人の氏名又は名称及び住所
(ii) 新権利者の氏名又は名称及び住所
(iii) 新権利者がいずれかの国の国民である場合には当該国の名称,新権利者がいずれかの国に住所を有する場合には当該国の名称及び新権利者がいずれかの国に現実かつ真正の工業上又は商業上の営業所を有する場合には当該国の名称
(iv) 新権利者が法人である場合には,当該法人の法的性質並びにその法令に基づいて当該法人が設立された国の名称及び該当するときは当該国の地域であってその法令に基づいて当該法人が設立されたものの名称
(v) 名義人が代理人を有する場合には,当該代理人の氏名又は名称及び住所
(vi) 名義人が送達のためのあて先を有する場合には,当該あて先
(vii) 新権利者が代理人を有する場合には,当該代理人の氏名又は名称及び住所
(viii) 新権利者に対し第4条(2)(b)の規定に基づき送達のためのあて先を有するよう要求する場合には,当該あて先
(g) 締約国は,申請に関し,料金を自国の官庁に支払うよう要求することができる。
(h) 移転の記録は,当該移転が 2 以上の登録に係るものであっても,1 の申請書で求めることができる。ただし,各登録における名義人及び新権利者がそれぞれ同一であり,かつ,すべての関係する登録の登録番号が当該申請書に記載されている場合にかぎる。
(i) 権利の移転が名義人の登録に掲げる商品又はサービスのすべてには影響を及ぼさない場合において,関係法令がこのような移転の記録を認めるときは,官庁は,当該移転に係る商品又はサービスについて別個の登録を行う。
(2)[言語及び翻訳]
(a) 締約国は,(1)に規定する申請書,譲渡証明書又は譲渡文書が自国の官庁によって認められた 1 の言語又は 2 以上の言語のうちのいずれか 1 の言語で作成されるよう要求することができる。
(b) (1)の(b)(i),(b)(ii),(c)及び(e)に規定する文書が締約国の官庁によって認められた言語で作成されていない場合には,当該締約国は,当該官庁によって認められた 1 の言語又は2以上の言語のうちのいずれか1の言語で作成された当該文書の翻訳文(認証されたものを含む。)を申請書に添付するよう要求することができる。
(3)[出願に係る権利の移転]
権利の移転が出願又は出願及び登録の双方に係る場合には,(1)及び(2)の規定を準用する。この場合において,関係する出願の出願番号が付されていないとき又は出願人若しくはその代理人が当該出願番号を知らないときは,申請は,規則で定める他の方法で当該出願を特定して行うものとする。
(4)[その他の要件の禁止]
いかなる締約国も,この条に規定する申請に関し,(1)から(3)までに定める要件以外の要件を満たすよう要求することができない。特に,次の要件については,要求することができない。
(i) 商業登記簿の証明書及び抄本を提出すること。ただし,(1)(c)の規定が適用される場合を除く。
(ii) 新権利者が工業上又は商業上の業務を行っている旨を表示し及びこのことについての証拠を提出すること
(iii) 権利の移転によって影響を受ける商品又はサービスに係る業務を新権利者が行っている旨を表示し及びこのことについての証拠を提示すること
(iv) 名義人が事業又は関連するのれんの全部又は一部を新権利者に譲渡した旨を表示し及びこのことについての証拠を提出すること
(5)[証拠]
締約国は,自国の官庁がこの条に規定する申請書又は文書に記載された事項の真実性について合理的な疑義を有する場合には,証拠又は(1)の(c)若しくは(e)の規定が適用されるときは追加的な証拠を当該官庁に提出するよう要求することができる。

A.特別承継による移転手続に必要な書類

移転を申請する場合には、譲渡人と譲受人の記載や、その登録の原因を証明する書面として譲渡証書を添付することになります。また、移転が取締役会或いは株主総会での承認事項に該当する場合は取締役会議事録や株主総会議事録と、登記簿謄本(登記事項証明書)を提出する必要があります。また、代理人による手続の場合には、委任状が必要となります。

A-1 取締役会或いは株主総会での承認事項に該当する場合

商標権の移転が、会社の役員の方が絡むケースで利益相反行為に該当する場合には、移転が認められないことになりますので、必要な場合には、取締役会或いは株主総会での承認を証する書面を提出することになります。

i) 個人Aとその個人Aが取締役の会社間の移転

  • 個人Aから甲会社(A氏が取締役)への移転は、有償譲渡の場合に、甲会社の取締役会の承認を要します。無償の場合には、承認は不要です。
  • 甲会社(A氏が取締役)から個人Aへの移転は、有償・無償を問わず、甲会社の取締役会の承認を要します。

ii) 個人Aが甲会社と乙会社の両方の取締役である場合の甲乙会社間の移転

  • 個人Aが甲会社と乙会社の両方の代表取締役である場合、甲乙会社間の移転が有償譲渡の場合に、甲乙両会社の取締役会の承認をそれぞれ要しますが、甲乙会社間の移転が無償譲渡の場合には、登録権利者側の取締役会の承認は不要になり、登録義務者側の取締役会の承認だけ必要です。
  • 個人Aが甲会社の代表取締役であり且つ個人Aが乙会社の取締役である場合、甲会社から乙会社への移転が有償譲渡の場合に、乙会社の取締役会の承認を要します。無償の場合には、承認は不要です。
  • 個人Aが甲会社の取締役であり且つ個人Aが乙会社の代表取締役である場合、甲会社から乙会社への移転は、有償無償を問わず、甲会社の取締役会の承認を要します。
  • 個人Aが甲会社と乙会社の両方の取締役であり、かつ甲会社と乙会社の両方ともそれぞれ他に代表取締役がいる場合、甲会社から乙会社への移転は、有償無償を問わず、取締役会の承認は不要になります。

取締役会の承認の代わりに株主総会議事録による書面の提出も可能です。また、取締役会の人員については登記簿謄本(登記事項証明書)によって証明する必要があります。

B.特別承継による移転手続費用

特別承継による移転手続には、収入印紙30,000円の登録免許税がかかります。登録原簿に対する手続とも言えますので、特許印紙ではなく収入印紙を申請書に貼付します。

3.団体商標の移転手続

団体商標とは、事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用させるために登録を受けた商標です。団体商標の移転については、団体商標の商標権を他人に移転すると、通常の商標権とみなされますが(商標法第24条の3第1項)、団体商標の商標権として移転する旨記載した書面と移転を受ける商標権者が社団法人または組合であることを証明する書面とを特許庁長官に提出した場合は、通常の商標権に変えられることもなく団体商標のまま移転されます(商標法第24条の3第2項)。国際登録に基づく団体商標の商標権は、第7条第3項に規定する書面(第7条第1項の法人であることを証する書面)を提出する場合を除き、一切移転することができないとされています(商標法第68条の24)。また、通常の商標権を団体商標にかかる商標権として移転することはできません。

4.地域団体商標の移転手続

地域団体商標に係る商標権は、譲渡することはできないと規定されていますが(商標法第24条の2第4項)、組合等の団体の合併のような一般承継の場合には移転が可能であると定めています。

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商標法24条の2、商標法24条の3
(商標権の移転)
第二四条の二 商標権の移転は、その指定商品又は指定役務が二以上あるときは、指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる。
2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関又は公益に関する団体であつて営利を目的としないものの商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
3 公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者の商標登録出願であつて、第四条第二項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
4 地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。
(団体商標に係る商標権の移転)
第二四条の三 団体商標に係る商標権が移転されたときは、次項に規定する場合を除き、その商標権は、通常の商標権に変更されたものとみなす。
2 団体商標に係る商標権を団体商標に係る商標権として移転しようとするときは、その旨を記載した書面及び第七条第三項に規定する書面を移転の登録の申請と同時に特許庁長官に提出しなければならない。