地域団体商標の商標権者と独占禁止法

地域団体商標の商標権者と独占禁止法

商標権は独占排他権ですので、市場で排他的に商標を使用することができますが、公正かつ自由な競争を不当に制限してまで商標権を活用することはできないとされています。地域団体商標を中心とした地域ブランド構築も立派な目標ですが、そのブランド構築の為の道筋が独禁法上、不当な手段とならないように組合内のルールを設定する必要があります。

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I.地域団体商標の登録主体とされる組合等

地域団体商標の登録主体とされる組合には、次の要件が必要とされています。i)法人格を有すること、ii)事業協同組合等の特別の法律(例:中小企業等協同組合法第 14 条、農業協同組合法第 20 条など)により設立された組合であること、iii)設立根拠法において構成員資格者の加入の自由が保障されていることが挙げられています。また、平成26年8月1日から、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人も地域団体商標の登録主体とされています。

II.典型的な独禁法違反とされる行為

a.私的独占

事業者が,単独で,又は他の事業者と共同して,他の事業者の事業活動を排除し,又は支配することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,私的独占に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(私的独占)]

b.取引拒絶 (group boycott)(一般指定第2項)

不当に事業者が単独で特定の事業者との取引を拒絶したり,第三者に特定の事業者との取引を拒絶させる行為

c.事業者団体における差別的取扱い等(一般指定第5項)

事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し,又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い,その事業者の事業活動を困難にさせる行為

d.抱き合わせ販売 (product bundling or tie-in sales)等(一般指定第10項)

商品やサービスを販売する際に,不当に他の商品やサービスを一緒に購入させる行為,その他不当に取引を強制する行為

e.不当廉売 (predatory pricing)(独占禁止法第2条第9項第3号及び一般指定第6項)

商品を不当に低い価格,例えば実質的な仕入価格を下回る価格で,継続して販売し,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれのある行為

f.販売価格の拘束 (price fixing)(独占禁止法第2条第9項第4号)

小売業者等に自社商品の販売価格を指示する行為

g.拘束条件付取引(exclusive dealing)(一般指定第12項)

取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件を付けて取引する行為

h.優越的地位の濫用 (undue influence)(独占禁止法第2条第9項第5号)

取引上優越的地位にある事業者が,その地位を利用して取引先に対し正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為。例えば押し付け販売など。

III.独禁法違反が懸念される例(公正取引委員会のウエブサイトより)

a.加工業者への販売価格の拘束

組合等では,農畜産物や水産物を加工業者に販売し、その加工業者が当該組合等のブランド製品を製造,販売している場合があります。こうした場合において組合等が加工業者に対し、自己ブランドの製品の販売価格を指示し、これを条件として取引を行うときには、これによって価格が維持されることになりかねません。自己ブランド製品であっても、例えば、以下のような行為は,商標法による権利の行使とみられるものではなく、不公正な取引方法に該当し原則として違法となります。
(具体的事例)組合等が組合会員である乳業者(加工業者)に生乳を供給し、当該乳業者が組合等の地域団体商標にかかるブランドの牛乳を製造・販売している場合に、組合等が当該乳業者と取引する際に、組合等が決定した小売業者の最低販売価格を下回る価格で牛乳を販売しないように小売業者に対して指示することを条件とする。

b.加工業者への排他条件付取引

管内の加工業者に対する農畜産物の供給の大半を占めている農協が、加工業者に対して、自己の販売事業と競合する事業者と取引しないことを条件とする場合には、加工業者の自由かつ自主的な取引が阻害されるとともに、競争事業者が加工業者と取引をする機会が減少することとなり、例えば,以下のような行為は,不公正な取引方法に該当し違法となるおそれがあります(一般指定第10項(抱き合わせ販売等),第11項(排他条件付取引)又は第12項(拘束条件付取引))。合理の原則 (rule of reason)の適用もあるべきところと思われますので、そのような競争を阻害する行為と、例えばブランド構築にはやむを得ないというような事態とのバランスで違法性が決められます。
(具体的事例)農協が生乳加工業者に生乳を供給するに当たり、自己と競合する生乳供給業者から生乳の供給を受けないこと、自己から生乳の供給を受けていない生乳加工業者の製品の製造委託を受けないことを条件として取引することが挙げられます。

c.小売業者への価格についての拘束

販売方法の一つである広告・表示の方法について、組合等が小売業者に対して,店頭,チラシ等で表示する価格について制限し,又は価格を明示した広告を行うことを禁止することなどの制限を行うことは,これによって価格が維持されるおそれがあり,原則として不公正な取引方法(一般指定第12項〔拘束条件付取引〕)に該当し,独占禁止法上問題となることがあります(同法第19条)(流通・取引慣行ガイドライン第2部第2-6〔小売業者の販売方法に関する制限〕)。

d.安売り広告をしないことを条件とする商標使用権契約

或る組合が、組合員が使用する商標Zのライセンス契約を更新しないことは、外形上は商標法による権利の行使とみられる行為とされています。しかし組合が商標Zを付した製品の安売り広告を行わないことをライセンス契約の更新のための条件とすることは、この条件によって、商標Zを付した製品の製造販売業者間の価格競争が阻害され、商標Zを付した製品の販売価格が維持されるおそれのある行為となりますので、独占禁止法第21条に規定される「(商標権の)権利の行使と認められる行為」とはならず、拘束条件付取引に該当し、独占禁止法上問題となります。

e.商標権使用のライセンス契約でラベル購入を条件とする行為

花き市場に出荷する花き商品に既にライセンス契約を締結している農業協同組合のラベルを購入の上添付することについては i)ラベルの指定は、ブランドの維持、定着という合理的な目的に基づくものであり、ラベルの記載内容も、商品名,品種名及び消費者に向けた栽培のポイントであって競争に悪影響をもたらすものではないこと、ii)ラベルの指定は、非組合員のラベルの選択肢を奪うことになるものの,現在普及しているラベルは農業協同組合のものに限られ、このことがブランドの維持、定着に寄与していること、iii)商品価格に対するラベルの販売価格は実費相当額であり、不当に高価ではないこと、iv)組合員と非組合員の間でライセンス料に差を設けるものではなく、非組合員の競争力を減殺するものではないことから、独占禁止法上問題とはならないとされています。

f.組合員に対する生産調整

生産調整については、これに参加しない事業者に対して、協同組合内で不当に差別的な取扱いが行われ、その事業者の事業活動を困難にさせる場合には、不公正な取引方法に該当し違法となるおそれがあります。

g.生産方法を統一

一般的に、農畜産物の品質を揃え、ブランド農畜産物として出荷するために,品質の均一化等に関し合理的な理由が認められる必要最小限の範囲内で,単位農協の農畜産物の生産方法を統一すること(使用する農薬や肥料その他の生産資材を同じ品質・規格とすること等)は,それ自体は独占禁止法上問題とならないとされています。

h.競合他社の商標権取得

或るz組合等は、既にA製品市場において非常に有力な地位(50%弱のシェア)にあるところ、同じA製品市場で競合する他の法人等が使用するXブランドの商標使用許諾契約を解除させた上で、z組合等がXブランドの商標権を取得し又は商標使用許諾を受ける場合(20%のブランドに依存したシェア)には、他の法人等が新たに自社ブランドの開発を行ってA製品を販売するためには、新たな広告宣伝費や小売店に対する営業活動等が必要とされ、A製品市場における競争を実質的に制限し独占禁止法上問題となる可能性があります。

公正で自由な競争を目指して2016日本語版ショート、9:45
公正取引委員会チャンネル:独占禁止法及び下請法の違反行為の内容や公正取引委員会の業務内容について,寸劇やミニドラマを用いて分かりやすく紹介しています。

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