米国商標 使用見本抗議メール試用プログラム | 米国特許商標庁 (USPTO)

米国特許商標庁(USPTO)は、不適切な使用見本の提出に対して電子メールで情報提供する試用プログラム(Specimen Protests Email Pilot Program)を立ち上げています。これは最近の傾向としてWEBSITEなどを実際には使用していないにも拘わらず、商標やそのタグなどをデジタル加工した米国特許商標庁向けの使用見本を提出するものがあるためとされています。

笛

抗議の電子メールは、異議申立のための公告の日から30日以内とされ、アドレスTMSpecimenProtest@uspto.govに送ります。この電子メールには、次のような証拠を添付するとされています。1)対象となるマークがない同じ画像の第3者の使用の客観的証拠、例えば、実際のウェブサイトのスクリーンショットや広告や刊行物からの写真のディジタルコピーか、あるいは2)同じ対象の画像や作られたウエブサイトなどに異なるマークを用いた、既にUSPTOに提出された登録や出願の番号です。

電子メールの表題には、シリアルナンバーを含め、複数の複製された使用見本を対象とする場合には、“Duplicative Specimens — ”と書き始め、1つのシリアルナンバーを記載し、残りのシリアルナンバーは本文記載します。それぞれに使用見本のコピーを添付する必要はありません。また、電子メールは自動受付されますが、結果についてお知らせするものではないので、結果はTSDRで確認してください。抗議の電子メールは、異議申立のための公告の日から30日以内とされますが、公告前の電子メールの送信はいつでも可能です。

USPTOは、受け取った電子メールの量などに応じで試用プログラムを改変したり、終了したりすることができるとしています。

On March 6, 2018 the USPTO announced that it has started a pilot program that makes it easy to report specimens that have been digitally created, altered or fabricated. 

情報源: New USPTO Specimen Pilot Program | Knobbe Martens – JDSupra

TM Specimen Protests Email Pilot Program from USPTO website

米国商標の移転・名称変更手続

米国の商標については、その登録や出願を他人に譲渡することができますが、日本の手続とは異なり、いくつかの制限があります。その1つは、商標登録や出願の譲渡は、その業務上の信用(goodwill)と共に譲渡するものとされていて、業務上の信用を伴わない譲渡は出願のベースや登録に拘わらず効力がないと考えられ、その結果、商標登録も失効します。特にITU(Intent To Use)出願(§1(b))については、その商標についての業務(business)が存在するとき、その業務自体の全部若しくは一部を商標と共に移転する場合を除いて、出願の基礎(base)を1(a)に変更して使用証明書(allegation of use)を提出しないかぎりは移転することができず、その結果、移転が無効なだけではなく、その商標登録は無効となります。また、国際登録出願による米国保護拡張がなされた出願や登録については、譲受人がマドリッド制度の加盟国に国籍を有するか、加盟国に拠点を有する個人若しくは法人に限定されます。

米国特許商標庁への登録

出願や登録を譲渡する場合、通常米国特許商標庁への登録(Recording)が行われます。登録しなければ効果が生じない訳ではなく、米国特許商標庁への登録は第3者対抗要件です。また、登録自体が譲渡の有効性を示すものではないとされています。例えばA社からB社への商標を移転させる場合、登録しなくとも譲渡契約書があれば商標権は譲渡されることになりますが、仮に同じA社が後でC社に譲渡契約して、その譲渡について米国特許商標庁へ先に登録した場合には、B社は商標権の享有について主張できないことになります。従いまして、商標権の譲渡手続は、米国特許商標庁への登録が不可欠です。米国特許商標庁は、登録された譲渡の書面について精査することはなく、カバーシートがあるかなどの最小限の要件が満たされているか、費用を払ったのかのチェックをするだけです。提出された譲渡等の登録を取り消すことはできません。必要な場合は、訂正の登録を行います。譲渡や名称変更などのそれぞれ手続でその根拠となる書面を添付することになりますが、英語以外の言語で作成された書面については翻訳者が署名した翻訳文を添付しなければならないと規定(37C.F.R.§3.26.)されています。米国特許商標庁は、登録された書面については速やかに公開します。登録できない書面については、 “Notice of Non-Recordation”を通知して返却されることになります。

米国商標の譲渡(Assignment)

米国商標の譲渡の登録手続は、ETASを利用し申請書(Cover sheet)への記載と、譲渡を証する書面を添付すれば完了します。現在はETASを利用して提出できますので、添付する譲渡を証する書面もTIFFかPDFのファイル形式で提出できます。譲渡の種類としては、3種類あり、1)全部譲渡(Assignment of the entire interest and the goodwill)、2)一部譲渡(Assignment of an undivided part of assignor’s interest)、及び3)遡及的譲渡(Nunc Pro Tunc Assignment)があります。このうち一般的は譲渡は全部譲渡であり、譲渡人(assignor or conveying party)から譲受人(assignee or receiving party)に権利が業務上の信用と共に移転されます。一部譲渡の場合、元の所有者の持っていた権利の一部だけが移転します。遡及的譲渡は、登録手続は今するけれど、その実際の移転は過去に行われている場合の手続になります。申請書に添付する譲渡を証する書面は、業務の売却などの実際の契約書をコピーして提出することもできますが、通常は米国特許商標庁への記録用に署名した譲渡書を提出します。譲渡書にはgoodwillと共に移転させることが明記される必要があり、典型的には次の言葉が用いられます。

“Assignor does hereby assign to Assignee all right, title and interest in and to U.S. Reg. No. ____________, together with the goodwill of the business symbolized by the trademark.”

また、前述のように、ITU出願の移転の場合には、事業(Business)と共に移転させる必要があり、典型的には次の言葉が用いられます。

“Assignor does hereby assign to Assignee the mark in U.S. Trademark Application No. ____________, together with the goodwill of the business symbolized by the trademark. This application is being assigned as part of the entire business or portion thereof to which the mark pertains, as required by Section 10 of the Trademark Act, 15 U.S.C. § 1060.”

申請書に添付する譲渡を証する書面には、当事者の署名が必要ですが、公証は必要ではありません。日本の法人同士の移転でも、英語の譲渡書に当事者が署名した方が手続が簡素化します。もし日本語の譲渡書の場合には、翻訳が必要となり、翻訳者の署名が少なくとも必要で、多くの場合翻訳者の署名付きの宣誓書(Declaration)が添付されます。なお、国際登録で米国で保護拡張がされた登録に関しては、国際事務局に対して譲渡(MM5)や名称変更の手続(MM9)を行います。米国特許商標庁には国際事務局からの連絡があるものとされており、国際事務局にも譲渡などを証する書面を提出する必要はありません。

米国商標権者/出願人の名称変更(Change of Name)

米国商標権者/出願人の名称変更は、商標権者/出願人自体は変わらないのですが、その名称が変わる場合です。商標権者/出願人の名称変更手続は、ETASを利用して申請書(Cover sheet)への記載を行い提出することで完了します。名称変更には申請書だけで良いと規定されています(37 C.F.R. §3.25(b))。従いまして、証拠書類として日本法人の登記簿謄本を提出することもできますが、証拠書類が全く無くても手続可能です。出願人が名称を変更する場合、米国特許商標庁が登録証を発行する準備をする前にその変更を登録すべきとされています。ETASでの名称変更手続には必要な料金(fee)、最初の1登録が40USD、続きは追加の1登録ごとに25USDを払うことで完了します。支払いには主要なクレジットカードを使用することができます。

米国商標権者/出願人の住所変更(Change of Address)

米国商標権者/出願人の住所変更は、ETASを用いてOtherで”change of address”を入力して進める方法もありそうですが、TEASのChange of Owner’s Addressを利用でき、後者のTEAS手続の方が早く簡単です。

米国商標権者/出願人の合併(Merger)

米国商標権者/出願人の合併については、ETASを利用し申請書(Cover sheet)への記載と、法的な合併を証する書面を提出する必要があります。日本法人の合併の場合、閉鎖事項全部証明書(吸収合併)や履歴事項全部証明書の写しに、翻訳者の署名についた翻訳文を添付してTIFF若しくはPDFファイルで提出します。翻訳者の宣誓書は一例としては次の言葉を用います。

”I,(name)(address)    , hereby declare and state that I well understand the English and Japanese languages and that the attached documents are fully true and faithful translation made by me of the original documents attached hereto.”

翻訳証明書(Certificate of translation)の場合は、上記の”hereby declare and state”の部分を”do hereby certify”に置き換えながら、

”I,(name)(address)    , do hereby certify that I am fluent in English and Japanese and that, to the best of my knowledge and belief, the attached translation is a true and accurate translation of the original documents, translated by myself.”

とすることもできます。これらの翻訳文に、従来はNotary Publicや公証を要していましたが、現状は公証などは無くても翻訳者の署名があれば提出には問題ありません。

米国商標権者/出願人の法人組織変更(Entity Conversion)

例えばCorporationからLimited Liability Company或いはその逆の変更や、イリノイ州の会社からネバダ州の会社への変更などの他州への移籍に対応します。日本の法人の場合には、現在事項一部証明書などの登記簿謄本を添付し、翻訳者の署名についた翻訳文を添付してTIFF若しくはPDFファイルで提出します。

ETAS/eTAS (Electronic Trademark Assignment System)

米国商標の譲渡・名称変更手続の書類は紙で提出(申請書)することもできますが、ETASと呼ばれるシステムを介して米国特許商標庁の譲渡登録部(Assignment Services/recordation Branch)に電子的に提出可能です。ETAS最初の画面でAccess to ETAS formsのリンクをクリックし、Guidelineのページの下部のstartボタンをクリックすると下の画面のTypeを選択する画面が表示され、ラジオボタンでConveyance Typeを選択します。

ETAS画面
ETAS画面

同じ画面で、Securiy Interest (担保物権), Mortgage (譲渡抵当権), Lien (抵当権), License (使用契約)についても登録可能です。基本的には、ETASを進めることで申請書(cover sheet)がコンピュータ上に形成されることになり、それに法的な証拠書類や翻訳文をPDF若しくはTIFFファイルで添付するように構成されています。startボタンと並んでResubmissionボタンもあり、Non-Recordation Noticeを受け取った提出者が再提出に使用することができます。

商標譲渡検索 (Trademark Assignment Search)

Trademark Assignment Searchにより米国特許商標庁の譲渡登録部に提出された書類を検索して表示させることができます。画面では3つのタブが選択でき、Quick Lookup, Search, Advancedを選ぶことができます。検索結果を表示する画面ではキーワードを含むレコードが一覧表示されます。画面左側には、filterが表示されますので、選択していくことで検索結果の絞り込みが可能です。Advancedでは、WildCard Searches(?*), Range Searches(TO), Fuzzy Searches(~), Boolean Operator(AND NOT OR + -)を使用することができます。

TM Assignment Search
TM Assignment Search

米国特許商標庁の譲渡登録部は、Reel and Frame numbersで書類を管理するようになっており、提出された書類には、全て固有のReel番号とFrame番号が付与されています。これは従来のマイクロフィルム等で管理していたときのなごりと言われています。Assignment Searchでは、添付の書類も参照することができますが、そのPDFファイル名にはリール番号とフレーム番号が含まれています。Trademark Assignment Searchのデータベースは1955年からのデータを有しています。

TMIN News Video 15: Assignments and Ownership Changes、8:19

有明国際特許事務所では、弁理士と米国弁護士の資格により、特許庁 (JPO)と米国特許商標庁(USPTO)にそれぞれ直接手続でき、現地代理人は不要です。
有明国際特許事務所の米国商標の譲渡・名称変更手続についての費用(料金表)†

米国特許商標庁の使用証拠検査制度

使用証拠の登録後検査制度(Post-Registration Proof of Use Audit Program)

米国ての商標登録の登録後の手続に関しては、Bose事件(In re Bose Corporation, No. 08-1448 (Fed. Cir. 2009))で、連邦巡回区控訴裁判所はMedinol Standard (使用宣誓書で全商品を使用していると宣誓したにも拘わらず、一部商品について不使用はフロードとする基準、Medinol Ltd. v. Neuro Vasx Inc., 67 USPQ2d 1205)を破棄し、商標権利者のミスで使用宣誓書の全商品を使用していなくとも権利無効とまではならないという判決を出しておりましたが、ここで米国特許商標庁(USPTO)は5年―6年目の使用宣誓書を提出した商標権者を抜き打ちで検査し、不使用の商品を含んで使用していると宣誓書を提出したか否かをチェックするシステム(Post Registration Proof of Use Audit Program)を始めています。現在は10%程度が検査対象となるようです。

paper and pen

検査対象となる宣誓書

§8若しくは§71の使用宣誓書を提出し、商標登録が1つの区分だけの場合、4若しくはそれ以上の商品又は役務を含むとき、あるいは商標登録が少なくとも2区分の場合、その少なくとも2区分で2若しくはそれ以上の商品又は役務を含むときに検査対象となることがあります。検査対象とされた場合は、使用宣誓書を提出した後でも拒絶理由通知(Office Action)を受け取ります。5-6年目の§71の使用宣誓書を提出した登録も対象ですので、マドリッド制度により米国にも保護拡張がなされた国際登録も対象となります。

検査対象となった場合の拒絶理由通知

検査対象となった場合の拒絶理由通知には、検査対象の選択された旨が記載されており、それぞれ検査対象となった区分で2つの追加の商品又は役務について使用証明(proof of use)を提出することが求められます。この時、先に提出した使用宣誓書に問題があれば指摘され、その点についての対応も必要となります。使用証明(proof of use)は単なる使用見本(specimen)の提出よりはやや厳しい書類で、タグだけ、ラベルだけ、パッケージだけの場合は十分ではないと判断される可能性があり、実際に使用しているとの証拠も必要となります。

拒絶理由通知に対する応答

拒絶理由通知に対する応答が全ての要件を満たす場合には、受理の通知(notice of acceptance)が送付され、検査手続は終了します。ところが、拒絶理由通知に対する応答が使用証明を求められた商品を削除するのみであった場合や使用証明を伴わない場合には、残っている全ての商品又は役務についての使用証明を出すように第2の拒絶理由通知が打たれます。従いまして、一部の検査対象とされた商品又は役務について使用証拠を出せない場合には、使用証拠が出せない商品又は役務の全てを削除することが必要となります。第2の拒絶理由通知が出された後は全ての残っている商品又は役務に使用証拠を提出するか削除するかの応答となります。なお、残っている全ての商品又は役務についての使用証明を出すことが合理性を欠くほど重荷である場合には、Peitionを提出することができます。

拒絶理由通知に対して応答しない場合

最初若しくは第2の拒絶理由通知に対して応答しない場合、その検査対象となった登録が取り消しとなります。期限内の応答ができなかったことに正当な理由がある場合には、Petitionを提出して取消を回避することができます。Petitionの提出理由としては、台風などの天変地異や拒絶理由を受け取らなかったなどの理由によります。

審査官の決定に不服の場合

Petition(2.146 Petition to the Director)を提出して不服を申してることができます。

登録を取り消されないための対策

米国特許商標庁の登録後検査制度は不使用であるにも拘わらず登録を維持しているような状態を取り除くことを目的としています。対策としては、使用証拠が出せないような実際の使用がない商品や役務は削除することが求められます。

米国商標登録の異議申立手続

米国異議申立手続の概要

米国で商標を取得する場合には、公告後登録前に第3者からの異議申立(opposition)の機会があり、その商標登録が何かの損害を及ぼすと考えた者は異議申立をすることができます。日本の場合、商標の異議申立は原則書面を提出して、何か月か後に異議理由あり若しくは異議理由なしの結果を受け取るような、どちらかと言えば審査の延長戦のような手続ですが、米国の場合には、陪審員制度のない少し簡素化された民事訴訟の様相を呈しており、USPTO(United States Patent and Trademark Office)のTTAB(Trademark Trial and Appeal Board)を法廷とする原告と被告の紛争となります。従いまして、米国の異議の申立若しくは被異議の場合は、比較的に早い段階で方針を決めることが重要で、殆どの場合は、和解、デフォルトか取下げなどの答弁書提出前に結論を出して終了します。もし終局までフルに紛争を続けた場合の異議申立手続は、専門家証人を伴わない場合でもその相場は1,100万円~3,300万円程度の費用がかかると言われており、異議申立手続が長期化する場合には5年、6年とかかることもあります。米国異議申立事件で最後の結審に至る事件は概ね全体の2%に過ぎません。米国の商標審査の段階には、TMEPが審査便覧として用いられていますが、異議申立段階ではTBMP(Trademark Trial and Appeal Board Manual of Procedure)が審判便覧として用いられます。TTABはUSPTOの審判機構であり、主な役割は審査官(examining attorney)の拒絶査定に不服の場合の査定系審判手続(ex parte appeal)と、異議申立(opposition)、取消審判(cancellation)、同時継続使用(concurrent use)とインターフェアレンス手続(interference proceeding)の場合の当事者系審判手続(inter partes)があります。TTABは年間ベースで約3,000件の査定系審判、約18,000件の異議申立期間延長、約6,000件の異議申立、約2,000件の取消審判を取り扱っています(TTAB Data Visualization Center)。

court

異議申立人

米国の商標登録に対する異議申し立ては、その商標が主登録原簿(principal register)に登録されれば損害を受けると思う者が申し立てることができます。即ち、利害関係人であれば原告適格(standing)があり異議申立できます。また、異議申立には、使用権者や譲渡人、譲受人、委託者なども参加可能です。

異議申立期間

異議申立は公告(Publication)から30日以内、また異議申立の提出の延長(extension of time)の期間内に提出します。従って、登録に問題があると考えた相手方は、公告から30日以内の期間に、異議申立通知(Notice of opposition)を提出するか、異議申立期間の延長請求(Request of extension)を提出するかの判断になります。異議申立の提出の延長期間内での異議申立通知(Notices of Opposition)やその延長請求を出せなかった場合には、異議申し立てはできなくなります。この場合には、その商標出願についての登録後に取消を請求することになります。異議申立は公告の日から180日を越えることができません。延長の請求は、公告から30日以内か或いはその直前の延長された期間内にする必要があり、請求により30日の延長か、理由を伴う90日の延長を請求できますが、初めに30日の延長を貰った場合には、理由を伴って60日の延長が請求できます。また、合計90日の延長を得た場合でも、さらに60日の最後の期間延長を請求でき、相手の同意等があれば延長されます。もし各期限の最終日が平日ではない場合やヴァージニア州の休日にあたる場合には、次の平日まで延長されます。最初の異議期間の延長請求は100ドルのオフィシャルフィーがかかり、追加の最後の期間延長には200ドルのオフィシャルフィーがかかります。

催促状(Demand Letter)

公告(Publication)から30日以内の異議申立期間或いはその延長された期間は、異議申立人が公告された商標を有する者に対して催促状を送り付けることのできる期間と考えられています。このような督促状には、異議申立人が問題とする出願に関する事項を知らせ、どのような手順で解決できるかを示すこともでできますが、和解する余地も少ない場合には、一方的な内容の場合もあります。

異議申立開始

異議申立は、異議申立人が所定の異議申立料を払って異議申立通知(Notice of Opposition)をTTABに提出することで開始します。異議申立料は区分ごとに400ドルです。TTABへの書類の提出は原則電子提出用のESTTA(Electronic System for Trademark Trials and Appeals)を介して提出され、特にマドリッド制度の国際登録出願の保護拡張に対してはESTTAでの提出が必要です。異議申立通知は、ESTTAの画面を入力しながら進めることができ、理由(Grounds for opposition)(例えばPriority and likelihood of confusion)や異議申立の根拠となる登録商標についても入力できます。異議申立通知には、訴状(complaint)形式の異議申立書(TBMP 309.02(a) Format for Complaint)が添付されます。このようなTTABへの提出書類はTTABVUE(Trademark Trial and Appeal Board Inquiry System)の事件を特定した後の画面のProsecution Historyのリンクから見ることができ、訴状形式の異議申立書には、当事者の確定事項、被異議の商標についての事実、事件についての主張などが短い文書で番号を付与して記載されます。

異議申立理由(Grounds for Opposition)

異議申立書の訴状には、理由を記載することが求められており、TBMP 309.03(c)には異議理由が1~25まで例示されています。異議申立の理由は1つに限らず、複数の理由を挙げることができます。1)被告の商標は申立人の商標に類似(likelihood of confusion)している、或いはその被告の商標の使用により混乱や欺瞞が生じる。2)被告の商標は単に記述的(merely descriptive) 又は誤解を生じる、地理的表示に過ぎない、人名である、或いは全体として機能的である。3)被告の商標は地理的に欺く、公序良俗に反する、原告の商標と関係があるような偽の関係を示唆する、原産地以外の場所の表示する。4)使用ベースの出願に関して正当な使用がない。5)被告は正当に商標を使用する意図(bona fide intent to use)はない。6)被告の商標は単に識別性のない背景図案である。7)被告は登録商標の正しい所有者ではない。8)被告の商標は装飾的(ornamental)又は音で本質的な識別性がない、トレードドレスで獲得した識別性がない。9)登録に用いられた期間では商標として使用されていない。10)被告の商標は複数の商標を1つの出願としている。11)被告の商標は使用されてなく放棄されている、或いは出所表示していない。12)被告の商標は生きている人の人名からなり、その同意もない。13)被告の商品デザインは一般的である。14)被告の商標は原告の著名商標の識別力のある品質を希釈する。15)被告はその出所を誤るようにその商標を使用している。16)被告は連邦登録されているかように誤認させる意図を以てマルRマークを使用している。17)出願の段階で被告は詐欺行為をした。18)被告の登録商標はパンナム条約における外国人所有者の商標と抵触する。19)被告の出願は争点功(claim or issue preclusion)により妨げられるものである。20)被告の商標は、1つの作品の題名であり、商標とは考えられない。21)米国若しくはその他の市町村の旗その他の象徴である商標の登録は禁止されるものである。22)商標登録の基礎となった外国の登録について、その外国での商業的な存在を示していない。23)使用する意図での出願(intent-to-use application)が譲渡されている。24)商標は一般名称である。25)商標は市場で適法には使用できない。なお、統計によれば、異議申立理由のおよそ半分は類似(likelihood of confusion)を理由としています。

異議申立手続

異議申立書(Notice of Opposition)をTTABに提出した後は、TTABは被告(出願人)側に答弁書(answer)の提出を原則40日以内で求めます。この訴答段階(pleading stage)での流れはserviceの対象が出願人ということ以外は、通常の民事訴訟訴訟の流れとほぼ同じです。TTABの審議や手続は連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)に倣っており、その運用に連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)も採用されています。従いまして、答弁書には異議申立書に記載された事項について認める若しくは否定するとの記載となり、また衡平法上の懈怠(laches)、権利不行使(acquiescence)、禁反言(estoppel)などの積極的抗弁(affirmative defense)なども記載できます。また、答弁書には通知の送達についての証明(proof of service)を記載する必要があります。もし答弁書の提出時に、異議申立書に挙げられた商標登録が無効であるとする反訴にその理由がある場合には、強制的反訴(compulsory counterclaim)として答弁書と共に若しくは一部として提出する必要があります(37 CFR § 2.106(b)(3))。また、異議申立事件の当事者は、事件の係属中に、他のTTABの手続の当事者か、同じ若しくは関連した商標の訴訟の当事者となった場合には、審判部(Board)に直ちに知らせる必要があります(37 CFR § 2.106(b)(3)(i))。この異議申立書についての手続開始通知(institution notice)には、異議手続のスケジュールが記載されおり、典型的には次のようになります(TBMP: APPENDIX E)。答弁書に反訴を含む場合には、TBMPのAPPENDIX Fとなります。

手続項目 概ねの予定(1月1日申立と仮定) 費用相場
答弁書期限(time to answer) 2月10日(+40) $2K~$5K
開示手続協議期限(deadline for discovery conference) 3月10日(+70) $1K~3K
開示手続開始(discovery opens) 3月10日(+70) $5K~10K per depo.
最初の開示手続期限(initial disclosure due) 4月10日(+100) $0.5K~2K
専門家開示手続期限(expert disclosure due) 8月10日(+220) 約$5K~40K
開示手続終了(discovery closes) 9月10日(+250) ここまでで計25K~150K(280万円~1600万円程度)
原告側の公判前開示手続期限(plaintiff’s pretrial disclosure due) 10月20日(+280) $5K~20K
原告側の30日の公判期間終了(plaintiff’s 30-day trial period ends) 12月5日(+325) $10K~60K
 被告側の公判前開示手続期限(defendant’s pretrial disclosure due) 12月20日(+340) $5K~20K
 被告側の30日の公判期間終了(defendant’s 30-day trial period ends) 翌年2月5日(+400) $10K~60K
 原告側の反駁開示手続期限(plaintiff’s rebuttal disclosure due) 翌年2月20日(+415)
 原告側の15日の反駁期間終了(plaintiff’s 15-day rebuttal period ends) 翌年3月20日(+445)
 原告側の冒頭準備書面期限(plaintiff’s opening brief due) 翌年5月20日(+505)
 被告側の準備書面期限(defendant’s brief due) 翌年6月20日(+535)
原告側の弁駁書面期限(plaintiff’s reply brief due) 翌年7月5日(+565)
 口頭審理(任意)の要求期限(request for oral hearing (optional) due) 翌年7月15日(+580) 約$10K~50K

全体として終局までフル稼働した場合の異議申立手続の代理人の費用相場は$100K~$500K(1,100万円~5,500万円)と思われます。開示段階の後、略式判決の上申書(Motion for Summary Judgment)で正式事実審理(trial)に進まずに終わる事件も多いと思われます。また、答弁書の提出しなければ、デフォルト(欠席裁判)となり、Notice of Defaultを受け取って終了します。このデフォルトの場合、争点効(issue preclusion)があり、出願人は同じマークで同じ指定商品・指定役務の権利取得はできなくなります。統計では、答弁書の提出前に解決する手続が3分の2とされています。専門家証人を伴わない場合の終局までの異議申立手続の相場では、1,100万円~3,300万円とされ、そのうち正式事実審理の部分の費用の相場は50K~150K(550万円~1,650万円)とされています。

挙証責任(Burden of Proof)

異議申立人に挙証責任があり、証拠の優越を基準(preponderance of the evidence standard)としています。証拠の優越とは全体として相手方よりも証拠力があるという基準で、刑事事件のbeyond a reasonable doubt standardや欺瞞行為に対するclear and convincing standardよりは低い証拠レベルとされます。

開示手続(Discovery)

開示手続については、TBMPの第4章に記載があり、その範囲は連邦民事訴訟規則(Fed.R.Civ.P.26)に従います。初めに、開示手続協議(Discovery Conference)が開かれますが、同時に和解についても協議できます。開示手続協議では、通常当事者間で、当事者の請求と抗弁の本質と根拠、早期和解の可能性、開示手続や事実審理での証拠の導入などについて協議します。開示手続協議は、面談することでも良く、多くの場合は電話、その他の例えばテレビ会議などでも可能です。また、TTABのBoardに対しても参加を促すこともでき、これは電話会議になります。開示手続に従わない場合や、例えば書類の意図的な破棄などは、不利な決定を受けることにもなり、欠席裁判の決定や弁護士も懲戒処分となることがあります。

初期開示(Initial Disclosure) 初期開示は、ディスカバリーの開始から30日以内に行うものとされています(37 CFR § 2.120(a)(2)(ii)) 。Fed.R.Civ.P 26(a)(1)に初期開示について規定されており、開示され得る情報を有した個人の名前、住所、電話番号をその情報の主体と共に開示し、全ての書類、電子記録などの複写物を開示します。潜在的な証人の名前と証拠として必要な書類や物を提示する役目があります。申立人や出願人の使用や、広告、販売、営業についての情報を知る者や記録、書類などが該当します。書類についてはカテゴリーの一覧表が必要とされます。書面のディスカバリー(Interrogatories、Request of Production、Request of Admission)は早めに通知するべきで、期限日が開示手続の期限を越えないようにすることが求められています。

証言録取書(Depositions) 法廷以外の場所で、証人になる予定の者などにより、真実を証言することを宣誓した上で行う証言の記録であり、その証言は一般的に書面化されることになります。証言は、質問に答える形式で進められ、後日、正式事実審理でデポジションの証言内容と食い違う証言をしようとする場合にはその証人は弾劾(Impeachment)されることにもなります。質問は、一般的には英語であろうと思いますが、仮に母国語であっても非常にストレスの大きな作業で、通訳が付く場合には、その通訳者の訳した内容にも相手側弁護士から文句が付いたりします。質問については、連邦証拠規則が適用されるので、相手方弁護士は証拠規則のルールを逸脱すれば、異議あり(objection)で割り込みをします。日本はHague Evidence Conventionのメンバー国ではないので、不本意な者は証言録取書が求められることにはなりません(TBMP 404.03(c)(2))。これの例外が日本の米国大使館や領事館ということになります。証言録取書については双方の代理人弁護士は前もって書類に目を通す必要性があります。各証言録取書の相場は1デポシション当り5,000~10,000ドル(55万円~110万円)となりますが、日本で行う場合はその3倍から数倍はかかるものと思います。

書面質問書(Interrogatories) 書面質問書はディスカバリーの手法の1つですが、TTABの手続では、原則として書面質問書の質問数は75までとされています。当事者はそれより少ない数に合意することもできますが、更に多くの書面質問を求めることもできます。例えば、出願人の商標の最初の使用についての状況を含めた広い範囲の質問が1としてカウントされ、そのある特定の商品の最初の使用日についての質問(付随する質問である)はまたそれはそれでカウントされることになります。

自白の要求(Request for Admission) 自白の要求は、証拠が開示される範囲を狭める目的で、相手との間で問題とされていない事実の認識、事実への法の適用、それらへの意見をadmissionとして争点化せずに進めるための要求で、質問をすることで、肯定若しくは否定の形式で認定されることになります。TTABの手続では、原則として自白の要求の数は75までとされています。

文書等の提出要求(Request for Production) 開示できる書類としては、番号を与えられて要求された書類を弁護士特権で秘匿できるものを除いて提出する義務が生じます。要求される文書は事件ごとに異なりますが、TTABの手続では、開示できる書類の数は75を限度としています。

Eディスカバリー(eDiscovery) 異議申立手続では、通常の商標権侵害訴訟のような広範囲の文書などを収集する必要がないケースが多く、電子記録(ESI)からのデータについても負担が大きい或いは費用が高すぎるとの理由で合理的には入手できないと当事者が認識した出所からの電子記録の証拠開示は必要ないとされています。(Fed.R.Civ.P. 26(b)(2)(B) Specific Limitations on Electronically Stored Information)例えば、Princeton Vanguard, LLC v. Frito-Lay North America, Inc.では、eDiscovery手続の中で、出願人が弁護士が85、000の数の電子ファイルをそれぞれ検証し、約200,000ドルの弁護士費用としていたところで、申立人側が弁護士が監督する調査を行い、資料を収集する費用が約100,000ドルがかかるのは費用が高すぎると判断されています。また、2017年12月には、ESIのauthenticationの改正も行われています。一般の民事訴訟や特許侵害訴訟と比べて、商標異議申立のEディスカバリーはその範囲は狭いものとなりますが、litigation holdという記録の廃棄が証拠隠滅になる状態も念頭におく必要はあります。

専門家証人(Expert Witness) 先に挙げた証人は自分が目撃したことや感じたことについて証言をする素人証人(Lay Witness)の開示手続で、それとは別枠で専門家証人(Expert Witness)の期間も設けられます。専門家証人は自分の専門分野での意見を述べる証人とされています。TTABの手続で専門家証人が用いられることは稀ですが、商標の場合は専門家の調査証拠(Survey evidence)も利用されることがあります。Expert Surveyは、主な質問例としてLikelihood of Confusion(類似)、Secondary Meaning (使用による顕著性)、Genericness (普通名称化)について、一般の人に聞くことを内容とします。調査の費用は、例として$15K~$55kの間で典型的には$35k(380万円)と言われています。

books

略式判決(Summary Judgment)

開示段階で得られた証拠などにより事実審によらずに紛争を決定する手続であり、原告若しくは被告からのMOTION(上申書)によりTTABに結審を促すことになります。略式判決は、開示手続などを介して知り得た情報によれば本質的な事実についての紛争が存在しないという基準(Fed.R.Civ.P. 56)を採用します。略式判決を申立てる側(Moving Party)が本質的な紛争のないことを示す必要があります。略式判決の申立は、原則として最初の開示手続(initial disclosures)までは提出できないとされており、また公判前開示手続の期限(before the deadline for pretrial disclosures)よりも前に提出するとされています。当事者系の手続において略式判決で使える証拠(TBMP 528.05)としては、訴状及び答弁書、出願や登録のファイル資料、原告の訴状内に示される登録やその記録、書類の開示要求で開示された書類、政府等の記録、一般公衆が入手できる印刷された本、定期刊行物などに及びます。他の訴訟その他の手続で得られた証言(TBMP 528.05(f) Testimonyies taken in other proceedings)も使用することができます。略式判決の上申書(Motion for Summary Judgment)の提出の相場は、$25K~50K(220万円~550万円)と言われています。

証言期間(Testimony Period)

証言期間は、30日の原告の公判証拠提出期間、30日の被告の公判証拠提出期間、15日の証拠弁駁期間で構成され、それぞれの証人のデポジションを取り、真正に成立させた証拠物と共にTTABに提出します。証言は、相手方の反対尋問をする権利を与えることを条件として宣誓書(affidavit or declaration)の形式でも可能です。また、Notice of Relianceという形式で、書類を証拠としてTTABに提出することができ、相手方証人の証言録取書、相手方の書面質問書に対する回答、自白の要求、各種の定期刊行物、裁判記録、第3者の商標登録なども提出可能です。インターネット上の証拠については、証言する者の成立と証言が必要となります。

準備書面期間(Briefing Period)

証言期間の後は準備書面の提出期間に入り、準備書面(Brief)についても原告側、被告側、そして最後に原告側の弁駁と機会が設けられています。主準備書面は全体として55ページを越えないもの(37 CFR § 2.128(b))と定められています。書面だけでなく、口頭審理を請求して、TTABでの公判を行うことも可能で、この場合、原告、被告共に30分の主張時間があり、視覚的に補助するグラフやビデオ、音声などを使用することもできます。TTABは証言期間で得られた証言証拠、Notice of Relianceで提出された証拠、そして準備書面をもとに事件について、少なくとも3名の商標行政裁判官により決定をします。

ACRとADR

ACR(Accelerated Case Resolution)手続により、より簡素で短期間の紛争解決を図ることができ、このACR手続を進めるためには、両当事者の合意が必要です。ACRでは、例えばデポジションの数を10までに制限することができ、決定までの期間も短く設定することができます。ACRによるTTABの決定は最終的な決定であり、不服の場合には司法での控訴となります。統計によればACRで決定された件数は、2015年度は10 cases、2016年度は23 cases、2017年は17 casesとされており、それぞれ平均の係属期間は、2015年度は138.6 weeks、2016年度は98.4 weeks、2017年度は119.4 weeksとなっています。また、ADR(Alternative Dispute Resolution)を活用することも推奨されています。

控訴(Appeal)

TTABの決定に不服の場合は、2カ月以内に、CAFCに控訴(appeal)するか、civil actionとして米国連邦地方裁判所(US Dist. Ct)に訴えることもできます。また、TTABの決定に不服の当事者は、決定から1か月以内にTTABに再審理、再審、変更(rehearing, reconsideration, modification)の請求をすることができ、相手方は15日以内にその請求に応答することができますが、これらの請求が認められることは稀です。

TTAB関連のDatabase/Website

TTABVUE Trademark Trial and Appeal Board Inquiry System
e-FOIA Final Decisions of the Trademark Trial and Appeal Board
TBMP Trademark Trial and Appeal Board Manual of Procedure
ESTTA Electronic System for Trademark Trials and Appeals
USPTO United States Patent and Trademark Office

TTAB動画

TMIN News 13: TTAB、7:03

米国連邦証拠規則の電子記録の成立の真正についての改正

米国連邦証拠規則

米国連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)は、連邦裁判所での裁判での証拠の取り扱い方のルールを定めた法令で、公判では原告側弁護士と被告側弁護士が戦うための約束ごとであり、弁護人としては、口頭審理の際も米国連邦証拠規則が頭に入ってなければ反射的な対応ができないと思います。言わば、公道上を自動車で走る場合に必要な交通ルールで、標識が理解できないようでは公道を走ることはできないとも言うことができます。連邦証拠規則は、第1章(Article 1)から第11章(Article 11)に及ぶ法令であり、今回は第9章の成立の真正(Authentication)と同一性(Identification)の中で、Rule 902(Self-Authentication)の§902(13)と§902(14)が改正され、2017年12月1日から施行されています。

真正に自己成立(Self-Authentication)する証拠

或る証拠を裁判所で採用(admit)させるためには、証拠の成立が真正である必要があり、例えば誰かが書いた手書きの文章を証拠として採用する場合には、書いた人の手書きを良く知る人が証言すれば真正に成立する証拠となり得ます。米国では、様々なものを証拠として採用させるように代理人が働きかける訳ですが、全ての証拠に真正である旨の証言や宣誓書が必要なわけではなく、習慣的に本物であることが証明し易い資料や明らかに疑いの余地のない雑誌や新聞などは自己成立(Self-Authentication)する証拠とされ、個々に成立を真正化する手続(それぞれの証人の証言など)は或る程度省かれることになります。日本の民事手続では、民事訴訟法第228条に”私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。”という規定がありますが、米国の連邦証拠規則では、Rule902に(1)から(14)までに自己成立(Self-Authentication)する証拠について挙げられています。

Rule 902(13),(14)の改正

2017年12月1日から施行されたRule 902(13),(14)の新たなルールでは、電子的に記録された情報(ESI: electrically stored information)を真正に自己成立させる方法を述べています。これらの規定は証拠の成立の真正に関するルールであり、その他の証拠法の概念である伝聞証拠(hearsay)、関連性(relevance)などは影響を受けないとされています。

Rule 902(13)

Rule 902(13)では、適格な者に準備された認証の提出によって、コンピュータなどの機械が生成した情報を真正であると自己成立させる旨規定されています。具体的には、Rule 902(11)若しくは(12)の認証要件に従った適格者の認証に示される、正確な結果を生じる電子的な方法若しくは装置で生成された記録は真正に自己成立する証拠となります。Rule 902(11)若しくは(12)の認証要件では、業務記録と同じ方法で真正化する手法が採用されていまして、認証すなわち宣誓書(affidavit)により真正化でき、自己成立することから、真正化のための証人の証言は不要となります。外国の業務記録については、Rule 902(12)で、宣誓書がもし嘘の証言ならばその国で偽証罪にあたるとの方法での署名された場合は、有効な認証(certification)となります。証拠となるデータがUSBメモリ内にあり、それがコンピュータに接続されたか否かはWindows registryを参照すれば分かりますが、従前の規定では、そのコンピュータへのアクセスなどを調査をしたコンピュータの管理者が証人として証言する必要がありましたが、今回の改正でWindows registryを印刷して、調査した管理者の宣誓書で足りることになります。

Rule 902(14)

Rule 902(14)では、電子機器からのデータのコピーは、適格な者に準備された認証に示されるところのデジタルの同一性手法すなわちハッシュ値(hash value)により、真正であると自己成立させる旨規定されています。ハッシュ値は、あるファイルが存在していて修正や改ざんがされていない場合は、同じハッシュ値を維持するという特性があります。また、複数の異なるデータから同じハッシュ値が生成される(ハッシュ値の衝突)が生じる可能性はかなり低い(限りなくゼロに近いほど低い)とされています。従いまして、ハッシュ値が同じか違うかで、元のファイルと内容が同じ否かが判断されることになります。電子機器からのデータのコピーについては、ハッシュ値が同じかどうかをチェックした人が宣誓書を出せば良いということになっています。

Evidence 2017—Self-Authenticating Electronic Evidence、8:23

Rule 902. Evidence, That is Self-Authenticating

アメリカ合衆国(米国)の商標登録を検索(TESS)🔍

1.連邦登録(Federal Registration)

アメリカ合衆国(米国)の連邦登録のデータベースは米国特許商標庁(USPTO)のTESS(Trademark Electronic Search System)を利用します。アメリカ合衆国での商標調査となれば、連邦登録の他に州登録の商標やコモンロー(common law)商標もない訳ではありませんが、今日の経済活動での中心は連邦登録の商標です。Googleなどの検索エンジンからTESSのエントリー画面に到達するには、典型的にはUSPTOのTOPページ(https://www.uspto.gov/)から行く方法と、TrademarkのTool and Links(https://www.uspto.gov/trademark)があります。TESSの機能として、まだFuzzy Searchが導入されていないので、近似検索は未だできないようになっています。従って、商標の登録可能性を判断するには、類似するパターンをいくつか入力してヒットする商標を検索する必要があります。また、TESSは連邦登録のデータベースですので、州登録の商標やコモンローの商標は含まれていません。

laptop

2.米国特許商標庁(USPTO)のWebsite

米国特許商標庁(USPTO)のTOP Pageで、水平に並ぶメインメニュー中の”trademark”を選択またはマウスオーバーして、現れる”Searching Trademark”をクリックするか、下部の” 🔍Search Trademark Database”のリンクをクリックします。(下図の緑の矢印)

uspto
USPTO Website

すると、Search Trademark Databaseのページに案内されます。このページのTESSのボタン(下図の緑の矢印)をクリックすることで、TESSのページに到達します。

Trademark Electric Search System Introduction
Trademark Electronic Search System Introduction

3.米国特許商標庁(USPTO)の商標のPage (Trademark Tools and Links)

或いは、米国特許商標庁(USPTO)のTrademarkのpage (Tool and Links)にアクセスして、下部の左端の 🔍Search trademark databaseと記載されたボックスで、TESSとあるボタンをクリックします。

Trademark (Tool and Links)
Trademark (Trademark Tools and Links) Page

4.米国特許商標庁(USPTO)のQuick Links

また、USPTOのトップページのメインメニューの右端側の緑のボタンでQUICK LINKSと表示されたボタンをマウスオーバーするだけでも、Website内のショートカットのリンクの表示が可能です。TESSには”🔎TESS”と表示されたトレードマーク側のcolumnの一番上のリンクをクリックすることでも、アクセスすることができます。こちらのQUICK LINKSボタンを使用するパターンが最も時間の無駄なくTESSのページにたどり着くことができると思われます。

QUICK LINK TO TESS
QUICK LINK TO TESS

5.TESSの初期画面

TESSのpageを開くと、Select A Search OptionとAdditional Search Optionsと記載されたテーブル表示されます。上側のSelect A Search Optionから、ここではBasic Word Mark Searchを選択します。

TESS Basic Word Mark Option
TESS Basic Word Mark Option

6.TESS/Basic Word Mark Search

Basic Word Mark Searchを選択すると、下記のような入力画面が現れます。入力項目としては、plural and singular又はsingular (単複両方、又は単数限定)、Live and Dead (現存及び失効), Live(現存)、Dead(失効)を選ぶことができます。また、検索項目(Search Term)にキーワードを入力します。検索項目(Search Term)は、Combined Word Mark(文字商標), Serial or Registration Number(登録番号)、 Owner Name and Address(所有者名と住所)から選択できます。入力は半角の英数字に限定され、日本語の漢字、平仮名、片仮名などは入力できません。Word Markには、*記号(wildcard)を前方や後方に使用することができます。serial numberは8桁ですが、registration numberは7桁です。$記号をワイルドカードにして、例えば”edogawa”を含むように、”edoga$a”のような使用法も可能です。TESSは大文字と小文字を区別しません(not case sensitive)。

TESS Word Mark Search Entry Screen
TESS Word Mark Search Entry Screen

7.TESS/Word and/or Design Mark Search (Structured)

図形商標や図形を一部に含む文字商標に対し、図形から検索する場合には、TESSの最初のページでSelect A Search Optionで上から2番目の Word and/or Design Mark Search (Structured) を選択します。すると、下記の項目(Field)をプルダウンで選択できる画面が表示されます。そこで、Design CodeをFieldに選択し、Design Codeの値を入力します。Design Code (Design Search Code)は、対象ごとに割り当てられた、recordにあるDesign Search Codeの数字を分ける小数点を除いた6桁の数字です。検索対象のDesign Codeを探すには、Design Search Code Manualを最初に参照します。ここで例えば、パンダの図形を検索する場合は、マニュアルのTABLE OF CATEGORIESの”3.animal”をクリックしてスクロールしていくと、”03.01.13 Panda bears”の表示が現れ、比較的簡単に見つけることができます。また、Description of Mark(商標見本についての記述), Design Description(描写された対象物など)を利用しても図形の要素を検索できます。下記の例では、Design Codeを040703(Geometric figures or combinations of geometric figures representing a person)とDesign Descriptionをmoon(月)として、そのAND(和集合)を求めています。これを記号で表記すると、(040307)[DD] and (moon)[DD]となります。

TESS WORD AND/OR DESIGN SEARCH
TESS WORD AND/OR DESIGN Search Entry Screen
Design Code (Term) Entry
Design Code (Term) Entry

指定商品(goods)や指定役務(services)で絞り込みたい場合もあると思います。その場合には、項目(Field)のプルダウンメニューからGoods & Servicesを選択し、Search Termに対象となる商品名や役務名(一部でも可能)を入力します。下記の例は、Design Descriptionに”moon”を入れて、Goods & Servicesを”knife”とした和集合(AND)の入力を示しています。これを記号で表記すると、(moon)[DD] and (knife)[GS]となります。世界で共通のニース国際分類(International Class)の数字でも商品、役務での絞り込みができます。 アメリカ合衆国の商標登録出願では、指定商品及び指定役務の選定にAcceptable Identification of Goods and Services Manual Next Generation(或いはID Manual)を利用することができ、出願時に商品役務をこのID Manual中で選択するとオフィシャルフィーについて約50ドルのディスカウントが可能です。アメリカの商標実務では、日本のような類似群コードは存在しないことから、DuPont Factorsで自説を展開したり、過去の判例/審決(USPQやOfficial Gazzette)を頼りに、商品役務の類比判断をすることになります。

Goods & Services Entry
Goods & Services Entry

8.検索結果一覧表(Hit List and Image List)

TESSのBasic Word Mark Searchで必要事項を入力して、Submit Queryボタンをクリックすると、検索結果が表示されます。検索結果は、青字でM Records(s) found  (下記の例では、1294個の記録が見つかった)の表示がされ、デフォルトで一覧表のリスト(Hit List)となります。この一覧表では、 Serial and Registration Number, Word Mark, TSDR, Live or Deadが表示されます。

Search Output List
Search Hit List

また、検索結果は、標章画像のグリッド表示(Image List)も可能です。グリッド表示では、標章画像とシリアル番号が表示されます。グリッド表示切り替えるには、IMAGE LISTのボタン(青の右から3番目のボタン)をクリックします。

Search Output Image Grid
Search Output Image Grid

また、検索自体が図形コードで行われていても同様な、グリット表示をすることができます。

グリット表示
IMAGE LIST SCREEN

もし、検索結果として、1つも検索できなかったときは、”No TESS records were found to match the criteria of your query.”と表示されます。これは検索したキーワードとマッチする結果が得られなかったことを示していますが、類似の範囲までも検索している訳ではないので、これを以て登録が確実ということではありません。

Hits Nothing
TESS Hits Nothing

9. 詳細表示 (Records)

一覧表の中の個別の案件をクリックすると、その案件の詳細情報が表示されます。下記の例では、1294個の記録の中の110番目の記録を表示(Record 110 out of 1294)しています。

Searched Mark
Searched Mark

表示される項目は次のとおりです。なお、全てが表示されるのではなく、データがある項目だけが表示されます。

  • Word Mark (文字商標)
  • Translations(翻訳):The non-Latin characters in the mark transliterate to “〇〇〇” and this means “△△△” in English.
  • Goods and Services(指定商品・指定役務):初めに国際分類(IC)、続いてUS分類(US)が表示され、その次に具体的な指定商品、指定役務(G & S)が続きます。
  • Standard Characters Claimed (標準文字)
  • Mark Drawing Code (商標見本コード) (0) UNKNOWN, (1) TYPED DRAWING, (2) DESIGN ONLY (3) DESIGN PLUS WORDS, LETTERS, AND/OR NUMBERS (4) STANDARD CHARACTER MARK (5) WORDS, LETTERS, AND/OR NUMBERS IN STYLIZED FORM, (6) FOR SITUATIONS FOR WHICH NO DRAWING IS POSSIBLE, SUCH AS SOUND
  • Design Search Code<(図形調査コード)
  • Trademark Search Facility Classification Code(商標調査便宜分類コード)
  • Serial Number(番号)
  • Filing Date(出願日)
  • Current Basis(現在の出願の基礎) 1A {use in commerce}, 1B {intent to use}, 44D {foreign application}, 44E {foreign registration}, 66A (Madrid Protocol), NO FILING BASIS No filing basis claimed.
  • Original Filing Basis(出願時の出願の基礎)
  • Published for Opposition<(出願公告)
  • Registration Number< (登録番号)
  • Registration Date(登録日)
  • International Registration Number(国際登録番号)
  • Owner (APPLICANT) (所有者、出願人)
  • Assignment Recorded(譲渡記録済) ASSIGNMENT RECORDED
  • Attorney of Record(代理人)
  • Prior Registrations (先の登録)
  • Disclaimer (権利不請求)
  • Description of Mark (標章の説明)
  • Type of Mark (商標の種類)  TRADEMARK、SERVICE MARK、
  • Register (登録簿) PRINCIPAL(主登録)とSUPPLEMENTAL(補助登録)があります。
  • Affidavit Text(宣誓書) SECT 15. SECT 8 (6-YR)
  • Live/Dead Indicator(現存・失効) Live(現存)かDead(失効)です。
  • Abandonment Date (放棄日)
  • Cancellation Date (失効日)

10.TSDR(Trademark Status & Document Retrieval)

TSDRによって、出願データやOffice Actionなどの処理データを案件ごとに見ることができます。日本の実務の包袋閲覧に近いと思います。商標見本の上に青いボタンでTSDR, ASSIGN Status, TTAB Statusと並ぶうちのTSDRをクリックします。ちなみに、ASSIGN Statusは権利の譲渡状況を表示し、TTAB Statusは異議、審判系の手続の履歴を表示します。

TSDR Status 1
TSDR Status Example 1
TSDRの画面では、ステータスがデフォルトで表示され、TM5 Common Status Descriptor(商標5庁共通ステータス記号)によって、一目で状況が分かるように構成されています。上図の例は、現状審査中で、LIVE(現存)です。

TSDR Status 2
TSDR Status Example 2
こちらの例は、シール形式の表示がありますので、登録済みでLIVE(現存)です。

TSDR DOCUMENTS
TSDR DOCUMENTS
TSDRの画面でDOCUMENTのタブを選べば、データとして入手できる電子データの出願書類、オフィスアクション(拒絶理由)、補正書や宣誓書、登録証などが一覧表で表示され、クリックすることで画面上に表示できます。

TSDR MAINTENANCE
TSDR MAINTENANCE
TSDRの画面でMAINTENANCEのタブを選べば、次回の宣誓書の期限等が表示されます。

11.Trademark Assignment Search

それぞれの商標について、誰が権利者なのか、どのように移転されたかなどの移転・譲渡についての情報もTrademark Assignment Searchで探ることができます。Trademark Assignment Searchの画面には、トップページのQuicklinkの右側コラム(trademark)の真ん中あたりの人のアイコン ”Search assignment”をクリックすることで移動することができます。

Trademark Assignment Search
Trademark Assignment Search

Assignment Searchの画面で、quick searchの場合には、Reel/frame number(記録番号), Serial number(連番), Registration number(登録番号), International Reg. number(国際登録番号), Assignor name(譲渡人名称), Assignee name(譲受人名称), Correspondent name(連絡先名前), Registrant name(権利者名称), Applicant name(出願人名称), Domestic representative (国内代理人)を選ぶことができます。Searchのタブを使用すれば、and/orのBoolen operatorを使用することもできます。

Conveyance type(移転の類型)

検索結果としては、次のような画面になります。

Trademark Assignment Search Result
Trademark Assignment Search Result

Conveyanceの項目の下の内容を記載した最後の小さいPDFアイコンをクリックすると、添付書類を見ることができます。

12.Color Lining(色分け用線図)

2003年11月2日以前では、標章に色を表す場合に、線の種類を変えることで、その色を表示するものとしていました。その色の表示が下記の例となります。

Color Lining
Color Lining

apple keyboard

13.州登録(State Registration)

アメリカ合衆国の各州での商標登録は、概ねその州の政府(Secretary of State)に対して行うように決められています。

州登録(State Registration)のサイトへのリンク集

TMIN News 03: Searching、13:16
10:50辺りでTESSを用いたSearchについて説明しています。(英語) 

米国商標制度 vol.1
米国商標制度 vol.2

米国特許商標庁(USPTO)に対する手続代理人の代理権限

米国の知的財産実務に精通している方は何を今更というところですが、日本の特許庁(JPO)に対する弁理士と弁護士の職業代理人として認められている権限と、米国特許商標庁(USPTO)に対するPatent Agent(米国弁理士)、Patent Attorney(米国特許弁護士)、及び米国弁護士(Attorney at Law)のそれぞれ職業代理人として認められている権限が、実は微妙に同じではないので、分かり易く解説します。

米国特許商標庁(USPTO)に対する代理人

特許

米国特許商標庁では、特許についての代理人は、Patent Agent(米国弁理士)かPatent Attorney(米国特許弁護士)のどちらかの資格が必要というように決められています。Patent AgentとPatent Attorneyは、それぞれPatent Bar Examinationに合格した者が登録できる資格で、一般の方がPatent Bar Examinationに合格すればPatent Agent(米国弁理士)になることができ、米国のいずれかの州の弁護士がPatent Bar Examinationに合格すればPatent Attorney(米国特許弁護士)となります。また、Patent Agent(米国弁理士)が米国のいずれかの州の弁護士に登録してもPatent Attorney(米国特許弁護士)になれます。Patent Bar Examinationは連邦法によるルールが当て嵌まりますので、外国籍の人間を国益を守る観点から排除することができ、日本人がPatent Barを受験するには、理工系の学位等と就労ビザに特許の仕事についての記載が求められ、合格した場合でもLimited Recognition(visaの範囲での限定許可)となります。永住権を取得すれば、日本人という外国人の枠がはずれて、限定した資格ではなく正式なPatent Agent(米国弁理士)かPatent Attorney(米国特許弁護士)となることができますが、税法上180日ルールなどが適用になりますので、日本に帰国する人は過去にPatent Bar Examinationに合格した者としかならない仕組みになっています。米国特許商標庁で扱う特許は、通常の特許(Utility Patent)だけではなく意匠登録(Design Patent)も含まれます。Patent Agent(米国弁理士)とPatent Attorney(米国特許弁護士)の間には、弁護士か否かという差があり、弁護士はlaw degreeを有した者、Law Schoolで学んだ経験を持ち、裁判所などへの対応もできるということで、アメリカ国民にとっては明らかな違いになっています。日本人に対しては、Patent Attorneyを弁理士と訳すことで、それ自体は誤訳でもないとは思いますが、米国弁理士と称している方について、Agentだけの米国弁理士なのかAttorney資格を有しているけど日本の資格に寄せて弁理士と称しているのかは、米国での裁判所の手続を依頼することも考えると気に掛ける必要があります。

商標

米国特許商標庁では、商標についての代理人は、米国のいずれかの州の弁護士(Attorney at Law)である必要があります。米国でtrademark bar examinationという商標の資格試験はありません。米国の特許弁護士(Patent Attorney)はその前提として弁護士ですので、商標についての手続を代理することはできますが、Patent Agent(米国弁理士)は商標についての手続の代理をすることができません。米国のいずれかの州の弁護士(Attorney at Law)になるには、通常、law degreeを取得して州の弁護士試験(State bar examination)に合格する必要があり、州の弁護士をstate bar memberと称することもあり、例えばイリノイ州であればIllinois state bar memberと呼ぶこともあります。また、州の弁護士について、履歴書などに正式には、州の最高裁判所での実務を認可された、admitted to practice the highest or supreme court of the Stateというような言い方もします。弁護士数の極めて少ない州では、ロースクールの卒業だけで弁護士資格を認め、試験のない州もありますが、大都会のある州では最近では弁護士数の増大傾向にあり、人数を制限する意味から州の弁護士試験の合格率も低下している傾向があります。米国特許商標庁に対する代理人は、米国のいずれかの州の弁護士であれば良いので、多くのbusiness lawyerやin-house attorneyの方も商標の手続きに関して代理することができます。弁護士になれるか否かは州法の範囲ですので、外国籍の人間を排除するということは差別としてできないルールとなっており、特に住む場所や就労ビザなどで制限されることはありません。商標の出願や使用宣誓書の提出の代理については、米国の特許弁護士から見れば、州の弁護士であれば特別な試験合格なしに代理できるということになります。

日本の特許庁(JPO)に対する代理人

日本の特許庁に対する手続の代理人は、日本の弁理士又は弁護士です。弁理士、弁護士になるには、それぞれ資格試験があります。日本の特許庁は、特許の職業代理人と、商標の職業代理人を区別するようなことはなく、弁理士であれば特許、実用新案、意匠登録、商標登録の産業財産権の4法についての手続代理の権限を有します。

米国商標実務: Sec.15(法15条)の宣誓書

§15の宣誓書とは

米国の商標法では、§15の不可争性(incontestability)の宣誓書を提出することができます。この§15の宣誓書を提出することで、商標登録の有効性を争うことができなくなり、例えばハウスマークなどの重要性の高い商標については、宣誓書により権利の安定化を図ることができます。

lincoln
Lincoln Statue

§15の宣誓書を提出できる要件

§15の宣誓書の提出には、次のような要件が必要です。1)商標の所有権や商標登録の権利を失効させる最終決定がだされていないこと、2)そのような手続が係属していないこと、3)登録の日の後、どこかの5年間継続的且つ連続的に使用し、その5年の期間から1年以内であること、4)商標が普通名称化していないことの4要件になります。使用ベースの出願の場合には、登録の際に使用宣誓書を提出することから、丁度、5年目6年目の§8の使用宣誓書の提出時に、使用が継続していれば自動的に3)の継続使用の要件が満たされることになります。§8の使用宣誓書は提出が必須ですが、§15の不可争性の宣誓書は任意ですので、提出することもでき、提出しなくても良い書類です。また、§15の宣誓書は主登録の商標に対して提出することができ、補助登録(Supplemental Register)の商標は対象とはなりません。

§15の宣誓書の提出期限、提出回数、必要書類

§15の宣誓書の提出には、3)の要件が満たされていれば、特に期限はありません。また、§15の宣誓書は1回提出すれば登録が続く限り効果があり、使用宣誓書のように更新の度に提出が必要となるものではありません。また、§15の宣誓書に添付する証拠書類などはありません。

§15の宣誓書の効果

§15の宣誓書によって不可争性を獲得すれば何が何でも争えなくなというものでもなく、無敵(invincible)というにはほど遠い感じですが、メリットもあります。 1)商標が記述的に過ぎない(descriptiveness)という理由の無効審判と、2)商標が先に使用されていたことを理由とする取消審判に対しては、効果があります。例えば、先にアメリカで権利を取得していた場合に、類似の範囲の商標を第3者が出願し、その第3者に拒絶理由が打たれた場合には、同意(consent)を求めてくることもありますが、並行して先使用による取消(Petition for cancellation)もかけてくることがあり、その答弁書の提出だけでも数十万円ぐらいかかる場合があり、答弁しなければDefault Judgmentで取消となります。§15の宣誓書がでていれば、このような紛争に巻き込まれることはなくなります。商標が普通名称化した、使用していない或いは放棄している、公序良俗違反、他国の国旗当である、虚偽により登録を受けているなどの理由であれば、§15の宣誓書によって不可争性を獲得していても取消可能です。§14に規定するTTABの取消審判に対しては、5年の除斥期間の規定があり、§15の宣誓書はいらないようにも考えられますが、§14の除斥はTTAB(審判部)だけで連邦裁判所の手続には効果がないのですが、§15の宣誓書は連邦裁判所に対しても効力があります。

§15の宣誓書のデメリット

一般に、§15の宣誓書によって不可争性を獲得する場合には、全ての指定商品・指定役務に5年間継続的且つ連続的に使用していることを宣誓することになりますが、一部の商品について継続的な使用が虚偽だった場合には、虚偽に基づく手続で登録が取り消されるおそれもあります(Medinol, Mister Leonard)。なお、このようなリスクを避けるためには、商品の一部だけの§15の宣言も可能です。

§15の宣誓書の提出費用

§15の宣誓書は$200 per classになります。

米国商標におけるコンセント(同意)書の取り扱い

同意書の取り扱い

米国での商標登録出願に対して、米国審査官(examining attorney)が既に登録されている商標を挙げて、拒絶理由を通知してくることがあり、これに対しては、1)競合すると認定されている指定商品・指定役務を削除する補正をする。2)競合すると認定された商標登録を取消すための審判を請求する。3)意見書を提出して非類似であることを主張する。同意書は、意見書を提出して非類似であることを主張するための証拠として用いられます。審査官が同意書を提出するようにと示唆することはありません。

言葉だけの同意書(naked agreement)は重視されない

同意書が既登録商標権者が出願者の商標登録に同意するもので、混同が生じないということを単に述べているに過ぎない場合は、約因がない同意として重視されることはないとされています。従いまして、審査官が競合するとの主張を覆すには、一般大衆を混同することがないを当事者間で同意から導かれることを示すことになります。例えば、既登録商標権者と出願者の商標を付した商品が、出願者により販売されているという事実とライセンス契約は、混同を生じないとするには十分でないと判断されています(In re Wacker Neuson SE)。

米国審査官のルール

米国審査官は、当事者の適格な同意書には実質的に配慮すべきとされています。即ち、当事者が信じ得る同意をし、他に混同を生じてるという要因もない場合には、審査官は混同が生じるという判断ができないとされています。

同時使用合意書(concurrent use agreement)は同意書(consent agreement)とは異なる

同時使用合意書(concurrent use agreement)は、同意書とは異なっています。同時使用合意書は、登録の地理的な割り当てを定めた合意書です。

TMEP 1207.01(d)(viii) Consent Agreements
The term “consent agreement” generally refers to an agreement between parties in which one party (e.g., a prior registrant) consents to the registration of a mark by the other party (e.g., an applicant for registration of the same mark or a similar mark), or in which each party consents to the registration of an identical or similar mark by the other party.
An applicant may submit a consent agreement in an attempt to overcome a refusal of registration under §2(d) of the Act, or in anticipation of a refusal to register. However, an examining attorney may not solicit a consent agreement.
A consent agreement may take a number of different forms and arise under a variety of circumstances, but, when present, it is “but one factor to be taken into account with all of the other relevant circumstances bearing on the likelihood of confusion referred to in §2(d).” In re N.A.D. Inc., 754 F.2d 996, 224 USPQ 969, 971 (Fed. Cir. 1985).
“Naked” consent agreements (i.e., agreements that contain little more than a prior registrant’s consent to registration of an applied-for mark and possibly a mere statement that source confusion is believed to be unlikely) are typically considered to be less persuasive than agreements that detail the particular reasons why the relevant parties believe no likelihood of confusion exists and specify the arrangements undertaken by the parties to avoid confusing the public. See In re E.I. du Pont de Nemours & Co., 476 F.2d 1357, 1362, 177 USPQ 563, 568 (C.C.P.A 1973) (noting that “[i]n considering agreements, a naked ‘consent’ may carry little weight,” but “[t]he weight to be given more detailed agreements . . . should be substantial”); see also In re Donnay Int’l, S.A., 31 USPQ2d 1953, 1956 (TTAB 1994) (“[T]he more information that is in the consent agreement as to why the parties believe confusion to be unlikely, and the more evidentiary support for such conclusions in the facts of record or in the way of undertakings by the parties, the more we can assume that the consent is based on a reasoned assessment of the marketplace, and consequently the more weight the consent will be accorded.”); In re Permagrain Prods., Inc., 223 USPQ 147 (TTAB 1984) (finding a consent agreement submitted by applicant did not alter the conclusion that confusion was likely, because the agreement was “naked” in that it merely indicated that each party would recognize, and refrain from interfering with, the other’s use of their respective marks and that the applicant would not advertise or promote its mark without its company name, but the agreement did not restrict the markets or potential customers for their goods in such a way as to avoid confusion);cf. In re Wacker Neuson SE, 97 USPQ2d 1408 (TTAB 2010) (finding an otherwise “thin consent” to be viable and reversing a §2(d) refusal, in view of the relationship of the parties, the provisions of a licensing agreement executed by the parties, and the fact that the goods and services offered under both parties’ marks were manufactured and sold by applicant).
If a consent agreement makes representations about both parties’ beliefs regarding the likelihood of confusion and/or indicates that both parties have agreed to undertake certain actions to avoid confusion, then it should be signed by both parties, or by individuals with legal authority to bind the respective parties. In some instances, however, a consent document might be signed only by the registrant, because only the registrant has provided its consent, agreed to take certain actions, or made representations as to the likelihood of confusion. The absence of applicant’s signature on the document in such cases does not necessarily render the document unacceptable, but, like any other consent document, its persuasive value should be determined in light of all other evidence in the record. See, e.g., Donnay Int’l, 31 USPQ2d at 1956-57 (finding that a consent letter signed only by the registrant and consisting merely of registrant’s consent to applicant’s registration and use of the applied-for mark was entitled to limited weight, but nonetheless concluding that it served to “tip the scales” in favor of reversing the §2(d) refusal, especially in view of the minimal evidence supporting the conclusion that confusion was likely); In re Palm Beach Inc., 225 USPQ 785, 787-88 (TTAB 1985) (concluding there was no reasonable likelihood of confusion as to applicant’s and registrant’s marks, based on, inter alia, the different nature of the parties’ goods, two consent letters signed only by owners of the cited registration, and an affidavit of an officer of applicant’s subsidiary indicating that actual confusion had not occurred during the more than 45 years of the marks’ coexistence and that future likelihood of confusion was believed to be unlikely).
In the In re E. I. du Pont de Nemours & Co. decision, the Court of Customs and Patent Appeals stated as follows:
[W]hen those most familiar with use in the marketplace and most interested in precluding confusion enter agreements designed to avoid it, the scales of evidence are clearly tilted. It is at least difficult to maintain a subjective view that confusion will occur when those directly concerned say it won’t. A mere assumption that confusion is likely will rarely prevail against uncontroverted evidence from those on the firing line that it is not.
476 F.2d at 1363, 177 USPQ at 568.
Accordingly, the Court of Appeals for the Federal Circuit has indicated that consent agreements should be given great weight, and that the USPTO should not substitute its judgment concerning likelihood of confusion for the judgment of the real parties in interest without good reason, that is, unless the other relevant factors clearly dictate a finding of likelihood of confusion. See In re Four Seasons Hotels Ltd., 987 F.2d 1565, 26 USPQ2d 1071 (Fed. Cir. 1993); In re N.A.D. Inc., 754 F.2d 996, 224 USPQ 969 (Fed. Cir. 1985); see also du Pont, 476 F.2d at 1362-63, 177 USPQ at 568; cf. In re Mastic Inc., 829 F.2d 1114, 4 USPQ2d 1292 (Fed. Cir. 1987) (affirming TTAB’s holding that applicant’s mark was barred by §2(d), because the provided consent to register was essentially a “naked” consent and all other relevant factors weighed in favor of a conclusion that confusion was likely).
Thus, examining attorneys should give substantial weight to a proper consent agreement. When an applicant and registrant have entered into a credible consent agreement and, on balance, the other factors do not dictate a finding of likelihood of confusion, an examining attorney should not interpose his or her own judgment that confusion is likely.
A consent agreement is not the same as a “concurrent use” agreement. The term “concurrent use” is a term of art that refers to a geographical restriction on the registration. See TMEP §1207.04 regarding concurrent use.