米国商標制度 vol.1

newyork

ビジネスで成功を収めるために、商標を含む知的財産が非常に重要な役割を果たすことは、日本に限らず、米国(アメリカ合衆国)でも同じです。米国の商標制度は、特に使用主義を前提としているところが、日本やその他の登録主義の国とはやや異なるところがあります。また、アメリカ合衆国という国が連邦と州のハイブリット構造をしていることから、日本にはない考え方(federalismなど)をする必要もあります。

Capitol Hill, Washington D.C.
Capitol Hill, Washington D.C.

1.米国商標の対象

商標は英語でtrademarkですが、商品に対して使用するtrademarkと役務(サービス)に対するservice markを米国商標法では区別しており、且つ、両方を包括して”trademark”と呼ぶこともあります。米国の連邦登録では、商標は語、名前、記号、図形、若しくはこれらの組み合わせであって、自他商品を区別するため”in commerce”で使用することを登録要件としています。連邦商標法上、”in commerce”は「州際通商」と訳されており、簡単に言えば、州の境を越えた商売に使用することが要件で、仮に州境から遠い町とその隣町だけで商売している場合は、連邦登録の登録要件は満たさないことになります。日本から商品を送る場合は、勿論”in commerce”の要件は問題ありません。

usr3428128
米国商標登録第3428128号
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米国商標登録第3673720号
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米国商標登録第4004914号
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米国商標登録第4171965号
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米国商標登録第4434665号
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米国商標登録第4619582号

米国では、商標は出所表示するもの(source identifier or source designater)であれば、種々のタイプが商標として機能します。少し前までは、日本の商標制度とは大分違うと説明していましたが、日本の制度も非伝統的商標を含むように改正されていますので、匂い商標ぐらいが違いとして残る程度と思います。

音商標

Twentieth Century Fox USR74629287

色彩商標
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米国商標登録第3165001号

Owens-Corning Fiberglas Technology Inc.
The color(s) pink is/are claimed as a feature of the mark. The mark consists of the color pink as applied to adhesive tape in its entirety.

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米国商標登録第4160068号

Tiffany and Company
The color(s) blue and silver is/are claimed as a feature of the mark. The mark is a design element of handbags and tote bags and consists of a rectangular plaque in the color silver with the engraved, stylized words “TIFFANY & CO.” also in silver.

また、商標の種類(Type)として、証明商標、団体商標があります。

15 USC §1127

2.米国における使用主義

アメリカ商標制度の考え方は、使用主義を前提としているというのは広く知られているところと思います。使用主義からは、商標は使用することで権利が確保され、使用していなければ権利がなくなることになります。使用主義の観点からアメリカではいくつかのチェックポイントを用意しております。登録から5年目と6年目の間に、使用証明と宣誓書を提出する必要があり、10年毎の更新前の9年目と10年目の間にも同様に使用についての証明と宣誓書を提出する必要があります。また、ITU出願では、登録時にも使用の証明を提出する必要がありますので、最初の更新までに通常3回の使用証明の提出が必要です。宣誓書では、使用証明を提出しますが、そこには指定商品の全てについて使用することを宣誓するようになっており、もし指定商品の全てについて使用していなければ宣誓書の提出時に使用しない商品を削除する必要があります。登録時のStatement of Useの提出時には、確かに使用していたが、登録から5年目と6年目の間のSec.8の宣誓書の提出時には、すでに使用を辞めた商品がある場合、その商標不使用の商品については削除する必要があります。マドプロをベースとする出願や、外国出願や登録をベースとする出願では、最初の使用証明の提出は、登録から5年目と6年目の間となりますが、日本の指定商品の範囲に合わせて広い範囲の指定商品群を登録している場合では、最初の使用証明の提出時に不要な指定商品は削除する補正の検討も必要です。日本や欧州の登録には、使用していない商品が指定商品として含まれていても、それだけで取り消されることはないのですが、アメリカの場合には、意図的な商標不使用の指定商品の存在は全体の取消につながるおそれもあり、また最近の法改正では、審査官は使用証明が出されていない指定商品についての追加の使用証明を求めることができるように改正されています。

Washington Monument, Washington D.C.
Washington Monument, Washington D.C.

3.米国商標出願の基礎(Base)

米国で連邦の商標を出願する場合に、5つの出願の基礎(Base)のうち少なくとも1つを選択する必要があり、これらの基礎は願書の中で選択できます。このような出願の基礎の選択は日本の法律にはありません。5つの出願の基礎は、1)Based on Use (Section §1(a){use in commerce}), 2) Based on “Intent-to-Use (Section §1(b) {intent to use}),” 3) Based on a Foreign Application (Section §44(d) {foreign application}), 4) Based on a Foreign Registration (Section §44(e) {foreign registration}),5)Based on extension of protection of an international registration to the US (Section §66(a) (Madrid Protocol))の5つです。アメリカ人が自国で出願するときは、典型的には、1)Based on Use (1a), 2) Based on “Intent-to-Use”(1b)のどちらかになります。日本の会社が出願するときは、1~5のいずれか若しくは複数を選択して出願することになりますが、日本の本国登録もしくは本国出願を基礎としてマドプロ出願をする場合には、5を選択することになります。これらベースの違いで、手続の流れが微妙に異なっていて、提出する書類や宣誓書が異なります。2のBased on “Intent-to-Use”の出願(ITU出願)の場合には、登録に際してStatement of Use (Allegation of Use)を提出する必要があり、提出できなければ登録できません。出願の基礎は出願後に補正することもでき、最初に2つ選択して後から削除することも可能です。ITU出願の場合には、使用宣誓書を提出しなければ移転できないとされています。Based on use (1a)の基礎の場合、出願と同時に使用についての書類(allegation of use)を出しているための使用についての追加の書類を提出することなく登録になります。本国出願や本国登録を基礎(44d/44e)とする場合は、基礎となった出願から追加された区分については、1a若しくは1bを基礎にする必要があり、本国出願が登録となった場合には登録証のコピーを提出します。ここで、区分の整合性が再度審査されます。本国出願や本国登録を基礎(44d/44e)とする場合やマドプロ出願の保護拡張である場合には、登録に際してのStatement of Useを提出する必要がないため、例えば、出店計画が3年以上かかるような場合でも先に登録だけを確保することもできます。

出願の5つの基礎(Base)
Filing Bases in US

4.連邦登録と州登録

米国にはUSPTOで行われる連邦登録と、各州ごとの州登録と、さらにコモンロー上の未登録商標があります。州登録は各州のSecretary of State(州政府)に登録の作業を行います。全米のあらゆる地域で販売が行われるような商品の場合には、連邦登録に加えて州登録の調査やコモンロー商標の調査もリスク回避のために必要と思います。全米で売るような体制ではなく、初めに幾つかの州で販売を開始するような業態の場合は、その幾つかの州の州登録と連邦登録を中心に調査を進めても良いかと思います。州法と連邦法が競合するような法域では連邦法優先(FEDERAL PREEMPTION)の原則がありますので、連邦法が優先、すなわち連邦登録が重要となります。州商標法は、その州の内部での取引についてだけ規定していますので州の境を越える取引(interstate commerce)については連邦商標法のルールが適用になります。商売をする場合に、その取引範囲が州内に限定されるような商品やサービスは非常に限られており、たまたまそのコモンローの商標や州登録商標と抵触したとしても、その効力は州限定と考えられています。米国で商標を連邦登録するには、その使用態様としては、州の境を越える取引(interstate commerce)、即ち州際通商・州際取引、が必要となります。外国との取引も州際通商です。また、ワシントンDCは特別区で、特別区内全部が州際を構成しますので、ワシントンDCでだけ売り出していても連邦登録をすることができます。ちなみにワシントン特別区の商標法はありません。

連邦登録の特徴及び利点

  1. 商標の所有権について公衆への通知が擬制されます。
  2. 登録した者に商標の所有権があり、登録で指定された商品役務に関し全米で使用を専有する権利を有するとの法的な推定がなされます。
  3. 連邦裁判所に商標についての訴訟を提起できます。
  4. 米国での登録は外国での登録を受ける基礎にできます。
  5. 侵害する輸入品を差し止めるように米国関税・国境取締局(CBP)に差止の申請(IPRR: INTELLECTUAL PROPERTY RIGHTS e-RECORDATION)ができます。

5.米国における商標調査

米国での商標登録をする前には、通常、事前に競合する商標登録があるか無いかを調査することが行われます。米国の商標調査に完璧はありませんが、侵害事件が生じた場合に、被告側では商標弁護士の指示に従ったかどうかや事前の商標調査をしたのかなどの状況が侵害行為の損害賠償額にまで影響します。また、通常出願してから登録になるまで、半年から1年半ぐらいの期間がかかります。もし、競合する商標が存在していて知らずに出願した場合に、コンセントや商品削除などの手段では回避できず、非類似の主張もできないような商標が引例で出された場合には、また商標の選択からやり直すことになり、時間をロスします。一般的には、3つのレベルでの商標調査があり得ます。最初のレベルは、無料のGoogleなどの検索エンジンを使用することです。インターネットを利用して、同じスペリングの会社名や商品名、ドメイン名などを洗い出します。競合する商品に同じ綴りの文字商標がある場合には、その商標は選ぶべきではないと考えます。検索エンジンでは、類似の範囲までは抽出しませんので、幾つかの文字を入れ替えて再検索することも重要です。次のレベルは、連邦登録を米国特許商標庁(USPTO)の商標調査データベース(TESS)で調べます。このTESSのサーチもインターネットでアクセス可能です。TESSもFUZZYサーチは付属していませんので、類似の範囲は文字をいくつか入れ替ええて再検索することになります。州登録もオンラインで調査可能な場合があり、必要に応じて調査を行います。詳しくは米国の商標登録(TESS)を検索🔎のページへ。さらに次のレベルは、有料ですが、調査会社に調査を依頼する方法になります。調査会社としては、いくつか知られていますが、CorSearch, Government Liaison Services, TrademarkExpress, LegalZoom, Trademarkiaなどにオーダー可能です。連邦と州の両登録と、コモンロー商標、会社名などのサーチのパッケージで500~750ドル程度の調査会社の費用がかかります。

6.米国商標の出願準備

米国特許商標庁(USPTO)に対し、昔ながらの紙媒体でも出願できますが、通常はthe Trademark Electronic Application System(TEAS)を使用しながら電子出願を行います。商標登録出願に際して必要な情報は、
a)出願人情報(名前、企業形態、住所、国籍)
b)商品区分の表示(trademark identification)
c)出願の基礎(Filing Basis)情報
d)商標見本(mark drawing)
e)翻訳(英語では意味が不明な場合)やDisclaimer(権利不請求)
f)商標の説明(Description of mark)
g)代理人の情報
i)使用証明(use in commerce出願のみ)
などになります。

原則的に委任状(power of attorney)は不要です。商標見本としては、標準文字を選択する場合を除いて、幅、高さ共に250pixels以上944pixels以下のJPGファイルか文字商標で、ファイルを添付ファイルとしてアップロードします。標準文字(standard character)を選択する場合には、書類作成時に画面上でタイプすればその文字のファイルが自動に(フォントを選ばすに)作成されます。漢字や平仮名、片仮名は標準文字を構成しません。標準文字を構成する文字の一覧はstandard-character-setのページにその記載があります。”Trademark ID”は商品や役務の選択の表示で、日本の実務の感覚での”指定商品及び指定役務”を意味しています。商品区分の表示では、クラス見出しや包括的な表現の記載は受け付けられず、実際に商標を使用している具体的な商品名や役務名を記載することが求められます。商品区分の記載が、日本の記載方法と米国の記載方法ではギャップがあり、日本も米国もニース分類を採用しているものの、日本の記載のままでは上手くいかないことも良く起こります。米国は、ニース協定は分類を決定するのみであると考えており、多くの場合に、ニース協定に記載されている表現を認めていません。具体的な商品名や役務名はUSPTOのサイトで受理可能な商品及び役務の特定に関するマニュアルとして公表されていますので、こちらを参考にするのが賢明です。

米国特許商標庁は、ラテン文字以外で表現される標章に関し、英語による翻訳と、ラテン文字による音訳、またはラテン文字による当て字を行うことを義務づけています。翻訳(translation)の欄には、日本語や日本語の英文字表記について説明します。例えば”福”や”FUKU”についてmeaning “happiness” のように説明します。典型的な応答としては、”The foreign characters in the mark transliterate to “FUKU” and this meaning “happiness” in English.” 権利不要求(Disclaimer)は、商標の一部に普通名称や地名などを含むような場合には、普通名称や地名などに対して権利行使しませんとの覚書を交わすようなものです。例えば〇〇〇watchの商標で、腕時計を指定商品にしている場合には、watchを権利不請求として登録にもっていきます。商標の説明は、例えば色が商標の一部となるのか否かなどの記載や、ロゴや図柄の構成要素を記載します。

TEAS
USPTO TEAS SCREEN

7.米国商標の出願費用

米国商標の出願費用については、現行[2017年1月14日から]は以下のように値上げ(一部は値下げ)となります。

 項目 Official Fee  USドル
 商標出願-紙出願(区分毎)  600
 商標出願-TEAS regular(e-filing、区分毎)  400
 商標出願-TEAS RF(Reduced Fee)(e-filing、Email応答、区分毎)  275
 商標出願-TEAS plus (e-filing、Email応答、指定商品役務はTrademark ID Manualから選択、 区分毎)  225
 使用宣誓書(許可前)提出 [Filing an Amendment to Allege Use, 区分毎] 100
 Sec.1(c) 使用宣誓書(許可後)提出
[Filing a Statement of Use, 区分毎]
100
 Sec.1(c) 使用宣誓書提出の6か月期限延長  125

米国特許商標庁 料金表💰 / 弊所(弁護士)費用手数料†(*現地代理人費用はありません)

8.米国特許商標庁における出願処理の流れ

米国特許商標庁に出願した場合、およそ3カ月で審査に係属し、3~6カ月程度の間に何かしらの応答が来ることになります。審査の結果、拒絶理由がない場合や拒絶理由か解消した場合には、公告となり異議申立を受け付ける期間(30日間延長可能)に入ります。そこで異議がなければ、許可通知(Notice of Allowance)が出され、ITU出願の場合、SOU(Statement of Use)を提出することになり、提出して問題がなければ登録になります。登録時に登録料の納付はなく、ITU出願の場合は、出願後はSOI提出時に100ドルの提出料を支払うことになります。基礎がSec.1aのuse in commerceの場合は、新たな使用の証拠の提出はないので、その分はオフィシャルフィーを抑えることができます。

USPTO 出願の流れ

9.主登録と補助登録

米国特許商標庁の登録には、主登録原簿(Principal Register)と補助登録原簿(Supplemental Register)の2種類があります。一般に、連邦登録とは主登録原簿への登録のことを言い、補助登録は商標としての顕著性(distinctiveness)が足りない商標を救うように機能する原簿になります。日本でも商標法3条1項3号で品質を表示している標章に過ぎないという拒絶理由に対して、真っ向から反論する方法もありますが、商標法第3条第2項の使用による顕著性(secondary meaning or acquired distinctiveness)を主張する方法もあり、米国では顕著性を欠く(merely descriptive)という理由では拒絶せずに、使用による顕著性が発揮されるまで補助登録をしておくということができます。補助登録というと半人前のような感じですが、意外と使い勝手が悪いということもありません。補助登録では、異議申し立てのための公告がなく、5年の継続使用による不可争効力(incontestability)の獲得もない訳ですが、®マーク(registration symbol)を使用することもでき、類似の後願を排除する効力もあり、商標権侵害として第3者に権利行使することもできます。第3者は、補助登録の商標に対しては、類似の商標の存在等により争うことがいつでもできます。初めから、補助登録を目指して出願するということはない訳ですので、審査の途中で、審査官の示唆などで補正により主登録から補助登録への変更が行われます。ITU基礎(1b)の場合には、補助登録ができないという規定になっていますので、ITU出願の場合にはベースをUse in commerceや外国登録ベースなどに切り替える補正をします。この時、SOU(使用証拠)を提出したり、出願日が繰り下がることもあります。補助登録に5年間登録した後で補正で主登録に切り替えることはできません。この時は、補助登録にsec.8の使用宣誓をしながら主登録についての新出願(補助登録の権利者であることを記載)を行って、主登録の権利と補助登録の権利を並存させながら、10年目の更新の際に補助登録を流すということをするのが通常の実務です。なお、5年の補助登録が使用による顕著性についての証拠とはなりますが、それは絶対的なものではく、主登録の審査に宣伝や広告などの追加の証拠が必要になることもあります。また、マドリッド制度に基づく国際登録出願については、補助登録をすることはできません。

10.米国特許商標庁における審査

米国特許商標庁では、審査官(Examining Attorney)が拒絶理由があるか無いかを審査します。商標についての書誌的な事項での違反があるか無いか、A) 商標としての公益的理由からの不登録事由に該当するか否か、B) 自他商品の識別力があるのか否か、そしてC) 競合する他人の商標登録があるか無いかなどの審査が行われます。出願後に最初の審査結果は、概ね3か月でやってきます。これに対して、出願人は応答の意見を述べたり、必要な場合には補正を行って対応します。例えば、類似していないという意見書を提出しても審査官がその意見を変えないときは、FINALとなるOffice Actionが出されます。審査の結果、拒絶理由がない場合には、Notice of allowanceが出され、その後にOfficial Gazetteに公告され、30日間の異議申立期間となります。

A. 不登録事由

不道徳またはスキャンダルな事由(Immoral or Scandalous Matter)(TMEP 1203.01)
スキャンダルなものだけからなるマークに限らず、スキャンダルなことを含むマークも拒絶すべきとしています。In re Fox, 702 F.3d 633, 638, 105 USPQ2d 1247, 1250 (Fed. Cir. 2012) 中指が上に伸びた手の形のボトルは、一般大衆の実質的な混成(substantial composite of the general public)によって下品と考えられるであろう。In re Luxuria s.r.o., 100 USPQ2d 1146 (TTAB 2011).

虚偽の事由(Deceptive Matter)(TMEP 1203.02)
虚偽の標章とするための要件として、1)商品の特徴、品質、機能、構造若しくは使用の虚偽があるか? 2)もしそうならば、見込購買者がその虚偽表示が商品を実際に説明すると信ずるべきものか否か? 3)もしそうならば、その虚偽記載が消費者の購入決定の関する要点を大きな影響を与えたか否か という事が問われます。In re Spirits Int’l, N.V., 563 F.3d 1347, 90 USPQ2d 1489 (Fed. Cir. 2009)

誹謗し、誤った関係を示唆し、或いは侮辱若しくは中傷する表現(Matter That May Disparage, Falsely Suggest a Connection, or Bring into Contempt or Disrepute)(TMEP 1203.03)
15 U.S.C. §1052(a)は、人、機関、信念、国の象徴について、誹謗し、誤った関係を示唆し、或いは侮辱若しくは中傷する表現を有する標章は登録できないと規定しています。人とは、自然人であり、生死は問わず、架空は含みません。また法人も含むとしています。機関は広く解するべきとされ、例えば五輪大会も機関に含まれると解されています。国の象徴は、例えばハゲワシ、自由の女神、アンクルサムなどが含まれます。この規定は、1stAmendmentベースで最高裁判決(Matal v. Tam)が2017年6月ありましたので、変更が見込まれています。

旗、紋章、その他の米国、州または市町村の記章、または外国国家(Flag, Coat of Arms, or Other Insignia of United States, State or Municipality, or Foreign Nation)(TMEP 1204) 標章内に、米国若しくはその他の国や市町村などの旗自体やその旗を模したものがその印と共に描かれている場合には、拒絶理由となります。但し、旗がデザイン化されている場合や文字などで曖昧となるには、拒絶にはなりません。

条約または条約によって保護される事由(Matter Protected by Statute or Convention)(TMEP 1205)
赤十字の標章、オリンピックの標章などは拒絶されます。

同意のない、特定の生存している個人または死亡した米国大統領の名前、肖像画、または署名(Name, Portrait, or Signature of Particular Living Individual or Deceased U.S. President Without Consent)(TMEP 1206)
本規則は、死んだ個人については死亡した大統領を除いて適用されないとされています。指定商品及び役務との関係では、”publicly connected” が求められ、実際に関連しているかその分野で有名であるなどの指定商品との関連性が必要となります。In re Sauer, 27 USPQ2d 1073, 1075 (TTAB 1993), aff’d per curiam, 26 F.3d 140 (Fed. Cir. 1994).

B. 識別力の欠如

識別性(Descriptiveness)(TMEP 1209)
商品または役務を単に説明する標章は、使用により特別顕著性を示せない場合は、主登録原簿への登録はできません。標章は、指定された商品または役務の成分、品質、特性、機能、目的、または使用をのみを記述している場合に説明的と見なされます。In re TriVita, Inc., 783 F.3d 872 同様に、標章は、出願人の商品または役務の品質、特徴、機能、または特性に関する知識のみを直ちに伝える場合に、説明的であるとみなされます。商標の記述が、全てではなく1つの重要な機能、属性、または特性を記述すれば、記述的であると認定するのに十分です。 In re Chamber of Commerce, 675 F.3d at 1300 また、識別された役務がその用語によって示される役務の一部である場合には、単に記述的であると見なすことができます。 In re Amer. Soc’y of Clinical Pathologists, Inc., 442 F.2d 1404, 1406-07 識別性についての拒絶理由に対しては、1)標章の記載は普通名称などではないと主張する。2)主登録から補助登録への補正をする、3)使用による特別顕著性を提示する。の方策がありますが、3)の顕著性を示すには十分な証拠が要求されます。

C. 類似

称呼、外観、観念(Similarity in Sound, Appearance, Meaning)(TMEP 1207)
標章が類似しているか否かは、横並びに比較したときに2つの標章を区別できるかどうかではなく、商品または役務の供給源についての混乱の可能性があるほど標章が類似しているかどうかになります。類似性については、sight(appearance), sound, or meaningが要因とさえていますが、自動的にそれだけで決定されるものではなく、関連した事実なども考慮されます。外観の類似性は、標章を比較する際に考慮すべき要因の1つです。In re E. I. du Pont de Nemours & Co., 476 F.2d 1357, 1361 音の類似性は、標章が混同し易いかどうかを判断する際の1つの要因です。Id.意味や意味合いの類似性は、標章が混同し易いかどうかを判断する上でのもう1つの要因です。Id. 外国語の同等物のルールの下では、外国語(著名なアメリカ人の消費者に馴染みのある言語のもの)と英語の同等語は、類似していると考えられることがあります。例えば、靴でEL SOL(スペイン語で太陽)に対し、靴でSUN and designは類似とした例があります。

関連性(Relatedness)(TMEP 1207)
米国では、日本のような類似群コードで商品役務の類似性を決めるというような手法は存在しておらず、ケースバイケースで議論して商品役務の類似を決める傾向にあります。比較される標章がより似ていれば、商品・役務の関連性が低くとも類似となる可能性は高くなります。商品・役務の関連性については、必ずしも一致している必要はないとされています。関連性について、配管分野における液体排水オープナーと広告サービスは、異なる商品や役務であり、同じ標章であってもその出所について混乱する可能性は低いとする審決例もあります。Local Trademarks, Inc. v. Handy Boys Inc., 16 USPQ2d 1156, 1158 (TTAB 1990) また、同軸ケーブルに使用されるQRと、複写機、製図機、青写真機に関連して使用される各種機器のQRとは、それらの商品の性格、目的、相違点などにより混乱を招くものではないとした例もあります。Quartz Radiation Corp. v. Comm/Scope Co., 1 USPQ2d 1668, 1669 (TTAB 1986) ビールとレストランのサービスが類似すること支持する証拠は得られていないと判断された判決があります。In re Coors Brewing Co., 343 F.3d 1340.

Du pont factors
米国商標で類否を分析する際に頻繁に使用されるTESTがDu pont factorsです。TMEP1207.01では、審査の場合特に次の要因を重きを置いて考えるとしています。

  • The similarity or dissimilarity of the marks in their entireties as to appearance, sound, connotation and commercial impression.
  • The relatedness of the goods or services as described in the application and registration(s).

最初のfactorでは、称呼、外観、観念にcommercial impressionが加わっております。次のfactorはrelatednessの分析です。

D. 同意書 (Consent)

競合する先登録商標がある場合には、アメリカの実務としてコンセント(consent(TMEP 1207.01(d)(viii)))を相手方と結ぶという方法もあります。同意書であればどのようなものでも良い訳ではなく、各当事者の権利を列挙しただけ、並びに混同を生じる虞は無い旨の証拠不十分な推論に過ぎない”裸の(naked)”同意書では、競合関係を解消するものと見做されない傾向にあります。実際に消費者に混同が生じないような商標の地理的使用に関する制限などで、同意書を作成する必要があり、進めるには相手方と交渉を必要とします。( Concurrent Use Registration, TMEP 1207.04)

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11. ITU出願の使用宣誓書の提出

異議申立期間の経過後、異議申し立てがない場合や異議理由がないと判断された場合には、登録となります。登録されれば10年存続し、次の更新を迎えます。そして、使用主義を前提とする米国では、商標権を取得するため、あるいは取得した権利を維持するため、さまざまな段階で宣誓書(Affidavid)を提出する必要に迫られる場合があります。審査を通過して登録許可通知(notice of allowance)を受けた後は、ITU出願(intent to use, 1b)の場合には、使用主義の観点から使用宣誓書(SOU, Statement of Use)として使用している証拠を提示します。この使用証拠としては、商品の場合には、商標が印刷されたタグと商品自体を写真撮影したものや、商品に商標が印刷されたり表示されている場合にはその写真であったり、商標を表示したパッケージの写真であったり、実際に商品を販売しているWebsiteのスクリーンショットを用いることができます。商品と共に販売される取り扱い説明書などでも証拠として認められます。役務の使用証拠としては、役務との関係が明示できる証拠を提出する必要があり、役務との関係が曖昧な単なる会社案内のページでは、追加の証明が求められることもあります。ECサイトなどの実際に商品を販売しているWebsiteであれば、英語で、その商標の表示、商品自体の表示、USの住所で購入できるように構成されているかとの観点が必要です。登録の時点で使用を証明するものがない場合でも、その提出期間は6か月ごとに36か月まで延長可能(延長請求が5回まで。)です。

使用証拠(Use Specimen)の例

usr2571325
米国商標登録第2571325号
米国商標登録第2571325号
指定商品: golf bags, golf balls, golf ball markers
使用証拠として、マークが印刷された商品の写真を提出。
usr3230070
米国商標登録第3230070号
米国商標登録第3230070号
指定商品 Motor vehicles, namely, automobiles
使用証拠として、マークをエンブレムとして取り付けている自動車(指定商品)の写真を提出。
usr5145181
米国商標登録第5145181号
米国商標登録第5145181号
指定商品: Drinking waters; mineral waters; spring waters; flavored waters; water beverages; fruit-flavored beverages; non-alcoholic beverages, namely, carbonated beverages; soft drinks
使用証拠として、マークを印刷した瓶を容器とする飲料の写真を提出。
usr925656
米国商標登録第925656号
米国商標登録第925656号
指定役務: RESTAURANT AND LIQUOR BAR SERVICES
使用証拠として、店舗の外観写真を提出。

12. 米国特許商標庁における拒絶査定・登録査定後の手続

A.審判請求(Appeal to the Board)(TMEP 1501)

§§2, 3, 4, 5, 6, or 23 of the Trademark Act,によるFOA(拒絶査定)に不服の場合には、TTAB(審判部)にappeal(審判請求)をします。この審判請求には Electronic System for Trademark Trials and Appeals (“ESTTA“)を使用します。審判費用は200ドル/区分です。審判請求人は、請求日から60日以内に理由書(appeal brief)を提出しなければならないとされています。

B.請願書(Petition to the Director) (TMEP 1704)

請願書(Petition)は、権利不請求が標準化された形式で適切に印刷されたかどうか。 審査官が出願を停止する際に適切に行動したかどうか。 審査官が、拒絶理由通知に充分な応答を提出しなかったために放棄された出願を維持する上で適切に行動したかどうか(TMEP§1713参照)、 審査官が最終的な査定を提出することが時期尚早であるかどうかに関して、提出することができます。また、一旦審決が出された後で、補正を行う場合にもPetition to reopen the prosectionを出す必要があります。(TMEP 1501.06)

C.異議申立(Opposition)

審査の結果、出願した商標が主登録に値すると判断された場合には、その内容がOfficial Gazetteに公告され、その登録に利害関係のある者は30日以内に登録異議申立をすることができます。異議申立書には、その異議理由と、利害がある信じる事由を記載する必要があります。この異議申立には Electronic System for Trademark Trials and Appeals (“ESTTA“)を使用します。異議申立は400ドル/区分です。異議申立期間を延長することもでき、 その場合には、期間延長の請求(request for an extension of time)を費用を添えて(100ドル(§2.102(c)(1)(ii) or (c)(2))若しくは200ドル(§2.102(c)(3))提出します。(TBMP 200)首尾よく審査を通過して公告となってもアメリカ出願の場合には異議申立(Opposition)を受けることが少なくありません。アメリカの商標権は、日本の類似群コードのような権利間の仕切りがあるわけではないので、審査官が非類似と判断した2つの商標でも、相手は待ったをかけてくることがよくあります。日本で異議申立手続きは概ね特許庁の主導で進められますが、アメリカの異議申立では、本当の異議申立手続きに入る前に相手の弁護士との間で交渉に入ることも多く、そのために異議申し立て手続きを睨みながら落としどころを考えることになります。 異議申立の場合や次の取消請求の場合も同様に、もし両者の合意があれば、例えば地理的に制限したConcurrent Use Proceedingに入ることもあり、USPTO側でその旨の登録がなされます。異議申立や取消請求は、米国特許商標庁の審判部(TTAB)で扱うこととされており、その手続きは民事訴訟手続に準していて、例えば証拠開示のための手続として、証言録取(Deposition)、書類提出要求(Request for Production of Document)、自認要求(Request for Admission)、質問状(Interrogatory)などがありますが、訴訟費用の高騰を抑えるために一部は75項目に限定されています(TBMP)。また、米国特許商標庁でのディスカバリーの開始から終了までの6ヵ月間に、全てのディスカバリー手続が完了することが要求されます。異議申立制度では、陪審員制度や証人喚問はなく、宣誓証言は、宣誓供述によって行われ口述記録書(Oral transcript)によって提出されます。反対尋問の機会が与えられることを条件として、両当事者の合意がなくても宣誓書(Affidavit or Declaration)によるTestimony も可能です。

13.米国商標登録の取消請求

登録された権利に対して、利害関係を有する第3者は必要な理由がある場合に連邦登録からの削除を目的とする取消を審判を請求することができます。必要な理由は、5年以内の除斥期間があるものと、そのような期間がなくいつでも請求できるものとの2つに分類されます。5年以内とされる理由は、類似している場合、識別性がない場合、出所を誤らせる表示である場合、5年後でも請求できるものとして、商標が放棄された(不使用)場合、商標が普通名称である場合、虚偽の使用により登録されている場合などです。他人の商標と類似する場合を理由とする請求は、5年以内に限ります。

14.米国商標登録の5年目―6年目の使用宣誓書の提出

アメリカで商標権を維持するためには、登録後、5年目―6年目の間に使用宣誓書を使用証拠と共に提出して、必要な提出料も収める必要があります。特に外国出願ベースや外国登録ベース(44d、44e)の場合や、マドリッド制度の国際登録出願ベース(66a)の場合には、出願から最初の使用証明の提出となり、提出できなければ権利放棄となります。特に、マドリッド制度ベースの場合、5年目―6年目の起算日は、国際登録出願の出願日(出願日が登録日と擬制されています。)ではなく、登録証に記載されるアメリカでの登録日からとなりますので、注意が必要です。5年目―6年目の使用宣誓書を期限内に提出できない場合でも、半年は遅延の追加料金を支払って使用宣誓書を提出することもできます。書類の種類としては、Section 8(使用宣誓), Section 15(オプション)の宣誓書を提出します。マドリッド制度による国際出願で、米国での保護拡張がなされている場合にも、Section 71の宣誓書(使用宣誓)を提出する必要があります。なお、費用は、Section 8 若しくはSection 71 の宣誓書の提出の場合、庁費用は125ドル(区分毎)になります。

15.米国商標登録の存続期間と更新手続

米国での商標権の存続期間は登録日から10年間で、更新によって永続させることができます。更新の申請手続は登録日から9年目から10年目の満期日までに行うことができます。もし期限を過ぎた場合でも6か月の猶予期間がありますが、この場合には徒過による割増手数料があります。更新の際には、日本のように更新登録願を出すだけではなく、商標の使用の事実を証明するために、Section 8(使用宣誓), Section 9の各宣誓書と使用の証拠を提出する必要があります。また、使用証明としては、複数の区分を登録している商標登録では区分毎に証拠(Specimen)を提出する必要があります。宣誓書ではすべての商品役務で使用していると宣誓することから、もし商標を使っていない区分や一部の商品がある場合については、登録対象から削除する必要があります。庁費用は300ドル(区分毎、電子手続)です。使用していないことに正当な理由がある場合は、その旨の宣誓書(Excusable Nonuse)を提出することもできます。マドリッド制度による国際出願で、米国へ保護を拡張させている場合には、更新手続はWIPOに対して行うことになりますが、それとは別に米国の登録日からの9年目から10年目の満期日までに使用宣誓書とその証拠(Specimen)を米国特許商標庁に提出します。このときマドリッド制度による国際出願は出願日が登録日ですので、10年目の期限の起算日が国際出願の出願日ですが、米国特許商標庁に対する宣誓書の提出は、起算日が米国での保護の拡張の日(米国での登録日に該当します。)であって国際出願の出願日ではないことに注意する必要があります。実際のところ、国際出願の出願日から米国での保護拡張の日は1年乃至1年半程度遅れると思いますので、WIPOのオンラインでの更新手続は国際商標登録の満了3ヶ月前から利用できることから、その更新手続の1年前後程度後に米国登録の9年―10年目使用宣誓書を提出するパターンになるものと思われます。

16.米国商標の移転・譲渡

米国の連邦登録の商標の移転は、業務上の信用(goodwill)またはその一部と共に書面で移転され、そうでなければ無効である旨規定されてます。 15 U.S.C. § 1060(a) 日本のように原則的に自由に移転させることはできないとされており、この規定は出願のベースをと問わず、例えば外国登録ベースや国際出願ベースでも該当するものとされています。譲渡書や移転契約書には、”together with the goodwill of the business symbolized by the trademark”との記載があることが望ましく、登録番号も記載すべきとしています。もし出願中の商標を移転する場合であって、その出願のベースがintent to use(1b)であって既に使用を開始している場合では、追加的にallegation of use(Alleged Use:実質的にはSOUと同じ)を提出する必要があり、もし出願のベースがintent to use(1b)であって使用が開始していない場合は、事業と共に移転する必要があります。また、マドリッド制度の国際登録出願(66a)については、業務上の信用と共に移転する必要があり、さらに譲受人がマドリッド制度の締約国を居所とするという要件が追加されることになり、例えば日本人の出願中のマドプロの商標をアメリカに全く拠点のない台湾企業に譲渡することはできないことになります。米国特許商標庁における移転関係の書類の登録作業は、米国特許商標庁での登録の様式を満たすか否かで判断され、移転の記録があれば移転が有効であるという考え方はせず、裁判で移転の有効性が争われた場合には、goodwillと共にとして、どのような事業が移転されているかが検証されることになります。また、移転について米国特許商標庁での登録は必須ではありませんが、記録がない移転はその次の譲受人に対抗できないという不利益があります。すなわち、米国特許商標庁に移転の登録しない場合には、同じ元の商標権者が第3者に商標権を移転させ、その第3者が登録した場合には、その第3者が新商標権者となります。

有明国際特許事務所 では、弁理士と米国弁護士の資格により、特許庁 (JPO)と米国特許商標庁(USPTO)にそれぞれ直接手続でき、現地代理人は不要です。

米国商標制度 vol.2